巨神ゴーグの最終回

巨神(ジャイアント)ゴーグの最終回




1990年、南太平洋の一角に出現したオウストラル新島は、巨大な目に見えぬ力によって闇の中に葬られてしまった。

それから8年後…13歳の少年・田神悠宇は、父の教え子だったトム・ウェイブ博士に会う為に渡米。
ウェイブとその妹ドリス、そして謎多き男・船長と共に巨大企業体GAIL(ガイル)やレイディ・リンクス率いる盗賊団クーガー・コネクションを振り切りながら、地図にない島となったオウストラルへと渡る。
そこで遭遇した青い巨神"ゴーグ"に導かれ、"馬の鞍"の洞窟の奥深くにある異星文明の遺跡に辿り着き、異星人マノンと邂逅する。彼は3万年前に地球を訪れ、その文明の成長を見る為に眠りについていたという。
ほのかな交流も束の間、遺跡の秘密を狙うGAILの特殊部隊がシールドを破壊して遺跡に侵入してきた事により、マノンは地球人に対して宣戦を布告してしまう。
危機を伝える為にどうにか遺跡を脱出した悠宇は、ゴーグ共々ガイルタウンに捕えられ精密検査を受けさせられたが、彼の危機に際して動きだしたゴーグと旧島住民の援護により救出される。
しかし、マノンが差し向けたガーディアンの大部隊*1が報復に現れ、更に船長がCIAに新島で起こった事を報告した為、米政府は島の核攻撃を決定してしまう。
GAILに反旗を翻したロッドは、島を守る為に各国に掛け合うも聞き入れてはもらえなかった。一方、ガーディアン部隊は戦いの最中突如停止。そして悠宇はマノンに導かれて再び遺跡を訪れる。
そしてゴーグの機内で風化した状態で発見されたマノンの弟・ゼノンからのメッセージによって、自身とゴーグの関係の真実を知る。
ゼノンの親友マシウス・デ・ル・マドゥが悠宇の遠い先祖だった事、ゴーグにマシウスの死後もその子孫を守る様に命令していた事…。
その絆の強さに感服したマノンは、噴火の影響で多くの同胞の墓標となってしまった島に1人残る事を決め、悠宇に仲間の下へ帰る様に告げるのだった。
仲間達がキャリア・ビーグルで悠宇を迎えに来たその時、とうとう核ミサイルが島に向けて発射されてしまった…。




PAIRS  6:00AM

フランス・パリ、午前6時*2
キスを交わす男女。

TVの声「今日、現地時間夜6時、南太平洋で行われる画期的な相互ミサイル実験は、我がフランス政府も予定の時間に…」

男がTVを消す。


NEW YORK  0:00AM

アメリカ・ニューヨーク、午前0時。
行き交う大勢の車。
男が女の肩を抱きながら車を運転している。

ラジオの声「協定によって、間もなく合衆国核ミサイルが…」

男がラジオをニュースから別の局に切り替える。


TOKYO  2:00PM

日本・東京、午後2時。
主婦が菓子をつまみながらTVを見ている。

TVの声「こんにちは。お元気ですか? 2時の奥様の時間です」

赤ちゃんの泣き声に、主婦が茶の間を離れる。

TVの声「まず初めにお伝えするニュースは、地球規模で行われる核実験です」

世界の何処かで、核ミサイルが発射される。





(ひか)(しま)




夕焼けの中、山岳地帯に佇むゴーグとキャリア・ビーグル。

ウェイブ「時間だ……」

徐々にへたり込む。

悠宇「時間?」
アロイ「ミサイル発射のか?」
サラ「嘘よ!! そんな!!」
ドメニク「確かめてみる」

ヘッドセットをつけ、ラジオをチューニングする。
それを見守る悠宇達。

ドリス「…」

もぬけの殻となったガイルタウンの管制室。
モニターには「WARNING」の文字が。
しばらくすると突然表示が切り替わり…。


FINAL NOTE
 All of the missiles on the
for Austral Island:  
   25:00MT. for Attack

