なんなんだ、こいつは。
舌打ちしながら手に余る馬鹿でかい機関銃を左舷へ。
体ごと振り回しながらトリガーからは指を離さず弾をばら撒く。
運よく頭にもらってぶっ飛ぶ一匹。けどまぁそんなもん気にしてもいらんない。
体ごと振り回しながらトリガーからは指を離さず弾をばら撒く。
運よく頭にもらってぶっ飛ぶ一匹。けどまぁそんなもん気にしてもいらんない。
四面はとっくに楚歌。
ぶんぶん群がってくるハエみてえな 腐った兵士(よみがえり)ども。大方この間あったダオスとのいさかいで埋葬されなかった運のない連中だろう。
うじゃうじゃ出てきやがる腐れ○○○どもなんぞ、一匹二匹片付けたからってどうってこともない。
とっとと黄泉還りを際限なく掘り返しやがる 闇の使徒(クソッタレ)の息の根を止めないことには焼け石に水もいいとこだ。
そのクソッタレの蛆虫野郎は、こっちから見りゃうじゃうじゃいやがる黄泉還りの川を挟んだその先に。
次から次へと増えるゾンビの軍勢なんぞとことを構えんのに、ミステルの奴は今すぐここにはこられないときた。
あぁ、まったく。状況は最悪どころの話じゃねえってのに。
ぶんぶん群がってくるハエみてえな 腐った兵士(よみがえり)ども。大方この間あったダオスとのいさかいで埋葬されなかった運のない連中だろう。
うじゃうじゃ出てきやがる腐れ○○○どもなんぞ、一匹二匹片付けたからってどうってこともない。
とっとと黄泉還りを際限なく掘り返しやがる 闇の使徒(クソッタレ)の息の根を止めないことには焼け石に水もいいとこだ。
そのクソッタレの蛆虫野郎は、こっちから見りゃうじゃうじゃいやがる黄泉還りの川を挟んだその先に。
次から次へと増えるゾンビの軍勢なんぞとことを構えんのに、ミステルの奴は今すぐここにはこられないときた。
あぁ、まったく。状況は最悪どころの話じゃねえってのに。
「―――負ける気がしないってえのは、楽しいねぇっ!」
ドレスから一丁パンツァーファウストを引き抜き、後ろを振り返らずこっちに背中だけを向け続ける馬鹿のドタマにロック、撃発(ファイア)。
鉄の拳骨は狙った馬鹿の頭へと一直線に飛び―――当たるそのコンマ5秒前、目標(バカ)は馬鹿でかい剣をぶん回すのを不自然に止めて、思い切り横に飛ぶ。
爆発。
ぐちゃぐちゃに舞い散る肉片が吹き飛びながら地面を埋める。
肉の焦げる匂い、むせ返るような血の匂い、腐った肉はぐちゃぐたと大地を汚す。
慣れたアタシでもそんなもんに触るのはちょっとだけ気持ち悪い。
それでもその馬鹿は、背中に目でもついてんのかと思うくらい完璧に榴弾を回避。振り向くことなく、文句一つ言わずに波みたいにおしよせるゾンビの群れを斬り捨て続ける。
鉄の拳骨は狙った馬鹿の頭へと一直線に飛び―――当たるそのコンマ5秒前、目標(バカ)は馬鹿でかい剣をぶん回すのを不自然に止めて、思い切り横に飛ぶ。
爆発。
ぐちゃぐちゃに舞い散る肉片が吹き飛びながら地面を埋める。
肉の焦げる匂い、むせ返るような血の匂い、腐った肉はぐちゃぐたと大地を汚す。
慣れたアタシでもそんなもんに触るのはちょっとだけ気持ち悪い。
それでもその馬鹿は、背中に目でもついてんのかと思うくらい完璧に榴弾を回避。振り向くことなく、文句一つ言わずに波みたいにおしよせるゾンビの群れを斬り捨て続ける。
あんなにも大量の、いまだ数の増え続ける、終わりのなさそうにすら見える軍勢との対峙。
なのに。
一度のなぎ払い。刃で複数のゾンビの首を刈り取り、巻き起こす剣風で数十体の死体をめちゃくちゃに引き裂いて吹き飛ばす。
唐竹割り。一瞬の遅滞もなく一匹を真っ二つに斬り割り、地面に叩きつけて炸裂する衝撃波で地面がめくれ、跳ね上がった礫が幾十もの死体を蜂の巣にする。
人の形をした嵐。
世界ってのは広いとは聞いてたが、あんなとんでもない剣士、どこの世界の人間でも見たことがない。
なんともいえず、どうしようもなく。顔に湧き上がる笑みがおさまんない。
あぁチクショウ、楽しくて楽しくてイっちまいそうなくらいだ。意味はわかんないけど。
なのに。
