破裏拳ポリマーの第1話
夜の美術館。
異形の装備と仮面に身を固めた怪盗集団が侵入する。
警備員たち「なんだ、今の音は?」「あぁっ!?」
怪盗集団がムササビのごとく宙を舞って館内に飛び込み、警備員たちをたちまち全滅させる。
彼らの目指す先は、展示品の黄金の仏像。
「フフフ。黄金の仏像、むささび党が確かに頂いた!」
街中に、国際警察庁の高層ビルがそびえ立つ。
(この立派なビルは国際警察庁。おっかないところだよ。ま、世界中の警察の中で一番、偉いところだと思えばいい。そうそう、ここの長官・鬼河原虎五郎って人が、またおっかないんだ)
鬼河原虎五郎長官こと通称・鬼虎が、大統領補佐官に謝罪している。
補佐官「鬼河原長官! 大統領閣下は大変なご立腹ですぞ!」
鬼虎「なんともはや、面目ございません。怪盗むささび党は、この鬼河原虎五郎が責任を持って、必ず……」
補佐官「当たり前だ。あの金の仏像は、東洋のある国との友好親善の現れとして頂いたものだ。ヘタをすると、我が国との友好にヒビが入ることも考えられる」
鬼虎「わかっております! 私の命に代えましても、必ず取り戻して見せます」
補佐官「世界に誇る国際警察庁の長官たる君が、そうたるんどっては我が国の恥ですぞ!」
鬼虎「はい! 全力を挙げて捜査しますので、もうしばらくのご猶予を……」
その様子を三流私立探偵・車 錠が、探偵事務所から望遠鏡で覗いている。
車「事件だな? ふぅむ、大統領補佐官が直々に国際警察へ来るとは、かなりの事件だなぁ……」
考えながら室内を歩いていると、昼寝をしている飼い犬・男爵につまづいて転倒する。
車「痛っ!? またこんなところに寝そべってやがる。ジャマなんだよ、男爵! この役立たずの、ウスノロ犬めっ!」
男爵 (フン! この男爵様だって、若いときには警察犬として大活躍したもんじゃ。馬鹿にしなさんな。それに引き替え、お前さんはなんだ? シャーロック・ホームズにかぶれて、『車 錠』なんて名前だけはご立派で、探偵らしいけど、やることはみんなドジで、誰も事件なんざ頼みに来やせんじゃないか?)
主人公・鎧 武士が、のんきに昼寝している。
車「おい、武士! 大領領補佐官が何のためにやって来たか、調べて来い。──この野郎ぉ~! まだ1週間も経たない見習いのクセに、昼寝とは何事だ!? この野郎、起きんかい!」
武士「ふぁ~あ。おはようございます、車探偵長」
車「何が『おはよう』だ。時計を見ろ、時計を。もう昼になるんだぞ。……あら?」
壁にかかっている時計は、針が止まっている。
武士「探偵長、あいつももう、替えたほうがいいんじゃないですかね?」
車「馬鹿モン! お前のほうを替えてやりたいわい。重大な情報をつかもうとしているときに、寝ぼけやがって!」
車が殴りつけようとするが、武士はすばやく愛用のヘルメットをかぶる。
車「痛痛痛! 効いたぁ!」
男爵 (これだもん。シャーロック・ホームズには、ほど遠いや)
国際警察庁の会議場。
鬼虎「とにかく、このままでは第2・第3の被害も充分考えられる。なんとしてでもヤツらをひっ捕まえて、金の仏像を取り返さにゃならん。みんな、いい考えはないか?」
出席者「それに、大統領閣下も大変お怒りになってらっしゃるとか」
鬼虎「大統領が怒ろうが頭にこようが、そんなことはどうでもいいんだ! 問題は、この鬼河原虎五郎、そしてこの国際警察が、むささび党だがワサビ党だか知らんが、たかがコソ泥の集団に舐められたということだ! そうだろうが、違うか!?」
そこへ1人の警官が、小包を運んで来る。
警官「長官。ただいま長官宛てに、小包が届きました」
鬼虎「馬鹿者! 今は会議中だ! わしの部屋にでも置いておけ!」
警官「それが、メッセンジャーボーイの話ですと、この会議に関係あるそうで、ぜひとも長官にと……」
鬼虎「何ぃ!?」
会議の様子を、車探偵長が密かに望遠鏡で覗いている。
車「畜生め…… 姿は見えども、声は聞こえずか。いったい何の会議をやっとるんじゃ、鬼虎め? ──うるせぇなぁ、本当にもう!」
奥の部屋で武士が無線機をいじっており、ラジオの雑音のような音がさかんに聞こえている。
車「うるさいぞ、新米! やめとろと言っとんのがわからんのか!? この野郎!」
『このところ野菜が値上がりして──』『それでは明日の天気予報です──』
車「あ~あ、駄目だこりゃ。新しい助手を頼むとするか」
『──誰がわしにこんな小包を?』『長官、ひょっとしたら情報提供者じゃないでしょうか?』
『ひょっとしたらケーキかもしれんぞ。とにかく開けてみよう』
車「!? お、おい、いつの間に!?」
武士「会議場のすみのゴムの木に、隠しマイクをソッとね」
車「ん~っ、偉いっ! お前はやっぱり、わしが見込んだとおり立派な探偵になれるぞ!」
男爵 (調子のいい…… あの少年は1週間ばかり前に探偵見習いに、ここに入って来たんだ。鎧 武士っていうんだけど、オッチョコチョイのあわてん坊。ま、どこまで勤まるかね?)
