X【しょうたいふめい】 ◆SXmcM2fBg6
それは
佐倉杏子に擬態したXが、詳細名簿に記された
脳噛ネウロの開始位置へと向かっていた時のことだった。
唐突に割と近くにあった民家から、二つの人影が飛び出し、空を飛んでいったのだ。
Xはそれを一目見て、飛んで行った二人が
アストレアと同じ存在であることに気付いた。
「あれは……あの時の彼女の仲間かな? どうしたんだろう。かなり慌ててたみたいだけど」
既に二つの人影は遠くへと飛び去り、Xの人間離れした視力でも視認できない。
飛んでいった方角はわかっているが、追いつくのはちょっと難しそうだ。
「ま、今はネウロのほうが大事だし、放っておこうかな。けど―――」
呟きながら向けた視線の先には、先程二人が飛び出した民家がある。
ネウロだって既に移動しているはずだ。開始位置に向かったからといってネウロに会えるとは限らない。
それに二人を追いかけるのは手間だが、彼女たちが居た民家を調べるだけならすぐに済むだろう。
そう考え、僅かに進行方向を変えて民家へと向かった。そして。
「―――なにか、あったのかな?」
壁に開いた大穴と、台風の直撃にでも遭ったかのような部屋の惨状に首を傾げる。
血痕が飛び散っているわけでもなく、戦闘があった形跡もない。
ならば彼女たちは、一体どうしてこの家を飛び出したのか。仲間割れでもしたのか?
――とそこまで考えて、すぐに考える必要がないことに思い至る。
Xの目的はあくまでも『自分の正体』を知ることであり、そのための重要な要素がネウロだ。
現状において他はすべてオマケに過ぎず、ネウロに関することに比べたら些細だ。
そう結論して民家を後にしようとした時、ふと家具とは違う、黄色い長物が目に入った。
「これは……槍? 彼女たちが落として行ったのかな?」
長さは一.五メートル程で、キングラウザーと同様、相当な業物だと推定できる。
これ程の名槍を放置して行ったということは、彼女たちは相当に慌てていたのだろう。
「まぁ何にしても、貰える物は貰っておくけどね」
彼女たちが戻ってきてもいいように置いておく理由はないし、武器はあるに越した事はない。
それに佐倉杏子の真似をするのであれば、槍は持っておいたほうが良いだろう。
槍がなくとも大体の模倣はできるが、やはりあったほうが再現率が違う。
「さて、早くネウロの開始位置に行こうか」
ブン、と槍を一振りして取り回しを確認し、デイバックに収める。
一先ず向かう場所は一番ネウロの開始位置に近い施設、【F-4】北部にある芦河ショウイチ家だ。
それを地図で確認して、Xは壁に開いた大穴から民家を後にした。
―――直後。前方――つまり南の方角で、ミサイルを数十発撃ち込んだかのような大爆発が起きた。
「……………………。
……うわぁ、何あれ。ミサイルでも支給されていたのかな?」
距離を目算した限り、あの爆発はおそらく公園付近で起きたと思われる。
公園から大体二.五キロはあるこの場所で視認できる威力の爆発など、早々お目にかかれない。
一体どんな手段であれほどの破壊を引き起こしたのか、非常に気になるところだ。
「……ああ、そういえば」
あの方角は、彼女たちが飛び去って行った方角だな、と。他人事のように思い出していた。
○ ○ ○
――――あれから、どれくらいの時間が経ったのか。
熱せられた焦土が冷め始め、辺りからは白い蒸気が昇り始めている。
辺り一面には何も残っていない。周囲にあった物は全て吹き飛ぶか融解し、黒く焼け焦げていた。
その燃え朽ちた大地の中心で、少女は今だに倒れたまま、陰り始めた空を見つめていた。
茜色に染まっていた空は暗さを増していき、もうじき日が暮れそうだった。
だがそんな空の変化に、少女は何の関心も浮かべなかった。……そんな余裕など、一欠けらも残っていなかった。
少女の体に傷のないところはなく、果ては右腕を失ってさえいた。可能であるならば、一刻も早い治療が必要な状況だ。
だというのに、少女はピクリとも動かず遠い空を眺めていた。
今少女の心に浮かんでいるのは、たった一つの疑問だけ。
“どうして……?”
