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つらいへつらいへらないつらい

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miduku

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つらい?



 、とすら声がでないほど、紅の目に色鮮やかにその光景は映った。
一緒にいたかっただけの人たちの身体はぐらりと揺れて、落ちる。

向こうでは誰かが演説じみた話を続ける。けれどその言葉はちっとも耳には入らなかった。そんなことはどうだって良い。大切なのは、目の前の二人が本当に死んでしまったのか否かということだ。
伸ばした手は震えてすら硬直してすらいない。異常なほど滑らかに手を動かし冥の頬に添えてみると、色の抜けたそれに温度はなかった。初めて触れた鉄の綺麗な首筋からは、鼓動の音は伝わらなかった。

悲しさあまりに涙がこぼれるほど、紅の頭の中は整頓されてはいない。紅の中にあるのは、悲しみと、悔しさと、混乱と、絶望と、ちょっとだけの狂気。
そしてその狂気をぞわりと撫でたのは、突然脳に響いた優しくて暖かい声。

『これでもう、我慢しなくても良いんですよ。』

声が、響く。

『あの頃の家はもう戻っては来ない。友もいない。この世界にはもう、あなたといてくれる人なんていない。』
『だったら、我慢する必要はないでしょう?だってそれがこの世界の秩序。生きるためなら、自らの欲のためなら何をしたって許される。』

『それに、』

じゃきん、と音がした。両手を開いて、視界に入るように持ちあげる。“いつも”より短いけれど、獣のそれのように鋭い爪が、十。
確認した紅の脳に再び響いた声の温度は、急激に冷え切っていた。

『僕ももう、限界だ…!』

けれどそれは楽しそうに、笑って、





ぐちゃあ、ぐちゅ、ぐじゃり。
生々しい音が、幻の耳に飛び込んできた。耳障りな音に若干眉をひそめながら振り返ると、そこには“獣”がいた。
鉄と冥の肉を内蔵を骨を、一心に貪り食らう、醜い黒い獣。

不意に彼が上げた顔には、べったりとこびりついた赤黒い液体。彼はにんまりと笑いながら、口の周りのそれをべろりと舐めとる。


そして、“カビゴン”にしては速すぎる速度で接近した彼は、その真っ赤な爪を幻に突き立てた。







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