※一部に聞き取りにくかった、又は誰の台詞か分からなかった箇所がございます。ご了承下さい。
~これまでのあらすじ~ カードから飛び出す不思議な少女"ファンタジスタドール"を召喚する端末・ユークリッドデバイスをふとした偶然から手に入れ、ささら・マドレーヌ・カティア・小明・しめじの5人のマスターとして同居生活を送る事となったごく普通の中学生・鵜野うずめ。 彼女のカードを狙う謎の組織"希望相互扶助委員会"の細胞を名乗る刺客のマスター達に次々と打ち勝ちながら、うずめとドール達は友情を深めていく。 ある日、うずめはカードに戻ってしまったマドレーヌを賭けた委員会の書記・アンヌとのポーカー対決に勝利した。だが、カードを持って現れたのは何と、以前からうずめに様々な助言を送ってきた学校の先輩・清正小町だった。 しかも、彼女がそれまでの戦いを仕組んだ委員会の首魁「委員長」にしてささら達の元マスターで、彼女達を手放したのも、事故により失われてしまったドール・ソネットを復活させる為のデータを得る事が目的だと言う。 ドール誕生の秘密、自分と小町のどちらがマスターに相応しいか…積み重なる唐突な事態を飲み込めないうずめは感情を爆発させ、ささらと口論になった挙句1人飛び出してしまう。 道中で出会ったアンヌから「データを抜き取られたドールは消滅する」と聞かされ、ドール達が自室に隠した誕生日プレゼントを探す中で彼女達との絆の強さを知ったうずめは、カード部仲間のまないとかがみに励まされ、もう一度小町に会う事を決意する。
ドールと友達でいたいと願ううずめ。あくまでソネットの為にデータだけを求める小町。2人はそれぞれのドールに対する想いをスタジアムでぶつけ合う。 |
~川越の研究所(過去)~
庭園で会話する、幼少時代の小町とソネット。
ソネット「ねえねえ小町、このお花は何て名前なの?」
小町「これは百合よ」
ソネット「じゃあこっちは?」
小町「それはスミレ。その奥はマリーゴールド、パンジー、アマリリス」
ソネット「すご~い。小町って何でも知ってるんだね」
小町「えへへ…」
小町は手編みの花冠をソネットの頭に被せる。
小町「はい」
ソネット「…」
喜ぶソネット。小町も笑う。
『野ばら』の歌を口ずさむ小町。ソネットもその後に続いて歌う。
小町「そう。上手いよ」
ソネット「えへへ…」
夜。別々の布団の中の2人。
小町「ねえソネット」
ソネット「なあに、小町?」
小町「私達、ずーっと一緒にいようね」
花瓶に生けられた白とピンクの薔薇。
ソネット「うん。小町とソネットはず~っと一緒」
笑い合う2人。
次の日…。
小町「ほらソネット、早く早くー!」
スケッチブック片手に駆け出す小町と、置いていかれているソネット。
ソネット「ま…待ってよ、小町ー!」
小町がT字路に差し掛かると…。
ソネット「!?」
ソネットは向こうから来る車のエンジン音に気付き、一気に走り出す。
小町「…?」
小町が振り返ると、右側からトラックが走ってくる。
小町「!!」
今にも轢かれてしまいそうなその瞬間…。
小町「あっ!!」
ソネットが小町を突き飛ばす。
鞄が宙に舞い、中身が飛び出す。
小町「…?」
気が付いた小町が辺りを見回すと、トラックは向こうの壁に激突しており、その手前でソネットが倒れている。
小町「ソネット!?」
ソネットに歩み寄る。
小町「ソネット…ソネット…!!」
ソネットの全身にブロックノイズが浮かんでいる。
ソネット「…大丈夫だよ…小町…」
小町はソネットの手を握る。
ソネット「だから…泣かないで…」
小町の目に涙が浮かぶ。
小町「…でも…」
『野ばら』を歌いだすソネット。途中で止めて…。
ソネット「ソネットは…薔薇みたいな明るい小町の笑顔が好き…だから…笑って…」
苦しそうな声でその続きを歌いながら、ソネットは徐々に消えていってしまう。
