ノーマルスーツを着たクルーゼがある薬を水で飲んでいた。
オペレーター「クルーゼ隊長!プロビデンス、出撃準備完了しました!」
クルーゼ「・・・いよいよ大づめだな。ククク・・・」
クルーゼ「ラウル・クルーゼ、プロビデンス、出撃る!」
クルーゼの乗るプロビデンスガンダムが宇宙要塞ヤキン・ドゥーエから出撃した。
アラスカ攻略戦はザフトの思わぬ大敗により、膠着状態にあった戦局はいっきょに流動化した—---
ザフト軍は地上の残存兵力でバナマ基地を攻略するのも、もはや地球軍の勢力を押し止めることは不可能だった—--
地球軍は協力を拒み続けた中立国のオーブとアフリカのヴィクトリア基地を次々と攻略し、宇宙への大反攻作戦を展開していったのである。---だが宇宙においては、いまだザフト側の優位はゆるぎないものであった・・・・が、しかし—--クルーゼの手によってアズラエルにもたらされたNジャマーキャンセラーのデータが状況を一変させてしまう・・・
アズラエル「フフフ・・・これで勝てる、勝てるぞ!」
`Nジャマーキャンセラ-‘、これは読んで字のごとく、ニュートロンジャマーを無力化させる装置の事である。これにより再び地球軍はあの禁断の兵器を手にしたのである・・・
アズラエル「核はただのコレクションじゃない・・・強力な兵器なんですよ?兵器は使わなきゃ!高い金かけて作ったのは・・・使うためなんでしょ?」
ザフト軍要塞`ボアズ‘にメビウス部隊の核ミサイルが炸裂した。
アズラエル「さすがに早い早い!あっという間だよねぇ~~~ザフト自慢の要塞もさ!さ、次はいよいよプラント本国だ!これでやっと終わるよ!この戦争もさ!」
だがこの時、アズラエルは一歩踏み止まって考えるべきだったのだ—-
Nジャマーキャンセラ-の技術がいったいどこからもたらされたものだったのかを・・・・
パトリック「おのれナチュラルども!もう許してはおけん!ジェネシスを使う!!目標、地球軍主力艦隊!!」
ザフト兵「ミラージュコロイド解除!フェイズシフト展開!」
「Nジャマーキャンセラー起動!」
パトリック「地に這いつくばるブタどもに思い知らせてやれ!我々の真の力を!」
「この一撃が我らコーディネイターの創世の光とならんことを!!」
`ジェネシス‘「創世」と名付けられた兵器の発するその光は—--
アズラエル「ひ・・・・」
ジェネシスの放ったγ線レーザーがアズラエル達地球軍の艦隊を飲み込んだ。
`終末の光‘と呼ぶにふさわしいように想えた。
マリュー「何!?あの光!?」
オペレーター「強力なγ線放射を確認!!」
「地球軍艦隊の半数以上が消滅!!」
「あれはもう艦隊と呼べるようなものでは・・・・」
マリュー「何てこと・・・」
バルトフェルト「まさか・・・あれを使うとは・・・・血迷ったかっ、パトリック・ザラ」
カガリ「そんな・・・・」
アスラン「父上!」
キラ「・・・・アスラン」
絡子「地球軍の核・・・ザフトのジェネシス。一度放たれてしまえば・・・もう誰もためらわないのですね・・・それが滅びへの道と知りながらなぜ?私たちは・・・人はなぜこうもおろかな生き物なのでしょう」
キラ「でも、僕たちも同じ人なんだ・・・」
ラクス「キラ・・・・」
キラ「信じよう、人の心を・・・!きっと伝わるはずだよ、僕たちの心が・・・だからあきらめちゃだめだ・・・」
ラクス「ええ!」
マリュー「今できる私たちのせいいっぱいを・・・!」
カガリ「小さくても強い火は消えぬと・・・!」
ラクス「核も・・・・ジェネシスももうどちらも撃たせてはなりません!皆さん・・・まいりましょう」
地球軍とザフト軍の戦闘が際限なく拡大していく中で、平和を願い立ち上がった者たちもいた・・・。
地球軍脱走艦アークエンジェル、オーブ艦クサナギ、ザフト軍反乱艦エターナル・・・
彼らは誰が呼びかけるでもなく引かれ合い、一つに合流した。
そしてこの戦争に楔を打ち込むべく、戦場に身を投じていった・・・
しかしそれは、果てしない絶望との戦いであった・・・
ザフト兵「ジェネシス第二斉射!目標地球軍月基地!発射!!」
ジェネシスの第二射が月基地を壊滅させた。
ラウ「クックックッ、あっはっはっはっ!!」
ムウ(!!、そこかクルーゼ!!)
