千石大学の研究室。 考古学者・柳生教授と孫娘のナスティが、古典の解析に取り組んでいる。 パソコン画面上の古代文字に、ナスティが目を見張る。 ナスティ「お爺様!?」 柳生「やはりな。ナスティ、今から言う言葉を打ちこみなさい」 ナスティ「はい」 柳生「烈火、金剛、光輪、天空、水滸」 突然の雷鳴。 突風が吹き荒れて窓が開き、書類が風で飛び散る。 ナスティ「お爺様、これは!?」 柳生「&ruby(アラゴ){阿羅醐}だ。&ruby(ようじゃ){妖邪}帝王の復活だ。世界の破滅するときがやって来たのだ!」 #center(){|BGCOLOR(black):COLOR(white):CENTER:&br()&big(){&big(){&bold(){ねらわれた大東京}}}&br()&br()|} 新宿の歩行者天国の昼下がり。 小学生の山野純は、両親と一緒の買物で、店先のスケボーに見入っている。 母「純ちゃん。もういい加減に決めちゃってよ! ママだってお買物したいし、映画も見なくちゃならないし、お食事だってしたいし…… パパ!」 父「ん? まぁ、いいじゃないか。時間はまだあるさ。どうせ買うなら、いいヤツがいい」 純「お父さん、これがいい! それぇっ!」 純がスケボーを持ち出し、走り出す。 母「あぁっ!? 純ちゃん、待ちなさい! もう!」 純「ヤッホー! ビュンビュンビューン! ごっ機嫌~っ! ……あっ!?」 目の前に人だかり。 純「わぁっ!? あ、危ない! 危ないよぉっ!」 危うく衝突を避け、そのはずみで純が転倒する。 純「痛、痛痛痛……」 誰かが純の顔を舐める。 見ると、それは白いトラ。 声「大丈夫か?」 純「え…… えぇっ!?」 声「ハハハハ! こっちだよ」 トラが喋ったかと思いきや、声の主はトラを従えた少年。 主人公、真田 &ruby(リョウ){遼}。 リョウ「ケガはないか?」 純「う、うん。何ともないけど…… お兄ちゃん、このトラ、本物?」 リョウ「まぁな」 両親「純ちゃーん!」「純──!」 リョウ「父さん母さんが心配しているぞ。じゃあな」 純「……」 千石大学の研究室。 ナスティがテレビを見ている。 ナスティ (世界の破滅が始まるなんて、信じられない……) 『ニュース速報です。新宿歩行者天国は、突然出現した白いトラを連れた少年のために、ほとんどパニック状態です。少年は、警察の説得に耳を貸す様子もなく、靖国通りで機動隊に包囲されています。繰り返します。新宿歩行者天国は──』 ナスティ「こ、この少年!?」 そこへ、祖父の柳生教授が訪れる。 柳生「ナスティ」 ナスティ「お爺様!」 柳生「見ておったか?」 ナスティ「はい。では、やはりこの少年が?」 柳生「世界は救われるかもしれん。間違いあるまい。彼は『サムライトルーパー』じゃ!」 ナスティ「私、見てまいります!」 ナスティが部屋を飛び出す。 柳生 (妖邪兵士に気をつけるのじゃぞ。サムライトルーパーあるところ、ヤツらあり、じゃ) 新宿の歩行者天国では、先のトラが不意に空を見上げて吠える。 リョウ「&ruby(びゃくえん){白炎}!?」 空が次第に、不気味な黒雲で満ちてゆく。 一方でナスティは、車で新宿を目指している。 ナスティ「あの雲は!? ……これは?」 突然、ナスティの車が停まってしまう。 信号の灯りも消え、周辺道路は行き場を失った車で満ちている。 ナスティ「都市機能が止まっている…… 急がなければ!」 