一度のなぎ払い。刃で複数のゾンビの首を刈り取り、巻き起こす剣風で数十体の死体をめちゃくちゃに引き裂いて吹き飛ばす。
唐竹割り。一瞬の遅滞もなく一匹を真っ二つに斬り割り、地面に叩きつけて炸裂する衝撃波で地面がめくれ、跳ね上がった礫が幾十もの死体を蜂の巣にする。
人の形をした嵐。
世界ってのは広いとは聞いてたが、あんなとんでもない剣士、どこの世界の人間でも見たことがない。
なんともいえず、どうしようもなく。顔に湧き上がる笑みがおさまんない。
あぁチクショウ、楽しくて楽しくてイっちまいそうなくらいだ。意味はわかんないけど。
なんなんだ、こいつは。
はじめてそう思ったのは、こいつとはじめて会ったその時だった。
これまで見たことのあるフォーリナー連中によく似た、変な格好のボンクラ。
第一印象はそれ以外にありえなかった。
最悪なことにアタシ―――イリア=ルゥ=レグニツァ―――の行く場所は戦場だったわけで。
フォーリナーなら絶対武器(マーキュリー)を持ってるだろうと聞いてみれば、
これまで見たことのあるフォーリナー連中によく似た、変な格好のボンクラ。
第一印象はそれ以外にありえなかった。
最悪なことにアタシ―――イリア=ルゥ=レグニツァ―――の行く場所は戦場だったわけで。
フォーリナーなら絶対武器(マーキュリー)を持ってるだろうと聞いてみれば、
『マーキュリー? なんだそりゃ、そんな珍妙なもん持ってねぇぞ』
そう、あっけらかんと答えやがった。
……腹が立ったので弾丸でダンスを躍らせてやった。
……腹が立ったので弾丸でダンスを躍らせてやった。
文句を言ってくるそいつに焼けた銃口を突きつけてやろうと構えるも、そいつは銃把を押さえて自分から狙いを外させつつ固定。その後文句を続けた。
なんなんだ、こいつは。
そう。こいつに思った最初の時がこれだった。
なんなんだ、こいつは。
そう。こいつに思った最初の時がこれだった。
マーキュリーも持たないフォーリナーなんぞ野郎の家のティッシュ以下。
そんな足手まといを連れていくのも面倒だが、何かに殺られて黄泉還りになられるのはもっと面倒だ。
仕方がないからベスのところに送ってくために、ちょいとミステルを走らせて、アタシは合流地点に向けてそいつと一緒に歩いていた。
その間もこの世界のことなんかを聞いてくるので、ガム噛む間にヒマなら答えてやった。
そんな足手まといを連れていくのも面倒だが、何かに殺られて黄泉還りになられるのはもっと面倒だ。
仕方がないからベスのところに送ってくために、ちょいとミステルを走らせて、アタシは合流地点に向けてそいつと一緒に歩いていた。
その間もこの世界のことなんかを聞いてくるので、ガム噛む間にヒマなら答えてやった。
そのやり取りの中、このボンクラこれまで会ったフォーリナーとは違ってるなと思ったことが一個ある。
『なんで』という言葉を吐かないんだ、このボンクラは。
これまで会ったフォーリナー連中は、来たてだと大抵『なんで自分がここにいるんだ』とか、『なんで自分だけこんな目にあうんだ』とか、
『なんでこんなことしなきゃならないんだ』とか、そんな自分の境遇を呪うようなことを口にしてばっかりだった。
まぁ、その理由もわからんでもない。住み慣れたところからまったく違う境遇に突き落とされりゃ愚痴の一つも言いたくなるのは当たり前だ。
『なんで』という言葉を吐かないんだ、このボンクラは。
これまで会ったフォーリナー連中は、来たてだと大抵『なんで自分がここにいるんだ』とか、『なんで自分だけこんな目にあうんだ』とか、
『なんでこんなことしなきゃならないんだ』とか、そんな自分の境遇を呪うようなことを口にしてばっかりだった。
まぁ、その理由もわからんでもない。住み慣れたところからまったく違う境遇に突き落とされりゃ愚痴の一つも言いたくなるのは当たり前だ。
だからこそ、こちら側の出す答えをすとんと疑いもせずに受け入れるこのボンクラが、ちょっと変だなとは思った。
なんなんだ、こいつは。
そう思った二回目の出来事。
なんなんだ、こいつは。
そう思った二回目の出来事。
