ネコミミと電王と変態 ◆MiRaiTlHUI
クスクシエ。それは、この会場
マップの中心寄りに存在していた施設の一つ、ごく一般的な喫茶店だ。
何故そんな喫茶店がマップに記されているのかと疑問にも思ったが、既に無くなった施設の事などどうでもいいかとすぐに思考放棄する。
今はもう瓦礫の山となったクスクシエを眺め、
ジェイク・マルチネスはにんまりと表情を緩ませた。
「いいねぇ~、痺れるねぇ~。暫く見ねぇ内に、面白ぇ奴が出て来たじゃねぇかよぉ」
そう言って、ジェイクは鼻歌交じりに笑った。
さっき戦ったガキの能力は何だった? 一体幾つNEXT能力を使っていた?
ステルスとか云う不可視能力。虹色の羽根を展開し空を飛ぶ能力。極めつけは最後に放った謎の衝撃波。
ジェイクが見ただけでも、あのガキが使った能力は三つにも及ぶ。
能力を二つ持つ自分はまさに神に選ばれたNEXTと言えるが、奴は自分以上の三つだ。
アッバス刑務所に収容されてから随分と時間が経過したように思うが、まさかその間にあんな奴が現れているなどとは思ってもみなかった。
一人あたりの能力が二つを越え三つ以上にもなるのなら、下等な人類の存在価値はますます無くなってゆく一方ではないか。
元より人類に露程も期待していなかった彼としては、それこそまさに望んでやまぬ世界なのだが。
「いよいよ神様も人間どもを見放したってかぁ? そりゃそうだよなぁ、NEXTが居りゃあ、人間なんて必要ねぇもんなぁ~?」
大仰に両手を広げたジェイクは、真昼の空に向かって声を張り上げた。
「でもなぁ~……力の使い方を分かってないような奴ぁ、駄目だ。ありゃあ、NEXTの面汚しだよなぁ~?」
おどけた口調で、口元を尖らせて言う。
さっきのガキなんてまさにそうだ。あのガキはまるで力を使いこなせていない。
ステルス能力も、飛行能力も、あの衝撃波も。あんなガキが持ち主では、宝の持ち腐れもいい所ではないか。
もしこの後もあのガキが運良く生き残り、また出会えたなら遊んでやってもいいが、わざわざ追い掛ける気にもなれない。
それよりも、今は他にどんな参加者がこの場に連れて来られているかの方がよっぽど気になる。
現在分かっている参加者はあの三重能力のガキと、ワイルドタイガーとかいう間抜けそうなヒーローの二人。
こうなってくると、他にもNEXTは居ると考えた方が自然だろう。
つまりこのゲームは、大量のNEXT能力者によるバトルロワイアルであると推測出来る。
ならば、全てのNEXTの頂点に立つこのジェイク・マルチネスがゲームに負ける事などは許されない。
「ああ、誰がNEXTの頂点に立つ者なのか、ハッキリさせるしかねぇよなぁ」
神に選ばれた自分なら、能力を二つ持つ自分なら、それも難しい話ではあるまい。
手当たり次第に見付けたNEXTをブッ潰して行こう。
そう決めたその矢先――ジェイクの耳朶に届いたのは、ここへ接近しつつある何者かの心の声だった。
人数は四人……いや、五人だろうか。結構な大人数だ。
どんな奴が居るのかは知らないが、このジェイク様に敵はない。
その場にいる五人まとめて相手して、遊んで、そしてブッ潰してやろう。
目下の標的を定めたジェイクは、不敵に笑い歩き出した。
◆
支給された小冊子を読み終えたネコミミメイドは、溜息と共にその頁を閉じた。
太陽の真下、市街地のど真ん中。明らかにこの場に不釣り合いなフリル付きのスカートをふわりと翻し、少女は立ち上がった。
「いよいよ、畏れていた審判―ジャッジメント・グランドクロス―の刻(とき)が訪れてしまったのニャ……。
六十の魂を依り代に行われる禁断の儀式……放っておいたら、世界は再び闇の支配者の手に落ちてしまうニャ。
それを食い止める事が出来るのは、ニャンニャン星の“鍵”を受け継いだ、このフェイリスしか居ないのニャっ!」
そう。この
フェイリス・ニャンニャンだけが、唯一世界を救う事が出来る。
この身に宿った鍵を何としても守り抜き、闇の手先ドクター真木の野望を食い止めねばならない。
それこそがフェイリスに与えられた使命。それを果たし、世界を守る事がフェイリスの存在意義――!