サイゴツウコク: スベテ ノ ミサイル ハ ハッシャ サレタ・・オウストラル マデ 25フン・・・・・ダッシュツセヨ・・・・・ダッシュツセヨ・・・・・

ドメニク「駄目だ…誰も出ない…」
悠宇「…」

外では、ただ砂嵐が空しく吹いている。

ドリス「信じない…そんな筈ないわ! あたしはアメリカ人なのに、アメリカのミサイルで殺されるなんて…ねえ悠宇…!」

泣きながら悠宇に縋りつく。

ドリス「どうすればいいのよ……」
ウェイブ「…愚かだ…愚か過ぎるよ…クソぉ…」

悲嘆にくれる2人。その時、悠宇が何かを決意した。

悠宇「……行くんだ」
ドリス「え…?」

梯子を上り外に出る悠宇。

ドリス「…悠宇!」

悠宇はゴーグの右手に乗っていた。

ドリス「悠宇待って! どこ行くの!?」
悠宇「行くんだ!! みんなの所へ!!」
ドリス「え?…行くったって…悠宇!!」
悠宇「そうだ…行かなくっちゃ!」

そしてゴーグは、ガイルタウンを目指して歩き出す。

アロイ「ゴーグ…」
ウェイブ「今更タウンに帰って何になる…手遅れだよ…無駄なこった!」
ドリス「駄目よ…あたし達も行かなきゃ!!」
サラ「そうだ! 無駄でもいいよ!」
アロイ「ついて行こうぜ! ゴーグに!」

ガイルタウンを目指して進むゴーグ。
突然立ち止まって振り返ると、ビーグルがついて来ていた。
落ち込んでいるウェイブ。アルゴスが顔を舐めて慰める。

ウェイブ「……そりゃあまあ、死ぬ時だって賑やかな方が…うわああぁっ!?」

ウェイブが立ち上がった瞬間、地震が起こり車体が傾く。
ビーグルは崖崩れに巻き込まれ、転落していた。

サラ「あああっ!!」
アロイ「あぁっ!!」
ドメニク「うわああぁっ!!」

それを見たゴーグが助けに駆けつける。

悠宇「みんなー!! 大丈夫ー!?」

ハッチを開放してアロイ・サラ・ドリスが外に出る。

アロイ「……半分死んじゃったぜ…」

むせるサラ。

アロイ「お!?」
ドメニク「こりゃ、駄目だ…」

ビーグルは瓦礫に埋もれ、動けなくなっていた。

ウェイブ「…! タウンまではまだまだ遠いっていうのに!!」

ゴーグが左手を差し延べる。

サラ「?」
ウェイブ「?」
悠宇「みんなー!! ゴーグに乗って!!」

左手に乗り移るドリス。

アロイ「え? 俺達も? いいのかよ!」

アロイ・サラ・アルゴスも続いて乗り移った後、右手を差し延べるゴーグ。
ドメニクは驚いて後ずさるが、ウェイブは嬉々として乗り移る。

ウェイブ「えーい乗っちゃう!」
悠宇「早くしてドメニクさん! ミサイルが来ちゃうよ!」
ドメニク「神よ…感謝します…」

祈りを捧げ、ドメニクも乗る。

サラ「あははは…」

ドリスは悠宇の両手に捕まり、ゴーグの頭の上に移動する。
そして再び、ガイルタウン目指して歩き出す。

何処かの岸辺に泊まる1隻のヨット。
その甲板上でくつろいでいるロッドとレイディ。

レイディ「綺麗ね…夕日…ねえ、天国へ行ったら、あたし達やり直せるかしら?」
ロッド「っはっはっは…天国だって? ふふふ…おいおい、誰の台詞だ一体?」
レイディ「何さ…あたし、構やしないわよ。地獄だって…」

ロッドの胸にもたれる。

レイディ「…ねえ? また最初から生きられたら素敵ねあたし達…」
ロッド「もう一度、リンクスファミリーに生まれて…?」
レイディ「そうよ。そしてあなたはバルボア家に生まれて…それでいいのよ。それだってこんなドジはしないわ」
ロッド「ふっふっふ…」
レイディ「素敵に生きられると思うわ…今度は…」