警官「こら、車を動かせ!」 運転手たち「エンジンがかからねぇんだよ!」「こっちもだ!」 ナスティはその警官の自転車に乗り、駆け出す。 ナスティ「すいません、お借りします!」 警官「あっ!? き、君ぃ!?」 すでに新宿は黒雲に満ち、夜のように真っ暗になっている。 ヘリコプターが制御を失って墜落、爆発する。 リョウ「みんなぁ! ここは今に戦場になる。すぐ避難してくれぇぇ!!」 落雷が轟く。 ビルの窓が砕けてガラス片が降り注ぎ、人々が悲鳴をあげて逃げ惑う。 純「パパぁ! ママぁ!」 両親「純!」「純!」 純は人の波に飲まれ、両親と離れ離れになってしまう。 リョウ「妖邪どもめ、貴様の相手はこの俺だ! 姿を見せろ!」 高層ビル壁面の巨大ディスプレイに、異形の鎧を纏った兵士の姿が映る。 その兵士──妖邪兵が映像から実体として出現、鎖鎌でリョウに一撃を見舞う。 服が裂け、その下には肌ではなく赤い装甲が覗いている。 リョウ「出たな、妖邪兵!」 リョウが服を脱ぎ捨てると、その下は赤い装甲服──アンダーギア。 リョウ「仁の心で悪を討つ! 烈火のリョウ、見参!!」 妖邪兵「フハハハ! 小賢しき人間どもの、腐れ世の幕引きにこそふさわしいわ」 リョウが鎖鎌の攻撃をかわし、蹴りを見舞う。 妖邪兵「ハハハ、こそばゆいわ!」 再び鎖鎌の攻撃。 リョウは腕の装甲でそれを食い止めるが、衝撃で地面が大きく裂ける。 リョウ「妖邪の力か!? なんて強力なんだ!」 一方で、純は1人きりになってしまい、両親を捜し回る内に、彼らの戦いの場を目にする。 純「パパぁ! ママぁ! ……あっ!?」 妖邪兵「チョコマカと、いつまでも逃げ切れると思うてか?」 三たび、鎖鎌の攻撃。 リョウがかわすが、その衝撃が純へと走ってゆく。 ナスティ「危なぁい!」 ナスティが駆けつけ、純を救う。 ナスティ「大丈夫? ここは危ないわ!」 純「お姉ちゃん、あれ!」 ナスティ「えっ?」 ついに妖邪兵が、鎖でリョウの足を捕える。 リョウが振り回され、地面に痛烈に叩きつけられる。 リョウ「うわぁぁっ!」 純「あぁっ、お兄ちゃんが危ない!」 彼の白いトラ──白炎がリョウをかばい、妖邪兵を威嚇する。 リョウ「どけ、白炎! ヤツの攻撃は、アンダーギアのないお前では受けられない!」 白炎が妖邪兵に飛びかかるが、逆に攻撃をまともに食らい、吹っ飛ばされる。 リョウ「白炎!? おのれぇ…… うぅっ!」 身構えるリョウだが、傷の痛みに顔をしかめる。 妖邪兵「フハハハ、これまでよ!」 鎖鎌が放たれる。 危ういところへ、リョウ同様にアンダーギアを纏った少年・羽柴&ruby(トウマ){当麻}がそれを防ぐ。 トウマ「さて、後は任せてもらおうか。知の心で悪を討つ。天空のトウマ、見参!!」 同じくアンダーギア姿の少年、&ruby(シュウ・レイファン){秀 麗黄}、毛利 &ruby(シン){伸}、伊達&ruby(セイジ){征士}が次々に現れる。 シュウ「まどろっこしくて、見ちゃいられないぜ! 義の心で悪を討つ。金剛のシュウ、見参!!」 シン「やけに手間取ってるじゃないか! 信の心で悪を討つ。水滸のシン、見参!!」 セイジ「どうやら間にあったようだな。礼の心で悪を討つ。光輪のセイジ、見参!!」 ナスティ「これで、5人揃ったわ」 純「揃ったって? あのお兄ちゃんたちのこと、知ってるの?」 ナスティ「伝説の鎧の戦士、サムライトルーパー。