2022年人類はついに――
完全なる仮想空間を実現した
リポーター「さあ始まりました!今週のMMOストリーム。
まずはPVを見てもらいましたが・・・これは先週の発売日の様子かな?
行列を作った彼らのお目当ては?ソードアート・オンライン!
先頭の人は3日前から並んでいたんだって。すごいね!
真のゲーマーなら当然と言うべきか・・・」
少年、桐ヶ谷和人がパソコンでニュースを見ながら、
雑誌を読んでいた。
雑誌のページで和人の右手の親指が切れ、血がにじんだ。
直葉「お兄ちゃん、部活行ってくるねーーー」
和人の妹の直葉が家から出て行った。
和人は、ナーブギアをかぶり、パソコンを閉じ、ベッドに横になった。
その口元が緩む。
和人「
リンク・スタート!」
和人の意識が現実から切り離れされていく。
Welcome to sord art onlin!
そして、和人、いや和人のキャラクター‘キリト‘がソードアート・オンラインの世界にログインした。
キリト「戻ってきた・・・この世界に!」
キリトの周りに次々にキャラクターがログインしてきた。
第1層・はじまりの街は多くのプレイヤーで賑わっていた。
男「ねえ、パーティー組もうよ」
女「えー、どうしようかな?」
男「いいじゃん、いいじゃん」
そんな中、キリトは一人、駆け出した。
青年「ん?」
キリトは路地裏に入った。その後ろをバンダナを被った青年が追いかけてきた。
青年「おーい、そこの兄ちゃんーーーー、その迷いの無い動きっぷり、あんたβテスト経験者だろ?」
キリト「ま、まあな」
青年「オレ今日が初めてでさ、序盤のコツ、ちょいとレクチャーしてくれよ。なあ頼むよ!オレ、クライン。よろしくな」
キリト「オレはキリトだ」
第1層・はじまりの街・西フィールド
クライン「どわあ!」
クラインが、イノシシ型モンスター、フレンジーボアに弾き飛ばされ、うずくまる。
キリト「大ゲサだな、痛みは感じないだろ?」
クライン「あっ、そうか。ついな」
クラインが立ち上がる。
キリト「言ったろ、重要なのは初動のモーションだって」
クライン「ゆなこと、言ったってよ、あいつ動きやがるしよ」
キリト「ちゃんとモーションを起こして、ソードスキルを発動させれば・・・」
キリトは石を拾い、モーションを起こして投げた。
投げられた石は加速し、フレンジーボアに当たった。
キリト「後はシステムが技を命中させてくれるよ」
クライン「モーション・・・モーション・・・」
キリト「どーいえば、いいのかな。ホンの少し、溜めを入れてスキルが立ち上がるのを感じたら、ズッバンって打ち込む感じ」
キリトは向かってきたフレンジーボアを抑え込む。
クライン「ズッパンってよ・・・」
クラインが構えると、剣が光り出した。
キリトがフレンジーボアをクラインの方に蹴り飛ばした。
クライン「どおりああ!!」
クラインの剣の一撃がフレンジーボアを切り裂き、
フレンジーボアはポリゴンの欠片になって消滅した。
クライン「うっ・・・しゃーーーー!!」
キリト「おめでとう」
キリトとクラインがハイタッチを交わす。
キリト「でも、今のイノシシ、スライム相当だけどな」
クライン「ええっ!マジかよ、オレ中ボスか、なんかだと・・・」
キリト「んな訳あるか」
2人から少し離れた所に新たなフレンジー・ボアが出現した。
クラインが剣を素振りする。
クライン「おお!」
キリト「はまるだろ」
クライン「まあな!スキルってよ、武器を作ったりすんのとか、色々あんだろ?」
キリト「そうだな、スキルの数は無数にあるって言われてる。その代わり魔法はないけど」
クライン「RPGで魔法無しか、大胆な設定だよな!くーーーー!」
キリト「自分の体を動かして戦う方が面白いだろ?」
クライン「確かに!」
キリト「よし、次行くか」
クライン「おう、ガンガン行こうぜ!」
夕暮れ。
クライン「何度見ても信じられねえな、ここがゲームの中だなんてよ。作ったヤツはマジ天才だぜ。すげーよな、マジこの時代に生まれて良かった」
キリト「大袈裟なヤツだな」
クライン「初のフルダイブ体験だもんよ」
キリト「じゃあ、ナーブギア用のゲームをやるのもこれが初めてなのか?」
クライン「つうか、ソードアート・オンラインのために慌ててハードも揃えたって感じだな
たった一万本の初回ロットをゲットできるとは、我ながらラッキーだよな。
まあ、βテストに当選したお前の方が10倍ラッキーけどな。
あれは限定1000人ボッチだからな」
キリト「まーそうなるかな・・・」
