ウルトラマンジードの第1話


復活したウルトラマンベリアルにより、
宇宙は騒乱の渦中にあった。
戦いに終止符を打つため、
科学者であるウルトラマンヒカリは
ウルトラカプセルを開発する。
カプセルには、ウルトラマンたちの強大な力が
宿っていた。
手の平に収まるほどの大きさしかなかったが、
たった1つで戦局を覆すほどの力を秘めていた。
しかし──

ベリアル「超時空消滅爆弾、起動」
ゼロ「何っ!?
ベリアル「フフフフ! せいぜい足掻くんだな。
ハハハハハ!」

ゼロ「何とかしないと!」
セブン「行くな! この宇宙は、もうもたない」
ゼロ「そ、そんな……」

地球を中心に生じた次元の断層は、
宇宙全体に広がり
星々は消滅した──かに思われた。




秘密基地へ
ようこそ




駄菓子屋の銀河マーケット。
店長の久米ハルヲが駄菓子を齧りながら、テレビを見ている。

『今日はクライシスインパクトの真実に迫ります』
『かつてのクライシスインパクトは、隕石落下が原因とされていますが、違います。この写真をご覧ください。クライシスインパクトの影響で、当時の影響はすべて失われたと言われていますが、偶然にも発見された1枚です。名前は『ウルトラマンベリアル』』

激しい物音。
主人公の少年・朝倉リクが、床に転がっている。

リク「痛ぇ……」
ハルヲ「どうした?」
リク「あれ取ろうとして、ジャンプしたら、天井に頭ぶつけちゃって」
ハルヲ「頭!? 天井にか!?」
リク「ってか、店長。これ、売り物……」
ハルヲ「はは、ごめんごめん、これ、本当うまくてさぁ」
リク「まったく、もう」
ハルヲ「ほら」
リク「いいんすか? ──あ、うまいですね!」

ハルヲの妹の原 良子、その娘のエリが来店する。

良子「お兄ちゃん!」
ハルヲ「おぉ、久しぶり!」
エリ「リク兄ちゃん、こんにちは」
リク「エリちゃん、おでかけ?」
エリ「うん、おじいちゃんち。あっ、ねぇねぇ、アイスちょうだい」
ハルヲ「いいぞ。持ってけ、持ってけ」
エリ「やったぁ!」
良子「リクくん、大きくなったねぇ! まだ、ここに住んでるの?」
リク「引っ越したいんですけどね…… なかなか」
エリ「おじちゃん、これ」

エリがアイスクリームを手にしており、良子が財布を出そうとする。

ハルヲ「あぁ、いいからいいから」
エリ「あれ? でも、これ、溶けてる……」

エリが手にしたアイスのカップの中身は、すっかり溶けて液体となっている。


ハルヲが良子たちを見送り、リクはアイスクリームの冷凍庫を調べている。

ハルヲ「バイバーイ!」
リク「店長、壊れてないですよ」
ハルヲ「えぇっ!? おかしいなぁ、何でだろう?」


古びたアパート・星雲荘の、リクの自室。
リクの足元の暗がりから、ペガッサ星人のペガが現れる。
普段は人目を避け、ダークゾーン(異空間)に潜み、常にリクのそばにいる。

ペガ「冷凍庫、夜にペガが診るよ。機械いじりは得意だし」
リク「やめとこうぜ。気づかれたらおしまいだ。それに、宇宙人が同居してるなんて、バレたら大騒ぎになる」
ペガ「店長は、君が1人で住んでいると思っている」

ペガ「そもそも君は、自分が地球人だと思い込んでいる」
リク「僕は地球人だ」
ペガ「ペガの助けを求める声、聞こえたのは君だけだ。それに、あのジャンプ力──」

ペガの話をよそに、リクはテレビの特撮ヒーローに見入っている。

リク「本当に、いるのかな」
ペガ「何が?」
リク「ウルトラマン。宇宙の平和を守るために、ベルアルと戦ったっていう」
ペガ「都市伝説だよ。ウルトラマンも、ベリアルも」