ムウのストライクガンダムが単身、クルーゼの元に向かう。
キラ「ムウさん?!」
ムウ「ちょっとヤボ用だっ、皆は先に行っててくれ!」
キラ(ムウさん・・・?まさかあの人が・・・?)
ムウ「クルーゼ!!」
クルーゼ「フン・・・ムウ・ラ・フラガ」
ストライクとプロビデンスがビームライフルを撃ち合う。
ムウ「これが望みか!?貴様のっ!!」
クルーゼ「ハ!私のではない!!これが人の夢!人の望み!人の業!!」
「他者より強く!他者より先へ!他者より上へ!!」
「競い!妬み!憎んで!その身を喰い合う!!」
ムウ「ふざけるなっ!!それは貴様の理屈!!思い通りになど・・・!」
クルーゼ「もう遅いさ!」
プロビデンスがバックバックからドラグーンの端末を分離した。
ムウ「!?」
クルーゼ「私は結果だよ!だから知る!自ら育てた闇に喰われて人は滅ぶとな!!」
ドラグーンの四方八方からの射撃がストライクの全身を切り刻んだ。
クルーゼ「フ・・・・哀れだな、ムウ!」
ムウ「うっ・・・くっ・・・・クルーゼ・・・・」
クルーゼ「しょせん子は親にはかなわぬ・・・という事か・・・・」
キラ「ムウさん!!」
クルーゼ「!!」
駆けつけたフリーダムが撃ったビームをプロビデンスがかわした。
キラ「大丈夫ですかムウさん!?」
クルーゼ「キラ・ヤマト・・・最高のコーディネイター・・・か!厄介なヤツだな君は!あってはならない存在だと言うのに!」
キラ「何を・・・!」
プロビデンスとフリーダムがライフルを撃ち合う。
大破したストライクがアークエンジェルの方へ流れていく。
ムウ「キラ・・・気をつけろ・・・ヤツの背中のあれは・・・ゼロと同じ・・・・」
クルーゼ「知れば誰もが望むだろう!君のようになりたいと!君のようでありたいと!!」
キラ「!!」
プロビデンスがドラグーンを分離し、フリーダムを攻撃する。
キラ「そんな事っ・・・・」
フリーダムはドラグーンの四方八方からの攻撃をかわし続ける。
クルーゼ「ゆえに許されない!!君という存在は!!」
キラ「くっ・・・うっ!」
プロビデンスのライフルをフリーダムはシールドで防ぐも、そこをドラグーンに攻撃された。
キラ「・・・・僕は・・・・それでも僕はっ!!」
言い返すキラの目に涙が浮かんでいた。
ザフト兵「ジェネシス一次ミラー交換作業終了まであと十分!」
パトリック「遅いぞ!急がせい!!」
ザフト兵「右舷二時方向からエターナルとオーブ艦突入して来ます!」
パトリック「ふんっ、放っておけ!反乱艦がたった二隻で何ができる!」
ラクス「ザフトはただちにジェネシスを停止しなさい!!核を撃たれ・・・その光景と悲しみを知る私達が・・・それでも同じ事をしようと言うのですか!?撃てば癒やされるのですか!?同じように罪無き人々や子供達を!」
アスラン「父上!!もうお止め下さい!!」
パトリック「アスラン・・・」
アスラン「月基地を落とした今!すでにザフトの勝利は決しました!!この上あなたは何を撃とうと言うのですか!?」
パトリック「決まっておろう・・・?地球だよ!」
ザフト兵「え・・・・」
パトリックの周りのザフト兵がざわめきだす。
パトリック「奴ら旧人類など、この際全員消えてもらった方が後の世のためだ!我らコーディネイターの創り出す新たなる世界のためにな!!」
アスラン「父上ぇぇっ!!」