半日ほど歩きとおし、そいつがアタシのことを名前で呼ぶようになった頃。
異変が起きた。
いきなり視界に薄暗いもやのようなものが集まりだし、一点に収束、人の形を形作る。
現れやがったのは造物主(デミウルゴス)の使いっ走り。自分を闇の使徒とか名乗る、ネーミングセンスのないイカレた野郎。
そいつはすぐさまぱちりと指を鳴らし、あっという間にできるのはゾンビの軍勢。アタシ一人になんとも豪勢なこった。たまにはメシで豪勢なもんが食いたい。
これまで何度も似たような奴を穴だらけにしてきちゃいたが、足手まといがいると面倒だ。
どうしたもんかと考えてたら―――
異変が起きた。
いきなり視界に薄暗いもやのようなものが集まりだし、一点に収束、人の形を形作る。
現れやがったのは造物主(デミウルゴス)の使いっ走り。自分を闇の使徒とか名乗る、ネーミングセンスのないイカレた野郎。
そいつはすぐさまぱちりと指を鳴らし、あっという間にできるのはゾンビの軍勢。アタシ一人になんとも豪勢なこった。たまにはメシで豪勢なもんが食いたい。
これまで何度も似たような奴を穴だらけにしてきちゃいたが、足手まといがいると面倒だ。
どうしたもんかと考えてたら―――
―――そのボンクラ、何をトチ狂いやがったのかアタシをかばうように前に出た。
フレアの流れの一滴すらほとんど感じ取れない、掛け値なしの平和ボケしたボンクラ。
それ以外の何者でもないはずのそいつは、震えることなく、臆することなく、ただ、その馬鹿みたいにまっすぐな目で、敵を睨みつける。
闇色のフレアは足元から蛇のようにうねっては近くを侵食していく。
その威圧感を感じていないはずもない。それでもこっちから見えるその背中には一点の気負いすらもない。
それにちょっとだけ驚くが、飯を待ってるチビみたいに口を間抜けに空けてても意味はない。
フレアの輝きのないパンピーが、どんだけ逆立ちしようが勝てるわけがない。ダスクフレアに勝てるのはカオスフレアだけ。赤ん坊でも知ってる論理でその馬鹿を説得する。
それ以外の何者でもないはずのそいつは、震えることなく、臆することなく、ただ、その馬鹿みたいにまっすぐな目で、敵を睨みつける。
闇色のフレアは足元から蛇のようにうねっては近くを侵食していく。
その威圧感を感じていないはずもない。それでもこっちから見えるその背中には一点の気負いすらもない。
それにちょっとだけ驚くが、飯を待ってるチビみたいに口を間抜けに空けてても意味はない。
フレアの輝きのないパンピーが、どんだけ逆立ちしようが勝てるわけがない。ダスクフレアに勝てるのはカオスフレアだけ。赤ん坊でも知ってる論理でその馬鹿を説得する。
なのに。そのボンクラは。
『女子供に戦わせといて後ろで震えてろってか―――死んでもごめんだ、そんなもん』
そうやって、強い言葉で否定した。
だから、そういうことじゃないんだっての馬鹿。いい加減理解しろ。
そもそもお前の言ってることはアタシへの侮辱だ。女は戦うなってか。子供は戦うなってか。理由持って戦場(ここ)にいるんだ、何の力もないボンクラこそすっこんでろ。
それだけのことを言ってやったのに。
そいつはこっちの言うことなんか無視して一つだけ聞いた。
だから、そういうことじゃないんだっての馬鹿。いい加減理解しろ。
そもそもお前の言ってることはアタシへの侮辱だ。女は戦うなってか。子供は戦うなってか。理由持って戦場(ここ)にいるんだ、何の力もないボンクラこそすっこんでろ。
それだけのことを言ってやったのに。
そいつはこっちの言うことなんか無視して一つだけ聞いた。
『なぁ、イリア。あいつらって殺しても後腐れねぇ相手か?』
『あぁっ!? 頭でもおかしくなったかよこの○○っ! あれが真っ当なサラリー稼いでる連中に見えんのかっ!?
ありゃあどこぞの根性悪の神サンの下僕だよっ、ついでにいうなら取り巻きは全員アンデット! お前みたいなボンクラに相手できる連中じゃねぇんだ、そこをどけっ!』
『あぁっ!? 頭でもおかしくなったかよこの○○っ! あれが真っ当なサラリー稼いでる連中に見えんのかっ!?