小町「……ぅあああぁぁぁぁ…!! ぁああああああ……!!」
泣き叫ぶ小町。周りに人が集まってきている。
ソネットのスケッチブックにはタイヤの跡が残っており、そこに挟まれていた自身のカードがタイヤに潰されて砕けてしまっていた。
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~スタジアム(現在)~
小町「(ソネット…私は必ず、あなたを甦らせてみせる…!)」
目を開き、厳しい眼差しでうずめを見つめる小町。
~鵜野家・玄関前~
かがみは携帯電話を見ている。内容はうずめからのメール。
かがみ「もう…何勝手しているのよ…!」
呼び鈴を鳴らす。隣には兄の真もいる。
「はーい!」
出てきたのはみことだった。
かがみ「あの、うずめさんは…」
みこと「うずめなら、少し前に出かけちゃって…」
かがみ「どこに?」
みこと「それがあの子、行き先も言わなくって…」
かがみ「…」
「鵜野うずめの行き先なら、私が知ってます」
声をかけたのはアンヌ。
みこと「あら、この前はどうも…」
かがみ「どこ? 教えて! 今すぐ!」
アンヌ「希望は交換されるもの…」
かがみ「…」
アンヌ「戸取真さん」
真「…え? 僕?」
アンヌ「私と希望の交換をしましょう……」
~スタジアム~
小町「人は自らの存在を定義づけようと考えん。定義とは枷であり縛りであり希望である。故に希望ありき」
うずめ「…?」
小町「希望とは他者の欲望に非ず。自らの道標也。信念信仰、勇気の源にして原初の想い也」
うずめ「あ、あの…何言ってるの小町さん?」
小町「個人の希望はね、他者の希望と違っているものなのよ。つまり、みんなにとっての絶対正義は存在しないの。人はね、自らの希望だけを追い求めるの」
「それが、希望の交換を始めた考えなのかい?」
トラック上から声をかけたのはラフレシアの君。隣に三笠もいる。
小町「ええ、そうよ。多くの人達が私に希望を伝えてきたわ。まるで懺悔の様にね」
ラフレシアの君「君の役目は、許しかな?」
小町「あなた方は、何しに来られたのかしら?」
三笠「我々は、表立っては存在しないカードを巡っての戦いに、介入は出来ない」
ラフレシアの君「これは責任だよ。見届けるのが、うずめ君を巻き込んだ…せめてもの…」
三笠「担任として、じゃないのかな?」
ラフレシアの君「茶化さないでくれ…」
小町「分かったわ。『見届ける』というあなたの希望を受け入れます。その代わり、何があっても手を出さない事」
うずめ「小町さん、希望っていっぱいあるものじゃないの?」
小町「その考え方は駄目なのようずめちゃん。選択肢を増やせば増やす程、迷いが生じてしまう。結局、何が欲しいのか分からなくなってしまう…うずめちゃんがそうでしょ?」
うずめ「?」
小町「中学生になった時、みんなに合わせようとして自分を見失った…それはいけない事」
うずめ「…」
小町「1つだけでいいの。本当に大事な事を1つだけ。だから…ごめんねうずめちゃん」
三笠「それが君の選択か…清正小町君」
うずめ「ねえ、小町さん…」
黙ったままの小町に、うずめが問いかける。
小町「?」
うずめ「大事な事は、1つじゃないよ。だって私には友達がいっぱいいるもの。1人だけじゃないの!」
両者がユークリッドデバイスからカードを出し、そして同時にLINGOを詠唱する。
「天駆ける星の輝きよ。時を越える水晶の煌きよ。今こそ無限星霜の摂理にもとづいて、その正しき姿をここに現せ。アウェイキング!」
小町がプロトゼロを、うずめが素整体からバトルコスチュームに変身したささら・小明・カティア・マドレーヌ・しめじを召喚。
小町「行きなさい、プロトゼロ」
うずめ「ささら、小明、カティア、マドレーヌ、しめじ!」