レイディの頭を優しく撫でるロッド。

ガイルタウン・ロッドの私室。
船長が酒を飲み干して立ち上がる。

ガイルタウンの港。
GAILの戦車が海面めがけて主砲を乱射。兵士達の歓声が上がる。

デヴィ「止めた止めたぁ!!」
兵士達「?」
デヴィ「えーい!! このぉ!!」

弾薬箱を投げ飛ばす。

デヴィ「こんな事してどうなるっていうんだ馬鹿馬鹿しい!!」
ベーム「いい根性してるじゃねえか。え!? サイコロ屋さんよ!!」

驚く兵士達。

デヴィ「寝ぼけるんじゃねえやこの兵隊ボケ!! 往生際が悪いったらねえぜ!!」
ベーム「て~め~え~!!」

デヴィの襟首を掴む。

ベーム「ベトナムからこっちの俺はな、人の生き血なんぞ嫌って程見てきたんだ!! 往生際がどうだってこの野郎!!」

デヴィもベームの襟首を掴み返す。

デヴィ「サイコロ屋なんて抜かしやがったのはてめえだろ!? カポネも真っ青(まっつぁお)のクーガー・コネクションを知らねえかこの…」
ベーム「女のケツに引っ付いていやがっただけのクセに!!」
デヴィ「何だと!? この雇われ…ネズミが!!」

ベームの腹にボディブローを入れ…。

デヴィ「この!!」

更にアッパーカットを決められ吹っ飛ぶベーム。

ベーム「!!」
デヴィ「ぅわっはっは!! 来いオラぁ!! もうお(しめ)ぇか!?」
ベーム「…まだまだこれからぁ!!」

血を拭って立ち上がり、タックルをかける。

デヴィ「ぅおっ!!」

背後の木箱の山にぶつかる。
そしてベームはそのままデヴィにパンチのラッシュを浴びせ、デヴィも負けじと殴り返すが、1発当てても次のラッシュが空振りし、カウンターを食らう。
見ている兵士達も、熱狂して歓声を送っている。


「ベーム大尉に、カリフォルニアの土地3万エーカーを賭けるぜ」
「大きく出たな」

ベームがダウンする。

「俺はフロリダの別荘だ!」

互いの顔面を拳が直撃。

「大尉に全部だ持ってけ泥棒!!」

ベーム「うぉっ!」
デヴィ「うぉっ!」

既に息も絶え絶えの2人。それでも尚立ち上がる。しかし…。

デヴィ「…どうした…かかって来い…」
ベーム「…お前こそ…」

お互い顔を押し付けあったまま睨み合うも、そのままへたり込んでしまう。

ベーム「はぁ…はぁ…止めだ止めだ…」
デヴィ「ああ…下らねえ……確かによぉ…いきがってみても…ケチなヤクザさ…」
ベーム「ケチな戦争屋さ…この俺も…ははは…」

ベームがデヴィの肩を組む。

ベーム「(ちげ)えねえ…」

デヴィも泣き出す。
それを兵士達は呆然と見ていた。
しばらくして、ベームが何かを見つけた。

ベーム「あいつ…何処へ?」

その人影は、タウンを離れて間もない船長だった。

ヘルメットに流し込まれるコンクリート。何処かで兵士達が外壁の補修作業をしている。

「もっと厚くしろい! そんなんじゃな、放射能が染みてくらあ!!」
「けどよ…」
「放射能を防げてもよ…窒息するんじゃねえのか俺達」
「…」
「…お、おい、見ろ」
「?」

穴から見えたのは船長と、その後についていくベーム、デヴィ、そして兵士達の姿が。

「みんな…行っちまうぞ…」
「大尉まで…何処へ行くんだろ…」
「放っとけ! 安全なのは屋根の下に決まってらあ! そうだろ?…?」

振り返ると、他の兵士達が抜け出していた。

「おーい!! 俺だけを置いて行かねえでくれ!!」

コテを投げ捨てて突っ走る。

ホツ・マツア長老についていく旧島住民。

「ホツ様どちらへ…」
「ミサイルが降って来ます。何処かへ身を隠さねば…」
ホツ「神の使いが、帰って来る」
「「?」」

足を止める島民達。

ホツ「出迎えねばなるまい。嫌な者は良いぞ。好きに、身を守るがよい…」
「…ホツ様! 待って下さい、わし等も!」

駆け足でホツについていく。

ヨットを降りたロッドとレイディ。

レイディ「何処へ行くつもりかしら、こんな時に…」

軍服を投げ捨て、島民の下へ向かうロッド。

レイディ「ロッド! どうしたのよ!?」
ロッド「田神ジュニアが、帰って来るんだ」
レイディ「え!?」

ゴーグは目的のガイルタウンに近づきつつあった。
そしてタウンにも島中の人々が集結。
しかし、悠宇達の希望をよそに、ミサイルは非情にも迫っている。

カモメの群れも一斉に島を離れていく。
迫り来るミサイルに、恐れおののく悠宇達。
その時、ミサイルが突如空中で爆発。閃光と爆風が島を覆い尽くしていき、きのこ雲が空を突き破る。
その最中、一瞬オーロラが現れていた。
様子を見つめる発射基地の人々。
米大統領官房では、大統領と秘書も同じく島の様子を見ていた。