クライン「なあβの時はどこまで行ったんだ?」
キリト「2ヶ月で8層までしか行けなかった。今度は1ヶ月で十分だけどな」
クライン「おめー、相当はまってるな」
キリト「正直、βテスト期間中は寝ても覚めても、SAOの事しか考えてなかった。
この世界は剣一本でどこまでも行ける。
仮想空間なのにさ、現実世界より生きてるって感じがする・・・さて、もう少し狩りを続けるか」
クライン「あったりめえよ!・・・って言いたいとこだけど、腹減ってよ。一度落ちるわ」
キリト「こっちの飯は空腹感が紛れるだけだからな」
クライン「へへ、5時半に熱々のピザを予約済みよ!」
キリト「準備万端だな」
クライン「おうよ!まあメシ食ったらまたログインするけどな」
キリト「そうか・・・」
クライン「なあ、この後他のゲームで知り合ったヤツと落ち合う約束してんだ。
どうだ?あいつらともフレンド登録しないか?」
キリト「え・・・・」
クライン「勿論ムリにとは言わねーよ。その内、紹介する機会もあるだろうしな」
キリト「ああ、悪いな・・・ありがとう」
クライン「おいおい、それはこっちのセリフだぜ。このお礼はそのうちちゃんとするからよ。精神的に。これからもよろしく頼むぜ」
キリト「また聞きたいことがあったら、いつでも呼んでくれ
クライン「おう、頼りにしてるぜ!」
キリトとクラインが握手を交わす。
それからクラインがメニューを開いてログアウトしようとしたが・・・
クライン「あれ?ログアウトボタンがねえ?」
キリト「よく見てみろよ」
クライン「やっぱどこにもねーよ」
キリト「メインメニューの一番下に・・・」
キリトもメニューを開いたが、ログアウトボタンは無かった。
クライン「無いだろ?」
キリト「うん、まあ」
クライン「ま、今日は正式サービス初日だからな、こんなバグも出るだろう。
今ごろ運営は半泣きだろうな」
キリト「お前もな」
クライン「え?」
キリト「今5時25分だぞ」
クライン「オレ様のテリマヨピザとジンジャーエールがぁ!!」
キリト「さっさとGMコールしろよ」
クライン「とっくに試してみたけど、反応ねーんだよ。
他にログアウトする方法って無かったけ?」
キリト「無い・・・プレイヤーが自発的にログアウトするにはメニューを操作する以外の方法は無い」
クライン「んなバカな、絶対何かあるって。戻れ!ログアウト!脱出だ!!」
キリト「無いって言ったらろ・・・マニュアルにも緊急切断方法は一切載ってなかった」
クライン「おいおい、ウソだろ・・・そうだ、頭からナーブギアを引っぺがすか!」
キリト「出来ない・・・オレ達は今現実の体を動かせない。
ナーブギアがオレ達の脳に出す命令を全部、脊髄で遮断している」
クライン「マジかよ・・・じゃあ、バグが直るのを待つしかないのか?」
キリト「もしくは現実世界の誰かがオレ達の頭からナーブギアを待つか・・・・」
クライン「でもオレ一人暮らしだぞ。お前は?」
キリト「母親と妹がいる。だから、晩飯には・・・」
クライン「キリトの妹さんっていくつ!?」
キリト「あいつ、運動部系だし・・・ゲーム大嫌いだし・・・オレらのような人種とは接点が・・・」
クライン「そんな事・・・」
キリトがクラインの股間にひざ蹴りを入れた。
クライン「があ・・・・あ、痛くは無いか」
キリト「そんな事より変だと想わないか?」
クライン「そりゃ変だろうさ、バグなんだしよ」
キリト「ただのバグじゃない。ログアウトできないなんて、今後のゲーム運営に関わる大問題だ」
クライン「言われてみれば確かに」
キリト「こんなの一度サーバーを停止して、プレイヤー全員を強制ログアウトすればいいのに、アナウンスすらないなんて・・・」
ここで、はじまりの街で鐘が鳴り出した。
キリト・クライン「「!?」」
次の瞬間、キリトやクラインだけでなく全てのプレイヤーがはじまりの街の広場に転送されてきた。
冒頭に出ていた男女はパーティーを組んでいた。
カップル女「どうなってるの・・・?」
カップル男「さあ・・・」
キリト「強制テレポート・・・」
空に「WORNING」と書かれた赤い文字パネルが浮かんだ。
キリト「あれは・・・・」
文字パネルは空一面に広がって行き、空は赤一色に染まった。
クライン「何だありゃ・・・」
文字パネルの隙間から赤い液体がこぼれ落ちたかと思えば、その液体が集まり、
フードを被った顔の無い、巨大な人間の影となった。
プレイヤーたち「ゲームマスター?」
「何で顔がないんだ?」