一斉に頷くチームうずめのドール達。
ささら「OK、マスター!」
マドレーヌ「はい、ご主人様!」
ささら「行くよ!」
戦いが始まった。
一方その頃、真とアンヌは…。
真「…こ…ここは…?」
アンヌ「私が委員会の為に用意した、ストラテジールームです。ここで、委員会の活動総括、及び情報収集を行っていました。座って下さい」
真「…あ、ああ…」
2人は席について、PCを操作している。
真「…それで、僕に何を…」
アンヌ「ソネット復活に関するデータ分析を…」
真「え?」
アンヌ「ソネット復活は、ずっと小町が望んでいた事でした。僅かなバグも見逃さず、必ず成功させたい…でも…」
真「優しいんだね…君は…」
アンヌは手を止め、赤面する。
アンヌ「…!? そ、そんな事よりも手を動かして下さい! 技術者でなくとも、カードのデータについては長けているのでしょう!?」
真「あ…はい…」
アンヌ「…?」
アンヌが傍にあるノートPCに目を遣ると、そのモニターにスタジアムでの戦いの様子が映し出されている。
アンヌ「小町…あなたは…」
~スタジアム~
ささら「ファンデヴ!!」
カラフルな残像を残しながら走るプロトゼロ。
杖を放り投げ、ささらの突きをすり抜けてかわし…。
ささら「…?」
投げ飛ばす。
ささら「ぅああっ!!」
そのままマドレーヌに接近し…。
マドレーヌ「…! …?…ぅああっ!!」
更に投げ飛ばす。
カティア「!?」
うずめ「!?」
しめじ「!?」
カティア・小明・しめじをも一瞬の早業で投げ飛ばしてしまった。
そして上から降ってきた杖をキャッチ。
うずめ「みんな!!」
ささら「駄目だうずめ…やっぱりあいつに普通の攻撃は通用しない…!」
うずめ「じゃあどうすれば…」
マドレーヌ「連続攻撃ですわ!」
小明「プロトゼロの力は強い…」
しめじ「だから、向こうが攻撃出来ないくらいバババーンってやって…!」
カティア「最後にドカーンだよ!」
うずめ「う、うん…分かった!」
立ち上がって身構える5人。
うずめ「行くよみんな! シフトはホットドッグよ!」
5人「うん!」
うずめ「"クラッカーボール"!!」
"クラッカーボール"のカードをスキャンする。
しめじとカティアがジャンプ。
カティア「えいっ!!」
2人の投げた"クラッカーボール"が破裂。煙と破裂音でプロトゼロの視覚・聴覚を封じる。
うずめ「"パン"!! "虫めがね"!!」
プロトゼロの足元から"虫めがね"で巨大化したパンが出現。
うずめ「パン包み!!」
パンに挟まれるプロトゼロ。
うずめ「"玉ねぎ"!! "包丁"!!」
包丁を手にするマドレーヌ。同じく包丁を持ったささら・小明も同時にジャンプ。
マドレーヌ「…はぁぁぁぁぁっ!! …やぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ささら・マドレーヌ・小明の3人がみじん切りにした玉ねぎが、プロトゼロを覆い尽くす様に積もっていく。
小町「思考レベルが上がった様ね」
小町も負けずにカードをスキャン。
うずめ「"協力カノン"!!」
5人の眼前の魔法陣から"協力カノン"のパーツが出現。
その時、プロトゼロにゴーグルが装着される。
小町「素敵だわ…」
小町、更にスキャン。
"協力カノン"が完成。4人で綱を引いて発射。
カティア「!!」
ランスを構えたささらが砲身から飛び出す。
ささら「乾坤いってぇぇぇぇぇぇぇぇき!!!」
突撃が命中し、大爆発。
マドレーヌ「!? そんな…」
ささら「…あれだけやって、傷1つ付けられないなんて…!」
煙が晴れて、現れた着ぐるみ姿のプロトゼロ。ゴーグルと着ぐるみが消えて元の姿に戻る。
ささら「…くっ…!」
再び向かってくるプロトゼロに、必死で応戦する5人。
~ストラテジールーム~
