燃ゆる剣―少女と姉と ◆2kaleidoSM
二人の姿が見えなくなった後、
バーサーカーは地面に膝を着いた。
長期間水中に沈められていたこと、そして
セイバーとクウガとの戦闘による消耗。
逃走するだけの力は残していたものの、ここにきて限界がきてしまった。
意識を朦朧とさせる中、バーサーカーは己の中の欲望を爆発的に満たしつつあった。
セイバー―――アルトリア・ペンドラゴン。
かの王に会えたという歓喜が、心の中を埋め尽くしていたのだから。
だが、まだ足りない。
もっと戦いたい。そして、かの王に己の罪状を責められたい。
そして、己の罪を己自身で許したい。
そのために。
だが、今だけは休息を欲する肉体を押さえられなかった。
いかにセイバーに対する執着が、欲望が強くとも、己の体自体が求める生理的な欲には打ち勝てない。理性を捨て去っていればなおさらだった。
「A…t…ur……」
それでもその睡魔に抗い、前に進もうとしながらも。
バーサーカーはその意識を体の欲するままに、暗い闇に沈め、倒れた。
【C-3 市街地 夜】
【バーサーカー@Fate/zero】
【所属】赤
【状態】疲労(大)、胸部にダメージ(大)、狂化、激しい憤怒、上半身の鎧破損 、気絶中
【首輪】100枚:0枚
【装備】王の財宝@Fate/zero
【道具】アロンダイト@Fate/zero(封印中)
【思考・状況】
基本:???????????????????!!
0.令呪による命令「教会を出て参加者を殺してまわる」を実行中。
1.意識無し
2.目覚め次第セイバーを追う。
【備考】
※参加者を無差別に襲撃します。
但し、セイバーを発見すると攻撃対象をセイバーに切り替えます。
※ヴィマーナ(王の財宝)が大破しました。
※バーサーカーが次に何処へ向かうかは後続に任せます。
◇
バーサーカーが逃走していく姿を見送ったユウスケとセイバー。
駆けていく方向は南。セイバーとしては教会から引き離すことには成功したといえるだろう。
無論、その先にいる人間が襲われてもいいということにはならず、何よりその真名を知ってしまった今、追いたいという思いはセイバーの中には大きい。
当然ユウスケとしても放置しておくわけにはいかないと考えている。
しかしセイバーには鈴羽が、ユウスケにはセシリアと千冬という気がかりな存在がいた。
彼らを放置してバーサーカーを追うということもまた、二人にはできなかった。
「救援、感謝します」
「気にするなって。それより、大丈夫か?ちょっと顔色悪いみたいだけど」
「…いえ、大丈夫です」
無論、それ以上にバーサーカー――ランスロットのあの有様はセイバーに少なくない精神的ダメージを与えていた。
それでも持ち直すことができたのは、ユウスケの存在がセイバーの状況対応力をどうにか引き出させたにすぎない。
(ランスロット…)
それでも、その正体を知ってしまった今、いずれまた彼と合間見えなければいけない。
その時までに、バーサーカーとなってしまった彼の前に立つことができるのか。その覚悟を、決めておかなければならないだろう。
そう心の中で考えるセイバーを見つめるユウスケは、その姿にここに来たばかりの時に士に襲われた後の自分を見たような気がした。
「そういえば、本当なのか?切嗣さんが大怪我負って目を覚まさないっていうのは」
「ええ、しかしメダルさえあれば、傷を回復させることは可能でしょう」
「ああ、あの鞘みたいな、宝具ってやつか。あれ俺達に支給されてたやつだったんだ」
「ではあなたは切嗣の命の恩人ということになるのですね。ありがとうございます」
「いいってそんなこと。それより千冬さんとセシリアちゃんと合流して早く教会へ――――」
と、その時だった。
――――ドォォォォン
「?!何だ!」
ここよりも東に位置する市街地辺り。
そこから、何かが爆発するかのような音が響いてきたのは。
「あそこは…、まさか千冬さん、セシリアちゃん!?」
【B-3 森林部西端 夜】
【セイバー@Fate/zero】
【所属】無
【状態】疲労(大)、今後の未来への大きな不安、精神的疲労
【首輪】20枚:0枚
【コア】ライオン×1(一定時間使用不能)
【装備】折れた戟(ゲートオブバビロン内の宝具の一つ)@Fate/zero
【道具】基本支給品一式、スパイダーショック@仮面ライダーW
【思考・状況】
基本:殺し合いの打破し、騎士として力無き者を保護する。
1.ランスロット…
2.鈴羽達の元に戻りたいが、ランスロットも気がかり
3.悪人と出会えば斬り伏せ、味方と出会えば保護する。
4.