鬼虎が小包を開くと、中身はテープレコーダー。
鬼虎たち「むっ!?」「こ、これは!?」
声『ハッハッハ! 鬼虎くん、ご機嫌はいかがかな? 私はむささび党の首領、ゴルダーだ』
鬼虎「わしに挑戦してきたつもりか!?」
声『鬼虎くん、国際美術館の金の仏像をありがとう。さて今度は、国際ゴールド銀行に保管してある金塊を頂きに参上する。このゴルダー様は、狙った金は必ず頂く。鬼虎くん、いつか会える日が来るだろう。その日を楽しみにしているよ。フハハハハ!』
テープレコーダーが破裂して、びっくり箱のようにバネ人形が飛び出す。
鬼虎「わあぁ~っ!?」
車たち「ひえぇ~っ!?」
鬼虎がひっくり返り、その声に驚いて車探偵長たちもひっくり返る。
そこへ探偵助手の1人、ヒロインの南波テルが現れる。
テル「何してるのよ!? 部屋を壊さないでちょうだいよ」
車「い、いけねぇ」
テル「部屋代が3年もたまってるのよ。少しは遠慮したらどう、探偵長?」
車「また、そんなカタいことを…… おっ、テルちゃん。今日はまた、一段と輝くばかりにきれいな格好をしてからに! 相変らずいいセンスしてるねぇ~! な、なぁ、武士」
武士「そうかな?」
テル「まぁ~っ!?」
車「お、おい、お前な…… ちょっとはお世辞くらい言ったらどうなんだよ!?」
テル「まぁ、お世辞ですって!?」
車「あぁ~、そういう意味じゃなくってさ、つまり、何っていうのかなぁ」
テル「3年分の家賃、払っていただこうかしら?」
車「すまん! テルちゃん、このとおり! もうちょっと待ってくれ!」
男爵 (このカッコいいお嬢さんは南波テル。この事務所の秘書兼電話係。えっ、なんで探偵長が秘書にペコペコしてるかって? 彼女はこのナンバーワンビルの所有者なんじゃよ)
テル「探偵長! 『もうちょっと』『もうちょっと』って、いつまで待てば払ってくれるの!? 当てはあるの!?」
車「それだよ! いいことを聞いてくれた。怪盗むささび党が国際ゴールド銀行から金塊を奪うと予告してきたんだ」
テル「えっ!? 怪盗むささび党ですって!?」
車「そのとおり! 鬼虎長官の先を越して、こっちが捕まえるんだ。そしたら俺は『2代目シャーロック・ホームズ』と呼ばれ、仕事がワンサカと降ってくるんだ」
テル「それはすごいわぁ~あ! 武士、あんたにとって初めての仕事ね。私がコーチしてあげるわ」
武士「よろしくお願いします……」
テル「私ね、事件って聞くと、この辺がズッキ~ンってなるのよ! いい感じ~!」
武士「はぁ、この辺がねぇ」
テル「きゃっ! 何してんのよ、エッチ!」
テルの胸を覗き込んだ武士に、平手打ちが飛ぶ。
車「見ておれよ、鬼河原虎五郎。この事件は車 錠様が頂く。これが成功したら、俺は間違いなく2代目シャーロック・ホームズだ。ひゃっひゃっひゃっひゃ!」
車探偵長が情けない顔で笑い、欠けた歯がむき出しになる。
男爵 (はぁ~、ひどい顔。笑わなきゃ、まぁまぁいい男なんじゃがなぁ)
犯行予告の日。
鬼虎率いる機動部隊が、国際ゴールド銀行の警備をかためる。
鬼虎「我が国際警察庁の新鋭機動部隊の力を見せてやるんだ! コソ泥の集団など、1匹たりとも入れてはならんぞ! この銀行の屋上、周囲、および内部の各場所に人員を配置して…… ん!?」
車探偵長が、さりげなく登場する。
車「長官、ご苦労様です」
鬼虎「車探偵長か! 今日はまた、何の用だね?」
車「まったまた、とぼけちゃって。嫌な人だねぇ~、まったく。……この鬼虎長官の緊張したあの顔、そしてこの、ものものしい警備。わかった! 何者かが、この国際ゴールド銀行に保管してある金塊を頂きにあがると、予告してきた。そして、それを狙っている者とは── 怪盗むささび党!」
