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Den Lille Havfrue

最終更新:

mato4869

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Den Lille Havfrue


ぱら、ぱら、ぱら。
散らばっていく。黒い空間いっぱいに、きらきら光るものが散らばっていく。
拾い集めなきゃ。
俺のものだから。
そっとその一つの手を伸ばす。

散らばっていたのは割れたガラス。
触れた途端に、指を切る。





ふ、と目を開けてまず柔らかさに気がついた。背中を優しく包む柔らかさ。
樹が寝ていたのは清潔なベッドだった。
瓦礫の隅で寝ていた樹には、馴染まない感覚だった。
「…ようやく起きたか。」
声のする方を向くと、電光の横顔が目に入った。
顔を覆っていた銀髪をそっと、かきあげる。その指から髪の先まで美しい、ひと。
「どうかしたか?まだ…気分が悪いか?」
銀鏡のような瞳が凛と樹を映す。呆けている樹を心配してくれているらしい。
樹ははっと我に返った。
「あ、ああ。もう大丈夫で…大丈夫、だ。」
敬語を使いそうになって呑み込んだ。その様子に電光は小さく微笑う。
「それでいい。…無事でよかった。」
頭をなでようと電光は手を伸ばした。白く形のいい手は、存外に大きい。
手が、樹の視界に向かって近づく。
びくっと樹の肩が震えた。気づいた電光は手を止める。樹自身、震えた自分に戸惑っているようだった。
「…すまない、気を害したか。」
「あ、いや、そういうのじゃ…ない、んだ。すまない。」
慌てて首を振った樹は微笑を作った。それが逆に痛々しい。
未だ震えている金の瞳を電光が覗きこむと、薄い微笑はたやすく崩れた。
「………。」
電光はかけていた椅子から立ち上がると、樹のいるベッドにそっと腰掛ける。
そのまま緩やかに、樹に背を預けた。
とん、と背中が左肩に触れる。
「別に…検索するつもりはない。お前が何者でも俺は構わない。」
でも。白いシーツは二人分沈み込む。
「此処に居る限りお前は…俺が護る。」
「…どうして?」
「それこそどうでもいいな。」
少しだけ振り向いて、電光はにっと微笑んだ。

「困ってる奴を助けるのに、理由なんているのか?」

それきり、電光は振り向かなかった。樹に背を向けたままただそこに居る。
見せたくないものを見るつもりはない。はっきりと、示す背中。
樹はしばらくの間呆然とみつめて、やがて緩慢に、電光へと手を伸ばす。
ぎゅっと、そのマントを握りしめた。
その背中に、額を押し付けた。
「…すまない…すまない、電光…」
「構わん。」
ふぅっと電光は息を吐いた。やれやれと言いたげな微笑みをこっそり浮かべる。
本当に困った奴ばかりだ。樹といい、この世界といい。
(…だからこそ。)
電光は視線の先で遊ぶ、愛らしい黒猫を見つめて思う。
(俺は、少しでも皆を護りたい。)




ああ、本当は泣くべきところなのだろうか。
その背に顔を押し付けながらも、樹の瞳は乾いていた。
もたれそうな身体をくいと引き留める罪悪感のテグス。
心から誰かに甘えることは、いけない、と何故か思った。

穢れひとつ見当たらない純白のマント。
触れてはいけないと、心の奥で誰かが言った。


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