イノセントの中で独裁を目論む男、カシム・キングとその一党との最後の決戦に臨みます、ソルトと、アイアン・ギアーと、ザブングルとギャリア達。 さて、最終回を! |
ジロン「攻撃は3つに分かれる! まずラグのアイアン・ギアーは、左翼の艦隊を狙う!」
ラグ「あいよっ! ポイントごと踏み潰してやるよ!」
ジロン「ビリンとマリア達ソルト隊は、側面から援護だ!」
ビリン&マリア「了解!」
ジロンは愛機ウォーカー・ギャリアの頭部側面に座り、マイク片手に作戦指示をしている。
ジロン「残りのWMは、俺と一緒に正面から攻撃だ!」
「ちょっと待った!」
待ったをかけたのはメディック・ヘルト。
ジロン「何だいメディックさん!」
メディック「Xポイントの中には、カシムについてないイノセントだっている筈だ。皆殺しは良くないぞ」
ダイク「確かにな。罪のない者まで傷つけるのは気が進まん」
ラグ「へぇ~」
照れ臭そうに笑うダイク。
ダイク「ぎゃは! 我ながらキザ!」
一方その頃。
デラバスギャラン級LSギブロスのブリッジから、ティンプが葉巻をふかしつつ双眼鏡でソルトの様子を見ていた。
ティンプ「あの兄ちゃんめ、いつの間にあれだけの数を揃えやがったんだ…」
「艦長、戦闘配置完了しました」
副官のギロ・ブルが状況報告をする。
ティンプ「武器弾薬の補給は?」
ギロ「そ、それが以外に渋くて…」
ティンプ「ケッ、ビラムの奴め…!」
Xポイント・通信室。
ティンプが、イノセント1級司政官ビラム・キイに補給を要請している。
ティンプ「ビラム司政官! 俺達を防弾チョッキ代わりにしようってのに、補給をケチるとはどういうこった!?」
ビラム「ケッ、キッド・ホーラとの連携作戦に失敗しておいて、今更何を言う!?」
ティンプ「俺の責任じゃねえ!!」
ビラム「アイアン・ギアーを潰したら、ミサイルをやる!」
アイアン・ギアー・ブリッジ。
ジロンがマイクでXポイントに呼びかける。
ジロン「え…えーと、ん…」
ブルメ&ダイク&ラグ&コトセット「よっ!」
ジロン「えー、俺はジロン・アモス。シビリアンだ。イノセントが全部悪いとは思っちゃいない。アーサーさんから全部教えてもらったからね」
Xポイント各所から煙が上がっている。
ドームの格納庫内で外に出る準備をしている司政官と住民達。
ジロン「俺達と戦いたくない者は、脱出しろ。Dr.マネの医療グループには、生体強化の為の技術がある筈だ。それさえ受ければ、ドームの外でも暮らしていけるんだろ?」
外で、ホーラとゲラバ・ゲラバが様子を伺っている。
ゲラバは下がピンクのビキニパンツ一丁のまま。
ホーラ「ジロンめ、カッコつけやがって…! あれは俺がやりたかったんだ!」
悔しさの余り何度も岩に両拳を叩きつける。
その脇を1匹の砂トカゲが通り過ぎる。
Xポイント・通信室。
ビラム「バカめが…何様のつもりだ…!」
その時、カシムから通信が…。
カシム「ビラム!! 黙らせろ! 反撃しろ!!」
アイアン・ギアー・ブリッジ。通信を終えて一息つくジロン。
ジロン「ふぅ…話通じたかな?」
ラグ「通じた通じた! ほら!」
ドームから、司政官と住民を乗せた多数の飛行機や飛行船、気球が脱出していく。
チル「わあ! 空飛ぶ機械がいっぱい!」
ジロン「へぇ~、カシムに従いたくないのがあんなにいるのか…」
その時、ドームからのミサイル射撃で、脱出した飛行機の一部が撃墜されてしまう。
ジロン&ラグ&ブルメ&ダイク&チル「!?」
コトセット「仲間を撃ち落とすのか!?」
ラグ「カシムめ何て奴なの!?」
アイアン・ギアーがドームに対し艦砲射撃をかける。