ありゃあどこぞの根性悪の神サンの下僕だよっ、ついでにいうなら取り巻きは全員アンデット! お前みたいなボンクラに相手できる連中じゃねぇんだ、そこをどけっ!』
アタシの剣幕なんかどこ吹く風。
そいつが少しだけ笑うのが、見えてるのが背中だけなのにわかった気がした。
あぁ、と本当に安堵したような声と共に、そいつはゾンビの群れに向けて駆け出した。
クソッタレ、と悪態。見慣れてるからってスプラッタが趣味なわけじゃない。すぐさまベレッタの引き金を引こうとして―――思わず動きを止めた。
そいつが少しだけ笑うのが、見えてるのが背中だけなのにわかった気がした。
あぁ、と本当に安堵したような声と共に、そいつはゾンビの群れに向けて駆け出した。
クソッタレ、と悪態。見慣れてるからってスプラッタが趣味なわけじゃない。すぐさまベレッタの引き金を引こうとして―――思わず動きを止めた。
そいつは、何もないところからすさまじいフレアを吹き上げる剣を執り、一瞬の迷いもためらいもなく一閃。
その一薙ぎは、剣で斬られたゾンビのみならず、近くにあるその仲間たちすらも剣圧だけでぶっ飛ばしていた。
赤い宝玉からはフレアがかつて見たことがないほどにあふれ出している。
なのに少しもそいつ自身のフレア減った様子はない。尽きの見えない底知らず。その言葉しか当てはまらない。
欠片もフレアが見当たらなかったそいつからは、太陽みたいにフレアがこんこんと湧き出ては風を揺らして周りにその存在を主張しているように見える。
肌がぴりぴりするくらいの剣気を吐き出し、そいつは―――
その一薙ぎは、剣で斬られたゾンビのみならず、近くにあるその仲間たちすらも剣圧だけでぶっ飛ばしていた。
赤い宝玉からはフレアがかつて見たことがないほどにあふれ出している。
なのに少しもそいつ自身のフレア減った様子はない。尽きの見えない底知らず。その言葉しか当てはまらない。
欠片もフレアが見当たらなかったそいつからは、太陽みたいにフレアがこんこんと湧き出ては風を揺らして周りにその存在を主張しているように見える。
肌がぴりぴりするくらいの剣気を吐き出し、そいつは―――
―――こっちを振り向くと、イタズラで人をハメたのを喜んでるガキみたいな顔で、にやりと笑った。
『つまり―――手加減しなくていいってこったよな』
援護頼んだ、とだけ小さく呟いて。
そいつは本当に風みたいに走り出す。
何度も何度も押し寄せる波みたいなゾンビの群れに気後れなんざ一つも見せず、ただ一本の剣を手に。
そいつは本当に風みたいに走り出す。
何度も何度も押し寄せる波みたいなゾンビの群れに気後れなんざ一つも見せず、ただ一本の剣を手に。
なんて出来の悪いフェアリーテイル。
笑えてきてしょうがない。何から何まで外れすぎてる。そもそも 童謡(おこさまむけ)は趣味じゃない……嫌いでも、ないけどさ。
まぁいい。せっかく援護を任されたんだ。どの道こいつらは倒さなきゃならない。思う存分弾をばら撒き、蹂躙圧壊粉砕する、戦争屋(ようへい)の戦いを見せてやる。
まぁいい。せっかく援護を任されたんだ。どの道こいつらは倒さなきゃならない。思う存分弾をばら撒き、蹂躙圧壊粉砕する、戦争屋(ようへい)の戦いを見せてやる。
なんなんだ、こいつは。
なんなんだ、こいつはっ。
なんなんだ、こいつはっ!
楽しくて愉快で心の底から今すぐ笑い出してしまいそう。
そりゃあこっちも援護はしている。だけどやっぱり異常だ。
相手は波。幾度も幾度も押しつぶそうと包囲し攻め立てる軍勢。それに立ち向かうのはたった一人の剣士。馬鹿馬鹿しすぎて話にもならないはずの攻防。
いくらでもこの場から黄泉還りを生み出せるはずの相手と、その群れを相手に。
なんなんだ、こいつはっ。
なんなんだ、こいつはっ!
