白い白い、月の下。
二人のウィザードが刃を交えていた。
血に濡れ、傷つき、それでもその剣速を鈍らせることなく打ち合い続ける。
地を踏み砕くほどの踏み込み、風を切り刻むほどの剣速、獣を震え上がらせるほどの雄叫び、夜を照らすほどの散火花。
一人は、心の底からの慟哭と怒りとともに、黒い甲冑をまとったもう一人に言葉を叩きつける。
二人のウィザードが刃を交えていた。
血に濡れ、傷つき、それでもその剣速を鈍らせることなく打ち合い続ける。
地を踏み砕くほどの踏み込み、風を切り刻むほどの剣速、獣を震え上がらせるほどの雄叫び、夜を照らすほどの散火花。
一人は、心の底からの慟哭と怒りとともに、黒い甲冑をまとったもう一人に言葉を叩きつける。
「なんでだっ! お前はそれだけの力を持ってるのにっ、なんで諦めちまうんだよっ……!」
「―――うるさい」
「―――うるさい」
同時、黒い騎士の剣に周囲の闇よりなお濃い闇色の嵐が巻き起こり、騎士が剣を振りかぶり、止める。
暴虐の渦を掲げ、見せ付けるように、挑発の言葉を騎士は告げる。
暴虐の渦を掲げ、見せ付けるように、挑発の言葉を騎士は告げる。
「口で語るな。魔剣使いなら魔剣(こいつ)で語れ」
「―――上、っ等……っ!」
「―――上、っ等……っ!」
怒りを込めた声。全力にして全開を撃ち合うために、彼も同じく剣を担ぎ、開放。
赤い宝玉が輝く。
己が主に勝利をもたらすために、眼前の相手の存在を認めぬと言わんばかりに熱風の大嵐をもたらす。
赤い宝玉が輝く。
己が主に勝利をもたらすために、眼前の相手の存在を認めぬと言わんばかりに熱風の大嵐をもたらす。
端から見るものがいたのなら、その光景は―――まるで鏡写しのよう。
風刺の効いたもの言いをするなら鏡に映る像に吠え掛かる犬のようだと思ったかもしれない。
風刺の効いたもの言いをするなら鏡に映る像に吠え掛かる犬のようだと思ったかもしれない。
そんな、滑稽でありながら世界を震わせるほどの威力を込めた笑い事では済まない二つの力の渦は
「その捻じ曲がった根性、責任持って叩き直してやるよ」
「やれるもんならやってみろ―――お前がこの一撃で死んでなけりゃな」
「やれるもんならやってみろ―――お前がこの一撃で死んでなけりゃな」
同時に
「―――<魔器開放>っ!」
「―――<魔器開放>っ!」
「―――<魔器開放>っ!」
―――開放され、ぶつかりあう。
全てを飲み込み砕きつくす黒い極光。
全てを巻き込み払いつくす爆風の渦。
全てを巻き込み払いつくす爆風の渦。
己の意思と力の全てをもって眼前の気に食わない相手の存在を否定する、と無言でありながらその敵意が肌で感じられるほどに、己の存在すべてをこめて叩きつけられる嵐。
互いが互いを否定する、その意思だけを込めて放たれた嵐は、互いを飲み込まんと食らいあう。
二つは真っ向から相手を消滅させるためだけに打ち合わされ―――夜空に一瞬蒼穹が取り戻されるほどの爆光と、地を砕き木を引き裂き巻き上げる破壊の渦が撒かれた。
そして―――その日から、柊蓮司は姿を消す。
互いが互いを否定する、その意思だけを込めて放たれた嵐は、互いを飲み込まんと食らいあう。
二つは真っ向から相手を消滅させるためだけに打ち合わされ―――夜空に一瞬蒼穹が取り戻されるほどの爆光と、地を砕き木を引き裂き巻き上げる破壊の渦が撒かれた。
そして―――その日から、柊蓮司は姿を消す。
***
助けたかった、少女がいた。
届かなかった、手があった。
その日から、彼は魔の王に付き従うだけの人形となった。
彼女を傷つける全てを殺す、星詠みの王の落とし子に。
届かなかった、手があった。
その日から、彼は魔の王に付き従うだけの人形となった。
彼女を傷つける全てを殺す、星詠みの王の落とし子に。