真「な、何て事だ…彼女はプロトゼロを…あそこまで使いこなしているのか…」
アンヌ「ソネット亡き後に、小町がオリジナル開発者から譲り受けた、プロトゼロ…無にして虚の存在は、あらゆるドールのパターンを受け止められるの」
真「つまり、無限に強くなる可能性を秘めている…」
アンヌ「…?」
その時、真の携帯に着信が。
真「あ…」
携帯を取る。
真「かがみか? …分かった。アンヌさん、いいですね?」
アンヌ「ええ」
~スタジアム~
スタジアムに辿りついたかがみ。
かがみ「…?」
戦況は圧倒的にプロトゼロが優勢。
しかし、よく見るとプロトゼロの目に涙が…。
かがみ「…涙?」
プロトゼロになす術もない5人。
ささら「……くっ…!」
小町「これで分かったでしょ?うずめちゃん。大事な事は1つだけ。その1つに、自分の全てを懸けるからこそ、想いは叶うの。あれもこれも望むのは、ただの欲張りでわがままだわ」
うずめ「……欲張りでもわがままでもいいよ。それでも私は、大切な友達とずっと一緒にいたいもん!」
小町「残念だわ。やはりこうしないと分かって貰えないのかしら…」
プロトゼロが手を上げた瞬間…。
「待ちなさい!」
突然の声に振り返る小町とプロトゼロ。
足元めがけて飛んできた飛びくないを、プロトゼロはジャンプでかわす。
うずめ「?」
振り返ると、かがみとそのドール…ラムキュー、マゾーン、くのいち くぅ、A.S、リーリン スーパー1がいる。
うずめ「かがみちゃん!」
かがみ「こいつが友達と一緒にいたいって言うんなら…あたしはその…」
うずめ「うん! かがみちゃんと一緒にいる事も、私の希望なの!」
赤面するかがみ。
かがみ「…ぬ~! あっさり言うなお前は!!」
小町「戸取かがみ…昔のストイックなあなたの方が好感は持てたけれど…いいわよ。人はね、役割を求められた時、そして、役割が見つかった時に、最も可能性を見出すものだから…」
「じゃあ、チームリーダーも入っていいですね?」
まないが割って入る。
うずめ「まない!」
すずり、ゆがけ、うきわ、トゥネ、ポンポンも一緒。
まない「私にとって、友達は大切なものです。その悲しむ顔を見たくないから、ここに来ました」
小町「そう…それでも私は…歩みを…止めない…!」
マスカレード・カレー・ウキウキが全員揃い、15対1となって戦いは続く。
うずめ「行こう!」
まない&かがみ「うん!」
その頃、街を歩いている瑠々川みいなの元に着信が。
みいな「…?」
メールが来ていた。
その内容は、小明に担がれているささらの画像だった。
みいな「…」
~ストラテジールーム~
アンヌ「委員会の細胞達…誰でもいいから、小町を止めてくれると…」
みいなに送られた画像は、アンヌからのものだった。
真「大したものだね、君達は」
アンヌ「…?」
真「…この条件なら、99%の確率で、ソネットは復活する」
アンヌがパスワードを入力。
<Global Paradigm
~スタジアム~
吹っ飛ばされるくぅ。
くぅ「!!」
体勢を立て直して着地。
小町「数は力じゃない。たった1つでも、強く願う想いこそが力なの」
うずめ「まない…かがみちゃん…!」
まない&かがみ「うん!」
うずめ「天が呼んだか!」
まない「地が叫んだか!」
かがみ「重ね合わせるこの思い!」
3人が次々に"協力"カードをスキャン。
ささら「心の血潮に!」
ささらの頭上に三角帽子が現れ、光に包まれる。
マドレーヌ「祈りを込めて!」
カティア「やるぞ今こそ!」
しめじ「怒涛の嵐!」
小明「All for one,one for all. 」
1つずつパーツが出現して組みあがっていき、協力カノンが完成。
そこに更に…。
ポンポン「虚仮の一念!」
すずり&うきわ「岩をも通す!」
ゆがけ&トゥネ「ここで会ったが!」
くぅ&リーリン「百年目!」