アスランのジャスティスが単身、ヤキン・ドゥーエに向かった。
ディアッカ「アスランムチャだ!!いくらジャスティスでもあれだけの大軍相手じゃ・・・・」
アスラン「なぜなんだ父上!?何があなたをそんな風にした!?母上を殺された復讐ですか!?こんな事をして母上が喜ぶとでも思うんですか!?」
「答えて下さい父上!!」
ジャスティスのビームソードがナスカ級戦艦を両断した。
アスラン「父上っ!!」
ジャスティスがミーティアの全火器を斉射する。
アスラン「止めてみせる!!たとえあなたと差し違えてもっ!!」
パトリック「なっ、何をしている!?たった一機を相手に・・・数で押せ!!数でっ!!」
ザフトのMSと戦艦の集中砲火がジャスティスに炸裂し、大爆発した。
アスラン「うわっ・・・・」
カガリ「ああっ、アスランっ・・・・」
ザフト兵「ジャスティス反応消失!!」
パトリックが力無く、椅子に座り込んだ。
パトリック「あの・・・バカ息子が・・・・」
(レノアは・・・お前の母はな・・・私にとっては唯一無二の存在だったのだ・・・!レノアのいないこの世界など、私にとっては・・・・)
ジャスティスはミーティアと両手両足を失い、漂っていた。
ザフト兵「一次ミラー交換終了!ジェネシス発射シークエンスに入ります!!」
パトリック「目標地球!大西洋連邦首都、ワシントン!!」
キラ「ジェネシスのミラーが・・・!」
そこに気を取られた隙を付き、ドラグーンのビームがフリーダムの左翼を打ち抜き、破壊した。
キラ「うっ・・・」
クルーゼ「あきらめたまえ!もはや止める術はない!地は焼かれ!涙と悲鳴は新たなる争いの狼煙となる!!そして滅ぶ!人は!滅ぶべくしてな!!」
その時、上からの銃弾がプロヴィデンスの首元に当たった。
クルーゼ「!?」
傷ついたムウの乗るメビウス・ゼロが来た。
ムウ「クルーゼ!!キサマに引導を渡すのはこの俺様だああっ」
クルーゼ「ふっ、笑わせる!そんな旧式で!」
ムウ「ほざけっ」
メビウス・ゼロがガンバレルを展開する。
プロヴィデンスの撃ったライフルがメビウス・ゼロの本体を掠めた。
ムウ「ぐっ・・・まだまだあぁっ!」
メビウス・ゼロは降下していき、ガンバレルのワイヤーをプロビデンスに絡ませていく。
クルーゼ「!!ぐおっ・・・」
ムウ「つかまえたぜっ!!」
プロビデンスはメビウス・ゼロ自身と共に、ガンバレルのワイヤーで雁字搦めにされた。
キラ「ムウさん!!」
ムウ「撃てキラ!!俺がこいつを押さえているうちにっ!!」
クルーゼ「ちっ」
キラ「そんな・・・そんな事したらムウさんまで・・・・!」
その隙にプロビデンスがワイヤーの絡んでない一基のドラグーンを分離し、フリーダムを撃つ。
キラ「!」
クルーゼ「フッ・・・とんだ甘ちゃんだな、キラ・ヤマト!」
ムウ「撃てぇぇっ!!俺をムダ死にさせるつもりかっ!?キラあっ!!」
キラ「うっ・・・うわっっっ!!」
フリーダムが右肩のバラエーナ・ビーム砲を展開する。
キラ「ムウさあああぁんっ」
バラエーナ・ビーム砲から放たれた砲撃がプロビデンスとメビウス・ゼロを貫いた。
クルーゼ「ハッ!」
ムウ「それでいい坊主・・・」
プロビデンスとメビウス・ゼロが大爆発した。
キラ「ムウさん・・・ムウさんっ・・・!どうして・・・どうしてっ!!」
アスラン「キラ?」
アスランが目覚めた。
アスラン(今、キラの叫び声が・・・?夢・・・?)