それだけが、少女の内にある全てだった。
こうなる要素は、何もなかったはず。誰も何も、間違えてなかったはず。そのはずなのに、どうして? と。
『偽物』と彼女は言った。
それが正しいか間違いかは重要ではない。問題なのは、彼女がそう思ったということだけだ。
彼女は少女を『偽物』であると思い、拒絶した。目の前の少女ではなく、自身の思い出だけを信じた。
……そうして、少女が縋る様に伸ばした手は、無残にも撃ち砕かれた。
そのことが、全身の傷以上に少女から立ち上がる力を奪っていた。
“どうして……”
少女に疑問を齎した者は、すでに飛び去っている。
少女の疑問に答えられる者は、この場のどこにもいない。
“どうして……”
その疑問だけが、少女の心を埋め尽くしていく。
だから少女を動かしたのは、少女の疑問とは全く関係のない理由だった。
「おいアンタ、こんなところで何やってんだ?」
不意に投げかけられた声に、
ニンフは反射的に跳ね起きて即座に距離をとる。
直後、全身に奔った激痛に堪らず両膝を突いた。
「あ、おい、大丈夫か?」
そう言って声をかけてきたのは、長い赤毛をポニーテールに纏めた中学生ぐらいの少女だった。
彼女は心配そうに声をかけてくるが、ニンフは思わず悪態をついてしまう。
「アンタはこれが、大丈夫に見えるの?」
「いや、全然」
「っ…………」
だが少女は気にした様子もなく、それどころかふざけた様に応えてきた。
その応答に思わず苛立ちを覚えたが、同時に周り見るだけの余裕も少しだけ出てきた。
その点だけは、一応お礼を言ってもいいかもしれない。
「システム確認……オールレッド。
システム損傷89%……
ステルスウィング半壊……
右腕部全壊、修復は困難……
自己修復プログラム……はどうにか無事か」
自身の状態を確認し、その酷さに溜息をつく。
はっきり言って、いつ動作不良を起こしても不思議ではない状態だ。
もっとも、アポロンの直撃を受けて機能しているほうが遥かに不思議なのだが。
「なぁ。さっきから何ぶつぶつ言ってるんだ?」
「……アンタには関係ない事よ。少し黙っててくれない」
言いながらも周囲に散らばっていたセルメダルを回収し、自己修復プログラムを起動させる。
……だが全く追いついていない。右腕はともかく、それ以外の修復が完了するまでだいぶ時間がかかりそうだった。
そのことに再び溜息をつきながらも周囲を見渡せば、辺り一面酷い惨状だった。
どこを見ても何も残っていない。この場で生きて動いている自分たちのほうが、むしろ場違いに感じるほどに。
だが、ニンフはこの光景に強い疑念を感じていた。「この程度で済むはずがない」と。
イカロスのアポロンは国一つを吹っ飛ばすような、文字通りの最終兵器だ。その破壊力はそう簡単に加減できるものではない。
イージスを使って封殺したのならともかく、そうでなければ、この会場自体が吹き飛んでいてもおかしくはないのだ。
だがこうして被害が出ている以上、イージスによる封殺は行われていないはずなのだ。
しかしそれでは、この周囲に広がる惨状と矛盾してしまう。
“アポロンの破壊力が制限されている? どうやって。
真木清人はそんなことを可能とする技術を持っているの?
それともまさか、シナプスそのものが真木清人に協力している?”
頭の中で考えられる可能性を列挙していくが、答えは出ない。
判断材料がない以上、考えても仕方がないと、首を振って思考を止める。
そして今は目の前のことに集中するべきだと、先ほどからこちらを注視している少女へと向き直った。
「で、アンタは何者?」
「あたしか? あたしは佐倉杏子だ。よろしくな」
「そう、キョーコね。私はニンフよ。
それで、キョーコは何のためにここに来たの?」
「いや、デッカイ爆発があったからさ、一体何があったのかなって気になって来てみたんだ。
そしたらこんなところでアンタが倒れてたんで、声をかけてみたってわけ」
「ふうん。なら、無駄足を踏ませたかしら。アンタが“どっち側”にしても、今の私に関わって得はないし」
ニンフはそう自棄気味に言い捨てる。
今の自分は右腕を失っているし、セルメダルも残り少ない。
杏子が殺し合いに乗っていないのなら、今の自分はお荷物にしかならない。
逆に乗っていたとしても、わざわざここまで殺しに来る価値はほとんどない。
もっとも、散らばっていたメダルを回収せずにわざわざ声をかけてきたことから、殺し合いに乗っている可能性は低いと思うが。
「いや、そうでもないよ」
「? キョーコ?」
「なんでもねぇよ」
杏子の呟きに違和感を覚え聞き返すが、杏子はそう言ってはぐらかした。
彼女の声色が一瞬変わった気がしたのだが、気のせいだったのだろうか。
「それよりさ、ここで一体何があったんだ?」
「そ、それは………」
その問いかけに、ニンフは思わず口ごもる。
杏子が現れたことで多少周囲を見る余裕ができたとはいえ、イカロスが何故攻撃してきたのか、という疑問はまだ解消されていない。
お互いの記憶の祖語から『偽物』と判断されたのはわかる。
だが、ただそれだけの理由で釈明の余地すらなく攻撃されたという事実が、ニンフの心を苛んでいた。
自分はそんなにも、信用できない存在だったのか。と。
“アルファー……どうして……”
どうして、ほんの少しでも信じてくれなかったのか。
ほんの少しでも言葉を交わせば、誤解は解けたかもしれなかったのに。
「まぁ言いたくないんなら、無理に言わなくてもいいからな」
「えっと、その……ごめんなさい」
「別に謝んなくていいよ。けどさ、アンタはこれからどうするんだ?」
「これから……か」
感情だけで言うのなら、今すぐ智樹に会いたい。けど彼がどこにいるのか全く判らない今、それはただの希望論だ。
イカロスを探してもう一度説得しようにも、今の彼女が話を聞いてくれるとも思えない。
なら自分にできることは、どこか安全な場所で体を修復することだけだ。
そしてそうと決まれば、なるべく早くここから離れた方がいいだろう。
アポロンによる大爆発で、この場所は人目を引いているだろう。
杏子のように誰かがやって来る可能性は高いし、その人物が危険人物である可能性だってある。
今の自分に戦闘行動を行えるほどの力はないし、ズタズタの翼では逃げることも覚束ない。
たまたま真っ先にやってきた杏子が、落ち着いて会話できるような人物だったから良かったものの、そうでなければ今頃どうなっていたことか。
“………あれ? ちょっと待って”
今の自分の思考に、何か重大な間違いを犯したかのような悪寒が走った。
その理由を探るために、改めて順序立てながら思考する。
自分は片腕を失った重症であり、誰かと戦える状態ではない。
現在この場所はアポロンによる大爆発で、危険人物がやってくる可能性がある。
最初に現れたのが冷静な対応のできる杏子でなければ、自分はすでに死んでいたかもしれない。
“………うそ。まさか――――!”