チームまない&チームかがみのドール達が手作業で協力カノンにパーツを合体させていく。
マゾーン&ラムキュー「問われて名乗るもおこがましいが!」
砲身が更に延びて…。
A.S「今、必殺の!」
巨大な列車砲の形に。
うずめ&まない&かがみ「しびれる最高! 協力カノン・デラックスバスター!! ゴーゴー!!」
3人でドラムロールをしながら叫んだ直後、カノンが発射される。
ささら「チェェェストォォォォォォォォォォォォ!!!」
ランスを構え、弾丸となったささらがプロトゼロめがけて突っ込んでいく。
プロトゼロも杖を掲げ、防御の構えをとる。
ささら「ん~!!!」
プロトゼロに激突し、爆発。しかし…。
ささら「あぁっ!!」
爆煙の外にささらが弾き飛ばされる。
ささら「…くっ…!」
爆煙が晴れる。プロトゼロは無傷だった。
小町「もういいわよね? あなた達のドールのデータ、全て頂くわ」
更に前進するも、突然何かに気付いて立ち止まるプロトゼロ。
ささらの前に立ち、毅然とした眼差しで小町達を見つめるうずめ・まない・かがみ。
一方その頃…。
吉良一成の元にも、この戦いの様子の画像が届いていた。
吉良「これは…?」
アロエ「しめじ…」
車でスタジアムへと向かうみいな。
そして、山田海洋の元にも…。
山田「? この姉ちゃん、この前俺に勝った女じゃ…」
~ストラテジールーム~
真「委員会は限りなく正しい…しかし…」
アンヌ「?」
真「僕達も行こう…あの場所へ」
~スタジアム~
三笠「強いな…」
ラフレシアの君「ああ、強い…でも…」
小町「どういうつもりなのうずめちゃん…」
うずめ「ささら達は私の大切な友達なの」
マドレーヌとカティアに起こされるささら。
ささら「…!」
うずめ「見ているだけなんて出来ないよ!」
小町「プロトゼロ、排除しなさい」
うずめ「…」
ささら「ハァ…させない…!」
うずめ達の前に出るささら。
うずめ「ささら!」
ささら「はぁ…はぁ…」
ダメージは大きく、カティアに支えられて何とか歩ける状態だった。
ささら「私達はさ…所詮デジタルデータで出来た存在…簡単に消えてしまうのかも知れない…」
マドレーヌ「でも…だからこそ!」
しめじ「せめて、マスターとの繋がりを大事にしたい!」
ゆがけ「ほら!」
ゆがけに助けられて立ち上がるトゥネ。
トゥネ「ありがとう」
カティア「それが例え…」
小明「自ら望む形ではなくても…」
マゾーン「大丈夫?」
リーリン「うん」
ささらの真っ直ぐな視線が、うずめ・まない・かがみのそれに重なる。
小町「もういいわ。まとめて倒してしまいなさい、プロトゼロ」
プロトゼロは動かない。
小町「…? どうしたの、プロトゼロ…」
杖を持つ手を降ろす。
かがみ「…」
プロトゼロは完全に戦意を失い、泣いている。
プロトゼロ「……」
マドレーヌ「プロトゼロが…」
しめじ「泣いてる…」
かがみ「…あたしには分かる」
以前、うずめと戦った時の事を思い出す。
かがみ「…プロトゼロ!」
うずめに目を遣る。
かがみ「こいつが言っていたよ。自分の心を傷つけてまで、誰かと戦う必要はないって」
プロトゼロ「…」
その場にうずくまるプロトゼロ。
プロトゼロ「私は…生きたい…消えたくない…!」
本当の気持ちを口にする。
小町「プロトゼロ…」
うずめ「ねえ、小町さんがやっている事は、自分の希望の為にみんなの希望を押さえつけている事なんじゃないかな」
ささら「私達も押さえつけられていた…記憶の封印という形で」
小町「ささらは私に逆らうの?」
ささら「逆らうとか、そういうのじゃなくって…間違っていると思う」
小町「変わったのね、あなたは」
うずめ「小町さんにとって、ソネットという子は何だったの?」
小町「友達よ。大切な」
うずめ「ソネットから見て、小町さんは何だったのかな…」
小町「それは……!?」
