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きみと、あかいゆめを逝く。

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mato4869

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きみと、あかいゆめを逝く。


ひとがしんだらどうなるかしっていますか。

うでもあしもうごきません。
だらりとたれさがって、にくとなります。
めもくちもうごきません。
きれいなひかりもこえも、もうありません。

あかいのです。

ぜんぶ ぜんぶ まっかなのです。




恐ろしくて息を呑むと、白昼夢から引き戻される。
赤い空が、無言で私を迎え入れた。…呼吸が、痛い。
「また…夢…。」
夢からさめたというより、我に返ったという言葉がしっくりくるかもしれない。立っていた足はくずおれて、私はその場にしゃがみこんだ。
「…また…新しい人…。」
さっき見たものを思い出して、震えた。
毎日、前触れなく白昼夢のように現れる光景。それが何かよくわからないから、私は"夢"と呼んでいる。"夢"はいつも私に知らない人を見せるのだ。見たことない人を。真っ赤に染まった人を。
私は毎日、何度も何度も、誰かの死に様を夢に見る。
それは皆、私が殺した人達なのだと、"夢"は言う。
『9999999人を、殺した。』
幼い少女の声が響く。それがとても怖くて私は、逃げるように歩きだした。
耳を塞いで。目を伏せて。どこかへ。どこかへ。
『…馬鹿ね。今更恐れたって何も戻りはしない。』
『貴方も私も、所詮人殺し。』
やめて。やめて。やめて。耳を塞いでも、少女は容赦しない。
けれどそれはどこかで当然の仕打ちと思っていた。どうして、忘れていたんだろう。こんなに恐ろしいことを。こんなにも酷いことを。
どこまで行っても空は赤い。夢も赤い、世界も赤い、目の前はどこまでも赤い、赤い。
なんて、おそろしい世界なんだろう。
そう自覚した途端、何か、爆ぜたように私は駈けだした。

知らない、知らない、私はなにも知らないの。本当に。
人なんて殺してない。誰かに死んでほしいなんて思ってない。
私はただ、
私はただ、
私が願ったのは、

貴方と過ごした、幸せなはずの日々。



いつのまにか、ずいぶん離れたところにきたみたい。
私の目の前には、それまで見なかった建物があった。
「…教会…。」
石壁で組まれた小さな教会だ。古そうだけど、よく手入れされてるのか綺麗で清潔だ。
白い石壁。その白さが新鮮で目を惹いた。赤くないものだ。この中なら、赤を見なくて済むかも。
気づくと羽根のように軽い扉を押しあけていた。包み込むように教会は私を受け入れる。ふらふらと進むうちに、木製の大きな十字架へ行き着いて…。

其処に、緑色のくくり髪が揺れていた。

心臓が、止まるかと思った。
緑の人はこちらに気づいたのか、振り向かないまま言った。
「…懺悔がおありですか?」
優しい声だ。はやる心臓を抑えて、言葉を返す。
「ざんげ…?」
「罪の告白、です。十字架の前で、神の御前で。」
罪の、告白。
その言葉は私の胸にすとんと落ちてきた。赤い記憶が、ざわめく。
「告白…したら、どうなるの?」
くくられた髪が少しだけ揺れる。緑の人は、微笑んだようだ。
「主は全てを聞き遂げてくださいます。そして、私たちに許しをお与えになるのですよ。」
今度こそ全身がざわめいた。息ができない。
それは、本当?告白したら、誰でも、私でも、

「…ひとごろし、でも…?」

一切の音が死んだ。
風も気配も、酸素さえも死に絶えた。
「…ええ。もちろん。」
彼が振り向いた。
とても、おだやかに笑んでいた。
「罪人よ、貴女の命を正しき者に捧げなさい。」
おだやかな音で奏でられた言葉の
その意味を私は理解できないまま
聖なる書は開かれ厳かに光り
黒い何かを纏った右手が
もう、私のすぐ目の前、に、


瞬間、私の目の前は真っ赤になった。


…次いで聞こえたのは窓ガラスの砕ける音と
爆弾みたいな大きな音。死んでいた風が、そこら中で荒れ狂っていた。
あんなに近かった手はもういなくて、どこだろうと探したら床にいた。真っ赤になって。
でも、こんな赤を私は知らない。
「…やっと見つけた、シズハ。」
赤い手の上に降り立った靴。靴の周りを踊るのは火の粉。
それは、大きな羽根を背に持つ男の子だった。
「…だ、れ?」
会ったことある気がする。誰だろう、でも思いだせない。
「焔<ホムラ>だよ。呼び捨てで呼んで。」
男の子は、焔は気さくに微笑んだ。
「探したんだよシズハ。さ、こんなところ出て一緒に行こ?」
「行くって…どこへ?」
「どこへでも。シズハの行きたいところならどこだっていい。」
焔は綺麗な動作でかしづいて
私の手をとった。ガラス細工に、触るみたいに。
「僕はいつでもシズハの傍にいて、シズハを守るから。」





ひとをころしたひとはどうなるかしっていますか。

しんだひとのあかにそまるのです。


あかいわたしと

あかい、きみ。


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