…………だが少し、彼女は冷静過ぎなのではないか?
自分は今片腕を失った状態なのだ。エンジェロイドであるからこそまだ平然としていられるが、ただの人間ならば命に関わっている。
そして自身がエンジェロイドであることを、杏子に教えた覚えはない。なのに彼女は自分を見つめているだけで、何の治療も施そうとしてこない。
――――まるでこちらの行動を観察しているかのように。
そうして、悪寒の正体に思い至る。
一般的な人間ならば、重傷を負った人物がいれば治療をしようとするか、少なくとも安静を勧めるはずだ。
対して杏子の今の行動は、ニンフが“人間でない”ことを知っていなければおかしいものである。ということに。
「…………ねぇ、キョーコ?」
その事実を確かめるように。否定するように。
ニンフは恐る恐る、背後にいる杏子へと振り返る。
「―――残念。気づかなければ、もう少し生きていられたのにね」
そうして見えた光景は、いつの間にか取り出した大剣を振り被りながら、歪な笑みを浮かべる少女の姿だった。
――――次の瞬間。
ニンフの視界は、一面の赤色に塗り潰された。
○ ○ ○
鏑木・T・虎徹は、己をヒーローであると自認している。
長年ヒーローとして戦ってきたし、ヒーローとしての誇りもある。
それだけに彼は多くの犯罪者を見てきた。だから多少なら犯罪者の心理の機微がわかる。
そんな彼でも、“彼女”はあまりにも異質で、あまりにも理解不能だった。
佐倉杏子が黄金の大剣を振り上げ、ニンフの視界が赤く塗り潰される。
完全な不意打ち。電子戦用であるニンフには、重症である体も相まって回避することはできない。
元々壊れかけだったこの体は、この一撃で以って完全に破壊されるのだと理解した。
事実、強い衝撃を感じた後、地面を転がり視界がぐるぐると回った。
「…………え?」
だというのに、いつまでたっても痛みはなく、終わりは来ない。
視界は既に赤く塗り潰されている。なのに意識の断絶は訪れない。
その理由は、視線を巡らせればすぐに判明した。
今にも壊れそうな鎧のような物を着た男が、庇うようにニンフを抱きしめ、その鎧を己の血で赤く染めていた。
それにより自身の視界を赤く染めたのは、自分のではなくその男の血なのだと理解した。
それと同時に男は立ち上がり、ジッと杏子の方を見つめる。
「アンタは……?」
その声に反応し、男はニンフをようやく離す。そして彼女の方に向き直ってサムズアップした。
「安心しろ。このワイルドタイガーが来たからには、もう大丈夫だ」
その名乗りでニンフはようやく、男が真木清人に無謀なケンカを売っていたヒーローだと思い出した。
それは、本当にギリギリのタイミングだった。
焦土となった公園にライドベンダーで乗り入り、そうしてすぐに見えた二つの人影。
こんなところで何しているのかと思い、近づいて声をかけようとした。その時だった。
一方の人影がデイバックから何かを取り出した。
取り出された何かは夕日を反射し、一際強く煌めく。その輝きで、取り出された物が凶器であると理解した。
虎撤はすぐにアクセルを全開にし、二つの人影へと加速した。
凶器を取り出した人影は、もう一方の人影が振り返るのに合わせて凶器を振り上げる。
そして振り返りきったところで、人影はもう一方の人影へと凶器を振り下ろした。
その瞬間虎撤は、全速力を出すライドベンダーを足場に、もう一方の人影へと抱きついて庇った。
「グッ、ツゥ………ッ!」
まず背中に奔る焼けるような痛みを、歯を食い縛って耐える。
次に腕の中の少女の温もりに、彼女が無事であるとわかって安堵する。
最後に拳銃程度なら弾き返す強度を持つ斎藤さん謹製ヒーロースーツが、こうも容易く切り裂かれたことに驚く。
そうして地面を転がってその場から離れ、すぐに立ち上がって腕の中の少女を殺そうとした人物の正体を確かめ、その姿にさらなる驚愕を味わう。
まだ中学生ぐらいの赤毛の髪をした少女だ。そんな子供が躊躇いなく人を殺そうとした事実に、怒りよりまず悲しみが先立った。
「アンタは……?」
「安心しろ。このワイルドタイガーが来たからには、もう大丈夫だ」
警戒を緩めずに赤毛の少女から視線を切り、腕に庇った少女を離しながらそう名乗る。
名乗りながら少女の姿を見て、思わず目を見開いた。
少女に羽が生えていたから、というのもあるだろう。だがそれ以上に、その傷だらけの体に目を奪われた。
片腕を失うという、普通なら今すぐに病院に行くべきな重傷。それでも少女は、痛みを訴えることなく虎撤を見上げている。
「くっ…………」
命だけは助けられた。だがこんな重傷を負う前に助けられないで、果たして間に合ったと言えるのか。
そんな自分に対する怒りを込めて、改めて赤毛の少女を睨みつける。
「おいテメェ。こんな小さい女の子にこんな大けがを負わせるたぁどういうつもりだ!
事と次第によっちゃあテメェみたいなガキでも容赦しねぇぞ!」
「おいおい心外だぜ。そいつの怪我はあたしがやったんじゃねぇよ」
「はぁ!? ふざけたこと言ってんじゃ――――」
「ほんとよ。これはキョーコがやったんじゃないわ」
「へ? マジ?」
重傷を負った少女自身からの否定に面を食らう。
ならば誰がやったのか。という疑問が残るが、それは一先ず後回しにする。
「け、けどテメェがこの子を殺そうとしてたことには変わりねぇ!