うずめ「…友達、だよね?」
唇を噛み締める小町。
うずめ「みんな同じなんだよ。マスターとドールは決して主従関係じゃない」
小町「…ずっと…ソネットを生き返らせる為に…ただ、それだけの為に…」
かがみ「そうやってあなたも、自分の感情を押し殺してきた。ソネットだけを見て…」
まない「情が移らない様に、他のドール達を見ない様にして…」
「小町!」
小町「…」
振り返ると、真とアンヌがスタジアムに駆けつけていた。声はアンヌのものだった。
アンヌ「小町、よく聞いて! ささら達は、昔のあなたが知っているささら達じゃない。だってそこには、"うずめさんというデータ"が入ってるから…」
小町「…!」
アンヌ「だから…」
真「ドール達は、認識処理に不確定性が組み込まれている。だから、そのデータはソネット復活には使えない。もう無理なんだ」
かがみ「本当なの? お兄ちゃん」
真「ああ」
小町「そんな…じゃあ、ソネットは? 私のやってきた事は? ここまで用意したのに……! それでも駄目なの…?」
泣き出す小町。それを呆然と見つめるプロトゼロ。
アンヌ「でも他の方法を、この人が見つけてくれた」
小町「…?」
真はジャケットの内ポケットからカードを取り出し、小町に見せる。
真「これは、何のデータも入ってない空っぽの器の様なカードだ。初期型だったソネットは、ネットと常時接続していた筈。世界中に、ソネットのデータが、破片となって散っている可能性は高い。それを全て回収して、このカードに収められれば…」
うずめ「ソネットは復活出来る?」
真「あくまで可能性、でしかないけど…」
小町「正気で言っているの? 世界中のデータを回収するなんて、国レベルでも不可能よ!!」
真が小町の肩に手をかける。
小町「…?」
真「でもドールが接続していた空間なら、限られる筈だ。それに、開発者が付けたこのカードの名前…それは、"希望"!」
小町「!?」
ささら「そういう事ならさ、私達がネットの世界に飛び込んで、データを回収してくればいいだけの話でしょ?」
小町「え…?」
「ちょっと待ってくれよー!!」
小町が振り返ると、山田が観客席から手を振っている。
彼のドール…タルト・デッドライン・のほほん・しいの実・プチット、吉良とアロエも来ている。
山田「水臭いなあ! 俺達もいるぞ!」
吉良「委員長…あなたの愛に、協力させて欲しい…」
みいなもドールと共に来ている。
みいな「委員長小町、私も手伝います」
藤玖純と清水潔も。
藤玖「俺もドールの可能性と創造力を信じたい…」
清水「俺達は、明日に向かって走るしかないんだ!」
小町「でも私には、それに応えられるだけの希望を用意出来ない…」
うずめ「違うよ小町さん!」
うずめの声に振り返る小町。
うずめ「見返りはいらないんだよ。小町さんは友達だから…!」
小町「…友達…私が…?」
うずめ「それに私、会ってみたいの。小町さんが好きになった、その子に…」
小町「…」
うずめはかがみとまないに何かの確認を取る。
うずめ「さあみんな、いっくよー!!」
ドール達「オー!!」
それぞれの武器を空に掲げ、ドール達は一致団結。
うずめ「リジェクショーン!!」
ネット世界に送られるささら達。
マスター達も自分のドールをデバイスに戻し、ネット世界に送る。
そして、プロトゼロが立ち上がり…。
うずめ&まない&かがみ「…?」
小町の傍までジャンプする。
うずめ「?」
小町「…あなたも行ってくれるの?」
頷いて笑顔で見つめるプロトゼロ。
小町「…リジェクション」
三笠「羨ましいなあ」
ラフレシアの君「ああ。彼女達は今、新しい宝物を、見つけようとしているんだ」
デバイスを空に掲げるうずめ・まない・かがみ。
ネット世界。
拾ったデータを抱えて飛ぶ、かつて川越の研究所でささら達と戦ったメダーリア・デコレーション・オールデイン・デコラシオン・オルデン。