***
「世界は、今未曾有の危機に襲われています」
美しき世界の守護者の言葉は、恐れすら含まれていた。
並列世界が恐るべき勢いで『喰われて』いくという現象。
どこが食われ、どこからはじまったのかは彼女とその精鋭をしてもわからなかった。
並列世界が恐るべき勢いで『喰われて』いくという現象。
どこが食われ、どこからはじまったのかは彼女とその精鋭をしてもわからなかった。
「えぇ、ガイアの『輝ける黄金』アンゼロットが言うには、『そういうもの』が存在するのだとか。
敵個体名称は不明。
しかし、他の並列世界を食らい大のつく魔王級となった魔王が向かってきているそうです。
相手がどれほどの規模と力をもっているかはわかりませんが―――『輝ける黄金』が言うには、次に狙われるのはファー・ジ・アース。つまりウチです。
そんなもんに喰われてたまりません。全世界のウィザードをもって、迎撃戦を敢行します」
敵個体名称は不明。
しかし、他の並列世界を食らい大のつく魔王級となった魔王が向かってきているそうです。
相手がどれほどの規模と力をもっているかはわかりませんが―――『輝ける黄金』が言うには、次に狙われるのはファー・ジ・アース。つまりウチです。
そんなもんに喰われてたまりません。全世界のウィザードをもって、迎撃戦を敢行します」
そんな、いつもどおりの世界の危機。
ただし。アンゼロット城で見られるいつもの光景の中で少しだけ違ったその一点は。
ただし。アンゼロット城で見られるいつもの光景の中で少しだけ違ったその一点は。
「はわ、大変だねぇアンゼロット」
「大変だねぇじゃありませんわくれはさん。あなたには、その魔王そのものを討ちに行ってもらうんですから。
あなたが彼の魔王に滅びを与える鍵だという運命になっているんですもの」
「は、はわっ!?」
「大変だねぇじゃありませんわくれはさん。あなたには、その魔王そのものを討ちに行ってもらうんですから。
あなたが彼の魔王に滅びを与える鍵だという運命になっているんですもの」
「は、はわっ!?」
『はい』か『Yes』でお返事させられることになったのは、今回は赤羽くれはだったということだ。
***
命ある全てを狩りとるだけ。
それを彼女が望むから。
たとえそれが、彼にとって幾度も敵対した敵であっても。
たとえそれが、彼女にとって友と称したものであっても。
それを彼女が望むから。
たとえそれが、彼にとって幾度も敵対した敵であっても。
たとえそれが、彼女にとって友と称したものであっても。
***
「―――気に食わないわね。いくら並列世界の存在でも、このベール=ゼファーを僕のように使ってくれちゃって」
「……ベル。なぜ二人」
「決まってるでしょ、緋室灯。こいつは意思もなにもないただの影。腹が立つことに、見境なしになった異世界の魔王に喰われた―――異世界の私よ」
「……ベル。なぜ二人」
「決まってるでしょ、緋室灯。こいつは意思もなにもないただの影。腹が立つことに、見境なしになった異世界の魔王に喰われた―――異世界の私よ」
髪も黒く染まり、瞳だけが虚ろに輝くベルを、あっさりと貫いて殺したのは銀糸のごとき髪と金目を怒りにたぎらせるベル。
「ほんと、気に食わないわ―――いくらなんでも、こんな劣化品を私と認識していることも含めて腹が立つったらありゃしない。
どうせウィザード共も手が足りてないんでしょう? 異世界の魔王なんぞにここを奪われるのは心外だわ、雑魚の始末くらいはやってあげようじゃないの」
どうせウィザード共も手が足りてないんでしょう? 異世界の魔王なんぞにここを奪われるのは心外だわ、雑魚の始末くらいはやってあげようじゃないの」
地面を埋め尽くすどす黒い軍勢を見て、麗しき蝿の女王がその威を顕現する―――!