だから改めてもう一度聞くぞ! テメェ一体どういうつもりだ! テメェも殺し合いに乗ってんのか!?」
「どうも何も、あたしは別に殺し合いになんか興味はないよ」
「ふざけんなよ! じゃあなんでその子を殺そうとしてんだよ!」
「その答えは簡単。“そいつがあたしに警戒心を持っちまったから”。そんだけさ。
観察する側としては、檻もないのに警戒心を持たれるのは面倒なんだ。ちょっとしたことで逃げられるかもしれないし。
で、それなら手っ取り早く“中身”を見せてもらおうと思ってね」
「観察に……中身だァ? そりゃどういう意味だ」
その言葉に少女は僅かに悩んだ後、まぁ別にいいか、と呟いて虎撤へと向き直った。
……その顔の半分を、全く別の人物の物に変貌させて……変貌させ続けて。
「“俺”はね、自分の『正体』がわからないんだ。
自己観察をしようにも体の細胞が変異し続けていて、しばらくすれば全く別の物に替わってしまう。
だから“俺”は、自分の『正体』を他人に求めることにしたんだ。
まぁ簡単な比較検証だね。自分と他人の違うところを探そうって感じ。
で、なんでその子を殺そうとしたかっていうと、体の“中身”を見るには“開く”のが一番手っ取り早いだろ? まぁそういうこと」
少女の……いや、“少女のようなモノ”のその答えに、虎撤は言葉を失った。
じぶんの『正体』を知りたい。だから他人の“中身”を観察している。そう少女は言った。
つまり少女自身に殺意はなく、中身を見る過程で死んでいるだけだと言っているのだ。
………まるでカエルの解剖。少女にとって他人とは、その程度の意味しかないらしい。
「まぁ最近じゃ俺の『正体』は、人間以外の怪物なんじゃないかって考えてるんだ。
だから、そういう意味ではその子は実に興味深くて、観察し甲斐がありそうだけど」
「ッ………………!」
その言葉に虎撤は怒りに歯を食いしばる。
目の前の少女は人を人とも思っていない、真木清人と同じ正真正銘のゲス野郎だ。
ならば躊躇う必要はない。遠慮なくぶん殴ってふん縛ればいい!
「……ああ、認めてやるよ。確かにテメェはバケモンだ。
けどバケモンだって言うんなら……退治されても文句ねぇよなぁッ!」
一息に少女へと距離を詰め、力の限りに拳を振り抜く。
少女はその一撃をあっさりと躱し、距離を取って黄金の大剣を構える。
「いいぜ。出来るもんなら……だけどな!」
そうしていつの間にか元に戻った顔に、実に楽しそうな笑顔を張り付けそう言った。
虎撤は拳を構え、ふう、と一つ深呼吸をする。
ハンドレットパワーはまだ使えない? だからなんだ。
背中の傷が激しく痛む? それがどうした。
目前には人殺しをなんとも思わない犯罪者。背後には守るべき力なき少女。
躊躇う理由がどこにある。戦う理由はここにある。さあ―――
「―――ワイルドに吠えるぜッ!」
その決め台詞と共に、虎撤――ワイルドタイガーは“犯罪者”へと挑んでいった。
○ ○ ○
硬いスーツに覆われた拳を一回、二回、三回と振りまわす。
華奢な少女であれば悶絶では済まない程度に力を込めた一撃は、しかし。
「っだぁあッ! ぜんぜん当たんねぇ……ッ!」
佐倉杏子へと擬態した怪盗Xには掠りもせずに避けられていた。
「なんだ? その程度なのか? そんなんじゃあたしを倒すには程遠いぜ?」
「チィ……ッ、コンチクショウ……ッ!」
タイガーの左のストレート、と見せかけての右のハイキックを、Xはスウェーバックで容易く躱す。
そして逆に後ろ回し蹴りを、タイガーの頭へと叩き込む。
ハイキックを避けられたタイガーは回避も出来ずにあっさりと蹴り飛ばされ、地面を転がる。
「んだッ! なんつぅ力してんだよ! 見た目はガキだっつのに……!」
蹴られた衝撃に揺れる視界を、頭を振って戻し、拳を構えてXを睨みつける。
闘いが始まってからずっと、タイガーの攻撃は一撃もXに掠りすらしていなかった。
どれだけ素早く動いても、フェイントを織り交ぜても、直感に任せても、Xは全てを見てから回避しているのだ。
加えてXは、まだ一度もキングラウザーを使っていない。Xの攻撃は全て素手、それもカウンターで行われているのだ。
ずっとヒーローとして戦ってきたタイガーを越える反射神経。それを前に、能力の使えないタイガーは全くの無力だった。