その合間を縫って、数発のミサイルがアイアン・ギアーの停留している崖に命中。ソルトの兵士達もその直撃を受ける。
ソルト兵達「うわああぁぁっ!!」
ジロン「総攻撃をかける!!」
ラグ「反撃だよ!」
出撃しようと一斉に駆け出すジロン、ラグ、ブルメ、ダイク、チル。
外でソルト兵を鼓舞するマリア。
マリア「ソルト隊、銃を持て! カシムを倒せば恐れるものはないわ!!」
ギャリアに乗り込んだジロン。
ジロン「前進だ! いいなエルチ!」
エルチはザブングルのコクピットに。
エルチ「いいわよジロン! (全ての悪の源、カシム・キングはあたしの手で倒してみせるわ!!)」
ソルトのLS、及びWM部隊が弾幕を張りつつ進軍する。
兵士達もまた、雄たけびと共に一斉にドームへと向かっていく。
そしてアイアンギアーの甲板から、ガルロの乗ったトラッド11が飛び降りる。
小競り合いが続く中、レッグで戦場を駆けるビリン。
ビリン「やられるか!!」
ビリンのレッグが、ブラン編隊を機銃で撃破。
ソルト隊の攻撃に蹴散らされるイノセントのヒューマノイド隊。
進撃するイノセントのダッガー編隊。
ジロン「エルチ! 俺はダッガー隊をやる!」
舌なめずりをする。
ジロン「ついて来るか!?」
エルチ「どうぞ、ジロン!」
ジロン「よし!!」
ギャリアがバズーカを持って出撃。
エルチ「あたしも!」
ファットマンもトラッド11で出撃。
ギブロス・ブリッジ。
兵士にハッパをかけるティンプ。
ティンプ「もっと引き付けてから撃て!! 後には回りこめないんだからな!!」
ギロ「ドラン!! 上空から迎え撃て!!」
ギブロスからドランが、ドームからカプリコの部隊が出撃。
空からホバギーで襲い来るヒューマノイド達を迎撃するソルト兵。
ギャリアのバスーカがカプリコを撃破。
ジロン「数を出せばいいってモンじゃないの!!」
バズーカでホバギーを叩き落とす。
ソルト兵のバズーカがダッガーの足元に当たって動けなくなり、操縦者が脱出。
「うわああっ!!」
進軍するギャリア、ザブングル、そしてソルトWM部隊。
その時、ザブングルが躓いて転ぶ。エルチの洗脳の後遺症からくる操縦ミスだろうか。
ジロン「エルチ! まだ無理だろ!? 下がっていろ!」
エルチ「あたしはイノセントの人形じゃないわ!! 戦える!! 言ったでしょ? あたしはエルチ・カーゴだって!!」
ザブングル、立ち上がってライフルを発砲。ドランを撃墜。
エルチ「おわかり? ジロン」
ジロン「了解! ならば!!」
ギャリアも負けじとダッガーを次々撃破。
アイアン・ギアーで砲撃手をしているダイク。
ダイク「この!!」
艦砲射撃がドランを撃墜。
砲座内のローズ夫人とルル&ミミ&キキ。
ローズ「何でもいいからもっと撃ちな!!」
ルル&ミミ&キキ「はーい!」
更にドランをもう1機撃墜。
一方、ホーラとゲラバは…。
ホーラ「何でこんな時に出て行けねえんだ!!」
林の中を進むソルト。
ティンプ「えーい右からも来やがったか!! ボヤボヤするな!! 右翼部隊を狙え!!」
ソルトと、ティンプ配下のブレーカー達との激しい銃撃戦。
ソルト兵「うわあっ!!」「うおおっ!!」
一方、ビリン達左翼部隊は林の中を進撃中。
ビリン「左翼、突入します。アイアン・ギアー、ギブロスを引きずり出して下さい!」
ラグ「了解! コトセット前進!」
コトセット「了解!!」
ティンプ「雑魚はいい!! WMに気をつけろ!! ビラムにアイアン・ギアーを叩けって言え!!」
ギロ「ミサイル発射して下さい! どうぞ!!」
ビラム「何だと!? まだ仕留められんのか! ミサイル!!」
司政官「はっ!」
ドームからミサイルが発射。