衛宮切嗣、バーサーカー、ラウラ、緑色の怪人(サイクロンドーパント)を警戒。
5.ラウラと再び戦う事があれば、全力で相手をする。
【備考】
※ACT12以降からの参加です。
※アヴァロンの真名解放ができるかは不明です。
※鈴羽からタイムマシンについての大まかな概要を聞きました。深く理解はしていませんが、切嗣が自分の知る切嗣でない可能性には気付いています。
※バーサーカーの素顔は見ていませんが、鎧姿とアロンダイトからほぼ真名を確信しています。
【
小野寺ユウスケ@仮面ライダーディケイド】
【所属】赤
【状態】疲労(中)、胸部に軽い裂傷
【首輪】30枚:0枚
【コア】クワガタ:1 (一定時間使用不能)
【装備】なし
【道具】なし
【思考・状況】
基本:みんなの笑顔を守るために、真木を倒す。
1.千冬さん、セシリアちゃん?!
2.千冬さん、セシリアちゃん、セイバーさんと一緒に行動。二人と合流後は教会に向かいたい。
3.千冬さんとみんなを守る。仮面ライダークウガとして戦う。
4.
井坂深紅郎、士、
織斑一夏の偽物を警戒。
5.“赤の金のクウガ”の力を会得したい。
6.士とは戦いたくない。しかし最悪の場合は士とも戦うしかない。
7.千冬さんは、どこか姐さんと似ている……?
【備考】
※九つの世界を巡った後からの参戦です。
※ライジングフォームに覚醒しました。変身可能時間は約30秒です。
しかし千冬から聞かされたのみで、ユウスケ自身には覚醒した自覚がありません。
◇
時間はユウスケがバーサーカーからの逃走劇を始めたばかりのころまで遡る。
バーサーカーを引き受けて去っていったユウスケを追って、千冬はセシリアを乗せたダブルチェイサーを走らせていた。
ドラゴンフォームの脚力に加え、バイクでは追うことにできないルートを駆けていったユウスケ。
いくらバイクとて追うことなどできない。
追いつく頃には戦いが終わっていることを願って、千冬はバイクを飛ばしていた。
焦りからか、セシリアに話しかけることはできなかったため、移動中は物思いにふけるかのように無口であった。
そして、無口なのはセシリアとて同じ。しかしその心中は大きく異なっていた。
もしやるのであれば今がチャンス。
千冬を殺すことさえできればいい。ユウスケと合流しても誰かに襲撃を受けたと言えば、あのお人よしは信じるだろう。
問題は、彼女を殺すことができるのかどうかだった。
彼女は強い。もしブルー・ティアーズが万全であったとしてもいけるかどうかは分からない。
もし殺すのであれば、不意打ちが最も効果的だろう。
少なくとも彼女は自分のことを疑っている様子はないのだから。
それだけだろうか。
もしかすると、未だ彼女に手をかけることを恐れているのだろうか。
シャルロット・デュノアの時とは違う。
確かに彼女は、姉という存在から織斑一夏に最も近い女性だった。しかし、それゆえそこからさらに近くなることはない。
いつか越えなければならない壁であったとしても、恋敵ではない。
だからどうした。
彼女は己の弟の存在を無に化してなお、こうして生きようとしているのだ。
そんな彼女のことが許せるのか、許していいのか。
それでいいのか。
許さないことも、殺すことを心に決めることも簡単だが、それを実行に移すのは、相手が相手である以上どうしても難しかった。
「織斑先生、ユウスケさんとは、どのような方なんですの?」
己自身が沈黙に耐えられなかった。これ以上考えては覚悟が鈍るかもしれない。
だから、ふとそんなことを問いかけていた。
興味はなかった。しかし間を持たせるくらいは可能だろう。
「…あいつとはここにきて最初に出会った男だった。
その時、あいつは仲間に殺されかけ、気絶していたな」
千冬はぽつぽつと語り始めた。
井坂真紅郎という男とユウスケの戦い。見ているしかできなかった己の無力感。
気絶した彼を連れ、病院へ向かい―――
そこで見つけた、一夏の無惨な死体。
そのタイミングで接触を図ってきた、
ラウラ・ボーデヴィッヒに化けたグリード。
そして、失意のままに殺し合いに乗って一夏を蘇らせることを決め、その場にいた人間に、そしてユウスケに襲い掛かった。
話しづらそうに話した事実だったが、それを聞いたとき、セシリアの心にふと安心感が生まれた。
この人もまた、彼が死んでそう思える人間だったのだと。
今ならまだ引き戻せるかもしれない。一夏さんを生き返らせるために戦おうと。
しかしそう言われることはなかった。
「だがな、私は殺せなかった。誰かのために戦い、私を信じると言ったあいつに、一夏の姿を重ねてしまった」
「―――――――――――」
それから織斑先生は色々なことを言っていた気がするが、あまり覚えてはいない。
そして、次に彼女の言葉を認識したときには、あの男自身の話になっていた。
「そうそう、小野寺自身の話だったな。
あいつも私に、自分の大切な人の姿を重ねたらしくてな。最初に会った時なんて言ったと思うか?