「くそ……それに、こっちも少しヤベェ……」
イカロスの攻撃によってダメージのあった体に、先ほどニンフを庇ってできた傷が響いている。
端的に言ってしまえば、出血が止まらないのだ。
それも当然。ロクな手当もせずに動きまわれば、傷は塞がるどころか広がる一方だ。
「どうする……どうすればアイツをぶん殴れる……」
出血量こそまだ大したことはないが、それでもこのまま血を流し続けるのは非常にまずい。
だが攻撃が当たらなければ、どうすることもできない。
……一撃だ。一撃さえ全力でぶん殴れれば、それでどうにかなるはずだ。
ならば。
「どうにかするしか、ねぇよな……ッ!」
傍目には闇雲な突撃。事実、その通りの特攻を、タイガーは再び敢行する。
考えたところでいい案は思い浮かばない。ならば、今できることをやるしかないのだ。
「ウオリャアァ―――ッ!」
「……………………はぁ」
そんなタイガーの悪足掻きを、Xは早くも飽き始めていた。
あの異常な状況にあった場所で、敵の親玉である真木清人に啖呵を切ったタイガーだ。
何かしらの自信に足る力があるのではないかと考えていたのだが、タイガーは一向にそれを見せない。
使えないのか、使わないのか、初めから存在しないのか。そのどれかは知らないが、Xにとっては実に期待ハズレな展開だった。
「あのさぁ……さっきからバカみたいに突っ込んできてるけど、なんか意味あんのか、それ?」
「うっせェ! 意味なんか決まってんだろ! テメェをぶん殴るためだよ!」
「あっそ…………」
無駄に熱いタイガーのセリフを一言で流し、どうしようかと考える。
もう少し様子を見るか。それともさっさと“箱”にするか。
ちらりと横目でニンフを探せば、何を考えているのか今も逃げずにそこにいる。
なら、彼女が逃げたらタイガーを“箱”にしようと決定する。
「よそ見してんじゃねぇ!」
「おおっと」
タイガーのスライディングによる足払いを、咄嗟にジャンプして避ける。
さすがにヒーローを名乗るだけのことはある。ほんの僅かな隙も見逃さない。
もっとも、その隙を突けるかは別問題だけど。とそこまで思ったところで、
「そこだぁ!」
タイガーのスーツの左腕部の装甲が開き、スプレーガンのようなギミックが飛び出してきた。
スプレーガンはXが地面に着地するより速く稼働し、その銃口からワイヤーが射出される。
空中にいるXにそれを避ける方法はなく、ワイヤーはXの胴体に巻き付く。
「!」
タイガーは力の限りワイヤーを引っ張り、Xを目前へと引きずり出す。
そこへ渾身の力を込めた拳を、一切の加減無くXの胴体へと叩き込んだ。
Xは咄嗟に腕左腕でガードするが、そんな守りで止まるほどタイガーの拳は優しくない。
「これで、どうだァッ!」
「、ガッ…………ァッ!」
肉を打ち、骨を砕く嫌な感触がタイガーの拳に伝わる。
だがそれに動揺することなく、タイガーは最後まで拳を振り抜く。
手応えは十分。Xの左腕はもちろん、アバラまで砕いた会心の一撃だ。
Xはセルメダルを撒き散らしながら容易く吹っ飛び、焦げ付いた大地へと叩き付けられる。
少しやり過ぎたかと僅かに心配したが、躊躇していればこっちがやられていたのは間違いない。
とりあえず生きていれば良しとしようとタイガーは結論する。
だがその心配は、怪盗Xに対してはあまりにも無意味だった。
「さすがヒーロー。ホントに隙を逃さねぇな」
「ッ――――!」
地面に倒れ伏していたXは、感嘆の声と共にひょいっと立ち上がる。
間違いなくアバラまで砕けていた。たとえ痛みに強くても、すぐには立ち上がれないはずだった。
だがあっさりと立ち上がったXの異常さに、タイガーだけでなく背後で見ていたニンフも息をのむ。
「おいおい……そんなにあっさりと立ち上がるか、普通?」
「だからさっきも言っただろ? 『俺』は普通じゃないってさ」
折れ曲がっていたXの左腕が一瞬異様な動きを見せる。
そして次の瞬間にはもう、ちゃんとした左腕の形になっていた。
この分では、アバラの方も同様に治っているだろう。
「マジかよ……」
「姿を変える時の応用でね。多少の怪我なら簡単に直せるんだ」
Xのその言葉に、タイガーは戦慄と共に息を飲む。
命が心配になった一撃でもあっさりと治ったのだ。ならばXを止めるには、殺すしかないのではないか?