ラグ「ミサイルだよ!」
コトセット「どっから来るか分かんないのに避けんの!?」
文句を垂れつつ面舵いっぱい。
しかし、ミサイルは突然方向転換したり、ぶつかって相殺したり、地面に突き刺さったり、果ては味方の方向に…。
ブレーカー達「!?」「俺たちゃ味方よ!!」「うわあぁぁっ!!」
ギブロスに直撃。ブリッジのティンプ達も衝撃で転倒。
ティンプ「ぅああっ!!」
その様子を見て笑うブルメ。
ブルメ「わははっ!! 相変わらず当てになんないミサイル使ってさ!」
エルチ「ジロン! 突入のチャンスよ!!」
ジロン「よーしきた!!」
モニター越しのビラム相手に怒鳴るティンプ。
ティンプ「ビラム!! どこまで俺達の足を引っ張る気だ!? もう頼まん引っ込んでろ!!」
ビラム「それが雇い主に向かって言う言葉か!? 下賎なブレーカーの分際で何をほざく!!」
ティンプ「何ィ!?」
カシムが通信に割り込む。
カシム「ビラム! 連中は防衛線を突破したぞ! 何とかせんか!!」
ビラム「あんたこそ何もしてないなら銃ぐらい持ったらどうです!?」
カシム「それが上司に対する口の聞き方か!?」
ティンプ「フフフ…」
突然口喧嘩を始めたカシムとビラムの横でティンプが笑う。
ティンプ「だからさビラム、戦争はプロに任せてすっこんでな!」
ビラム「イノセントが生き残るかどうかの瀬戸際だ! お前達だけに任せておけるか!!」
カシム「えーいうろたえるな!! 見苦しい! たかがシビリアン共の寄せ集めではないか!!」
ビラム「彼等をここまで増長させた責任を棚に置いて、ちぇっ!」
カシム「貴様の様な役立たずを信じたワシが間違いだったと分かったよ!!」
ティンプ「この場に及んで責任のなすり合いかよ!?」
ビラム「貴様は戦え…」
その時大きな揺れが…。
ビラム「うぉっ!!」
ティンプ「うわあぁっ!!」
砲撃を受けるドームとギブロス。
ジロン「このまま砲撃を続けて前進だ!! 弾をケチるなよ!!」
ファットマンとブルメのトラッド11が砲撃する。
ティンプ「野郎~! そう簡単にいくかよ!! ありったけの弾をぶち込んでやれ!!」
ギロ「へい!」
ティンプ「WMもな! へっ、その上で適当な頃を見計らってとんずらするぜ…!」
押し寄せるイノセントの残存部隊の攻撃を、身をかがめて耐え忍ぶギャリア以下ソルト隊。
ブルメ「これ以上進めねえぞ! どうする、リーダー!?」
ジロン「敵も必死だ! 無理に突っ込めば、犠牲が大きくなるだけだ! チル、ラグに連絡しろ! もっと援護を厚くしてくれって!!」
チル「OK! ラグ~助けてよ~!!」
ホーラ「えーい! いいところなのに何故出られねえんだ!?」
ゲラバ「は~っくしょん!!」
ゲラバのくしゃみに驚いて逃げる砂トカゲ。
一方、チルの連絡を受けたアイアン・ギアーでは…。
ラグ「分かったよチル! コトセット、やって見せな! アイアン・ギアーの必殺戦法!」
コトセット「そんなのあったっけ!?」
ラグ「普通こういうのには必ずあるんだよ。ドーンて奴がさ!」
コトセット「ああ、アレ? かなぁ…」
戦火の中、アイアン・ギアーがLSから超巨大WMへと変形。
コトセット「へんけぇぇぇい!! 完了!」
ラグ「よーし! 最大パワーでウルトラジャンプだ!」
コトセット「出来ると思うの?」
ラグ「だからさ…」
コトセットの耳元で何かを囁く。
コトセット「…ハハハハハ…マンガだからね!」
アイアン・ギアーの足元から凄まじい土煙が上がる。
そして、機体各所のノズルを噴射しつつ大ジャンプ。
ラグ&コトセット「ハハハハ!!」
ラグ「やったー!!」
