岡本太郎式特撮活劇 TAROMANの最終回


我々人類は、本当に進歩したのか?
調和は生まれるのか?

それを試すかのように、
べらぼうなものがやって来る……。



突如として地球に現れ、時に人類に迷惑をかけつつも怪獣たちと戦って、結果的に地球の平和を守り続けてきた芸術の巨人・タローマン。
彼のでたらめさが人々の日常にすっかり浸透していたそんなある日、怪獣「太陽の塔」が唐突にその姿を現した。



岡本太郎式特撮活劇
TAROMAN


最終回
芸術は爆発だ




太陽の塔は森の木々をなぎ倒し、頭にある「黄金の顔」から破壊光線を発射して、町を焦土に変えてゆく。
地球防衛軍CBGや、それに協力する謎の風来坊が攻撃を加えるも、太陽の塔は微動だにしない。

風来坊「こいつは今までの奴と、スケールが違うぞ!!」

その時、タローマンが狙いすましたかのように地表に落下してきた。



そう、べらぼうなものにはべらぼうなものを。
べらぼうな巨人、タローマンである!



CBG基地──

少年隊員「タローマン、早くいつもの『芸術は爆発だ!』を、やってくれよ!」
高津博士「そうもいかないんだよ。『芸術は爆発だ!』は、ただのドカンと破壊する爆発ではない…… その瞬間瞬間に全存在を懸けて、命を燃焼する行為なんだ! ……と、岡本太郎も言っていた」
少年隊員「つまり?」
高津博士「気軽にバンバン撃てないんだよ」
少年隊員「ちぇっ、難しいんだ」
女性隊員「あぁ、悩ましいわね」

にらみ合うタローマンと太陽の塔。
タローマンが眼下の観覧車を地面から引き抜き、手の中で回転させ、カッターのようにして投げつける。
真っ二つに両断される太陽の塔──

少年隊員「やった!」

しかし、太陽の塔は小刻みに震えながら、切断されたそれぞれの断面から体を再生させていく。
太陽の塔が2体になった。

中年隊員「なんだとぉ!? 悩みが2倍になっちまった!」

タローマンは臆せず、「明日の神話」「千手」「雷人」と必殺技を繰り出していく*1
立て続けに放たれた技を受け、粉々に吹き飛ぶ2体の太陽の塔。
しかし、その破片がビルや地面に突き刺さり──

CBG隊長「これは……!?」

破片の一つ一つが増殖・成長を遂げ、無数の太陽の塔の群れがタローマンを包囲していく。

隊長「悩みがさらに増えてしまった!」

太陽の塔を倒せないタローマンを、人々が口々に罵り始める。

一般市民「お前のせいで、町がめちゃくちゃだ!」
ビルの持ち主「わしのビルを返せー!」
秘書「社長……」
隊長「そうだ、そうだ! もう少し考えて攻撃してくれよ!」

タローマンは黙って何も言い返さず、空へ飛び立つ。

一般市民「待て、逃げるのか!?」

タローマンはそのまま宇宙へ──。



しかし、タローマンは悩まない。

人生くよくよしないことだ。
小さな悩み、心配事にぶつかったら、
それよりももっと大きな悩みを求めて、
体当たりすべきなのだ。



地球を見つめるタローマンは、おもむろにポーズをとると──


「芸術は爆発だ!」


タローマンの最後の技により、太陽の塔は地球もろとも完全に消え去った。
いずこかへ飛んでいくタローマン。



すると、逆に気分がさらりとして、
もりもりと快調になる。
精神を開ききること、それが若さと健康のもとだ。
人類全体の運命もいつかは消える。
それで良いのだ。
無目的に膨らみ、輝いて最後に爆発する。
そして平然と人類がこの世から去るとしたら、
それがぼくには栄光だと思える。
──そう、岡本太郎も言っていた。



タローマンは、決して正義の味方ではない。
怪獣も、地球人類も、彼にとって大した価値はない。
ただ岡本太郎の思想に殉じることこそが、タローマンのすべてだからだ。
地球を滅ぼしたタローマンはこれから先、どこへ向かうのか。彼の前には、何が待ち受けているのか。
そんなことは誰にも分からない。
ただ己と、岡本太郎に拠って立つ巨人。それがタローマンなのだ。



芸術は爆発だ。
これは随分前からの私の信念であり、貫いてきた生き方だ。
全身全霊が宇宙に向かって無条件にパーッとひらくこと。
それが爆発だ。
人生は本来、瞬間瞬間に、無償、無目的に爆発しつづけるべきだ。
いのちの本当のあり方だ。

-TARO-

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最終更新:2022年07月31日 22:04

*1 いずれも岡本太郎の絵画がモチーフ。