『姐さん?』だぞ?」
「そして私は言ってやったんだ。『私はお前の姉になった覚えはない』とな。
なのに、今となってはそんなアイツに、一夏を重ねているとはな」
うるさい。黙れ。
それ以上、あの男のことを一夏さんのように語るな。
なぜそこで狂ったままでいられなかったのか。
なぜあの男を殺せなかったのか。
なぜ、あなたは彼のいない世界をこんなにも受け入れたのか。
私は、こんなに苦しんでいるのに。
憎い。憎い。憎い。
殺してやりたい。
ダメだ。今はまだまずい。
もう少しだけ耐えろ。
「…随分、親しくなられたのですね。ユウスケさんと」
「そうだな。まだ出会って一日と経っていないというのにな。
まるで――――」
「あの時のお前も、こんな気持ちだったのだろうか」
あの時。それはきっと、あの模擬戦のことを指しているのだろう。
そこに深い意味はなかったのだろう。
恋心うんぬんではなく、その人のことについて様々なことを考えるようになったきっかけという意味での例えだったのだろう。
だとしても。仮にそうだったとしても。
あの男と引き合いに出すのに、その想い出だけを持ち出すのは。
それだけは耐えられなかった。
こんな人、死んでしまえ。
OOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO
「正直な、一夏の死を放送で改めて聞いたときは不安に思ったものだったな。
一夏に恋焦がれたお前達が、変な気を起こしはしないか、と」
千冬はそう、冷静に告げる。
先ほどまでの口調と違い、どこまでも冷たい声で。
「お前を見つけた時は安心したものだ。
もし一夏の死をきっかけに狂おうとしているのであれば止められる。
生徒を殺人者にしなくても済むと、な」
セシリアは答えない。
サイドカーに乗っていたはずの彼女は、今は千冬の目の前に立っている。
そして、ダブルチェイサーは鉄くずとなって地面に転がっている。そして、千冬の左腕にはあまり軽くはない火傷があった。
「
セシリア・オルコット。一つ尋ねるぞ。
シャルロット・デュノアのラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ、何故貴様がそれを持っている!!」
もしも、この時のセシリアがその銃口をこちらに向けていなければ。
もしその銃口でダブルチェイサーを撃ち抜いていなければ。
それはシャルロット・デュノアがセシリア・オルコットに託したか、あるいは何かしらの手違いで拾ったものという推測も立ったかもしれない。
しかし今の状況では、その答えは一つしか思い浮かばなかった。
「貴様、デュノアを殺したな?」
何のことはない。この少女は一夏の死を知る前から既に狂っていたのだ。
「残念ですわ織斑先生。もしあのまま狂っていてくれたなら、一緒に生き抜くこともできたかもしれないですのに。
一夏さんのいない世界を受け入れてしまったあなたなんて、私には要りませんわ」
言うと同時、その手に構えられたアサルトライフルが発射される。
乱射される弾を、咄嗟に走って建物の陰に隠れることで避ける千冬。
と、武器を取り替えるような音が耳に届いたことに反応した千冬はさらに駆け抜ける。
先ほどまで盾にしていた建築物が一瞬で吹き飛んだ。
(ちっ、徹底的に接近させないつもりか)
いくら剣の扱いにおいてはかなりの力量をもっている千冬とて、相手が重火器を持った、それもIS装着者となっては防戦一方となる。
だからといって、このまま逃げ続けるだけではいずれ捉えられる。メダルが切れるまで持つかどうか考えてもあまりにリスクが高い。
しかし、それは自分の元にISがなければの話だ。
(……一夏)
バッグから取り出したのは、白い腕輪。
今は亡き弟が装着していた、専用のIS。
一夏専用とされたこれを私が使いこなせるかどうかは分からない。
だが、それでもやらねばならない。
(これ以上のオルコットの凶行を止めるため、力を貸してくれ――!)
