勇者ライディーンの最終回


輝け! 不死身のライディーン




ついに、バラオは立った。
悪魔世紀の復活を夢見て、
ムートロンを手に入れんものと
今、己の全魔力を駆使して
ライディーン打倒を目指して進む──!



荒磯や大勢の街の人々が、バラオの猛攻から逃れて、山の上へ避難している。

荒磯の母「急いで急いで! 早く逃げるんだよ!」
荒磯「わあぁ~っ! つ、津波だぁ!」

街が次々に津波に飲み込まれ、さらに地上に竜巻が吹き荒れる。

バラオ「1人残らず、皆殺しにしてやる──!」

荒磯「お、俺たちの街が!?」


未来工学研究所ムトロポリスでは、(あきら)や猿丸たちが必死に分析にあたっている。

『海岸通り全滅、生存者不明!』『被害状況の確認を急げ!』

洸「猿丸、どこから攻撃しているか、まだわからんのか!?」
久造「恐るべきバラオの魔力じゃ…… この世の地獄を見せようというのか!?」
猿丸「──あった、これだ! 南南東400キロの地点です。今、スクリーンに映します!」

スクリーンに、不気味な影がおぼろげに映る。

レムリア「バラオです。あの影は、バラオに違いありません!」
一郎「ついに来たか……」
洸「バラオめぇ!」

駆け出す洸を、父の一郎が制止する。

一郎「洸、やめろ! 今のライディーンの力では、バラオは倒せん!」
洸「頼む、行かせてくれ! 俺は母さんのためにも……」
レムリア「いいえ、お父様の言うとおりです。バラオに勝つには、今はただ一つの方法しかありません」
洸「嫌だ! 俺がいる限り、母さんにそんなことはさせない。バラオは、俺が必ず倒してみせる!」

バラオを倒す切り札である超エネルギー「ラ・ムーの星」は、洸の母レムリアの命を奪いかねない代物であった。

一郎「やめんか、洸!」
洸「嫌だ、嫌だ! 放してくれよぉ!」
一郎「洸ぁっ!」

一郎が洸を殴りつけ、洸は我に返る。

一郎「まだわからないのか、洸!? 今は『俺が』『母さんが』などと小さなことを言っている場合じゃない! 我々の肩には、全地球人の命がかかっている。軽率な行動は慎むんだ!」
レムリア「洸。父さんも母さんも、覚悟はできているのです」
洸「母さん……」
一郎「我々がムートロンの力で守られていなければ、とっくの昔に全滅したろう。しかも、今までの攻撃などバラオにとっては序の口だろう」
洸「くッ……!」

街や海を襲っていた異変がやみ、周囲が異様なほど静まり返る。

東山「なぜだ? 静かだ」

突如、海上に鬼面のような不気味な島が姿を現す。

洸「あぁっ…… あれがバラオの島か!?」
レムリア「溶岩島……!」

一同がバラオの島に目を奪われている隙に、洸が駆け出す。

一郎「あ、洸!?」
洸「バラオは俺が倒す! 父さん、母さん、勘弁してくれ! (行くぞ! 俺が死んでも、バラオの息の根は止めてみせる!)」

レムリア「あの子は、バラオの力を知っても戦おうというのです。この私に、ラ・ムーの星を使わせまいとして……」
一郎「レムリア……」
レムリア「さようなら…… 短い間でしたけど、幸せでした。私には、あの子を見殺しにはできません!」
猿丸「ライディーンが出動します!」