コトセット「飛んだー!! 飛んだじゃないか!!」
泣いて抱き合って喜ぶ2人。
ティンプ「ヘヘヘヘ…奴等の足が止まったぜ。よーし! まずジロンのWMから…!?」
アイアン・ギアーの急接近に驚く。
ティンプ「な…何と…」
通信機を落とす。
ギロ「どうしましたボス?」
アイアン・ギアー、もう一度ジャンプ。
驚きの余り、ティンプに抱きつくギロ。
ギロ「あ…ああ…!!」
ティンプ「!!」
更に肉薄するアイアン・ギアー。
ティンプ「あれが、アイアン・ギアーだと!? バカな…!!」
驚きの声をあげるソルト兵とブレーカー達。
そしてアイアン・ギアーは砲撃しつつ前進。
後ずさるティンプと、彼の左腕にしがみ付くギロ。
ティンプ「じ…冗談じゃねえ!! おい、後退だ! ドームの中へ避難しろ!」
ギロ「駄目ですよポイントは我々を締め出してます!」
逃げ惑うイノセントWM隊。
ラグ「よっしゃ!! アイアン・ギアー飛べ~!! Xポイントを踏んづけろ~!!」
120mを超えるアイアン・ギアーの巨体が雄々しく宙を舞う。
そしてドームの真上に落下。重量で地面を突き破る。
カシムはその衝撃で、執務室の椅子から転げ落ちていた。
カシム「……アイアン・ギアーか!?」
ビラム「ありゃもう…駄目そう…」
撃ち合いを繰り広げるアイアン・ギアーとギブロス。
ブレーカー達「うわああぁぁっ!!」
ティンプ「クソッ…! 持ち場を離れるな!! 徹底抗戦だ!!」
そそくさと持ち場を離れる。
ギロ「逃げるんならあっしも!!」
ティンプ「バカモン!! ブラッカリィで兄ちゃんをぶっ飛ばすんだ!!」
一方ジロンは…。
ジロン「アイアン・ギアーの開けてくれた突破口から、Xポイントに入る!!」
エルチ「了解!」
マリア「ビリン! あたしから離れちゃ駄目よ!」
ビリン「ふぅ~、よく言うよマリア!」
ソルト兵達「遅れるなよー!!」「うおぉぉぉぉぉ!!」
アイアン・ギアーの援護を受け、攻撃しつつドームに向かうザブングル、ギャリア、トラッド11。
チル「ジローン! 敵の奴等みんな逃げてくわさ!!」
ジロンの眼下には、撤退していく数多のブレーカーが。
ジロン「金で雇われた連中なんて、みんな最後はこうさ…」
チル「わぁぁ…ジロン! エルチが!!」
今まさに崖を登りきろうとしているザブングルと、あと一息のところで登りきれずにジタバタするファットマンのトラッド11。
ジロン「エルチ! 早いぞ! 焦るなと言ったろ!?」
両機共登りきったところに、ティンプのブラッカリィが待ち構えていた。
エルチ「!! ティンプ…!」
ティンプ「ご苦労だったな姉ちゃん…疲れたろう」
ファットマンがブラッカリィに果敢に向かっていくも、軽くあしらわれてしまう。
エルチ「ファットマン!」
ギャリアも追いついた。
エルチ「ジロン! ファットマンが!」
足蹴にされるトラッド11。
ジロン「ティンプか…!」
ティンプ「来たなー!! てめえだけは何としても!!」
ギロ「ボス、ここは逃げた方が賢いですよ、数が多いや…」
ティンプ「うるせー!! てめえには男の面子ってモンがねえのか!?」
ギロ「…多分」
様子を見ていたラグは…。
ラグ「ジロン…ティンプ…」
マイクを取って…。
ラグ「中央ドームの下を狙え!! ザブングルを援護しろ!!」
肩の砲塔で、ブラッカリィめがけて援護射撃を放つ。
ティンプ「やらせるかよぉ!!」
ジロン「!?」
エルチ「えーい!!」
ティンプ「おぉぉぉ!!」
エルチ「あたしはまともよー!!」
ブラッカリィの胸部機銃からの砲撃を防御するギャリア。
ザブングルも援護射撃しつつ後退する。
エルチ「ジロン! 任せるよ! あたしはカシムを追い詰める!」