***
彼女の望むままに。
彼女が思うままに。
ただひたすらに殺し続けるだけ。
なのに。なんで―――あいつの、子どもの頃に見た笑顔が、胸に痛い。
彼女が思うままに。
ただひたすらに殺し続けるだけ。
なのに。なんで―――あいつの、子どもの頃に見た笑顔が、胸に痛い。
***
『輝ける黄金』より授けられたのは、一つの希望。
ガイアを幾度となく守ってきた勇者。光り輝く刃を持つ、男装の麗人。
ガイアを幾度となく守ってきた勇者。光り輝く刃を持つ、男装の麗人。
「よろしく、くれは」
「うん。よろしくね、レンちゃん……って、はわ。なんか変な感じ」
「うん。よろしくね、レンちゃん……って、はわ。なんか変な感じ」
「……柊蓮司、ついに女に」
「いや、ボクもともと女だからっ! あとボクは蓮司くんじゃなくて、レンだよ」
「いや、ボクもともと女だからっ! あとボクは蓮司くんじゃなくて、レンだよ」
「アンゼロット様、蓮司くんはどこなんですか?ガイアせんべいせっかく持ってきたのに」
「……柊さんですか。柊さんは―――2週間ほど前、消息を絶ちました。
彼の0-Phone のGPSの最後の発信場所には大量の血痕がありました。ロンギヌス科学班に調べさせたところ、遺伝子的に柊さんのもので間違いないそうです。
そして―――いくらウィザードであっても、確実に致死量の血痕だったそうです」
「―――え?」
「……柊さんですか。柊さんは―――2週間ほど前、消息を絶ちました。
彼の0-Phone のGPSの最後の発信場所には大量の血痕がありました。ロンギヌス科学班に調べさせたところ、遺伝子的に柊さんのもので間違いないそうです。
そして―――いくらウィザードであっても、確実に致死量の血痕だったそうです」
「―――え?」
***
そして知る。
守れなかった彼女が、届けたかった言葉を。
助けられなかった彼女に、いまだに意識があることを。
だから―――
守れなかった彼女が、届けたかった言葉を。
助けられなかった彼女に、いまだに意識があることを。
だから―――
***
「そんな―――そんな、まさか、あの魔王の名は―――っ!?」
「ようこそ、私の城へ。さすがにファー・ジ・アースのウィザードは他の並列世界とは違うみたいだね。
でも―――私の城に入った以上は、あいつがその行く手を阻む。私に害を成すものを、あいつは絶対許さない。
さぁ、見せてよ。いつもみたいにさ。
あんたの手で、『赤羽くれは(わたしのにせもの)』を殺すところを」
でも―――私の城に入った以上は、あいつがその行く手を阻む。私に害を成すものを、あいつは絶対許さない。
さぁ、見せてよ。いつもみたいにさ。
あんたの手で、『赤羽くれは(わたしのにせもの)』を殺すところを」
「もしかして、君は―――」
「悪い。今バレるわけにゃいかねーんだ、ちょっと黙っててくれな。レン」
「悪い。今バレるわけにゃいかねーんだ、ちょっと黙っててくれな。レン」
***
今度こそ。
俺に、あいつを助けさせろ。
俺に、あいつを助けさせろ。
***
力の塊である黒い闇。
それは、かつて魔王ディングレイと呼ばれたものだ。幾多の世界を際限なしに飲み込み、食らい、その力に振り回されて理性すら失ったただの塊だ。
依代の少女は引き剥がされ、同じ顔の少女とともにある。
そんな少女達と闇の狭間に立つのは、二人の剣士。
ただまっすぐに闇を見据え、彼らは異口にして完全なる同音で告げる。
それは、かつて魔王ディングレイと呼ばれたものだ。幾多の世界を際限なしに飲み込み、食らい、その力に振り回されて理性すら失ったただの塊だ。
依代の少女は引き剥がされ、同じ顔の少女とともにある。
そんな少女達と闇の狭間に立つのは、二人の剣士。
ただまっすぐに闇を見据え、彼らは異口にして完全なる同音で告げる。
「―――もとは俺が決着つけるスジじゃねぇらしいが、そんなことは今はどうでもいい」
「人様にこれだけ迷惑かけといて、ハイさようならはねぇよなぁ魔王サマよ」
「今度は間違わねぇ。お前をぶったおして、俺は全部にケリつける」
「この馬鹿にここまで巻き込まれたんだ。結構イライラしてるし、お前で憂さ晴らししてやるさ」
「人様にこれだけ迷惑かけといて、ハイさようならはねぇよなぁ魔王サマよ」
「今度は間違わねぇ。お前をぶったおして、俺は全部にケリつける」
「この馬鹿にここまで巻き込まれたんだ。結構イライラしてるし、お前で憂さ晴らししてやるさ」
だから、と。同じように、強い瞳で。赤い宝玉の剣を暗く不定形な闇に突きつけたまま。二人の青年が、やはり同じ声で告げる。
「全力の―――」
「全開で―――」
『―――ディングレイ、てめぇをぶっ潰すっ!』
「全開で―――」
『―――ディングレイ、てめぇをぶっ潰すっ!』
セブン=フォートレスリプレイ『フレイスの炎砦』×ナイトウィザード
「柊蓮司と黒の騎士」
「柊蓮司と黒の騎士」
公開未定!
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