「……なんて言ってる場合じゃないニャ」
と、厨二妄想はその辺にしておいて。
フェイリスは肩を落とし、落胆気味に項垂れた。
確かにフェイリスは厨二にありがちな超展開に憧れてはいたが、これはやり過ぎだ。
先程無慈悲にも殺されたのは、紛れも無くフェイリスの大切な親友……椎名まゆりに相違ない。
彼女だけじゃない。名簿を見た所、この場にはフェイリスの知り合いが三人も参加させられているのだ。
「ダルニャン、クーニャン、それから……凶真。みんな、大丈夫かニャ……」
胸中に思い描くのは、大切な友達の姿。
スーパーハッカーの
橋田至、天才少女の
牧瀬紅莉栖。
そして、フェイリスの危機を救ってくれた―前世で愛を誓い合った―男、
岡部倫太郎。
みんな同じ仲間、ラボメンだ。これ以上誰にも命を落として欲しくはない。
……特に、
「凶真……マユシィが死んだからって、無理しニャければいいけど……」
鳳凰院凶真こと岡部倫太郎の事が、フェイリスは最も心配だった。
凶真がまゆりの事を大切に想っている事は、フェイリス自身、他の誰よりも理解しているつもりだ。
そもそも凶真は、この会場に連れて来られる直前まで、まゆりの為、歴史を改変しようとしていたのだ。
今のままの時間軸で進めば、まゆりは必ず決められた時刻に死んでしまうから――。
と、それを思い出し、フェイリスははっとして叫んだ。
「そうニャ、こんな事してる場合じゃないニャ! 早く脱出して、マユシィを救わニャいと……!」
その為には、フェイリス自身がかつての世界線で過去に送ったDメールを取り消す必要がある。
たった一通のメールを取り消すか否か。自分の行動に、親友である椎名まゆりの命が掛かっているのだ。
しかし同時に、魔眼―リーディングシュタイナー―を備えたフェイリスは、それが何を意味するのかも理解している。
過去に送ったメールを取り消すという事は、
確定した歴史を改変するという事は、
……あの世界線に戻るという事は、
つまり。
「パパを……殺さなくちゃいけニャい」
かつての世界線のフェイリスは、父が死んでしまう未来を変える為、過去にDメールを送った。
結果として父は救えたが、代わりに秋葉原から萌え文化は消失した。フェイリスが勤めていた筈のメイド喫茶「メイクイーン+ニャンニャン」も、一緒に消失した。
断片的な記憶としてそれは覚えているので、今フェイリスが着用している衣装が前の世界線での仕事着である事も理解はしている。
どうして今のフェイリスがこれを着せられているのかまでは解らなかったが。
現状で何よりも問題なのは、この世界線では、フェイリスの親友である椎名まゆりが、必ず同じ時刻に死亡してしまうという事実が確定してしまっているという事だ。
フェイリスは悩んだ。
フェイリスには、この世界線で父と過ごした数年間の記憶が確かにある。
だけれども、あの世界線に戻れば、この記憶も今で言う前の世界線の記憶と同じように曖昧なものとなる。父と過ごした時間は、実質、消えてしまう。
親友の命を救うためには、父と共に築いた暖かい想い出を消さなければならないというのが、どれ程酷な選択であろうか。
しかし、
「辛いけど……でも、パパはもう、ずっと前に死んだのニャ」
それが、正しい歴史だ。
今フェイリスが築き上げた歴史は、所詮はインチキなのだ。
フェイリス一人の幸せの為にまゆりの幸せを奪って良い訳がない。
何よりも、身体を張ってフェイリスを守ってくれた凶真を、これ以上哀しませたくはない。
だからこそ、フェイリスは決意したのだ。今からでもDメールを取り消し、まゆりを救うのだと。
その決意に揺らぎはない。寧ろ、まゆりの死を見せ付けられて、より強くそう思った。
だから、
「こんな所で殺される訳にはいかニャい!」
全ては友の為に。
何としても、このデスゲームから脱出するのだ。
あのDメールさえ取り消せば、まゆりの死は回避出来る筈だ。
「……でもその前に、まずは支給品の確認ニャ」
デイバッグを開いたフェイリスの視界に入ったのは、一本のベルトと、一枚のメダルだった。
最初にその手に取ったのは、吠える獅子の絵が描かれた、オレンジ色のメダルだ。
ルールブックは読んだし、そのメダルが何を意味するのかは理解している。
「――ニャるほど! フェイリスだから、ネコミミの王様ニャ!」
ネコミミの王様、つまりは百獣の王、ライオンだ。
ネコミミに誇りを掛けるフェイリスに、ネコ科の王たるメダルが支給されたのだ。
運命的な何かを感じたフェイリスは一人「ニャフフ」とニヤけるが、すぐにそんな場合ではないと状況を思い出す。
確かコアメダルは、首輪に入れておけばいざという時にセルメダルの代わりに使えるとルールブックに書かれていた筈だ。
これに頼る時が来るかどうかは別として、一応入れておいて損は無いだろうと判断したフェイリスは、ライオンのメダルを自分の首輪に投入した。
次にフェイリスが手に取ったのは、残された最後のランダム支給品――銀色の無機質なベルトだった。
テープで貼られた簡素な紙には、
デンオウベルト。
ライダーパスをセタッチすれば仮面ライダー電王に変身出来る。
ベルトにはそれぞれのフォームに対応したイマジン四体が付属。
ただし、イマジンが憑依出来るのは変身している間のみとする。
と書かれていた。
……デンオウ? 仮面ライダー? イマジン? 憑依?