そんな不安が脳裏を過ったからだ。
そしてそれ以上に、“次はXの本気が来る”。そう確信したからだ。
「それじゃあ、ちょっと本気でいくぜ!」
その予想は正しく、Xは一瞬でタイガーの傍へと接近し、キングラウザーを振り抜く。
タイガーはそれを辛うじて避けるが、Xの攻撃はそれだけでは終わらない。
「ウオアッ! チョッ! コノッ! ダアッ!」
「そらそら、もっとうまく避けないと死んじまうぜ?」
タイガーは間断なく振われるキングラウザーを紙一重で避けていく。
既に一度斬られているから解るが、Xの持つキングラウザーの切れ味は折り紙つきだ。
銃弾さえも弾くヒーロースーツを容易く切り裂くのだから、受け止めるなどという選択肢は浮かぶわけがない。
攻撃を防げない以上、避けるしかない。だがそれでは反撃が出来ない。
反撃が出来ない以上、Xの攻撃は止まることなく、タイガーは徐々に追い詰められていく。
そして、
「ダッ!? ヤベッ……!」
不意に地面の窪みに足を取られ、尻餅を突く。
あまりにも致命的なミス。取り返しの付かない大失敗。
その絶対的な隙をXが見逃すはずもなく、
「アンタの“中身”、見せてもらうよ―――!」
振り上げられるキングラウザー。それを持つ右腕が膨張し、ヒトのカタチを見失う。
人間の理を超えた怪力で振るわれる大剣を、タイガーは防ぐ術を持っていない。
タイガーが避ける間もなく、Xはその人外の怪力を以って必殺の一撃を振り下ろし―――
「“超々超音波振動子(パラダイス=ソング)”――――ッッ!!!」
「――――――――!」
横合いから襲い来た音の衝撃波にあっけなく吹き飛ばされ、セルメダルを撒き散らした。
そしてグシャリ、とタイガーの一撃を受けた時よりも全身を砕かれながら、またも地面に打ち付けられる。
「ハッ。私のことを忘れてんじゃないわよ……」
ニンフが嘲笑するように呟く。
彼女がこれまで逃げなかったのは、この隙を待っていたからだった。
タイガーではXに勝てないことも、逃げたところですぐに追いつかれることも、ニンフは理解していた。
故にニンフは、生き延びるためにXを倒すという選択肢を選んだのだ。
「ははは、すごいなぁ。そんなこともできるんだ……」
だが、Xはなお健在。不気味に体を蠢かせ、砕けた骨を補修していく。
それを見たタイガーは、即座にXの取り落としたキングラウザーを回収し、ニンフの元へと駆け寄る。
「ったく……マジでキミ悪ィぜ」
「まさしく、化け物ね……」
二人は体の至る所を血で滲ませながら、再び立ち上がったXを見てそう感想を漏らす。
こちらは重傷二人。相手の生命力は測定不能。そんな状況でどうやって生き延びたものかと必死に考えを巡らせていると、
「うん。今回はもういいや」
Xはそう言って、二人にあっさりと背を向けた。
「そりゃどういう意味だ……」
「そのまんま。今回はこれ以上戦わないってこと」
「んだと―――ッ!」
「このまま遣り合ってもいいんだけど、残念ながら先約があるんだ。
だからこれ以上ダメージを蓄積させるのはあんまりね」
「テメェ! 待ちやがれッ………、ッ!」
Xは振り返ることなく、デイバックから一台のバイクを取り出した。
それを見たタイガーは咄嗟に止めようとするが、貧血にふら付き膝を突く。
その間にXはバイクのエンジンをかけ、アクセルを吹かす。
「それじゃあまたね。次に会ったときは、ちゃんと“中身”を見せてもらうから」
そうしてXはバイクを発進させ、どこかへと去って行った。
タイガーはXを逃したことに悔しそうな表情をするが、とりあえずの命の危機が去ったことを理解して、ニンフは一先ず安心した。
○ ○ ○
Xがバイクで走り去った後、ニンフと虎撤の二人は散らばっていたメダルを回収し、焦土となった公園を北上したところにある民家に移動していた。
二人はそこで、傷の手当てを行いつつ自己紹介と情報交換を行った。
そして。
「チクショウッ! なんでだよ……どうしてそうなっちまうんだよ……!」
あの少女の名前がイカロスであること。公園を焦土に変えたのが彼女であること。
その理由が、自らの記憶と食い違う『偽物(ニンフ)』を排除するためであることを知り、あまりの悔しさに声を荒げた。
人を傷つけるような命令を下したマスターが偽物であると、そう思ってくれたまでは良かった。
だがどうして、自分の記憶と食い違うもの全てを『偽物』と決めつけて、あまつさえ排除しようとなど思ったのか。
「それじゃあ結局、偽物のマスターの命令に従ってんのと同じじゃねぇかよ………」
あまりの無力感に、虎撤は歯を食い縛って項垂れる。
あの時、初めてイカロスと会ったときにきちんと話を聞いてやって、ちゃんと説得していればこんな事にはならなかったかもしれないのに。
そうすればニンフがこんな大怪我を負うことも、イカロスがあんな考えを持つこともなかったはずなのに。
そんな自責の念が、後から後から湧いてくる。
暁美ほむら達のこともそうだ。
誰かを殺すのを認めるつもりは絶対にない。これは絶対に譲れない彼の“正義”だ。
だが彼女と対立してしまった結果、彼女達は金髪の少女に支給品を奪われ、そして仲間らしき人物とともに逃げられた。
暁美ほむらにも、誰かを切り捨てる決断を下せるほどの、いわば“覚悟”のような物を持った理由があったはずなのだ。
そしてそんな悲壮な“覚悟”の理由が、他人が簡単に触れていいようなものではないと、どうしてすぐに思い至らなかったのか。
「チクショウ……!」
その答えは簡単だ。
鏑木虎徹が――ワイルドタイガーが、相手のことを考えずに己の“正義”を振りまわしたからだ。
名前も知らない少年の時も。イカロスの時も。暁美ほむらの時も。
そのどれもが“正義”を掲げて行動していながら、結局は誰も救えていない。
―――ヒーロー失格。
そんな言葉が、脳裏を過ぎる。それを否定することもできない。
なぜなら今のワイルドタイガーをヒーロー失格だと思っているのは、他ならぬ鏑木虎撤自身だからだ。
「俺は……俺は………ッ!」
強い自己嫌悪に、虎撤は歯を食いしばって項垂れることしかできない。
自分が“正義”を掲げて行動すれば、また誰かが悲しむ結果になるのではないか。
そんな考えが、虎撤から立ち上がる意思を奪っていたのだ。
「ああもう……うじうじうじうじ鬱陶しい!」
そんな虎撤に苛立ったニンフが声を荒げて立ち上がる。
「アンタがなに悩んでんのかはなんとなく予想付くけどね、だからって何もしなかったら結局は一緒でしょうが!」
「で、でもよ……」
「うるさい! だったら私はどうなのよ!
仲間だと思っていたアルファーにいきなり『偽物』呼ばわりされて攻撃されて、辛うじて生き残ったと思ったらあんな化け物みたいなヤツに襲われて!