この世を妖邪の世界に変えようとしている阿羅醐と戦う、5人の勇者よ!」 妖邪兵「フハハハ! 我が狙い通り、5人まとめて始末してくれるわ!」 セイジ「言ってくれるじゃないか。それでは、お手並み拝見!」 シュウ「そういうこっちゃ!」 セイジが攻撃を見舞うが、妖邪兵には通じない。 シュウ「もらったぁ!」 隙をついてシュウが攻撃を加えようとするが、逆に妖邪兵の一撃で吹っ飛ばされる。 シュウ「痛ぁ!」 セイジ「なんてバカ力だ!」 シン「次は僕が相手だ!」 シンのパンチの連打、トウマのキックの連続攻撃。 トウマ「決まったか!?」 妖邪兵「フハハハハ!」 しかい、妖邪兵の鎖鎌での反撃がシンとトウマを襲う。 一同「おおぁっ!」「うわぁっ!」 リョウ「くっ…… こいつは、俺に任せろ!」 トウマ「その体力で何ができる!?」 セイジ「おとなしくしていることだ!」 シン「こいつは僕が倒す!」 シュウ「えっ? 後から来て、勝手なこと言うな!」 ナスティ「まずいわ…… 彼ら5人の心が、一つになっていない」 純「えっ?」 ナスティ「あなたたちぃ! 心を一つにするのよ! 妖邪兵は、心がバラバラで倒せる相手ではないわぁ!」 リョウたち「えっ?」「はっ……!」 妖邪兵「その口出しが身の不運!」 妖邪兵がナスティ目がけ、鎖を投げつける。 ナスティ「あっ、危ない!」 逃げる間もなく、ナスティと純が鎖で縛り上げられ、妖邪兵に捕われてしまう。 妖邪兵「フハハハ! さて、貴様らの&ruby(まこと){真}の力を見せてもらおうか」 ナスティ「うぅっ……!」 純「お、お姉ちゃん……!」 シュウ「この野郎──!」 シュウが突進するが、妖邪兵はナスティたちを盾にしており、うかつに攻撃を仕掛けることができない。 妖邪兵「真の姿を見せぬとあらば」 鎖がナスティたちの体を強く締めつける。 ナスティ「うぅっ! うぅっ……!!」 純「苦しいよぉっ!!」 リョウ「待て! それほど見たくば仁の鎧、見せてやる! 見たが貴様の最期と思え!」 ほかの4人も決意を固める。 リョウ「&bold(){武装──! 烈火──!!}」 気合いと共に黒い稲妻が迸り、真っ黒な空間に無数の反物が舞い、桜吹雪が舞い散る。 一瞬にして異空間から召喚された真っ赤な鎧が、リョウの体に装着される。 他の4人も同様の鎧姿となる。 妖邪兵「フハハハ! それでこそサムライトルーパー!」 純「お兄ちゃんが!?」 ナスティ「これが『&ruby(ヨロイギア){鎧擬亜}』なのね!」 鎧を装着したものの、リョウは傷の痛みに顔をしかめる。 リョウ「ぐぅぅ……!」 妖邪兵「フフフ、しかしその体力では、せっかくの鎧も使いこなせまい」 リョウ「ほざけぇぇ!」 リョウが剣を抜き、妖邪兵の鎖鎌と斬り結ぶが、やはりナスティたち捕われては思うような攻撃ができない。 一同「くそぉ!」「2人を放せ! 卑怯だぞ!」 妖邪兵「フフフ、『卑怯』とか、それは我らにとって褒め言葉!」 純「助けてぇ、お兄ちゃん!」 妖邪兵「さて、では妖邪界のやりかたをお目にかけるか」 妖邪兵がナスティたちを、高層ビル目がけて放り投げる。 ナスティ「きゃあぁ──っ!」 ビル壁面の巨大ディスプレイに叩きつけられた2人は、映像となって画面の中に閉じ込められてしまう。 トウマ「人質さえ放せば、こちらのもんだ!」 すかさずトウマが弓矢を構え、妖邪兵目がけて矢を撃つ。 