楽しくて愉快で心の底から今すぐ笑い出してしまいそう。
そりゃあこっちも援護はしている。だけどやっぱり異常だ。
相手は波。幾度も幾度も押しつぶそうと包囲し攻め立てる軍勢。それに立ち向かうのはたった一人の剣士。馬鹿馬鹿しすぎて話にもならないはずの攻防。
いくらでもこの場から黄泉還りを生み出せるはずの相手と、その群れを相手に。
たった一人の、少し前までボンクラだったはずのそいつは、一歩も引くことなく―――それどころかほんの少しずつ相手の力を削りながら前に進みつつ戦っていた。
これまで覚醒したてのフォーリナーは何度か見てきている。
その上で言おう。こいつは目覚めたてなんかじゃない。
その上で言おう。こいつは目覚めたてなんかじゃない。
度胸の据わり方、冷徹なまでの戦術判断、太刀筋の見事さ、よどみのない動き。そのどれをとっても、弧界の超一流の戦士に並びうる。
アムルタートなんぞに目をつけられた日には、大変なことになるだろうことは間違いない。
目覚めたてのフォーリナーは、そもそも平和ボケしている。魂の形であるマーキュリーあってこそのその異能であり、戦うための技術など持ち合わせていないのがほとんど。
しかしこいつは違った。
確かにその身に戦う技術がついている。それも人間相手でなく、化け物を想定している技術だ。
フォーリナーは争いのない世界から来ているからこそ平和ボケしている。化け物相手に戦う技術なんぞ必要ない。
アムルタートなんぞに目をつけられた日には、大変なことになるだろうことは間違いない。
目覚めたてのフォーリナーは、そもそも平和ボケしている。魂の形であるマーキュリーあってこそのその異能であり、戦うための技術など持ち合わせていないのがほとんど。
しかしこいつは違った。
確かにその身に戦う技術がついている。それも人間相手でなく、化け物を想定している技術だ。
フォーリナーは争いのない世界から来ているからこそ平和ボケしている。化け物相手に戦う技術なんぞ必要ない。
だからこそ、疑問が重なる。
なんなんだ、こいつは。
幾度目もの問いも、どちらかというと爽快なまでのアドレナリンの分泌が押し流し、それを現状の把握が強制的に終了させる。
ンなことは後で聞けばいい。ともかくもこの馬鹿みたいな場をさっさと終わらせるべきだ。でないと落ち着いて話もできやしない。
そう思うと同時、ドレスの中からごそりと大きな―――アタシの身長よりも長いミサイルランチャーを取り出す。
どうやってしまってんのかって? んなもんミステルにでも聞いてみてくれ。
担ぎ(ゲット)、構え(セット)、撃発(ファイア)。
一切の逡巡も遠慮も会釈もなしに引き金を引く。狙いは今剣ぶん回してる馬鹿。
なんなんだ、こいつは。
幾度目もの問いも、どちらかというと爽快なまでのアドレナリンの分泌が押し流し、それを現状の把握が強制的に終了させる。
ンなことは後で聞けばいい。ともかくもこの馬鹿みたいな場をさっさと終わらせるべきだ。でないと落ち着いて話もできやしない。
そう思うと同時、ドレスの中からごそりと大きな―――アタシの身長よりも長いミサイルランチャーを取り出す。
どうやってしまってんのかって? んなもんミステルにでも聞いてみてくれ。
担ぎ(ゲット)、構え(セット)、撃発(ファイア)。
一切の逡巡も遠慮も会釈もなしに引き金を引く。狙いは今剣ぶん回してる馬鹿。
―――ぶっ飛びやがれ馬鹿野郎。
***
重心の移動は滑らかに。一度の攻撃で最大の効果を狙う。
袈裟から横薙ぎ。軸足を中心に相手の攻撃を半身になっていなし、お返しに三連。
一度魔剣を振るたびに細切れになって吹き飛ぶ亡者。歯ごたえがないっちゃないが、そう贅沢も言ってられない。
今必要なのはなにより速さ。ゾンビ共は増え続けるんだ、増えるよりも速く蹴散らせなけりゃ数は減らない。
一応対策も一個心当たりがあるといやあるが、どっちにしろ今の状況じゃ無理だ。
たぶんやらせてくれる隙(じかん)はないし、それ以上にそのちょっとした隙にイリアの方にいかれると厄介。地道に片付け続けるしかない。
袈裟から横薙ぎ。軸足を中心に相手の攻撃を半身になっていなし、お返しに三連。
一度魔剣を振るたびに細切れになって吹き飛ぶ亡者。歯ごたえがないっちゃないが、そう贅沢も言ってられない。
今必要なのはなにより速さ。ゾンビ共は増え続けるんだ、増えるよりも速く蹴散らせなけりゃ数は減らない。
一応対策も一個心当たりがあるといやあるが、どっちにしろ今の状況じゃ無理だ。