洸の乗ったライディーンが、バラオに立ち向かう。
バラオの姿は、ライディーンをはるかに上回る数百メートルの巨体。

バラオ「ワハハハハ! お前のために滅びた一族の怨み、今日こそ晴らしてやる──!」
洸「でかい、確かにでかい!」

バラオが火炎を吐きかけるが、ライディーンはそれをかわして反撃にかかる。

洸「ジェットブーメラン!」「ゴッドミサイル!」

ライディーンが次々に武器を繰り出すものの、バラオには一向に通用しない。

洸「ゴッドバ──ド・チェ──ンジ!!」「稲妻殺法! 行くぞぉぉ!!」

ライディーンがゴッドバード攻撃を繰り出すが、逆にバラオの魔力に吹っ飛ばされ、炎に包まれる。

バラオ「ワハハハハ!」
洸「わぁああぁぁ──っっ!!」


一方でレムリアは決意と共に、人面岩の前に立っている。

レムリア「偉大なるムーの王者ラ・ムーよ── 勇者ライディーンに王の救いを── 黄泉の魔族を撃ち滅ぼし、地に永久(とわ)の光を与えられん──! ラ・ムーの星よ、ラ・ムーの星よ──!」

レムリアの声に応じ、海中からムー帝国の古代船が出現する。
船の中から、ムー帝国の象徴であるラ・ムーの星が姿を現す。

レムリア「ラ・ムーの星、ライディーンへ──!!」

ラ・ムーの星から放たれた光が、海面を照らす。

レムリア「洸、早く脱出を! 光の輪の中心へ! 光の輪の中心へ!」
洸「いけない、母さん! いけなぁい!」
レムリア「命令です── ラ・ムーの命令です。母の命令です!!」

洸が涙ぐみつつ、ライディーンを炎の中から脱出させ、光の中心を目指す。

洸「あれか!」
レムリア「ラ・ムーの星より、ムートロンへ──!

大きな水しぶきを上げ、海が真っ二つに割れてゆく。

一郎「海が、念動力で!?」
洸「か、母さん…… 一体!?」
バラオ「これが、ラ・ムーの星の力か!? ラ・ムーの星など──!」

バラオが攻撃を放つが、地面から光の壁が立ち昇り、攻撃を阻む。

バラオ「ぐわぁぁっ!」

光と共に海底が砕け、地中に眠っていたムー文明の遺跡群が、輝きと共に姿を現す。

洸「あぁっ、あの輝き! ム、ムートロンだ!!」

レムリア「ラ──・ム──!! ラ──・ム──!!

レムリアが力を使い果たし、倒れる。

バラオ「おぉっ! な、何という光だ!?」
マリ「あっ、ライディーンが!?」

ムートロンの輝きを浴びたライティーンが、バラオに匹敵する体躯へと巨大化してゆく。

洸「こ、これがムートロンの力か!? これが!?」
レムリア「ムートロンの力を一時借りたのです…… 早く! も、元の姿に戻らぬ内に…… バラオを……!」
洸「母さん……! くッ! 行くぞぉぉっ!!」
バラオ「黙れ! 小癪なぁっ!!」

超巨体となったライディーンが、バラオと互角の戦いを演じる。

洸「ビッグスピン!」「ゴッドミサイル!」
バラオ「ぐわぁぁっ!」
洸「見たか、バラオ! とどめだ! ゴッドバード・チェ──ンジ!!