そしてチームかがみ。
レンブラント&トーキー&アプライエンス&パーフォレーション「よいしょ…よいしょ…よいしょ…よい…ああっ!!」
藤玖のドール、レンブラント・トーキー・アプライエンス・パーフォレーションがスクリプターの号令で、壁に埋まったデータをロープで縛って引き抜いている。
脇には、チャンパとバジルがいる。
引き抜けたデータは、かなり大きかった。
「大きいの発見!」
「素敵!」
みいなのドール、オフィーリア・ポンパドゥール・アンチ・ヴィヴィ・ニンフェット。
アンチが拾ったものが一番大きかったようだ。
勢いよくホイッスルを鳴らす清水のドール、バルセロナ。
バルセロナ「おら、力入れろー!!」
その仲間、アムステルダム・カーディフ・エディンバラ・エドモントンが、てこで巨大なデータを動かしている。
アムステルダム&カーディフ&エディンバラ&エドモントン「うんしょー!!」
そしてチームうずめは…。
ささら「みんな順調みたいだね」
マドレーヌ「ですがまだまだ足りませんわ」
カティア「何だかんだ言って、ネットの世界は広いからね」
しめじ「私が一番多く集めますぅ!」
小明「負けない…」
マドレーヌ「では誰が一番多く集めるか、競争ですね」
カティア「カティア負けないよ!」
小明「私も…」
しめじ「私もですぅ!」
ささら「よし、行くよ!」
カティア「はーい!」
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海岸。
朝焼けを見つめる小町と、それを遠くから見ているうずめ・まない・かがみ。
そして三笠・ラフレシアの君・アンヌ・真・みこ・吉良・清水。
うずめ「みんな…遅いね…」
まない「うん…」
かがみ「もうすぐ夜が明けるよ…」
"希望"のカードを見つめながら、小町が考え事をしていると…。
うずめ「大丈夫だよ…小町さん」
小町の隣に座るうずめ。
小町「…!」
何かに気付いた。
うずめ「?」
小町「太陽…」
吉良「おい…あれ何だ?」
うずめ「?」
うずめが振り返ると、後ろの観覧車に徐々に明かりが点いていく。
うずめ「光…?」
小町も立ち上がって観覧車の方を見る。
「マスター!!」
まない「え?」
観覧車から声をかけたのはすずり。
すずり「こっちこっち~!!」
チームまないが戻ってきていた。
オフィーリア・アンチ・ヴィヴィ・ポンパドゥール・ニンフェット。
しいの実・デッドライン・プチット・のほほん・タルト。
プロトゼロも。
そして…。
ささら「うずめー!!」
小明「マスター!」
チームうずめも戻っていた。
うずめ「ささら! 小明!」
しめじ「マスター!!」
マドレーヌ「ご主人様ー!!」
カティア「マスター!!」
うずめ「しめじ! マドレーヌ! カティア!」
観覧車の中心に、ピンクの薔薇の蕾が現れる。
その様子を、マスター達は茫然と、真・アンヌ・三笠・ラフレシアの君は笑顔で見つめている。
そして、蕾が開いていき…。
小町「…?」
花弁の中に人の姿が見える。
小町「……」
泣き出す小町。
咲いた薔薇の中から現れたソネット。ドール達が回収したデータにより、彼女の再生は成功した。
ソネットが何かを呟く。
小町「…ソネット…!」
まない・かがみも喜んでいる。
そして、うずめも涙混じりの笑顔で…。
うずめ「…うん。今日もいい1日だ!」
うずめの部屋。
机の上には、ドール達からの誕生日プレゼントと手紙が置かれている。
マスターお誕生日おめでとう
今日の日をご主人様と祝えて幸せです。
マスターだーいすき▽
うずめが立派なマスターになるのを楽しみにしています。
今度いっしょにアクセサリー作りましょ~
お誕生日おめでとうございます
最終更新:2015年02月27日 19:52