と、次の瞬間、潜んでいた電柱に大量の散弾が撃ちこまれた。
「やりましたの?」
コンクリートの破片が巻き起こす砂埃を前に、なおも警戒をしながらセシリアは連装ショットガン「レイン・オブ・サタデイ」を構える。
普通の人間であれば死んでいるような攻撃だが、相手はあの
織斑千冬。油断などできない。
少しずつ収まっていく砂煙の奥。
そこに一つの影が、姿を見せる。
「やっぱり、ですのね」
不思議はない。
元々彼女が持っていることは知っていた。
そして、彼女は織斑一夏の姉であり、あの織斑千冬なのだ。扱えたとして何の問題もない。
そこにいた千冬は、生身ではない。
白い甲冑に身を包み、巨大な翼を展開したその姿は。
かつて織斑一夏の纏っていた、第4世代型IS、白式。
今のセシリアには、苛立ちの対象でしかなかった。
彼でない者がそれを纏っている事実。
その装着者が、彼のいない世界を肯定し、なのにこんなにも彼の面影を感じさせるところがなおさら。
「オルコット、お前にはきつめの教育的指導が必要なようだな」
と、雪片弐型を構える千冬。
「苛々しますわね。私の大切な思い出を穢そうと、そんなものまで持ち出して。
なら、思い出が綺麗なうちに消させてもらいますわ!!」
と、そういって空中へと飛翔するセシリア。
どこまでも接近戦をさせないつもりなのだろう。
(ユウスケ、あの時の私もあんな顔をしていたのだろうな)
ふと病院での凶行を思い出してそんなことを考えた。
(だが、私が立ち直れたのはお前のおかげだな。
オルコットにはそんなやつが誰もいなかった。なら、奴を止める役割は私が担おう――)
そう考えた千冬に向けてライフル弾が迫るのを確認した後、千冬もセシリアを追って飛翔した。
空中に二つの閃光。
想う対象は同じなれど、その道は決して交わらず。
愛に飢えし少女、前に進むことを選んだ姉。
二人の戦いが、ここに始まった。
【C-3 市街地上空 夜】
【織斑千冬@インフィニット・ストラトス】
【所属】赤
【状態】精神疲労(中)、疲労(小)、左腕に火傷、深い悲しみ
【首輪】85枚:0枚
【装備】白式@インフィニット・ストラトス
【道具】基本支給品 、シックスの剣@魔人探偵脳噛ネウロ
【思考・状況】
基本:生徒達を守り、真木に制裁する。
1.オルコットを止める。
2.鳳、ボーデヴィッヒとも合流したい。
3.一夏の……偽物?
4.井坂深紅郎、士、織斑一夏の偽物を警戒。
5.小野寺は一夏に似ている。
【備考】
※参戦時期不明
※白式のISスーツは、千冬には合っていません。
※小野寺ユウスケに、織斑一夏の面影を重ねています。
※セシリアを保護したことによりセルメダルが増加しました。
【セシリア・オルコット@インフィニット・ストラトス】
【所属】青
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、精神疲労(極大)、倫理観の麻痺、一夏への依存
【首輪】30枚:0枚
【装備】ラファール・リヴァイヴ・カスタムII@インフィニット・ストラトス、ニューナンブM60(5/5:予備弾丸17発)@現実
【道具】基本支給品×3、スタッグフォン@仮面ライダーW、ブルー・ティアーズ@インフィニット・ストラトス
【思考・状況】
基本:一夏さんへの愛を守り抜いてみせましょう。
1.ユウスケと合流するまでに千冬を殺す。ユウスケと合流後は彼を騙した後殺す。
2.一夏さんが手に入らなくても関係ありません。敵は見境なく皆殺しにしますわ!
3.一夏さんへの愛のためなら何だって出来ますの……悪く思わないでくださいまし。
4.一夏さんへの愛のために行動しますの。殺しくらいなら平気ですわっ♪
5.殺し合いに乗ったことは千冬さんにはにはばれてしまいましたが、殺してしまえば関係ありませんわよねっ♪
【備考】
※参戦時期は不明です。
※制限を理解しました。
※完全に心を病んでいます。
※一応、青陣営を優勝させるつもりです。
※ブルーティアーズの完全回復まで残り5時間。
なお、回復を待たなくても使用自体は出来ます。
※千冬を傷つけたことにより、セルメダルが若干増加しました
※ダブルチェイサーは破壊されました
※ユウスケとセイバーの元に届いた音はダブルチェイサーが爆破された音です
最終更新:2014年10月12日 10:22