ギャリアにブラッカリィのパンチが炸裂。
ティンプ「!!」
ジロン「ぅわあああっ!!」
落ちそうになるが…。
ジロン「くっ、この!!」
何とか堪えて、仕返しにパンチを一発。
ティンプ「うぉぉっ!」
そのままドームへ向かうギャリアに、しつこく迫るブラッカリィ。
ティンプ「待てぃ!!」
ジロン「この…!!」
足にしがみ付くブラッカリィを振り落とそうとする。
ティンプ「小僧!! 今日こそは逃がさねえ!!」
ジロン「…えーい!!」
斜面を滑り落ちるブラッカリィ。
ティンプ「うわああああぁぁぁっ!!」
壁に円状に穴を開け、パンチでぶち破るエルチのザブングル。
その様子を見ていたカシムは…。
カシム「ビラム! 奴等はとうとうドーム内に侵入してきたぞ!! ビラム!!」
モニターに映る通信室にビラムの姿はない。
カシム「な…あ、あれ? やだ…負けそうあっちもこっちも…クソぉ…! ビラム!! どこへ行った!?」
執務室を去る。
一方、司令室を抜け出したビラムは下っ端司政官2人を引き連れて、侵入してきたソルト兵から逃れつつドーム脱出を試みている。
ソルト兵「お前達は向こうだ! 司政官かカシムを見つけりゃいいんだ!!」
ビラム「ソルトめ、遂に…遂に!!」
ドアの開いたところに駆け込もうとするが、ソルト兵に気付き、急いで別のドアに入り込む。
ソルト兵の1人が、物音に気付いて立ち止まり、怪しげにドアを見つめる。
そしてビラム一行が入り込んだ部屋の奥、3人はシャッターが開いて現れたザブングルに驚いて逃げてしまう。
エルチ「見ーつけた!」
逃げる3人も、ザブングルにドック内へと追い詰められてしまう。
エルチ「ビラム! お礼はたっぷりさせて貰うから!!」
ビラム「や、やめろ…私はカシム・キングの命令通りに動いただけだ!」
「見苦しいぞビラム!」
カシムの声が。
カシム「お前の魂胆がよく分かった。エルチ共々始末してやる!!」
ミサイル発射台が作動。
エルチ「カシムは何処!?」
ミサイルの標的はザブングル。
カシム「野蛮で下品なシビリアンと身勝手なイノセント! 丁度いいわ!!」
エルチ「ヒヒ親父め!!」
カシム「死ねぇ!!」
発射された2発のミサイルがドック内を飛び回る。逃げ惑うビラム一行。
ビラム達「だああぁぁぁっ!!」
追い討ちとばかりに更に4発発射。うち1発がザブングルの足元に命中。
閃光に目を覆うエルチ。
エルチ「うわあああぁぁぁっ!!」
カシム「うぇあはははははは!! さあシビリアンめ、滅んでしまえぇぇへへへへへ!!」
ビラム達「…?…ぅわああぁぁぁっ!!」
ミサイルが次々とドックの壁に命中。
ザブングルの背後には大型ミサイルが…。
エルチ「あ! 大型のミサイルが…!」
ミサイル着弾の衝撃で大型ミサイルが倒れる。
エルチを見つけたファットマン。
ファットマン「エ・ル・チィィィ!!」
彼女を助けんとばかりに猛ダッシュ。
ビラム&司政官「…!」
大型ミサイルがカシムのいるドックの管制室に向かって倒れていく。
カシム「…な…何でワシに向かって落ちてくるんだ…!! うわあっ!! ゎあああぁぁっ!!!」
逃げても時既に遅く、ミサイルが爆発。
ビラム「うわああああぁぁぁぁぁっ!!!」
諸悪の根源カシムと、その元・腰巾着だったビラムが爆死。
エルチ「ぅはあっ!! ああああぁぁぁっ!!!」
爆発の閃光とキャノピーの破片で、エルチは両目を負傷してしまう。
ファットマン「うおおおおおああぁぁぁぁっ!!!」
ファットマンの決死の飛び込みに押され、その勢いと爆風で、ザブングルは背後の穴へ。
ファットマン「エルチィィィィ!!!」