大破したジャスティスはジェネシスの目前に来ていた。
アスラン「!!、ここは・・・・ジェネシスの目の前・・・?流されて来たのか・・・」
「機体の状態は・・・うっ・・・!両腕両足損傷、リフター喪失・・・ジェネレーターは生きているが、これじゃ戦闘不能だな・・・」
(・・・いや!まだあった。こいつにはまだ武器がある!取っておきのが・・・!)
ジャスティスが残ったスラスターでジェネシスの中へ入っていく。
アスラン(ジェネシス内部に潜って発射直前のエネルギーが高まった所でジャスティスの原子炉を自爆させれば、もしかして・・・)
「希望はまだある!」
「これで良し・・・後はジェネシスの発射を待つだけだ・・・」
ジャスティスはジェネシスの中心部に着いた。
アスラン「父上・・・あなたにこれ以上の罪を重ねさせはしません・・・母上・・・僕は親不孝者でしょうか・・・?違いますよね?」
(キラ・・・カガリ・・・お前たちは生きろ・・・!生きて・・・)
キラ「死ぬなっ!アスランっ!!」
そこへフリーダムが来た。
アスラン「フ・・・フリーダム!?まさかっ、キラ!!」
「来るなキラ!逃げるんだ!もうすぐここは・・・」
キラ「いやだっ!!アスラン・・・!君も一緒にっ・・・でなきゃ僕はっ・・・!!」
アスラン「キラ・・・キラ!」
キラ「アスラン!!」
アスランがフリーダムのコックピットに飛び込んだ。
そしてジェネシスが大爆発した。
パトリック「なっ、何があった!?」
ザフト兵「ジェ・・・ジェネシス内部で何かが・・・・衝撃波来ます!!」
パトリック「うわあっ」
ヤキン・ドゥーエがジェネシス爆発の衝撃波を受ける。
パトリック「何が・・・どうなっている?誰か!報告しろ!」
「!!」
パトリックが起き上がった時には、司令室はかなりの損害を受けていた。
副官「ザラ議長閣下!」
更に副官とザフト兵達がパトリックに銃を向けていた。
パトリック「なっ、何だキサマ~っ!!何をしている!!」
副官「地球そのものを撃とうなどと・・・もはや正気の沙汰とは想えない!我々はもうあなたの指示には従えない!議長・・・あなたのご子息、アスラン・ザラは立派だった・・・!その身を賭して我々の目を覚まさせてくれたのですから・・・」
評議会議員「宙域のザフト全部対に地球軍全軍に告げます!現在プラントは地球軍及びプラント理事国家との停戦協定にむけ、準備を開始しています。それに伴いプラント臨時最高評議会は現宙域における全ての戦闘行為の停止を・・・」
アークエンジェルから、トリィが飛び出していった。
マードック「うん?キラか?」
ミリアリア「あれは・・・トリィ・・・」
サイ「もしかして・・・」
この日、地球とプラント間の戦争は「双方の戦線維持困難」という形で一応の終結を見た。
カガリ「キサカ!あれを追ってくれっ!!」
ラクス「キラ・・・?アスラン・・・?」
イザーク「何だ?」
ディアッカ「トリィだよ!俺たちも行こうぜ!」
損傷したモビルスーツを捨てて戦っていた連合兵とザフト兵も、
飛んでいくトリィを見て、戦いを止めた。
そこには勝利者の姿はなく、歓喜の歌声も響きはしなかった。
誰もが疲れ切り、誰もがただ癒やしを求めていた・・・
これで平和が訪れるのか・・・?それともまた再び・・・・
それは誰にもわからない・・・
トリィは大破したフリーダムの元に来た。
キラ「アスラン・・・あれ!」
キラ・アスラン「「トリィ!!」」
アークエンジェルらが二人を迎えに来た。
キラ「アスラン・・・これで全て終わったのかな・・・?」
アスラン「いいや・・・これから始まるのさ・・・全てな!」
ただこの時・・・この一瞬だけは誰もが同じ事を願っていた・・・
世界が安らかであらん事を・・・・と―――――
機動戦士ガンダムSEDD・完
最終更新:2017年08月17日 16:28