「何のイベント?」
カップル女「怖い・・・」
カップル男「平気さ、セレモニーの続きだよ、きっと」
?「プレイヤー諸君、私の世界にようこそ」
キリト「私の世界・・・?」
茅場「私の名前は茅場昌彦。今やこの世界をコントロール出来る唯一の人間だ。
プレイヤー諸君はメニューからログアウトボタンが消滅している事に気づいてると思う。しかしこれはゲームの不具合ではない。繰り返す。不具合ではなく、ソードアート・オンライン本来の仕様である」
クライン「仕様?」
茅場「諸君は自発的にログアウトする事は出来ない。また、外部の人間によるナーブギアの停止、あるいは解除もありえない。
もしそれが試みられた場合、ナーブギアの信号素子が発する高出力マイクロウエーブが諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる」
プレイヤーたち「どういうこと!?」
「演出だろ?」
「たく、早く終われよ」
カップルは広場から出ようとしたが、見えない壁に阻まれた。
カップル男「おいこら!出らんねえぞ!」
クライン「な、何言ってんだアイツ。頭おかしいんじゃね?なあ、キリト」
キリト「信号阻止のマイクロウエーブは確かに電子レンジと同じだ。リミッターさえ外せば脳を焼く事も・・・」
クライン「じゃあよ、電源を切れば・・・」
キリト「いや、ナーブギアには内蔵バッテリーがある・・・」
クライン「・・・でも無茶苦茶だろ!何なんだよ!」
茅場「残念ながら、現時点でプレイヤーの家族及び友人が警告を無視して、ナーブギアを強制的に解除しようとした例が少なからずある。その結果、213名のプレイヤーがアイングラッド及び現実世界からも永久退場している」
キリト「213人・・・・・」
クライン「信じねえ・・・信じねえぞオレは・・・・」
茅場「ご覧の通り、多数の死者が出た事を含め、この状況をあらゆるメディアが報道している。よってすでに強制的にナーブギアを解除される危険は低くなってると言っていいだろう。諸君らは安心してゲーム攻略に励んで欲しい」
キリト「・・・・・・」
茅場「しかし、十分に留意してもらいたい。
今後ゲームにおいてあらゆる蘇生手段は機能しない。
HPがゼロになった瞬間、諸君らのアバターは永久に消滅し、
同時に、君達の脳をナーブギアが破壊する」
キリト「・・・・・・・!」
キリトがβテスト時にフレンジーボアにHPをゼロにされた瞬間を思い返す。
茅場「諸君らが解放される条件はただ一つ、このゲームをクリアすればいい。
現在君がいるのはアイングラッドの最下層、第1層である。
各フロアの迷宮区を攻略し、フロアボスを倒せば上に進める。第100層にいる最終ボスを倒せばクリアだ」
プレイヤー「クリア・・・」
カップル男「テ、テキトーなこと言ってんじゃねえよ!」
クライン「クリア・・・第100層だと・・・出来る訳ねえだろうが・・・βテストじゃロクに上がれなかったんだろ!」
茅場「それでは最後に・・・諸君のアイテムストレージに私からのプレゼントを用意してある。確認してくれたまえ」
アイテムストレージに送られたのは、手鏡だった。
キリト「手鏡?」
キリトが手鏡を取り出した。
クラインの体が青い光に包まれた。
キリト「クライン!?」
その直後にキリトだけでなく、全てのプレイヤーが青い光に包まれた。
クライン?「大丈夫かキリト?」
キリトに話しかけてきたのは、クラインの装備を着ているが、違う顔をした男だった。
キリト「あ、お前誰?」
クライン?「お前こそ誰・・・?」
キリトが手鏡を見返すと、そこに映る顔は現実でのものになっていた。
他のプレイヤーたちも現実での姿になっていた。
あのカップルは両方とも中年男性だった。
元カップル男「あんた男だったの!?」
元カップル女「17ってウソかよ!」
キリト「って事は・・・・」
キリト・クライン「「お前がキリト、クラインか!?」」
クライン「な、何で」
キリト「スキャン・・・ナーブギアが高密度の信号素子で顔をすっぽり覆っている。だから、顔の形を把握できるんだ。でも身長や体格は・・・」
クライン「ナーブギアを初めて被った時、キャリブレーション?とかで、こうやって自分の体をあちこち触ったじゃねえか」
キリト「あ、ああ、そうか、その時のデータを元に・・・」
クライン「でもよ・・・ええい、何でだ!そもそも何でこんな事を?」
キリト「どうせ、すぐに答えてくれる・・・」
茅場「諸君は今、‘何故‘と思っているだろう?