大統領「これでいいのだね、確かに」
秘書「はい。いくつかの岩礁は残ると思われますが、島は、消滅した事になります」
大統領「うむ…」

閃光防御用サングラスを開く。

大統領「…終わったな」

きのこ雲に覆われた島。
寄せては返す波。
しばらくしてきのこ雲が晴れ、光が消えていき、空にオーロラが輝く。
ゴーグの頭上で身をかがめていた悠宇も、事態の沈静化に気付いて空を見上げる。

悠宇「…?」

ドリスも一緒に様子を見る。

ドリス「…?」

アルゴスが頭上の悠宇達に向かって吠える。
アロイとサラも身を起こし、ウェイブ、ドメニクも周囲を見渡す。
島は、ミサイルの影響を全く受けていなかった。
島中の人々も、ガイルタウン近くの橋の上にいた。

船長「……ふっふっふっふ…はっはっはっはっは…!!」

高笑いする船長。
座り込んでいるロッドと、彼の胸に寄り添うレイディ。

ロッド「…?」

見つめ合った後2人は…。

ロッド&レイディ「はっはっはっは…」
ホツ「ふっふっふ…」
デヴィ「?」
ベーム「?」
ベーム&デヴィ「…?…はっはっはっは…!!」

兵士達も、大喜びしながら一斉に帽子を上空へと放り投げる。
その頃発射基地では…。

司令官「? な、何だこれは!?」
「何ともなっておらんじゃないか!」
「至急調査しろ!」
「爆発規模は計算通りです!」
「強力な電磁シールドがあった模様です!」
「100メガトンで30個分は落ちてるんだ!」
「モスクワから入電!」
「大統領官房へ繋げ!」
「PQPQ、こちらペンタゴン! こちらペンタゴン!!」

オウストラル島。

ドリス「生きてるのね、あたし達…どうして…? どうして生きてるの!?」
悠宇「分からない…でも、生きてるんだ…見てごらん! 島もそのまんまだよ!」

島の無事を喜ぶドメニク、ウェイブ、アロイ、サラ。
向こうから、船長を先頭に島の人々が走って来る。
アロイ達も手を振って叫びながら彼等に応える。

悠宇「(きっとマノンさんだ…マノンさんが守ってくれたんだ…)」

夜、ガイルタウンの港。

ドリス「良かったわ…やっぱりいい人だったのね…マノンさんって」

アルゴスがドリスに頭を撫でて貰っている。

悠宇「うん…だけど、これからどうしたらいいんだろう…」
ドリス「え? だってもう安心じゃない。放射能だってゼロだったんでしょ?」
悠宇「ううん、そうじゃなくってさ。ミサイルは防げたけど、やっぱり世界中がこの島を放っておかないよ」
ドリス「攻めて来るって、言うの?」
悠宇「うん…」

一方、島の人々は宴を催していた。
肩を組みながら美酒に酔いしれるベーム、デヴィ、そして兵士と旧島住民達。
アロイの太鼓に乗って踊るサラ。
書類をキャンプファイヤーに次々と投げ入れる兵士達。