爆風に飲まれていくファットマン。
ドックだけでなく、至るところで爆発が起こる。
ブルーストーン貯蔵庫内の大量のブルーストーンが爆風で外に巻き上げられ、雨の様に降り注ぐ。
ラグ「ブルーストーンだよコトセット!」
コトセット「Xポイントの中心をやっつけた証拠だ!」
ラグ「全ソルト隊へ! Xポイントを乗っ取れー!!」
ブルーストーンの1つがラグの頭にぶつかる。
ラグ「あいてっ!」
目をこするエルチ。しかし…。
エルチ「……? ……見えない…目が……まだ…イノセントは…いる筈だった…! 何も…これじゃ…これじゃ…!」
瓦礫につまずいて転倒するザブングル。エルチはキャノピーのないコクピットから落ちてしまう。
エルチ「ああっ!! クソぉっ!!…!! 負けるかぁっ!!」
目の見えない状態で何度もコクピットに戻ろうとするも、その度に頭をぶつけてしまう。
エルチ「クソぉっ!! …!!」
後跳びで何とかコクピットに戻れた。
エルチ「こ…こんな…こんな事ぐらいで……こんな事ぐらいでエルチ・カーゴが負けてたまるかよぉぉぉ!!」
その時…。
「フン…たまんなく好きなんだよね…そういうのさ」
現れたのはティンプ。
エルチ「何ィ!?」
ブラッカリィに首を掴まれるザブングル。
エルチ「!!」
ティンプ「そんなんで長生きすんなぁ可哀想だからよ、ひと思いに殺ったるぜ!!」
エルチ「ティンプ・シャローン…ま、まだいたのか!!」
ギロ「ねえねえ、それも可哀想じゃないの…」
ティンプ「バカ言え!! ここで手え抜いたら、こっちが危ねえんだよ!!」
「そうだな、ティンプ!」
ザブングルの後からジロンのギャリアが。
ティンプ「クソぉ! 性懲りもなくちゃんと現れるんだな!! しかし! 下手に動くと可愛いエルチ嬢ちゃんが蜂の巣になるんだがな」
機銃をザブングルの頭部に向ける。
エルチ「こ、この!!」
ジロン「ティンプめ…!」
ティンプ「そう熱くなるなって兄ちゃん。このお嬢ちゃんと引き換えにアイアン・ギアーを頂いてずらかるだけよ」
ジロン「本当にそれだけか!?」
ティンプ「おうよ! 今更殺し合いをしたところで一文の得にもなりゃしねえからな!」
エルチ「ジロン駄目! 甘い言葉に乗っちゃ! あなたの両親を虫ケラの様に殺した男よ!」
ティンプ「うるせえ黙ってろ!! 兄ちゃん、分かったろ。大人しく道開けて背中向けな」
ジロン「分かったよ!!」
反転するギャリアにブラッカリィが機銃を発砲。
エルチ「ジロォォォン!!」
回避。
ティンプ「もう一息だ!」
その時、ブラッカリィの顔面に銃撃が…。
ティンプ「うわあっ!!」
ブラッカリィにマシンガンを浴びせるダイク、ビリン、マリア、ソルト兵。
ビリン「やらせるもんか!!」
ブルメが鎖に捕まってターザンジャンプしながら拳銃を連射。
ブルメ「ティンプ、最後だ!!」
ティンプ「野郎~!! 時間稼ぎしやがって!! くっ!!」
ラグ「ひゃっほう!!」
ラグもターザンジャンプでマシンガンを連射。
ティンプ「クソッ!!」
ティンプも拳銃で応戦するが、ブルメとラグにコクピットに飛び込まれ、殴り合いの大喧嘩に。
ジロン「これで最後だ!!」
チル「行けぇぇぇぇ!!」
ギャリアの跳び蹴りがブラッカリィに炸裂。
吹っ飛ばされたブラッカリィが地面を滑っていく。
コクピット内ではラグがギロの頭に噛み付いて首を絞め、ブルメもティンプにしがみついている。
ラグ「ああっ!!」
そのまま壁に激突。目の前にギャリアが着地。
ティンプ「これ以上ガキの相手はしてられねえ!! この!」
足にしがみ付いているブルメを蹴飛ばす。
ブルメ「ぅわあっ!!」
ティンプ「兄ちゃん! 今日はここまでだ! また会おう…!」