突如、部屋が大きく揺れる。

リク「地震!?」
ペガ「な、何だろう!?」

窓から外を見ると、巨大な怪獣・スカルゴモラが闊歩しており、あちこちに火の手が上がっている。

リク「やばい、こっちに来るぞ! 逃げよう!」

リクとペガが互いの方向へ逃げようとして衝突、はずみでリクは窓から放り出され、地上に転がる。
ハルヲが店から飛び出し、叫んでいる。

ハルヲ「やめろぉ──っ! 来るなぁ──!」
リク「店長、危ない!」
ハルヲ「うるせぇ!」

リクが必死にハルヲを避難させ、銀河マーケットがスカルゴモラに踏み潰される──


どうにかスカルゴモラから逃れた人々が、川岸を歩く。
川辺に佇むリクに、ハルヲが声をかける。

ハルヲ「リク!」
リク「どうでした? エリちゃんたち」
ハルヲ「連絡ついたよ。無事だって」
リク「良かったぁ……!」
ハルヲ「上遠野町の、おじいちゃん家にいるってさ。俺もそこへ向かう。リク、お前は?」
リク「友達が、泊めてくれるって」
ハルヲ「わかった。それにしても、本当にいたんだなぁ…… 怪獣」
リク「僕に力があったら、街を守れたのに……」


陽が落ち、リクは無人の夜道を歩いている。

リク「ペガ、ついて来てるかい?」

姿は見えないが、ペガの声が響く。

ペガ「友達の家に泊まるんじゃなかったのかい?」
リク「みんな、無理だって」
ペガ「本当は友達なんかじゃ、なかったのかもしれない」
リク「フフ…… こういうときは、『ジード』だ」
ペガ「またぁ?」
リク「ジーっとしてても、ドーにもなんない! 野宿も案外、楽しいよ」
ペガ「どうだかねぇ……」

天文台に辿り着き、ペガが姿を現す。

ペガ「天文台か。星を見るところだ」
リク「僕、赤ちゃんのとき、ここで保護されたんだ。『赤ちゃんの泣き声がする』って、通報があったんだって」
ペガ「君のお父さんとお母さん、どんな人だったのかなぁ?」

そばのベンチで野営を始め、リクがペガにホットミルクを勧める。

リク「はい、ペガ」
ペガ「ありがとう」

携帯ラジオが、怪獣の進路を報せる。

『明日未明にも、上遠野町に達する模様──』

リク「上遠野町 !? エリちゃんたちのいるところだ」
ペガ「ペガたちにできることは、何もないよ……」

リクのそばに機械仕掛けの小さな球体が、宙を浮いて近づいてくる。
リクが指を伸ばして触れると、小さな火花が飛ぶ。

リク「痛っ! 刺された!?」
謎の声『Bの因子、確認。基地をスリープモードから通常モードへ移行します』

突如、リクたちの目の前に、エレベーターの入口が出現する。

謎の声『権限が上書きされました。マスター、エレベーターへお乗りください』
リク「……?」
謎の声『お乗りください』
リク「聞こえるの…… 僕だけ? 聞こえる?」
ペガ「うん、うん!」

リクとペガは、エレベーターで地下へと運ばれてゆく。

謎の声『到着まで、残り30秒』
リク「あなたは?」
謎の声『報告・管理システム。声だけの存在です』
リク「この下には、何があるの?」
謎の声『基地です』
リク「基地?」


スカルゴモラが夜の街を闊歩する。
背に刀を背負った少女、鳥羽ライハが厳しい視線でそれを見据えている。

異星人を捜査する秘密組織、AIB(Alien Investigation Bureau)のエージェントの愛崎モアと、その上司のシャドー星人ゼナが、街角でスカルゴモラを監視している。
スカルゴモラが忽然、と姿を消す。

モア「先輩、怪獣! ──消えた!? やったぁ! 本部に連絡しましょう!」
ゼナ「終った気がしない…… こいつは、何かある」


リクとペガはエレベーターにより、地下の秘密基地に到着する。

ペガ「ねぇ、リク」
謎の声『ここは天文台の地下500メートルに位置する、中央指令室です。この基地はマスター、あなたに譲渡されました』
リク「僕のこと、誰かと勘違いしてる……」
謎の声『誤認ではありません。すでに血液の採取を行ない、DNA検査を終了させています』
リク「いつの間に……?」
謎の声『お渡しするものがあります』