それを助けてくれたのがアンタでしょうが!」
「―――――――――!」
ニンフの言葉に、虎撤は頬を叩かれた様に顔を上げる。
虎撤を睨むその表情には、怒りの感情が目に見えて浮かんでいた。
彼女は怒りの収まらぬ様子で虎撤へと捲し立て続ける。
「アンタはアンタの信念で私を助けようとしたんじゃないの!? それとも何? 私を助けたのは同情から?
ふざけないでよ! 同情なんかで助けに来られても迷惑だわ! それくらいだったら打算で助けてくれた方がまだましよ!
で、どうなのよ! アンタは何で私を助けたの!? 同情!? それとも打算!?」
「………んなもん決まってんだろ。俺が………ヒーローだからだ!」
虎撤はそう高らかに宣言して立ち上がる。
あれだけ重く感じた脚は、今すぐにも駈け出せそうなほど軽かった。
ああ、そうだった。一度や二度の失敗でへこたれるようじゃ、ヒーローなんかやっていけない。
その事を、ニンフのおかげで思い出すことができた。
「ありがとうな。励ましてくれてよ」
「うっさい! そんなんじゃないわよ!
アンタにまで落ち込まれたら、私がどうすればいいのかわかんないだけよ………」
感謝の言葉と共にニンフの頭を撫でるが、すぐに払い除けられる。
そのままニンフは、先ほどとは打って変わって意気消沈した様子で俯いた。
そうだ。まだイカロスとニンフの問題が解決したわけではない。
先ほどの激昂は、彼女の精一杯の空元気だったのだ。
「そんじゃあ気合も入れてもらったことだし、とっとと行くか」
「行くって、どこに?」
「シュテルンビルトだ。俺のスーツも大分壊れちまったからな。あそこになら予備があるはずだ」
沈んだ空気を吹き飛ばすように声を上げる。
ニンフに励ましてもらったのだから、今度は自分が励ます番だと気合を入れる。
イカロスの行き先はわからない。公園を焦土に変えたのは彼女なのだから近くにいるかもしれないが、会ったところでどう説得すればいいのかわからない。
だからまずは自分を万全の状態に整える。こんなボロボロのままでは後が持たないのはわかりきっているからだ。
「まあ、そういうことならわかったわ。だったら早く行きましょう。
放送が近いけど、運転中に始まったら私が聞いて纏めておくから」
「おう、任せた」
そう言って出て行ったニンフに続き、世話になった民家を後にする。
そしてライドベンダーに、ニンフを抱える様に二人乗りし、エンジンを掛ける。
なぜ抱え込む形なのかというと、片腕を失ったニンフでは虎撤にしっかりとしがみ付けないからだ。
そうしてライドベンダーを走らせながら、虎撤はある考えに思い至っていた。
バーナビーと
牧瀬紅莉栖。そのどっちを信じるのかという問題。虎撤はこれに「どちらも信じる」という答えを出した。
その理由は、ニンフとの話し合いで出た『偽物』という言葉がきっかけだ。
そう。メッセージを残した牧瀬紅莉栖と、殺し合いに乗ったというバーナビー。そのどちらかが偽物であれば、なにも矛盾はない。
ヒーローにだって折り紙サイクロンのように他人に化ける能力を持つ奴がいるのだ。
ならばこの殺し合いにだって、似たような能力を持つ奴がいてもおかしくはないはずだ。
“そうだろ? バニー”
内心で己の信じる相棒へと声を掛け、ハンドルを一層強く握る。
たとえ何があっても、バーナビーを信じる。そう強く決意して。
一方のニンフも、夕闇の空を見上げながら物思いに耽っていた。
イカロスへと伸ばした右腕は、彼女に拒絶されて失われてしまった。
自己修復プログラムは最大限に働かせているが、当分は直りそうにない。
もう彼女と手を繋ぐことは出来ないのかと、そう思って、少しだけ悲しくなった。
“ねぇ、アルファー……。ここの空は……狭いわね………”
まるでシナプスのようだ、と。
触れそうなほどに近い空を見上げてそう思った。
【一日目-夕方】
【D-4/エリア北東】
【鏑木・T・虎徹@TIGER&BUNNY】
【所属】黄
【状態】ダメージ(中)、背中に切傷(応急処置済み)、精神疲労(中)、軽い自己嫌悪、NEXT能力使用不可(残り約30分)
【首輪】110枚:0枚
【装備】ワイルドタイガー専用ヒーロースーツ(頭部亀裂、胸部陥没、背部切断、各部破損)、重醒剣キングラウザー@仮面ライダーディケイド、不明支給品1~3
【道具】基本支給品、タカカンドロイド@仮面ライダーOOO、フロッグポッド@仮面ライダーW
【思考・状況】
基本:真木清人とその仲間を捕まえ、このゲームを終わらせる。
1.シュテルンビルトに向かい、スーツを交換する。
2.イカロスを探し出して説得したいが………
3.他のヒーローを探す。
4.ジェイクとマスターの偽物と金髪の女(セシリア)と赤毛の少女(X)を警戒する。
5.バニーも牧瀬紅莉栖も信じる。フロッグポッドのメッセージはどっちかが偽物。
【備考】
※本編第17話終了後からの参戦です。
※NEXT能力の減退が始まっています。具体的な能力持続時間は後の書き手さんにお任せします。
※「仮面ライダーW」「そらのおとしもの」の参加者に関する情報を得ました。
※フロッグポットには、以下のメッセージが録音されています。
・『牧瀬紅莉栖です。聞いてください。
……