鬼虎「むぅっ! どうして、それを!?」
車「長官。私ゃ、こう見えても『2代目シャーロック・ホームズ』と世間が騒ぐ車探偵長ですよ。ついでにもう1つ。首領の名は『ガルガー』! どうです? 図星でしょうが。ひゃっひゃっひゃ!」
鬼虎「違うね! 『ガルガー』じゃなくて『ゴルダー』だ」
そこへ、武士とテルが到着。
武士「あぁっ!?」
鬼虎「んっ!?」
武士「いけねぇっ!」
テル「武士!?」
武士が急に逃げ出し、鬼虎がそれを追う。
車「あれっ? どうしました?」
武士は路地裏に逃げ込み、鬼虎は武士を見失ってしまう。
鬼虎「あれは確か…… あぁっ!」
どこからか鋼鉄のパンチが飛び出して鬼虎に炸裂。そしてむささび党たちが、空から舞い降りてくる。
車探偵長のもとへ、武士が戻って来る。
車「こらっ! どこをフラついてやがるんだ!? まったく、よく見張っていなきゃ駄目じゃないか!」
武士「は、はい……」
テル「フフッ。武士、怖いんでしょ? 無理ないわね。初めての仕事ですものね」
武士「へへっ、まぁね」
声「ハハハハハ!」
車「ん? あれは何だ?」
空から、パラシュートの付いたテープレコーダーが降りてくる。
声『私はむささび党の首領、ゴルダーだ!』
機動隊員「むささび党だ!」
声『これでは、さすがの私も手も足も出ん。だが、ただで退散する私ではない。鬼虎くんを頂いて行くぞ』
武士「何っ!?
声『鬼虎くんの命が惜しくば、国際ゴールド銀行の金塊をすべてフェリーに積んで、大倉湾付近まで運んできたまえ。約束を破ったり妙なマネをすると、鬼虎くんの命は頂くぞ。時間は、明日午後1時。わかったな!?』
車「くそぉ! やりがったな、むささび党め!」
武士 (俺のあとなんか、ノコノコ追って来るからだ。親父……)
指定の日。
銀行から、金塊を乗せたトラックが走り去る。
車「いよいよ面白くなってきたぞ。俺と武士はフェリーに潜入する。テルは残れ」
テル「嫌! いつも私は置いてけぼりよ。たまには……」
車「おぉっと! これは探偵長としての命令だ。美人は連れて行くわけにはいかん。後の連絡を待つんだ」
テル「フン! つまんないの」
車「よし、行くぞ!」
武士「はい!」
金塊を積み込んだフェリーが、警備隊を乗せて海を行く。
警備隊長「よし、停船させろ」
海中からむささび党たちが飛び出し、足のジェット噴射で宙に浮く。そして首領ゴルダーの姿。
ゴルダー「フフフ、よく金塊を渡す気になったな」
警備隊長「約束だ。鬼河原長官を渡してもらおう。長官はどこだ!?」
フェリー内には車探偵長が武士と男爵を連れ、ひそかに同乗している。
車「出て来たな、むささび党め。武士、行くぞ! ──武士? おい、武士?」
ゴルダー「ハハハハハ! 金塊さえ頂けば、こっちもの。鬼虎長官には悪いが、死んでもらうことにした」
警備隊長「くそぉ、謀ったな! だが、我々にも用意はある。あれを見たまえ!」
十数隻の戦艦。空には戦闘機の編隊。
ゴルダー「フフフ、馬鹿めが。それで勝ったつもりか?」
警備隊長「どうした? 長官を渡すか? それとも、地獄へ落ちるか?」
ゴルダー「海の地獄へ行くのはお前たちだ。それっ!」
むささび党たちが海に飛び込む。
警備隊「逃げた!?」
──かと思うと、入れ替わりに巨大な砲塔が出現する。
無数の砲弾が連射され、戦艦、戦闘機が次々に破壊される。
フェリー内では男爵が臭いを追い、船内を歩き回っている。
男爵 (あの新米坊や、怖くなって逃げたんだな? 近頃の若いもんは…… んっ!?)