悠宇「攻撃されればマノンさんは戦うよ」

立ち上がってゴーグに目を遣る。

悠宇「ゴーグだって……そうなったら…同じ事の繰り返しだ…」

波がドリスの足につく。

ドリス「ああっ!! 冷たい!」
悠宇「…? 海が…こんな所まで…」

水位が上がってきていた。

悠宇「…沈んでる?」
ドリス「え?」
悠宇「…島が沈んでるんだ…でなきゃここまで水は来ないよ」

様子を報告する為に船長に会いに来た悠宇。

悠宇「船長! 大変だ!」
船長「うむ。俺も今気付いたところだ」

しばらくして火山が噴火。

悠宇「!?」

吹き上がるマグマ。
その様子を見つめる人々。

悠宇「マノンさん…オウストラル島を、また沈めちゃうの?」

ゴーグの両目が青い光を放つ。

遺跡中枢部の制御室にいるマノン。

マノン「悠宇…これが最後だ…我々がコントロール出来た島のエネルギーは、これで全てだ…」

周囲に集まっていた光の一部が結合し、輝きを放つ。

マノン「君に会えて、良かった…悠宇…」

再び地上。

船長「放っておけば島はまた争いの種になる……それを見越して自分から始末をつけようって言うんだろう」
悠宇「(…マノンさん…)」

そして次の日。
人々が島を離れる準備に追われる中、ホツは1人座り込んで火山を見つめていた。

ホツ「神は見捨てなされた。何という事だ…わしらの島が沈むとは…」
ドメニク「出直せ、という事ですよ」
ホツ「教えを垂れるのか? お前が、このわしに」

ドメニクはただ黙っていた…。

ホツ「…フッフッフ…」

兵士と一緒に荷物運びをしているアロイとサラ。

アロイ「…!…重いぞ!…」
サラ「ねえ。このボート、とても乗せらんないね、ゴーグ…」
アロイ「…」

タウンを歩くゴーグ。
その足元を、船長と悠宇の乗る車が通り過ぎる。
悠宇は黙ってその背中を見つめていた。

船長「悠宇、前を見てるんだ…辛くてもな」

別れを惜しむ悠宇に、船長が励ましの言葉をかける。

兵士を乗せたボートが、GAILの運搬船へと向かう。
その運搬船のデッキ上で、ロッドとレイディが海を見ていた。

レイディ「…帰るあてがあるのあんた」
ロッド「?」
レイディ「GAILはブッ壊れちまったし…あんたにはもう屋根もベッドもないんだよ?」
ロッド「望むところさ。清々しているぜ。やり直しが…」

傍に立てかけられたデッキブラシを持ち、格好つけながら…。

ロッド「…出来るんだからな」
レイディ「フフ…そうね。天国にも地獄にも行けなかったけど、最高よね」

ウェイブが、船長に手を掴まれながらボートに乗る。

ウェイブ「おっと…僕の夢の島よ、お前は僕を捨てて沈むのか…切ないわぁ…」

ドメニクがボートに乗った途端にバランスを崩し…。

ウェイブ「ぁああっ…!!」

船長とアルゴスに支えられる。

船長「急げドリス。置いてくぞ」

ドリスは港に立ち尽くしたまま、悠宇の帰りを待っていた。

ドリス「(悠宇…)」

その頃、悠宇はゴーグに別れを告げようとしていた。
島が沈んだ影響で、海水は既に足まで達している。
長い沈黙の後…。

悠宇「…ゴーグ……また、会えるよね……きっと…また来るよ…僕……待っててくれるよね…これまでだって…長い間待っててくれたんだもんね…」

咆哮と共に、ゴーグの両目が青く輝く。
約束してくれた事を喜ぶ悠宇。泣きそうになった瞬間、港へと走り出す。
一度だけ振り返り、涙を拭い、仲間達の待つ港へ向かう。

噴火は続く。
悠宇とドメニクがボートで運搬船へと移動。しかし、船に乗ったのは悠宇だけだった。

ドメニク「じゃあ、元気でな。うんと勉強しろよ」
アロイ「…あ、兄貴も、な…お、俺、必ずさ、手紙書くからよ!」
ドメニク「水が変わるから、体には、十分気をつけろ」

汽笛が鳴り、船は島を離れていく。
人々もデッキから、沈みゆく島の姿を見つめている。
そしてゴーグは、遺跡を目指し火山帯を進む。

悠宇「(きっとまた、会えるよゴーグ…今に、みんな間違った事に気付いてくれるから…それまで、マノンさんも死んじゃ駄目だ…待っててよ…)」

その時、船長が悠宇の肩に手をかける。一緒に振り返る悠宇とドリス。
船長は、ただ黙って見つめていた。

悠宇「…うん」

再び悠宇は、約束を胸に島を見つめる。
オウストラルの島が今、異星の神秘と共に海の底へと深い眠りにつく────。




THE END

OF AUSTRAL AFFAIR

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2015年03月27日 14:28

*1 ガーディアンとは異星人のロボットの総称で、この大部隊のものはラブル・ガーディアン、ゴーグ及びマノンの駆るゴーグに似た紫のガーディアンは更に上級のドークス・ガーディアンと呼ばれる自律型護衛用ロボット(尚、前者はレベル21で後者はレベル23)。

*2 筆者注:「PARIS」が「PAIRS」と間違って表記されていますが、画面内の表示に従ったものです。ご了承下さい。