マントを翻し、プラッカリィから飛び降りようとした瞬間滑ってしまう。
ラグ「もうあるわきゃないんだよ!!」
ティンプ「ホーラと違って!俺ぁ不滅だぜ…!」
捨て台詞を残し、走り去る…が、転んで帽子が脱げてしまい、拾わずにそのまま去っていく。
ダイク「ぅおおお!! やったー!!」
マリア&ビリン「ははは…やったー!!」
歓喜の声をあげるソルト兵達。
戦いはソルトの勝利に終わり、イノセントの支配体制は覆された───。
ホーラ「クソぉ…! 一番いいところに出ていかれねえじゃねえか!!」
ゲラバ「…は~っくしょん!!」
結局、ホーラとゲラバは戦闘参加のチャンスを完全に逸してしまった。
ブルメ「この! この! この!…」
ギロ「ボス!! 酷いよ!! 助けて~!!」
ブラッカリィのコクピットで、ラグとブルメにボコボコにされているギロ。
ダイク「おーい!! ジローン!! ラグ!! ブルメー!! 大丈夫かー!?」
ダイク、マリア、ビリンが駆けつける。
エルチ「ファットマン! ファットマンはどこ?」
マリア「エルチ! もう頭は痛くないの?」
エルチ「ファットマンを知らない?」
ジロン「俺は見てない。ダイクは?」
ビリン「ファットマンさんは…」
ジロン「え?」
ダイクはファットマンの服の切れ端を手に持っている。
ダイク「これが落ちてた…」
ジロン「ファットマンの…」
エルチ「ねえ、ファットマンはどうしたの? いないの?」
ジロン「何?」
ラグ「エルチ…」
ビリン「エルチさん…」
ダイク「どうしたんだ…」
マリア「エルチさん…」
ブルメ「無事で良かったじゃない」
ダイク「こ、これが見えないのか?」
ブルメ「ファットマンのか? …見えない? エルチ…!」
エルチはダイクが差し出したファットマンの服の切れ端を手探りで手に取り、両手で握り締める。
エルチ「…ファットマンの匂いが…する……ファットマン…ファットマン!!」
膝をついて大泣きしてしまう。
エルチ「ぅああああぁぁぁぁぁ…!!」
そして夕方。
ソルトの勝利を祝い、宴が催されている。
そんな中、チルがラグ達のところに来る。
ダイク「どうしたチル?」
チル「エルチがいないって、ジロンが探しに行って……ずっと帰ってこないって…うっ…」
ダイク「何言ってんだ?」
ブルメ「お前も食えよ」
走り寄るチル。
チル「エルチがいないって、ジロン探しに行ったんだわさ!」
ダイク「エルチがいなくなった?」
チル「うん」
ブルメ「何でだよ」
ラグ「あたし達に迷惑かけちゃいけないってさ…自分から気を利かして出てったんだろ?」
ダイク「あり得るな」
ブルメ「エルチそういうとこあるもんな。責任感じてさ」
チル「ラグいいの? 追っかけなくて!」
ラグ「いいんだよ。チルも何か食べなよ」
チル「薄情モン!! 人でなし!! ジロンは1人で追っかけってたんよ!!」
ラグがチルをぶつ。
チル「わああっ!!」
ラグ「チビはさっさと寝ちまえばいいんだよ!!」
チル「うわあああああん!! うわあああああん!!」
「チルちゃん、何泣いてんの?」
声をかけたのはローズ。
チル「あ、おばちゅわん! ゎああああん…」
ローズに走り寄り、泣きつく。
ローズ「あーあ、よしよし…」
歯を喰いしばるラグ。そして顔を伏せて…。
ラグ「…ジロンのバカ…!」
ジロンはエルチの事が好きだったと知り、悔しさを堪えるラグをただ黙って見つめるブルメとダイク。
夜の荒野を彷徨うエルチのザブングル。
エルチ「みんなに迷惑をかけて…これからもみんなの足手まといになるなんて…あたしは嫌よ…もう誰にも会いたくない! …あ…?」
