DEATH NOTEの最終回

死神界。
見渡す限りの荒野に転がる無数の球体。その穴から人間界が見える。


Page. 108 (かん)

一年後 2011年1月28日

無数の車が道を行き交い、エンジンやホーンの音が街中に響き渡る。

男「なんだよ うちのジジィー迎えにきてねーじゃん」
女学生達「もー受験勉強ばっかウザー 誰か飲みに行かなーい?」「いくいくーっ」「アタシもー」

キラの事など忘れたかの様に喧騒に包まれた街中を、松田桃太と伊出英基が歩いていた。

伊出「まだ『キラは休んでいるだけ』と信じてやまない人間もいる様だが すっかりキラが現れる前の世界に戻ったな」
「ギャハハハ」

バイクに乗った男達が、爆音を上げながら通り過ぎる。

伊出「………いい加減やる気出せよ 松田」
松田「………………わかってはいるんですけど 情けない事に いまだに 本当にこれでよかったのか?と 時々 考えてしまうんです」
伊出「よかったに決まってるじゃないか でなければ我々は何の為に闘ったのか わからない」
松田「…………そうですけど…………」

警察庁国家公安委員会の一室。
相沢周市の元に電話が。

「ワタリです Lからですが繋いでよろしいでしょうか?」

それは2代目ワタリ…ロジャー=ラヴィーからのものだった。

相沢「(L…)はい 大丈夫です」

沢山のおもちゃに囲まれ、板チョコをかじりながら通話するL…ニア。

ニア「Mr.相沢 唐突で申し訳ないのですが 私が独自に半年追ってきた犯罪グループが三日後に日本で麻薬取引(パーティー)をします そこを押さえるのに力をお貸し頂けないでしょうか?」

伊出の携帯電話が鳴る。

「相沢だ」
伊出「1月31にYB倉庫(イエローボックス)で大きな麻薬取引?」
松田「(………YB倉庫(イエローボックス)………)」
伊出「そんな情報 一体 どこから?」
相沢「Lだ」
伊出「Lか……」
松田「(………………)」
伊出「うむ わかった」

携帯を切る。

伊出「Lが半年以上追ってきたシンジケートだそうだ Lを交え 21時から打ち合わせしたいと」
松田「……L…YB倉庫(イエローボックス) あの日からちょうど1年の今日にこんな話って これも何かの因縁すかね……………」
伊出「…………そうだな」

松田が車の運転席に着き、ドアを閉める。

松田「はぁーっ Lの指揮かー やる気しないなー」

伊出も助手席に着き、シートベルトを締める。

伊出「松田」
松田「だって ニア(あいつ) 絶対魅上を殺してますよ」
伊出「また おまえのその説か…絶対とは言い切れないだろ」
松田「いや この推理は絶対ですって 魅上は あの十日後 獄中で発狂して死んでるんですよ 一年前(あのとき) あの場に魅上が持ってきたノートが偽物だったって事は ニア(あいつ)が ジェバンニに すりかえさせて 本物は自分達が持ってたわけで
 『魅上照 ノートを偽と疑う事も本物かどうか試す事もなく 2010年1月8日 YB倉庫(イエローボックス)に13時30分に来て その十日後 発狂して死亡』
 とか書いたに決まってますよ ニアは魅上は機転がきくとも言ってたし (ライト)くんが 魅上にノートを試してから来いと言っていたと考えたら…………… それを阻止する為にそう記したに違いないっす そうした時点で決して偽と見破られないし 魅上の行動を全て制限できるんすから」
伊出「…まあ もし その説が当たっていたとしても もうノートは ないんだ 証拠は ない」
松田「それがまた この推理の裏付けになるんじゃないっすか!」

燃やされるノート。

松田「あの時 リュークに13日のルールとノートを燃やしたりしたら触っていた者は死ぬってルールは嘘だと聞いた途端 二冊とも ニアが燃やしたんですよ あれは 魅上の事を書いた証拠の隠滅…普通 怖くて燃やせないっすよ……………」
伊出「……………魅上を操っていたかどうか…連絡が取れない状態であったとはいえ 月くんにはどっちかわかっていたのかもな…」
松田「いや 操ってますって」
伊出「今 俺の言える確かな事は…ニアも言ってた通り あのノートは…史上最悪・最強の殺人兵器だ」
松田「でも 伊出さん もしかしたら ニア(あいつ)は 魅上が持ち歩いていた偽のノートに細工した時 既に 偽と考えていたんじゃないかと思えるんですよ」
伊出「ん? それは新説だな」
松田「いいっすか ニアは リドナーとメロの繋がりを知っていた リドナーを通して 自分にとって都合のいい情報だけをメロに流させる そうする事で メロが動くと読んでいた いや 動かしたんです メロが動けば 偽のノートである事がわかる そこまでいかなくても 何かヒントを得ることができる という読みです」
伊出「……………………」
松田「……………………」
伊出「いくらなんでもそれは考えすぎだ…1月28日を提案してきたのはニアなんだぞ」
松田「だからこそ ニアの先を越す為にメロが動くんじゃないっすか それでメロが動かなければ…メロが動いても何も進展しなければ…………『やっぱり28日は止めました』……………ニアが言いそうな事じゃないっすか」
伊出「……松田 考え過ぎだ……いや…お前の推理は推理じゃなく…」
松田「推理じゃなく?」
伊出「願望なんだよ」
松田「願望?」
伊出「そうだ…願望だ」
松田「……………………」
伊出「月くんはキラだが…おまえ 月くんを好きだったろう?」
松田「……………………願望か そうかも知れません…」

車が打ち合わせの場所に到着。
二人は降りながら会話を続ける。

伊出「さっきも言ったが これでよかった事は間違いないんだ」
松田「どうして伊出さんは そう はっきり言い切れるんすか?」
伊出「……………………」
松田「いや…すいません…キラ社会と今の社会を天秤にかけている僕が 歪んでいるって事は わかってるんですが…」
伊出「いや 俺個人は おまえが歪んでるとは思ってないし ニアが正義だとはっきり言えもしない 俺が『これでよかった』と言い切っているのは…あそこでニアが負けていたら 俺達は 今 生きていない そういう事だ」
松田「……………それを言っちゃったら……………そうっすね」

そして、相沢の待つ会議室へ。
模木完造と、松田の後輩の山本もいた。

模木「お疲れ様です」
山本「お疲れ様です」
松田「おーっ 山本 こんな会議に参加できる様になったとは おまえも出世したな この事件(ヤマ)が終わったら 飲み付き合えよ 山本ー」

山本の肩を組み、酒の約束を持ちかける。

山本「えっ? またっすか…勘弁してくださいよ…松田さん…」

「Lです 皆さん 揃った様ですね」

相沢の背後のモニターからL…ニアの声が。

ニア「では 早速 詳しい状況をお話ししたいと思います」
松田「はいはいどーぞー」
「松田 真面目に聞けっ」


何処かの山中。
ローブに身を包み燭台を手にした人々の行列。
列が二つに割れ、その中央を歩く者がいる。
丘の上に立ち、燭台を地面に置き…。

「キラ様」

祈りを捧げるその人は少女だった。

燭台の上、赤々と燃える蝋燭。


Thus concludes this story of DEATH NOTE.
*1



Once dead,they can never come back to life.
死んだ者は、生き返らない。

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最終更新:2015年01月21日 22:08

*1 単行本版より。WJ連載版では「This story of “DEATH NOTE” is end.」。