まるで意味が分からなかったフェイリスは、「ハニャ?」と小首を傾げ、デイバッグの中身を漁る。
よく探してみれば、奥の方に、やはり無機質なパスケースらしきものが入っているのを発見した。
パスとベルトを手に取って――
『おい、何処だここは!? 良太郎は何処行った!? 一体どうなってやがる!』
『ちょっと落ち着いてよ先輩、一度にそんなに質問したって誰にも分かる訳ないでしょ』
『俺の強さに……お前が泣いた……グゥー――』
『ねえねえ、熊ちゃんまた寝てるよー?』
『寝るな熊公っ!』
――同時に流れ込んで来た意識の奔流に、―フェイリスにしては珍しく―唖然とするしか出来なかった。
◆
市街地を歩くネコミミメイドの背後には、赤、青、黄、紫、四つの影が付き纏っていた。
とは言ったものの、それら四色の影は、恐らくフェイリス以外に認識する事は出来ないのだろう。
頭に入り込んで来た四人の意識を受け入れたフェイリスは、彼ら―イマジン―との情報もある程度は共有化していた。
何でも彼らは未来から来た意識体で、野上良太郎という少年(?)と共に戦った「仮面ライダー」という戦士なのだという。
未来から来たという事実や、時間を消すだの歴史を改変するだのという話に、フェイリスはやはり、何処か運命的な何かを感じた。
(やっぱり、フェイリスの元に時の守護者が舞い降りたのは、フェイリスが歴史を改変したからなのかニャ……!?)
事実、過去の改変者の元に時の守護者(フェイリスが勝手にそう呼ぶ事にした)が舞い降りた(?)のだ。
ライオンメダルといい、デンオウベルトといい、これには何らかの意図が介在しているとしか思えなかった。
類似点があれば何でも運命的だと感じてしまうのは厨二病の特徴の一つなのだが、しかし割と間違っているとも思えない。
これこそが、運命を切り拓く未来への扉を開く“鍵”であると信じて疑わぬフェイリスは、彼らイマジンの存在を快く受け入れた。
……のだが、フェイリスなど意にも介さず不満そうに憤慨するのは、赤い鬼のイマジンだった。
『畜生、身体を乗っ取る事すら出来ねえ! どうなってやがんだよマジで!』
「憑依(シンクロ)出来るのは、変身してる間だけだって紙に書いてたニャ」
『オイ猫女! お前は一々訳分かんねえ言い方してんじゃねえ! 何だシンクロって!』
「二人の魂を同調(リンク)させ、力を引き出す秘奥義ニャ。1+1=∞(無限大)なのニャ!」
『わー、何それかっこいーい! 僕もやってみたーい!』
『それって要するに、いつも僕達が良太郎とやってた事と同じでしょ?』
終始ツッコミに徹する熱血漢(?)、赤い影のモモタロス。モモニャン。
常に冷静さを欠く事なく、合理的に物事を判断する青い影のウラタロス。ウラニャン。
恐れを知らぬ子供のように無邪気に振る舞う、紫の影のリュウタロス。リュウニャン。
さっきから寝てばかりだけど、たまに関西弁で反応する黄色の影のキンタロス。……キンニャン?