ライディーンがゴッドバードに変形。
だがバラオの放った光球が命中し、ゴッドバードは炎に包まれて海に没する。

バラオ「ワハハハハ! 勝負は最後の最後まで、わからぬものよ。……むっ!?」

海に没したゴッドバードが、海底から溶岩島の下部を掘り進み、バラオの元から飛び立つ。
溶岩島から炎が吹き上がり、バラオが炎に呑まれてゆく。

バラオ「があぁぁ──っ!!」
洸「バラオの最期か……」

だが、炎の中から不気味な触手が伸び、ライディーンの足を捕える。

洸「うぉっ! 何だ、これは!? ……あっ、バラオが!?」

バラオが炎の中から、姿を現す。
下半身は樹木の生えた臓物のような、不気味な姿。
ライディーンの足を捕えたものは、その下半身から無数に伸びる触手であった。

洸「これがバラオの正体か!」
バラオ「死ねぇい!」

バラオが2本の剣を振るうが、ライディーンは必死に堪える。

洸「ゴッドミサイル!」

ミサイル攻撃で間合いがあく。

洸「ゴッドバード・チェ──ンジ!!
バラオ「おのれぇい!」

三たびライディーンがゴッドバードに変形するが、バラオの触手がゴッドバードを締め上げる。
動きを封じられたゴッドバードに、バラオが2本の剣を叩きつける。

洸「うわぁぁ──っ! ゴッド……」
バラオ「命、貰ったぁ!!」
洸「アルファァ──っっ!!
バラオ「何ぃっ!?」

念動光線ゴッドアルファが炸裂する。
ゴッドバードが触手を引きちぎり、飛び立つ。

バラオ「ライディーンめぇ!」
洸「バラオめぇぇ!!」

ゴッドバードの突撃が、バラオの下半身を貫く。

洸「ゴッドサンダァァ──!!

強烈な稲妻が、バラオの巨体をさらに撃ち砕く。

洸「行くぞ、バラオ!!」

バラオも渾身の力で、2本の剣を投げつける。
ゴッドバードの両肩に、剣が突き刺さる。

洸「ぐぅわぁぁっ!!」

なおもゴッドバードは、バラオの下半身目がけて体当たりする。
ゴッドバードが胴体を貫いてゆく。
突き刺さったままのバラオの剣が、バラオ自身の体を引き裂いてゆく。

バラオ「がぁああぁぁ──っっ!」

大きく斬り裂かれたバラオが、断末魔の叫びと共に、木端微塵の大爆発──!!
もうもうと、きのこ雲が上がる。


ついにバラオを倒したものの、洸の顔に笑顔はない。


人面岩のレムリアのもとに、一郎たちや荒磯たち。
一郎がレムリアを抱き上げる。

一郎「レムリア、しっかりしろ! レムリア!」
レムリア「ライディーンが…… 洸が、来る……」
アッちゃん「洸!」

巨大化の解けたライディーンが降り立ち、洸が地上に降り立つ。

洸「か、母さん!」
一郎「洸。母さんはな、ライディーンに勝ってもらうために、持てる力のすべてを使い切ってしまったんだよ」

一郎がレムリアを、洸の腕の中へ預ける。

レムリア「洸……」
洸「か、母さん……」
レムリア「バラオは……?」
洸「勝ちましたよ。母さんのおかげで勝ったんだよ!」

レムリアが、微かに笑顔を見せる。

レムリア「ムートロンを大切に…… 平和のために使うのですよ……」
洸「母さん!」
レムリア「あぁっ……!」
洸「母さん!」

レムリアが事切れる。

洸「母さん、死んじゃいけない! 母さん!? 母さぁん! わぁぁ──っ!!」

洸が大粒の涙を流しつつ。嗚咽する。
古代船が降りて来る。
レムリアの体が宙に浮き、古代船に積まれる。

洸「母さん…… 母さぁん! 母さぁ──ん!」

皆が涙をためた目で見つめる中、古代船はゆっくりと、夕陽の彼方へと飛び去って行く。

一郎「母さんはな、我々の知らないムーの国へ戻って行くのだ」
洸「ムーの国へ……」
久造「そうじゃ。母さんはそこでまた、きっと甦るのじゃ!」
洸「また……」

古代船の姿が消え、静けさを取り戻した海に、海鳥の鳴き声だけが残る。

洸「母さああぁぁ──ん!!」

一際大きな洸の呼び声が、海にこだまする。

一郎「洸。また明日から忙しくなるぞ。戦いは終わったが、まだ我々には山ほど仕事が残っている。新しい街を作り、ムートロンを全人類のために役立てるのだ」

泣き終えた洸が、力強く頷く。

一郎「今度はライディーンがムートロン・エネルギーの中継基地として、ラ・ムーの星とともに役立ってくれるのだ!」

レムリアの消えた海を、洸たちはいつまでも見つめ続ける。


(終)

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最終更新:2017年08月29日 19:24