たぶんやらせてくれる隙(じかん)はないし、それ以上にそのちょっとした隙にイリアの方にいかれると厄介。地道に片付け続けるしかない。
だっつーのに。
「Yes. Yes! Yes!!! Yeeeeaaaaahhhhaaaaa!!!!!」
……なんでこのお姫さんはノリノリで乱射してんだ。これがこの世界のスタンダードな姫さんなのか、どんな世界だよオリジン。
旅暮らしをはじめて、しばらく経ったある日。
なんかよくわからん結界に覆われた遺跡の調査を行う調査団の護衛を依頼され、それを承諾。
遺跡の最深部についたその時、よくあることだがエミュレイターの襲撃。よくあることだがサクッと片づける。そこまではいつものことだった。
何をしたのがまずかったのかは今でもわからんが、遺跡の奥に眠ってた古代の転移装置とやらが起動。またも異世界に飛ばされた。
なんかよくわからん結界に覆われた遺跡の調査を行う調査団の護衛を依頼され、それを承諾。
遺跡の最深部についたその時、よくあることだがエミュレイターの襲撃。よくあることだがサクッと片づける。そこまではいつものことだった。
何をしたのがまずかったのかは今でもわからんが、遺跡の奥に眠ってた古代の転移装置とやらが起動。またも異世界に飛ばされた。
これで何回目だ。行った世界だけ数えても、もうじき両手の指が足りなくなるんじゃねぇのか。
グチを言ってもはじまらない。とりあえずは現状を把握するために近くにいた第一異世界人に話を聞こうとして、会ったのがイリアだった。
どこかスレた、けどどこかこれまで会ったことのある貴種の威厳みたいなもんが残ってる、頭に王冠のっけたチビ。
それが第一印象。
話聞いてるだけなのにガンベルトからベレッタ抜き打ちで人の足元に乱射したり、人のことをボンクラ呼ばわりするこのクソガキは、けれど立派に傭兵だった。
どこかスレた、けどどこかこれまで会ったことのある貴種の威厳みたいなもんが残ってる、頭に王冠のっけたチビ。
それが第一印象。
話聞いてるだけなのにガンベルトからベレッタ抜き打ちで人の足元に乱射したり、人のことをボンクラ呼ばわりするこのクソガキは、けれど立派に傭兵だった。
剣を振りぬく。
波はまだ終わらない。前方から進もうとする道をふさぐように来るゾンビの群れ。前方180°全部がそれだと、そろそろ面倒になってくる。
真横のゾンビが腕を振りかぶる。
知覚はできている。対応できなくはないが、それで攻め手が一歩遅れるのはもったいない。
ただでさえこの瞬間も増え続けてるのに、そんなことに時間を割くのは刹那の時であっても勘弁願いたい。
波はまだ終わらない。前方から進もうとする道をふさぐように来るゾンビの群れ。前方180°全部がそれだと、そろそろ面倒になってくる。
真横のゾンビが腕を振りかぶる。
知覚はできている。対応できなくはないが、それで攻め手が一歩遅れるのはもったいない。
ただでさえこの瞬間も増え続けてるのに、そんなことに時間を割くのは刹那の時であっても勘弁願いたい。
―――だから、任せた。
軽い破裂音。後ろから飛んできた弾丸が俺を数瞬後にとらえただろう腕を関節から根こそぎ吹っ飛ばす。
破裂音から推測する口径からいくと、そんな破壊力があるとは到底思えない。だけどこれが、あいつの言うカオスフレアとやらの力なんだろう。たぶん。
イリアの援護で生まれた数瞬は、刹那の後には腕をなくしたゾンビごと周囲の群れを薙ぎとばす状況につながった。
破裂音から推測する口径からいくと、そんな破壊力があるとは到底思えない。だけどこれが、あいつの言うカオスフレアとやらの力なんだろう。たぶん。
イリアの援護で生まれた数瞬は、刹那の後には腕をなくしたゾンビごと周囲の群れを薙ぎとばす状況につながった。
吹き飛ばす。巻き上げる。薙ぎ散らす。消しつぶす。
ギアを変える。剣速が上がる。いい援護があればそりゃあやる気も増す。
なんの根拠もないが、イリアとの相性はなぜか抜群。荒っぽい支援系能力者にはいくつも心あたりがあるから逆にそっちの方がいいのかもしれない。
声の一つもかけず、目線を合わせることもなく、こっちのやってほしいことを適格に掴んでやってくれる。
会って半日程度なのに、なんでこんなにやるべきことが見えるのか不思議でしょうがないが……そんなことは今は割とどうでもいい。
ギアを変える。剣速が上がる。いい援護があればそりゃあやる気も増す。
なんの根拠もないが、イリアとの相性はなぜか抜群。荒っぽい支援系能力者にはいくつも心あたりがあるから逆にそっちの方がいいのかもしれない。
声の一つもかけず、目線を合わせることもなく、こっちのやってほしいことを適格に掴んでやってくれる。