一部語呂が悪いが、一応それぞれの真名(マナ)の仮決めを終えたフェイリスは、ウラタロスに問うた。
「ところでウラニャン。ここに連れて来られる前はどうしてたのニャン? その良太郎って人はどうしたニャ?」
『それがねぇ……僕にも分からないんだよ。鬼ヶ島の戦いを終えたと思ったら、次の瞬間には君に憑いてたから』
「にゃにゃ!? あの伝説の悪鬼が潜むと噂される魔の巣窟、オニガシマに足を踏み込み、生きて帰って来たというのニャ!?」
『お前は何も知らねえだろうが! 適当な事言ってんじゃねえ!』
フェイリスの頭を、モモタロスが軽くはたこうとするが、その手はすぅっとすり抜けた。
彼らは所謂、幻影のようなものだ。変身している時しか身体を乗っ取れないのであれば、今はどうしたって現実に干渉のしようがない。
悔しそうに「くぅ~!」と唸るモモタロスを後目に、リュウタロスが言った。
『ねえねえ、もしかしてこれもディケイドの所為なのかな?』
『かもねぇ……ディケイドにその気が無くても、彼と関わると色々面倒な事になるみたいだから』
「にゃにゃ? ディケイド?」
『うん、僕らがこうなる少し前、ディケイドっていう仮面ライダーと関わってね』
軽くではあるが、ウラタロスが「ディケイド」について説明をしてくれた。
曰く、ディケイドとは他世界―パラレルワールド―を巡る仮面ライダーの一人らしい。
彼は幾つもの世界を巡り、その世界の仮面ライダーと絆を繋ぎ、そして通りすがって行くのだとか。
そして、ディケイドが彼らの世界に訪れる少し前から、彼らの世界では異常事態が多発したという。
それも全ては彼が「世界の破壊者」と呼ばれている事に起因するらしいが、詳しい事は分からない。
そう言って、ウラタロスはフェイリスが広げた名簿の名前を指差した。
どうやらこの殺し合いに参加させられている「門矢士」という青年がディケイドらしい。
あとはディケイドの仲間の「
小野寺ユウスケ」と、泥棒の「
海東大樹」くらいしか知り合いは居ないとの事だ。
小野寺の方は信頼出来る正義の仮面ライダーで、逆に海東の方は信用ならない泥棒ライダーとの事。
(ニャるほど、大体分かったニャ)
彼らの分かり難過ぎる質問を聞いて、しかしフェイリスは不敵に口角を吊り上げた。
いや、本当の意味では、たぶん分かっていないのだろう。
だけれども、ディケイドが厨二設定の塊であるという事は良く解った。
世界の破壊者だのパラレルワールドだの、それらの単語が厨二病をくすぐらない訳がない。
となれば、同じく厨二の塊ネコミミメイドであるフェイリスは、一度ディケイドとも語り合う必要がある。
門矢士。正真正銘の厨二病ライダー……待っているがいいニャ、必ずディケイドともこの絆を繋ぎ――
『ちょっと待ってフェイリスちゃん!』
「ニャっ!?」
思考の中断を余儀なくされたフェイリスが、思わず素っ頓狂な声を上げる。
ウラタロスの声色が変わったのは、突然の事だった。
すっかり背後の四人に気を取られていたフェイリスは、その言葉にはっとして、前方に意識を戻す。
フェイリスから見て、ほんの百メートル程前方だ。瓦礫の山をバックに佇む、その男は――
◆
幾つもの意識が近付いて来る。
随分と賑やかな声が、四人か、五人分。
一人は寝ているのだろうか。ハッキリ声が聞こえるのは、四人だけだ。
人の心の声を聞く事が出来るジェイクは、近くに誰かが接近すれば、それを察知する事が出来る。
向かって来る声は五人。殺し合いで集団行動という事は、
「残念だなぁ~、強者ってなぁ、群れねぇモンなんだよぉ」
それはつまり、身を寄せ合い寄り集まった弱者という事。
一人一人が強ければ、群れる事無く一人で他者を殺しに掛かる筈だからだ。
ヒーローとかいう見世物にすらなれない弱小NEXTか、それともただの人間だろうか。
どっちにしろ、このジェイク様の前に姿を現してしまったなら、後は死んで貰うしかない。
半ば癖となっている爪噛みをしながら、そいつらが現れるのを待つが。
「……あん?」
現れたのは、たった一人のメイドだった。
顔立ちは可愛らしい部類だ。桃色のツインテールを揺らし、少女は絶句した様子で此方を見詰めている。
しかしながら、少女以外にはこの場に誰かが居る様子はない。
ない、のに。
「どういう事だ……何で声が四人分聞こえやがる」
心の声は、確かに四人分聞こえるのだ。