エンジンの調子がおかしい。
エルチ「もうガス欠なの? そんな…」
手前のレバーを何度も引く。
しかし、とうとうザブングルは動かなくなってしまった。
エルチ「プラグかな…」
動かないザブングルを嘲笑うかの様に、狼の群れの遠吠えが響き渡る。
心細さに泣き出すエルチ。
エルチ「………ぁあああああああん!! ジロォォォォン!!」
「あいよっ!」
エルチ「!?」
遠くからジロンのギャリアが。
エルチ「まずい…かかれ…!」
エンジンはかからない。
ジロン「エルチどうしたんだ! 1人で出てったりして!」
エルチ「せっかく決心出来たのに…!」
しばらくしてエンジンがかかり、ザブングルが走り出す。
ジロン「ああ!? 何で逃げるんだ!!」
ギャリアがザブングルに追いつきそうになると、急にザブングルがスピードアップして突き放す。
しかしギャリアも負けじとスピードアップ。
ジロン「エルチ! 俺だよ! お前のジロンが追いかけてきたんだよ!!」
エルチ「何1人勝手に決めてんの!! …止まれないわ…今止まったら二度と動けなくなる…ジロンの傍から…」
岩につまづいてザブングルが転倒。コクピットからエルチが放り出される。
エルチ「!? わああああああぁぁぁぁっ!!!」
ジロン「ゎあぁっ!? エルチ!!」
エルチを受け止めようとギャリアがジャンプ。
ジロン「落ちるなあぁぁぁぁっ!!」
エルチ「ジロン・アモス!! さよならぁぁぁぁっ!!!」
落下寸前のところで、滑り込んでエルチをキャッチ。
ジロン「…! エルチ!!」
エルチ「ジロン…!」
ジロン「エルチ!!」
ジロンはコクピットから降り、腕の上を走って掌の上のエルチに駆け寄る。
ジロン「…見えないままで、1人で暮らすなんて無理だよ…エルチ…俺だって、エルチの手足と目の代わりぐらい出来るぜ?」
エルチ「でもあたし…みんなに迷惑かけた…」
ジロン「お前は…俺が嫌いか?」
エルチ「…嫌いなわけないでしょ?」
ジロン「アイアン・ギアーの連中や、ソルトの連中は?」
エルチ「嫌いなわけないじゃない!!」
エルチの両肩を掴んで…。
ジロン「じゃあ決まりだ」
エルチ「…ラグが…ラグが可哀想よ…」
ジロン「ラグは強い子だ。死にゃあしない」
お姫様抱っこして、そのまま2人はキスをする。
そしてジロンはギャリアからジャンプして離れ、走り出す。
しばらくすると、向こうの山から朝日が顔を出す。
ジロン「?」
2人の正面の遥か先から、チルを先頭にアイアン・ギアーとソルトの仲間達が走ってきている。
チル「ジローン!!」
ジロン「おぉぉぉぉぉい!!」
エルチも手を振って応える。
チル「ジローン!! エルチー!!」
遠くから猛ダッシュしてくる影。それがチル達を横切る。
ジロン「?」
その影は何と、死んだと思われていたファットマンだった。
ファットマン「エルチィィィィィ!!」
ジロン「あ、ファットマンだ! ファットマンだよ!!」
エルチ「ファットマーン!!」
すかさずジロンからエルチをかっさらうファットマン。
ジロン「? あ…」
エルチをお姫様抱っこしたままUターンしてジロンに並ぶ。
ジロン「はっはっはっは! はっはっはっは!!」
ラグ「…!」
ラグはジロンに飛びつき、そのまま抱きしめてキスする。
ジロン「…?」
ラグ「はっはっはっは…!!」
ジロン「こいつ! はっはっは…!!」
チルはジロンに肩車され、仲間達が揃って一緒に走る。
そして、ホーラもゲラバも、ティンプまでもが。
次々に流れていく、ジロンと仲間達が旅路で出会った人々の面影。
最後はカシムが…。
カシム「ハッハッハッハッハ…!」
最終更新:2015年02月27日 19:48