会って半日程度なのに、なんでこんなにやるべきことが見えるのか不思議でしょうがないが……そんなことは今は割とどうでもいい。
大事なのは目の前の戦況と現状。
プラーナの流れからして、おそらくはゾンビの壁の後ろにいる奴をぶっ倒さないことには状況の収拾ははかれない。
時間をかければゾンビの群れを全部片付けてからなんか黒い影みたいなのを背負った奴を斬ることもできるんだろうが、
時は金なり、できるだけ浪費はしたくない。状況の把握のためにファー・ジ・アースに連絡もつけたいし。
さてとどうしたもんかと考えていると。
プラーナの流れからして、おそらくはゾンビの壁の後ろにいる奴をぶっ倒さないことには状況の収拾ははかれない。
時間をかければゾンビの群れを全部片付けてからなんか黒い影みたいなのを背負った奴を斬ることもできるんだろうが、
時は金なり、できるだけ浪費はしたくない。状況の把握のためにファー・ジ・アースに連絡もつけたいし。
さてとどうしたもんかと考えていると。
背後からちりつくものを感じた。さっきの榴弾なんぞよりももっと大きな殺意と悪寒。
イリアの考えになるほど、とどこか冷静に納得しながら、あわてて魔剣に自分の生命力を吸わせ、思い切り地面に叩きつけ―――その反動と同時プラーナ開放、全力で跳ぶ。
イリアの考えになるほど、とどこか冷静に納得しながら、あわてて魔剣に自分の生命力を吸わせ、思い切り地面に叩きつけ―――その反動と同時プラーナ開放、全力で跳ぶ。
次の瞬間。
ゾンビの壁の尖端に打ち込まれたミサイルランチャーが、轟音と共に炎と破壊と黒煙をまき散らし、大気を膨らませて壁と成して。
跳んだ俺をさらに上へと突き上げた。
跳んだ俺をさらに上へと突き上げた。
***
イリアの狙いすまして放たれたロケットランチャーは、着弾寸前柊が上に跳ぶことでかわし、ゾンビの群れに突っ込んだ。
焼ける。焦げる。溶ける。融ける。
死者の埋葬にしてヒトをモノに変える浄化儀式より端を発する火葬。
しかし、忌むべき人を殺すためだけに作られた兵器によりもたらされるそれは、人の尊厳など無視した殺戮儀式にして―――
―――業火のように罪を焼き流す、戦地における洗礼のようでもあった。
最も凄惨で残酷な、焼き殺すという殺戮のあり方。けれどそれへの感傷すら、死人には不要と言わんばかりに撒き散らされた破壊。
近辺にいたゾンビたちはあまりの火力に焼き尽くされ、ついで起こる爆風によってごうごうと吹き飛ばされる。
ただの兵器による一撃は、実に今立つ半数の亡者どもを薙ぎ散らしたのだ。
焼ける。焦げる。溶ける。融ける。
死者の埋葬にしてヒトをモノに変える浄化儀式より端を発する火葬。
しかし、忌むべき人を殺すためだけに作られた兵器によりもたらされるそれは、人の尊厳など無視した殺戮儀式にして―――
―――業火のように罪を焼き流す、戦地における洗礼のようでもあった。
最も凄惨で残酷な、焼き殺すという殺戮のあり方。けれどそれへの感傷すら、死人には不要と言わんばかりに撒き散らされた破壊。
近辺にいたゾンビたちはあまりの火力に焼き尽くされ、ついで起こる爆風によってごうごうと吹き飛ばされる。
ただの兵器による一撃は、実に今立つ半数の亡者どもを薙ぎ散らしたのだ。
しかし、それでも半分。
半分しか消せなかったという事実に―――イリアと柊は、ひどくよく似た猛獣のような笑みを浮かべた。
イリアの視線はすでにゾンビの群れにはない。ただただ、翼も空舞う力も持たぬ、ただの剣士を目に映す。
爆風にあおられ上空高く持ち上げられた柊は、体勢を整え、ゾンビの向こうに一人立つ、黒い闇を吹き上げる闇の使徒をその瞳で捉えた。
イリアが拳を軽く握り、親指でを下を指して軽く空を突く。
半分しか消せなかったという事実に―――イリアと柊は、ひどくよく似た猛獣のような笑みを浮かべた。
イリアの視線はすでにゾンビの群れにはない。ただただ、翼も空舞う力も持たぬ、ただの剣士を目に映す。
爆風にあおられ上空高く持ち上げられた柊は、体勢を整え、ゾンビの向こうに一人立つ、黒い闇を吹き上げる闇の使徒をその瞳で捉えた。
イリアが拳を軽く握り、親指でを下を指して軽く空を突く。
「―――Yes. crazy blade's comet!!!!」
落ちろ、という仕草。
それが示されるよりも早く、柊は月衣を展開、虚空を踏みしめ、プラーナ解放、蹴り離す。
大気が引き裂かれる悲鳴のような音。先のロケットランチャーの炸裂とほぼ同程度の轟音。