何処かに隠れているのか。否、そんな筈はない。
先程まで奴ら五人で話し合っていた筈だ。隠れる時間などない。
さっきのガキと同じ不可視(ステルス)能力だろうか。
だが――それならば何処から声が聞こえてくるのかも分かる筈だ。
「何だこりゃあ、一体どうなってやがる……!?」
声が何処から聞こえてくるのかを、ジェイクは判別出来なかった。
確かに我の強い声が四人分、少女の声も入れて五人分、聞こえるのに。
それなのに、探せども探せども声の出所が掴めない。
こんな事は始めてだった。
「へ、へっ――」
「あ? 何だ?」
少女が、困惑した様子で何事かを言おうと口をぱくぱくさせている。
その間もひっきりなしに聞こえてくる五人分の心の声は、まるでノイズのようだった。
いい加減苛立ちを覚え始めて来たジェイクが、少女に向かって歩み出そうとした、その時だった。
「――っ、変態ニャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」
少女の裂帛の叫びは、ジェイクの集中力を削ぐには十分だった。
ジェイクが混乱し、呆気に取られた一瞬のうちに、少女は全速力で逃走して行った。
次にジェイクは、全裸に左足のみニーソックスという今の姿を思い出し、少女の反応を理解する。
「全裸だから変態ってか! そりゃ無理もねぇわなぁ! ……はいはい」
ジェイクは今、前すらも隠していなかったのだ。
うら若き乙女にそれを突然見せ付けたとあっては、逃げ出されても可笑しくはない。
どんな喜劇だよと胸中でツッコミながらも、ジェイクは先程まで聞こえていた五人の声が無くなった事に気付いた。
そして、ああ成程と理解する。今逃げ出した小娘は、ただの人間などではない。
一つの身体に五人分の意識を持ったNEXT能力者だったのだ。
探せども探せども声の出所がハッキリしない筈だ。
「チッ……くっだらねぇなぁ~オイ」
こけおどしもいい所だ。
軽く舌打ちしたジェイクは、足元の瓦礫を蹴飛ばした。
行き場のない怒りをぶつけられた瓦礫は僅かに傾いて、またごとりと音を立てて落ちる。
能力抜きの純粋な身体能力なら、あくまで人間の粋を出ないのだから、生身で瓦礫を粉砕するだけの怪力などはないのだった。
今回は戦わずして逃げられてしまったが、もし能力を使って戦っていたなら、あの程度の小娘相手に負けは無かっただろう。
そう考えると、実に下らない理由で獲物を逃がしたなと思い、
「はぁあ……服でも探すか」
嘆息し、一人ごちた。
ついでにこのもっさりした髪の毛も何とかしたい。
何気にお洒落なジェイクは、まずは服と髪の毛を何とかしようと、街を歩き出した。
【一日目-日中】
【D-5/クスクシエ側】
【ジェイク・マルチネス@TIGER&BUNNY】
【所属】白
【状態】裸、ダメージ(小)、疲労(小)
【首輪】85枚:0枚
【装備】無し
【道具】基本支給品一式、ランダム支給品1~3
【思考・状況】
基本:ゲームを楽しむ。
1.楽しめそうな奴を探す
2.可及的速やかに服を探す。出来れば髪の毛も何とかしたい。
3.三重能力のガキ(=
ニンフ)と五重人格のガキ(=フェイリス)は放っておいても構わない。
【備考】
※釈放直前からの参加です
※クスクシエが倒壊しました
※NEXT能力者が集められた殺し合いだと思っています。
※ニンフは三重能力のNEXT、フェイリスは五重人格のNEXTだと判断しています。
【フェイリス・ニャンニャン@Steins;Gate】
【所属】無所属
【状態】疲労(小) 、嫌な物を見せ付けられた不快感、全力逃走中
【首輪】100枚:0枚
【コア】ライオン
【装備】デンオウベルト&ライダーパス@仮面ライダーディケイド
【道具】基本支給品一式
【思考・状況】
基本:脱出してマユシィを助ける。
0.変態が出たニャーーーーー!!!
1.とにかく逃げる。
2.イマジン達は、未来への扉を開く“鍵”ニャ!
3.世界の破壊者ディケイドとは一度話をしてみたいニャ。
【備考】
※電王の世界及びディケイドの簡単な情報を得ました。
※モモタロス、ウラタロス、キンタロス、リュウタロスが憑依しています。
※イマジンがフェイリスの身体を使えるのは、電王に変身している間のみです。
※どの方向に向かって走っているかは次の書き手さんにお任せします。
最終更新:2012年07月03日 23:58