Den Lille Havfrue
ぱら、ぱら、ぱら。
散らばっていく。黒い空間いっぱいに、きらきら光るものが散らばっていく。
拾い集めなきゃ。
俺のものだから。
そっとその一つの手を伸ばす。
散らばっていく。黒い空間いっぱいに、きらきら光るものが散らばっていく。
拾い集めなきゃ。
俺のものだから。
そっとその一つの手を伸ばす。
散らばっていたのは割れたガラス。
触れた途端に、指を切る。
触れた途端に、指を切る。
*
ふ、と目を開けてまず柔らかさに気がついた。背中を優しく包む柔らかさ。
樹が寝ていたのは清潔なベッドだった。
瓦礫の隅で寝ていた樹には、馴染まない感覚だった。
「…ようやく起きたか。」
声のする方を向くと、電光の横顔が目に入った。
顔を覆っていた銀髪をそっと、かきあげる。その指から髪の先まで美しい、ひと。
「どうかしたか?まだ…気分が悪いか?」
銀鏡のような瞳が凛と樹を映す。呆けている樹を心配してくれているらしい。
樹ははっと我に返った。
「あ、ああ。もう大丈夫で…大丈夫、だ。」
敬語を使いそうになって呑み込んだ。その様子に電光は小さく微笑う。
「それでいい。…無事でよかった。」
頭をなでようと電光は手を伸ばした。白く形のいい手は、存外に大きい。
手が、樹の視界に向かって近づく。
びくっと樹の肩が震えた。気づいた電光は手を止める。樹自身、震えた自分に戸惑っているようだった。
「…すまない、気を害したか。」
「あ、いや、そういうのじゃ…ない、んだ。すまない。」
慌てて首を振った樹は微笑を作った。それが逆に痛々しい。
未だ震えている金の瞳を電光が覗きこむと、薄い微笑はたやすく崩れた。
「………。」
電光はかけていた椅子から立ち上がると、樹のいるベッドにそっと腰掛ける。
そのまま緩やかに、樹に背を預けた。
とん、と背中が左肩に触れる。
「別に…検索するつもりはない。お前が何者でも俺は構わない。」
でも。白いシーツは二人分沈み込む。
「此処に居る限りお前は…俺が護る。」
「…どうして?」
「それこそどうでもいいな。」
少しだけ振り向いて、電光はにっと微笑んだ。
樹が寝ていたのは清潔なベッドだった。
瓦礫の隅で寝ていた樹には、馴染まない感覚だった。
「…ようやく起きたか。」
声のする方を向くと、電光の横顔が目に入った。
顔を覆っていた銀髪をそっと、かきあげる。その指から髪の先まで美しい、ひと。
「どうかしたか?まだ…気分が悪いか?」
銀鏡のような瞳が凛と樹を映す。呆けている樹を心配してくれているらしい。
樹ははっと我に返った。
「あ、ああ。もう大丈夫で…大丈夫、だ。」
敬語を使いそうになって呑み込んだ。その様子に電光は小さく微笑う。
「それでいい。…無事でよかった。」
頭をなでようと電光は手を伸ばした。白く形のいい手は、存外に大きい。
手が、樹の視界に向かって近づく。
びくっと樹の肩が震えた。気づいた電光は手を止める。樹自身、震えた自分に戸惑っているようだった。
「…すまない、気を害したか。」
「あ、いや、そういうのじゃ…ない、んだ。すまない。」
慌てて首を振った樹は微笑を作った。それが逆に痛々しい。
未だ震えている金の瞳を電光が覗きこむと、薄い微笑はたやすく崩れた。
「………。」
電光はかけていた椅子から立ち上がると、樹のいるベッドにそっと腰掛ける。
そのまま緩やかに、樹に背を預けた。
とん、と背中が左肩に触れる。
「別に…検索するつもりはない。お前が何者でも俺は構わない。」
でも。白いシーツは二人分沈み込む。
「此処に居る限りお前は…俺が護る。」
「…どうして?」
「それこそどうでもいいな。」
少しだけ振り向いて、電光はにっと微笑んだ。
「困ってる奴を助けるのに、理由なんているのか?」
それきり、電光は振り向かなかった。樹に背を向けたままただそこに居る。
見せたくないものを見るつもりはない。はっきりと、示す背中。
樹はしばらくの間呆然とみつめて、やがて緩慢に、電光へと手を伸ばす。
ぎゅっと、そのマントを握りしめた。
その背中に、額を押し付けた。
「…すまない…すまない、電光…」
「構わん。」
ふぅっと電光は息を吐いた。やれやれと言いたげな微笑みをこっそり浮かべる。
本当に困った奴ばかりだ。樹といい、この世界といい。
(…だからこそ。)
電光は視線の先で遊ぶ、愛らしい黒猫を見つめて思う。
(俺は、少しでも皆を護りたい。)
見せたくないものを見るつもりはない。はっきりと、示す背中。
樹はしばらくの間呆然とみつめて、やがて緩慢に、電光へと手を伸ばす。
ぎゅっと、そのマントを握りしめた。
その背中に、額を押し付けた。
「…すまない…すまない、電光…」
「構わん。」
ふぅっと電光は息を吐いた。やれやれと言いたげな微笑みをこっそり浮かべる。
本当に困った奴ばかりだ。樹といい、この世界といい。
(…だからこそ。)
電光は視線の先で遊ぶ、愛らしい黒猫を見つめて思う。
(俺は、少しでも皆を護りたい。)
ああ、本当は泣くべきところなのだろうか。
その背に顔を押し付けながらも、樹の瞳は乾いていた。
もたれそうな身体をくいと引き留める罪悪感のテグス。
心から誰かに甘えることは、いけない、と何故か思った。
その背に顔を押し付けながらも、樹の瞳は乾いていた。
もたれそうな身体をくいと引き留める罪悪感のテグス。
心から誰かに甘えることは、いけない、と何故か思った。
穢れひとつ見当たらない純白のマント。
触れてはいけないと、心の奥で誰かが言った。
触れてはいけないと、心の奥で誰かが言った。