新オバケのQ太郎の最終回

9時カエル


よし子とハカセが道端で話しているところへ、Q太郎とO次郎がやって来る。
Q太郎はなぜか、ニコニコと笑っている。

Q太郎「なかよくやってるね。けっこう、けっこう。ともだちはいいもんだなあ」
よし子「どうしたのかしら?」


相変らずニコニコしたQ太郎が、ドロンパに出逢う。

ドロンパ「ばかにうれしそうだな。もっともと、きみはいつもうれしいやつだけどな」

Q太郎は笑顔のまま、ドロンパをしげしげと見つめる。

ドロンパ「……」

そしてドロンパの手を握りしめ、笑顔のまま去って行く。

ドロンパ「へんなやつ!」


Q太郎は木佐の家を訪ねる。

Q太郎「木佐くんて、いいやつだなあ……」
木佐「よせよ。ほんとのこといわれると てれちゃう」
Q太郎「これからも がんばってくれたまえ」
木佐「あしたドライブにいくんだ。よかったらQちゃんもこないか」
Q太郎「えっ あした? いこういこう。あしたがたのしみだ。ワ~イ
木佐「おおげさだな。9時にさそいにいくからな」
Q太郎「9時? ウ! グス……」

Q太郎が急に涙ぐむ。

O次郎「バケラッタ!」
Q太郎「あっ そうか。泣いちゃいけないんだった。わらって、わらって」


Q太郎は笑顔を取り戻し、続いて道端でゴジラに出逢う。

Q太郎「やあ、ゴジラくん。男の中の男! なにしてる?」
ゴジラ「みりゃわかるだろ。ペットのさんぽだ」

ゴジラはカエルを連れている。

Q太郎「カエル! ウ……ウ…… ウワアン

Q太郎が急に大泣きし、駆け去って行く。


このQ太郎の妙な様子は、友達一同に伝わる。

よし子「ようすがおかしいわよ」
ゴジラ「ばかにごきげんだったり 泣きだしたり……」
木佐「ただごとじゃないぞ」

そこへ正太がやって来る。

正太「じつはね。Qちゃんはね…… オバケの国へかえるんだ。今夜……」
一同「え──っ ほんと?」


町外れでQ太郎が、涙ぐんでいる。

O次郎「バケラッタ」
Q太郎「そんなに悲しいなら、かえるのやめれば、だって? そうはいかない。ぼくも、いつまでものんびりしていられないんだ。一人前のオバケになるためにはね。だから決心した。新学期をきかいにオバケ学校へはいろうと。今夜9時きっかりに出発しなければならない。入学通知書に書いてあった。そりゃ、正ちゃんたちとわかれるのはつらいさ。こんなちっちゃいころから、ずうっといっしょに……。だからぼくはわらって、みんなにもおわかれなんかいわないで、出発ギリギリまでそんなことわすれていたかったんだ」

正太「そして9時になったら、さりげなくかえるんだって」
一同「そうだったの……」「だからカエルや、9時ということばで泣いたのか」
正太「今、U子くんにそれとなくおわかれをつげてるはずだ」


正太たち一同が、U子の家を覗くと、Q太郎は家事にこき使われている。

U子「いいところへきてくれたわ。おそうじがすんだら、おせんたくおねがいね」

窓から、正太がこっそりとU子を呼ぶ。

U子「なによ? このいそがしいのに」
正太「……」

正太が耳打ちして、事情を話す。

U子「Qちゃんが!
正太「シーッ、しらないふりしてなくちゃこまる」

U子「わたしのバカ! バカ! バカ! Qちゃん ごめんね。もう、そんなことやめて!」
Q太郎「なぜ? はじめたばかりなのに」
U子「どうしてって……、つまり またあしたたのむわ」
Q太郎「そうか、あしたがあるんだ。あしたもあさっても、てつだいにくるね」
U子「ありがと、Qちゃん 大すきよ」
Q太郎「フヒョー もう死んでもいい!」


正太とともに帰宅するQ太郎を、友達みんなが追いかけてくる。

一同「少しだけど このおかし くってくれっ」「この本、おもしろいから やる」
Q太郎「どうして、みんな こうしんせつなんだろ」
正太「さあ、どうしてかしらね」


そして大原家の夜。
正太たち家族が揃い、Q太郎の妹のP子も交えての夕食。

Q太郎「なぜか今夜は ごちそうがいっぱい!」
パパ「さあ、なぜだろう」
ママ「どんどん たべてちょうだいね」


食事を終えての、一家団欒。

Q太郎「ハハハ 今夜は時間のたつのが早いみたい」

次第に9時が近づいてくる。
Q太郎と一緒に笑顔を保っていた正太も、焦り始める。

正太「Qちゃん、いよいよ……」
Q太郎「しょうぎさそうよ いつもみたいに」

Q太郎は笑顔のまま。
正太と将棋盤を囲むが、正太は時計ばかり気にしている。

Q太郎「正ちゃんのばんだよ。よそみしないで」

そして、ついに時計が9時を指す。

Q太郎とO次郎が、かすかに涙顔で手を振る。

それきり2人の姿は、跡形もなく消える。

正太「Qちゃん!
伸一「いっちゃった……」
P子「あっけないの……」

正太が我慢しきれずに、大声で泣き出す。

正太「こんなのいやあだあ。さよならもいわないなんて。ゆっくりはなしあいたかったよ。おもいでばなしやなんか、気のすむまで……。それからあく手して肩のひとつもたたいて、わかれたかったよ。ワ~ッ

いつの間にか、Q太郎とO次郎が、恥しそうな顔で現れている。

パパ「……あれ? どうしたの? わすれものかい」
Q太郎「い、いや……」
パパ「じゃ、かえるのやめたの?」
Q太郎「ち、ちがう……。じつは、その……。かんちがいしてたの」

ママ「ええっ 出発はあしただったの?」
パパ「そそっかしいな」
Q太郎「エヘヘ……」
正太「じゃ、ゆっくりはなしできるね」
Q太郎「うん!」


「今夜はねないでしゃべりあかそう」

「ずうっと今夜だといいね。いつまでもいつまでも」


おわり

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最終更新:2017年05月31日 06:42