プラーナを吹き上げながら、加速を加えて落下運動へ。真昼に現れた彗星。青い輝きを纏い風を従えるほうき星。
それが示されるよりも早く、柊は月衣を展開、虚空を踏みしめ、プラーナ解放、蹴り離す。
大気が引き裂かれる悲鳴のような音。先のロケットランチャーの炸裂とほぼ同程度の轟音。
プラーナを吹き上げながら、加速を加えて落下運動へ。真昼に現れた彗星。青い輝きを纏い風を従えるほうき星。
かなり高い位置からの重力加速にプラーナ強化、その二つの強化を受けた魔剣が、轟音に継ぐ爆音を起こしながら闇色の人影をなんの抵抗もなく真っ二つに断ち切る。
着地。
悲鳴をあげる地面。体へのダメージを月衣でキャンセル。
着地。
悲鳴をあげる地面。体へのダメージを月衣でキャンセル。
闇色の人影は、何が起きたのかも理解できぬまま真っ二つに断たれてゆっくりと崩れ落ち―――その寸前、体の内より吹き上げた闇が体をつなぐ。
目はすでに瞳はなく、ただの闇がこごる。その闇の使徒にとりつくは造物主。
いかな刃でも、神を一撃で果てさせるなど不可能と知れ、と言わんばかりに、今完全に硬直した柊に向けて、神罰を下すために命を刈り取る刃を鎌と変えて振り下ろす。
目はすでに瞳はなく、ただの闇がこごる。その闇の使徒にとりつくは造物主。
いかな刃でも、神を一撃で果てさせるなど不可能と知れ、と言わんばかりに、今完全に硬直した柊に向けて、神罰を下すために命を刈り取る刃を鎌と変えて振り下ろす。
柊はそれにもほんの少しだけ目を見開いただけ。すぐさま魔剣を握りなおし、吼える。
「上っ等だ、ヤロウ―――<魔器解放>っ!」
赤い宝玉が輝く。同時に横から薙ぎにはしる。
神だ? 造物主だ? だからどうした。あいにくと、その手の類は斬り慣れている。
知れ、異界の神よ。
聞け、見も知らぬ主よ。
神だ? 造物主だ? だからどうした。あいにくと、その手の類は斬り慣れている。
知れ、異界の神よ。
聞け、見も知らぬ主よ。
これが。我らこそが。かつて絶望のふちに立つ神を殺し、人を呑もうとした神の化身を斬り、滅びの宿命をことごとく―――斬り殺してきた神殺しだ―――っ!
柊と闇の使徒の攻撃はほぼ同時。
このままならば確実に相打ちに終わる。
このままならば確実に相打ちに終わる。
―――もしも、一人で彼が戦っているのだとすれば。
数発の炸裂音。
音とともに加速する赤い宝玉の魔剣。
音とともに砕かれる闇色の刃の神鎌。
音とともに加速する赤い宝玉の魔剣。
音とともに砕かれる闇色の刃の神鎌。
イリアの二挺ベレッタが、狙いたがわず柊の魔剣を撃ちぬき加速。同時に神の鎌を打ち砕く。
加速に加速を重ねた魔剣は、真っ二つに敵を斬り裂き、断ち割り―――そして。後には何も残らなかった。
加速に加速を重ねた魔剣は、真っ二つに敵を斬り裂き、断ち割り―――そして。後には何も残らなかった。
***
ゾンビの血の池、屍の山。
その中を疲れたように魔剣を担いでイリアのところに戻る柊。
イリアはと言えば、睨みつけるような視線で口元は笑み。
その中を疲れたように魔剣を担いでイリアのところに戻る柊。
イリアはと言えば、睨みつけるような視線で口元は笑み。
「お疲れさん。助かったぜ、イリア」
「ハン。ただのボンクラかと思えば、どうしてどうして。あんな造物主の使いなんぞよりも、アタシにはお前の方がバケモンに見えたよ」
「ぬかせ乱射魔(トリガーハッピー)。てゆーかどうやってあんな物騒なもんドレスの中に仕込んでんだ」
「知りたきゃミステルにでも聞いてみろ。あれいっつも納めてんのはあいつだからな」
「ハン。ただのボンクラかと思えば、どうしてどうして。あんな造物主の使いなんぞよりも、アタシにはお前の方がバケモンに見えたよ」
「ぬかせ乱射魔(トリガーハッピー)。てゆーかどうやってあんな物騒なもんドレスの中に仕込んでんだ」
「知りたきゃミステルにでも聞いてみろ。あれいっつも納めてんのはあいつだからな」
言って、イリアはん、と左手を高く掲げる。
柊は一瞬何をしているのかわからなかったものの、すぐに得心いったように不敵に笑うと、自分の左手をその高さに合わせ―――
柊は一瞬何をしているのかわからなかったものの、すぐに得心いったように不敵に笑うと、自分の左手をその高さに合わせ―――
―――高く高く、乾いた音が響いた。
これが、後にオリジンに降りかかる大きな災禍(うんめい)を斬り裂き打ち抜く者たちの最初の戦闘記録となるのだが―――この時はまだ、誰も知らない。
fin
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