甲板で武士が1人、むささび党を睨みつけている。
武士「怪盗むささび党め…… これ以上、のさばらせてたまるか!」
太陽を浴びて燦然と輝く愛用のヘルメットを、頭にかぶる。
武士「転身っ! ポリマ──っっ!!」
みるみるうちに武士の全身は真紅の強化スーツに包まれ、「破裏拳ポリマー」へと姿を変える。
フェリーはむささび党の爆撃を受け、炎上し始めている。
車「おぉ──い、武士──っ! 男爵──っ! どこ行ったんだぁ──!? しょうがねぇな、この忙しいときに! ……熱熱熱、熱熱熱!」
ついにフェリーが大爆発する。
車探偵長が海に飛び込み、どうにか木片につかまる。
男爵が泳ぎついて来る。
車「おぉ、男爵! 無事だったか。おっ、武士はどうしたんだ? おぉい、武士──っ!」
周囲を見渡すが、警備隊員たちが流れ着いているものの、武士の姿はない。
車「やっぱり溺れ死んだか、かわいそうに…… あいつには、こういう仕事は無理だったんだ」
男爵 (わしの言葉が通じたら…… しかし、あの新米、いったい何者かね?)
ポリマーは、沈みかかっているフェリーの上にひらりと立つ。
ポリマー「ポリマ──グランパス!!」
宙を舞ったポリマーのスーツが潜水艦型に変形、「ポリマーグランパス」となって海へ飛び込み、海中を行く。
むささび党は海中を進んで海底洞窟へと入って行き、ポリマーも後を追う。
海底洞窟の奥、黄金で築き上げられた宮殿。
むささび党に、鬼虎長官が捕われている。
ゴルダー「フフフ。鬼虎長官、いかがですかな? 我がむささび党の黄金魔殿の居心地は」
鬼虎「きっ、貴様ぁ!」
ゴルダー「これが私の趣味なのよ。美しい色、冷たい肌触り、私はここに世界中の黄金を集めるつもりだ」
鬼虎「むささびのクセに贅沢なヤツ! お前なんか、木の実でも集めてんのがお似合いなんだ!」
ゴルダー「私の好みは、贅沢なのよ。お前と交換するということで運んでもらった金塊も、海底に沈めておいた。後でゆっくり回収するつもりだ。もう、お前に用はないわけよ」
鬼虎「な、何をぉ!?」
ゴルダー「おやりなさい!」
声「ハッハッハッハッハ!」
ゴルダー「だ、誰だ!?」
声「この世に悪のある限り、正義の怒りが俺を呼ぶ──」
颯爽とポリマーが姿を現す。
ポリマー「破裏拳ポリマー、ここに参上!」
ゴルダー「何、破裏拳ポリマーだと!?」
ポリマー「怪盗むささび党も、今日で終りだ! 破裏拳流を受けてみろ!」
ゴルダー「えぇい、やれっ!」
むささび党たちが次々に襲いかかる。
ポリマー「破ぁ──裏ぃ──拳──! ハァ──ッ!! トォォ──っ!!」
襲い来るむささび党たちに、ポリマーの拳、蹴りが次々に炸裂。
ポリマー「ヤァ──っ! 真空蹴りっ!!」「反動三段蹴り!!」」
何十人ものむささび党たちが次々に倒されていく。
鎖が射出され、ポリマーが縛り上げられる。
ポリマー「破ぁ──裏ぃ──拳──!」「真空片手独楽!!」
ポリマーは動きが封じられたと思いきや、それをものともせずに鎖を引きちぎって反撃。
むささび党の残党たちが退散してゆく。
一方で車探偵長と男爵は、小島に流れ着いている。
車「はぁ…… むささび党は取り逃がし、俺たちゃ島流しか。ついてねぇなぁ…… ──ん!? 何だ!? 島が動き出したぞ!」
島の岩壁が動き、中から建物施設が覗く。