バーナビー・ブルックスJr.は殺し合いに乗っています!今の彼はもうヒーローじゃない!』
【ニンフ@そらのおとしもの】
【所属】青
【状態】ダメージ(大:回復中)、全身に火傷や裂傷多数(全て応急処置済み)、右腕喪失、羽は半壊、絶望
【首輪】80枚(消費中):0枚
【装備】なし
【道具】なし
【思考・状況】
基本:知り合いと共にこのゲームから脱出する。
0.ここの空は、狭いわね……
1.タイガーと一緒にシュテルンビルトに向かう。
2.知り合いと合流(
桜井智樹優先)。智樹に会いたい。
3.トモキの偽物(?)、
カオス、裸の男(ジェイク)、佐倉杏子(X)を警戒。
4.アルファー…………
【備考】
※参加時期は31話終了直後です。
※広域レーダーなどは、首輪か会場によるジャミングで精度が大きく落ちています。
※“フェイリスから”、電王の世界及びディケイドの簡単な情報を得ました。
このためイマジンおよび電王の能力、ディケイドについてをほぼ理解していません。
○ ○ ○
「さて、ネウロはどっちにいるかな?」
またがったバイク――ブルースペイダーを停車して、Xは地図を見ながら呟いた。
東に行けば、ネウロのスタートポイント。西に行けば、魔界探偵事務所。
どっちにもネウロがいる可能性がある以上、すぐには決めかねる。
ただ、悩んでいても始まらないので、コアメダルを一枚取り出して、コイントスで決める。
そうして出た面は、赤い鷹の模様の表。それに納得し、決めていた方向へとブルースペイダーを向ける。
「それにしても、やっぱりあの剣を取られちゃったのは痛かったなぁ。
けどまぁ、ネウロと会う前に体力を無駄にしたくないしね。さっき手に入れた槍で我慢しよう」
キングラウザーを持って行かれたのは、正直に言って惜しい。
だがキングラウザーを取られた状態で戦っても、無駄に体力を消費するだけだろう。
それに彼等との戦いでついた傷は意外に深く、すぐには癒えそうにない。
なら、今はこのまま移動して、ネウロを探すほうが賢明だろう。
………そう結論して、アクセルを回そうとした時だった。
「ん? なんだろう、今の感じ……」
不意に左腕に、強い違和感を覚えた。
何事かと確認してみるが、どう見てもいつも通りの左腕だ。
また細胞の変異でも始まったのだろうか。そう思ってみるも、疑問は拭えない。
「………まぁ今はネウロのことを優先しよう」
考えても答えは出ないので、疑問は一先ず棚上げにしておく。
自分の体がおかしいのはいつものことだ。気にしたって始まらないだろう。
そう結論し、Xは再び歩き始めた。どんな宝よりも求める、己の正体を目指して。
………だがそれで、本当によかったのだろうか。
Xの首輪には、“もう一人の
アンク”の意思を宿したコアメダルが格納されている。
そして首輪には、コアメダルとの融合を促す機能がある。
彼のオリジナルともいえる“欠けたアンク”は、右腕だけになっても復活するようなグリードだ。
そんな彼から分かたれた“もう一人のアンク”が、同じことを出来ないとどうして言えるだろう。
……答えは出ない。……確証はない。……保証もない。真実は、“その時”にならないと明かされない………。
欲望の雛鳥は静かに、目覚めの時をただ待ち続ける――――
【一日目-夕方】
【F-3/電王の世界・外縁】
【X@魔人探偵脳噛ネウロ】
【所属】緑
【状態】ダメージ(中:回復中)、疲労(中)、佐倉杏子の姿に変身中
【首輪】210枚(消費中):250枚
【コア】タカ(感情L):1、コンドル:1
【装備】ゲイ・ボウ@Fate/zero、佐倉杏子の衣服、ベレッタ(10/15)@まどか☆マギカ
【道具】基本支給品一式×4、詳細名簿@オリジナル、{“箱”の部品×28、ナイフ}@魔人探偵脳噛ネウロ、{アゾット剣、キャレコ(0/50)}@Fate/Zero、9mmパラベラム弾×50発/1箱)、ベレッタの予備マガジン(15/15)@まどか☆マギカ、T2ゾーンメモリ@仮面ライダーW、ライダーベルト@仮面ライダーディケイド、ランダム支給品2~7(X+一夏+杏子:全て確認済み)
【思考・状況】
基本:自分の正体が知りたい。
1.ネウロの元へ向かう。
2.下記(思考3)レベルの参加者を殺すために、もっと強力な武器を探す。
3.
バーサーカーや
セイバー、エンジェロイド達(カオスを除く:ニンフ以外、全員名前は知らない)にとても興味がある。
4.ISとその製作者、及び魔法少女にちょっと興味。
5.
阿万音鈴羽(苗字は知らない)にもちょっと興味はあるが優先順位は低め。
6.殺し合いそのものには興味は無い。
【備考】
※本編22話後より参加。
※能力の制限に気付きました。
※傷の回復にもセルメダルが消費されます。
※Xの変身は、ISの使用者識別機能をギリギリごまかせます。
※タカ(感情L)のコアメダルが、Xに何かしらの影響を与えている可能性があります。
【ブルースペイダー@仮面ライダーディケイド】
Xに支給。
仮面ライダーブレイド専用のライダーマシン。
前部にモビルラウザーというカードリーダーがあり、ラウズカードをラウズする事でカードの効果を発動させる事が可能。
最終更新:2013年01月29日 21:16