ナスティ「ああぁ──っ!」 トウマ「何ぃ!?」 セイジ「あいつへの衝撃が伝わっているんだ!」 妖邪兵「フフフフ!」 妖邪兵が鎌で、自らの体を裂いてみせと、ナスティたちも苦痛の悲鳴を上げる。 ナスティ「ああぁ──っ!」 リョウ「や、やめろぉっ!!」 リョウは妖邪兵を前に、剣を収める。 妖邪兵「バカなヤツよ!」 無防備となったリョウを、妖邪兵が鎖で捕え、振り回す。 リョウ「うわあぁ──っ!!」 リョウがビルの壁面に、大地に叩きつけられ、さらに鎖で締め上げられる。 リョウ (くそぉ…… 妖邪界の力そのものを吹き飛ばすパワーがなければ、負ける!) 妖邪兵「フハハハ! そこまで2人を助けたいのか? 残念じゃのぉ、守りきれずに」 妖邪兵が鎖鎌の狙いを、ナスティたちに定める。 純「お兄ちゃぁん!!」 リョウ「おのれぇぇ!!」 妖邪兵「死ねぇ! ……な、なんだ、この熱さは!?」 ボロボロに傷ついたはずのリョウが、全身に闘志を漲らせ、力強く立ち上がる。 妖邪兵「こ、これが鎧の力……!?」 リョウが2本の剣を合体させて双刃刀と化し、大きく跳躍。 リョウ「&bold(){&big(){双──&ruby(えん){炎}──&ruby(ざん){斬}──!!}}」 稲妻のような凄まじいエネルギーを迸らせ、必殺の剣撃が炸裂。 妖邪兵「う、うわあぁぁ──っ!! 鬼魔将様ぁぁ──っ!!」 大地が砕け、光の奔流の中に妖邪兵が消滅──! 勝利を収めたリョウ。 彼の剣撃は妖邪兵を倒したばかりか、大地を割り、その背後のビルまで真っ二つにしていた。 凄まじいその威力に、仲間たちも目を見張る。 シュウ「すっげぇ! これが鎧パワーか!」 トウマ「初めて見るぜ!」 リョウ「俺もだ……」 ディスプレイの映像の中から解放されてビルから落ちるナスティたちを、白炎が受け止める。 セイジ「2人は無事だぜ」 シン「鎧パワーの成せる技だね」 リョウ「良かった……」 声「フフフ…… ハハハハハ!」 リョウ「むっ、誰だ!?」 声「貴様らの力、とくと見せてもらった! 妖邪兵士相手にその体たらく、所詮我が敵ではないわ!」 リョウ「誰だ、お前は!?」 リョウたちと同じような鎧を纏った4人。 「我らは闇の支配者・阿羅醐様率いる妖邪界が四天王、俺様はその第一、鬼魔将・&ruby(シュテン){朱天}なり!」 「同じく、闇魔将・&ruby(アヌビス){悪奴弥守}なり!」 「同じく、毒魔将・&ruby(ナアザ){那唖挫}なり!」 「同じく、幻魔将・&ruby(ラジュラ){螺呪羅}なり!」 さらに、雷鳴とともに声が響く。 「我は阿羅醐なり── 我は闇の世界の&ruby(あるじ){主}なり── 今こそ、我が帝国がこの世界を支配せん──」 朱天たち4人が光と化し、どこかへと飛び去る。 純「お、お姉ちゃん……」 ナスティ「いよいよ始まったんだわ。妖邪界との戦いが……」 阿羅醐の声「今こそ、我らの天下の始まりと知れ──!」 #center(){|CENTER:&br()妖邪帝王・阿羅醐。&br()千年の眠りから目覚め、遂に人間界に現れた。&br()&br()その底知れぬ力に抗し、立ち上がった&br()5人のサムライトルーパーとは?&br()そして、伝説の鎧擬亜の力とは?&br()&br()謎とロマン、闇と恐怖の時代の幕が、&br()切って落とされた!&br()&br()|} #center(){&big(){(続く)}}