むささび党たちが、鬼虎を連れて出てくる。
車「ヤツらだ! ここがアジトだったんだ。ツイてるぞ! 来い、男爵! ──待て、むささび党め! ここで会ったが百年目、覚悟しろい!」
鬼虎「車くん!?」
車「長官、もう大丈夫ですよ」
しかし、むささび党の一撃で車が吹っ飛ぶ。
車「ま、まま、待て! 早まるな、落ち着け!」
そこへポリマーが追って来る。
ポリマー「ヤァ──っ!」「幻影破裏拳──っ!!」
むささび党の残党を叩きのめし、残りは首領ゴルダーただ1人。
ポリマー「ハァ──ッ!! おぉりゃあぁ──っ!!」
ゴルダーが逃げ去ろうとするものの、容赦ないポリマーの拳と蹴りを浴び、岩壁に叩きつけられて気絶する。
車「すばらしぃ~っ! 君は天才だ! 正義の味方だ! ねぇねぇ、君の名前、何ていうの? 変った服を着てるんだねぇ~」
鬼虎「ありがとう、ポリマーくん。君は命の恩人だ!」
車「ポリマー? 君、ポリマーっていうの? ねぇ、俺の探偵事務所に来てくれないかなぁ? 給料はたっぷり払うよ。それに、カワイコちゃんだっているしさぁ」
鬼虎「馬鹿言うな! ポリマーくんは今日から、我が国際警察庁で働いてもらうんじゃい!」
車「嫌ぁ、俺が先だぁ! ちょうど見習いが1人、溺れ死んじまって困っていたところなんだぁ!」
男爵 (すごいぞ、新米! この秘密は誰にもわかるまい。だって、わしの言葉は人間に通じないからねぇ~!)
ポリマー「どちらもお断りします。それより、むささび党の首領の顔でも見ますか?」
ゴルダーの仮面を剥ぎ取ると、その素顔は、なんと鬼虎を叱りとばしていた大統領補佐官。
鬼虎「お、お前は!?」
車「大統領補佐官!? くそぉ、騙しやがって! 覚悟しろい!」
車探偵長が拳銃を抜き、息を吹き返した補佐官に突きつける。
鬼虎「お、おい、車くん!?」
銃口から補佐官の顔面に水が浴びせられる。
拳銃と見せかけ、実は水鉄砲。
補佐官「うぐぐ、うぐっ、ゴボッ!」
車「へへっ、ザマぁ見ろ!」
ポリマー「それでは、また会いましょう」
鬼虎「おいおい、ポリマーくん!?」
ポリマー「ポリマ──ホ──ク!!」
ポリマーが海へ駆け出して大ジャンプする。
そのスーツが小型ジェット機に変形、「ポリマーホーク」となる。
夕日の中を飛び去って行くポリマーホークを、車探偵長と鬼虎長官が呆然と見上げる。
車「行っちゃった…… あれ? 鬼虎長官、何を考えてるんスか?」
鬼虎「え!? あ、いや、何…… (確か、あのとき見たのは、行方知れずの倅だと思ったんだがなぁ……)」
やがて、テルの乗るモーターボートが到着する。
テル「助けに来てあげたわよぉ~! 探偵長!」
車「あれっ? どうして、ここがわかったんだい?」
テル「嫌ぁねぇ。うちの新米が教えてくれたのよ」
車「何、新米が!? あいつ、生きていたのか…… それにしても待てよ? なんで、あいつがここを知っとるんだ?」
男爵 (ふふ~ん! 知っとるのは、わしだけじゃ!)
車「それで、あいつは今、どこにいるんだい?」
テル「事務所よ。たぶん、また寝てるでしょ」
探偵事務所では武士が、ポリマーとしての大活躍とは別人のように、大いびきをかいて昼寝をしていた。
武士「グ──っ、グ──っ、…… テ、テルちゃ~ん……」
最終更新:2014年07月14日 02:38