何故ソードアート・オンライン及びナーブギアの開発者、茅場昌彦は何でこんなことをしたのかと。私の目的は既に達せられている。この世界を作り出し、干渉するためにのみ、私はソードアート・オンラインを作った」
キリト「茅場・・・・!」
茅場「そして今、全ては達成せしめられた。以上でソードアート・オンライン正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の健闘を祈る」
キリトは、ログインする前に切った指の傷を見た。
キリト(これは現実だ・・・ナーブギアを開発し、完全な仮想空間を生み出した天才、茅場晶彦。そんな彼に魅了されていたオレには分かる。
彼の宣言はすべて真実だ・・・この世界で死ねばオレは死ぬ!)
『これはゲームであっても遊びでは無い』―――『ソードアート・オンライン』開発プロデューサー茅場晶彦
少女、シリカが手鏡を落とし、叫んだ・
シリカ「いや・・・イヤァァァ!!」
それを皮切りにプレイヤーたちはパニックを起こした。
プレイヤーたち「ふざけんなよ!」
「殺す気かよ!」
元カップル女「出してくれよ!」
元カップル男「ウソだと言えよ!」
キリト「ちょっと来い、クライン」
クライン「え?」
キリトはクラインを路地裏に連れ出した。
キリト「よく聞け。オレはすぐに次の村に向かう」
クライン「え?」
キリト「あいつの言葉が全部本当ならこの世界で生き残っていくにはひたすら自分を強化しなくちゃならない。バーチャルMMOが提供するリソース、つまりオレ達が得られる金や経験値は限られている。はじまりの街周辺のフィールドはすぐに狩り尽くされるだろう。効率的に稼ぐためには、今の内に次の村を拠点にした方がいい。オレは道も危険なポイントも全部知ってるから、レベル1でも安全にたどり着ける」
クライン「え、でも・・・オレ、他のゲームでダチだったヤツで徹夜で並んでこのソフトを買ったんだ。あいつら、広場にいるはずなんだ。置いてはいけねえ・・・」
キリト(クラインだけなら・・・だが後2人、いや1人増えたら・・・)
クライン「悪りい・・・おめえにこれ以上世話になるわけにはいかねえよな。
だから、気にしねえで次の村へ行ってくれ。
オレだって前のゲームじゃギルドの頭はってんだ。おめーに教わったテクで何とかしてみせるさ!」
キリト「そうか・・・ならここで別れよう。何かあったらメッセージ残してくれ」
クライン「おう!」
キリト「じゃあ、またな、クライン・・・」
クライン「キリト!・・・・・おい、キリトよ、おめー本当は案外可愛い顔してやがるな。結構好みだぜ」
キリト「お前もその野武士面の方が十倍似合ってるよ!」
キリトが振り返った時、クラインは既にいなかった。
キリトがフィールドに飛び出した。
その前にオオカミ型モンスターが出現した。
キリト「うわあああ!!」
(オレは・・・オレは・・・・生きのびてみせる!この世界で!!)
キリトの剣の一撃がオオカミ型モンスターを切り裂き、倒した。
キリト「うおおおおおお!!」
はじまりの街の教会。
その奥に全てのプレイヤー名が記された石碑があり、
死亡したプレイヤーの名前には、二重線が引かれていた。
kiritoの名前には二重線が引かれてなかったが、
その真下のkitaroの名前に二重線が引かれた。
ゲーム開始1ヶ月で2000人が死んだ
いまだ1層は攻略されてない
2022年12月
(続く)
最終更新:2022年07月24日 07:40