正面のデスクに、見たこともないアイテム、数個のカプセルが出現する。

謎の声『フューンライズ用マシン、ライザーです』
ペガ「リク!」
リク「僕に、くれるの? 何で?」
謎の声『これはあなたの運命です。ライザーを使用することで、あなたは本来の姿に戻り、力を行使することができるでしょう』
リク「本来の、姿……?」
謎の声『あなたは、この星の住人ではありません』
ペガ「リク……」
リク「いいんだ。今、大事なのは力のことだ。たとえばさ、本来の姿に戻ったとして、ピアノを持ち上げたりできる?」
謎の声『可能です』
リク「ダンプカーは?」
謎の声『可能です』
リク「じゃあ…… 怪獣は?」
ペガ「えぇっ!?」
謎の声『可能です』
リク「よし、わかった。これの使い方を教えて」
ペガ「何する気!?」
リク「怪獣を止めるんだ。このまま放っておいたら、市街地に入る。人が死ぬんだ」
ペガ「無理だよ!」
謎の声『できます』
ペガ「嘘だ!」
謎の声『嘘ではありません。なぜならマスターは、ウルトラマンの遺伝子を受け継いでいますから』


夜の街角に、リクのもとに現れたものと同じカプセルが2つ、転がっている。
謎の男・伏井出ケイが、それを拾い上げる。

ケイ「冷却完了、次の行動に移らせてもらおう」

ケイが、リクのものと同じライザーに、2つのカプセルを装填する──


スカルゴモラが、街に再び出現する。
人々がパニックに陥り、その中にハルヲ、良子とエリの姿もある。

リクのいる秘密基地では、壁面スクリーンに怪獣スカルゴモラが映し出されている。

リク「これ、誰が撮ってるの?」
謎の声『球体型偵察機、ユートムによる映像です。マスター、現場までエレベーターで向かいますか?』
リク「行けるの!?」
謎の声『座標を設定できます。通信には先ほどのマシン、ライザーを。触れていれば会話が可能です』
リク「わかった」
ペガ「リク……」
リク「心配するな。ジーっとしてても、ドーにもならない。あいつを止めなくちゃ。行くぞ、レム」
謎の声『レムとは、私のことですか?』
リク「あー…… 名前がないと、やりずらいんだよな」
謎の声『Report Managementのイニシャルですね』
リク「あ、えっと…… そう! 僕のことは、リクって呼んでくれ」
謎の声『わかりました、リク。転送を開始します』


リクを乗せたエレベーターが、怪獣出現場所近くの地上に到着する。
先ほどまでの報告管理システム──レムの声が響く。

レム『聞こえますか、リク』
リク「あぁ、OKだ」
レム『怪獣は進路を変えました。進行方向に、まだ避難している人々がいます』
リク「まずい! ここで食い止めないと!」
レム『やり方を、おぼえていますね?』

基地で受け取ったアイテム類が、リクのベルトに装着されている。

リク「えっと、どれだっけ?」
レム『フュージョンライズ後の名称を決めてください』
リク「えっと…… ジードだ! 『ウルトラマンジード』! そしてこれは、ジードライザーだ! よし…… ジーっとしてても、ドーにもならねぇ!」

アイテムの一つ、ジードライザーに、2個のカプセルを装填する。

リク「融合! アイ・ゴー! ヒア・ウィ・ゴー!

音声『フュージョンライズ!』

リク「決めるぜ、覚悟! ジイイィィ──ド!!

音声『ウルトラマン!』『ウルトラマンベリアル!』『ウルトラマンジード・プリミティブ!!』

カプセルからウルトラマンとウルトラマンベリアルの姿が具現化。
それらがリクに融合して巨大変身、リクはウルトラマンジード・プリミティブに変身を遂げる。

レム『フュージョンライズ、成功しました』
ペガ「あれは……」

ベリアルを髣髴させる鋭い目。

ヒロヲ「何だ、あれ!? あの目の感じ、どこかで……」

ヒロヲの脳裏によみがえるのは、テレビで見た「ウルトラマンベリアル」の姿──

ジード「僕、今どんな格好なんだ?」

スカルゴモラが向かって来る。ジードが飛びかかるが、逆に吹っ飛ばされ、背後のビルを砕く。

ペガ「リク、聞こえる?」
リク「ペガ、どうなっちまったんだ? 建物も道路も、軟らかい。砂で作ったみたいだ」
ペガ「今の君、まるで……」

スカルゴモラが突進してくる。

リク「行くぞ!」

ジードがスカルゴモラを食い止めるものの、力負けして吹っ飛ばされ、海に落下する。
さらに向かって来るスカルゴモラに、ジードが必死に格闘で応戦するが、凄まじい力に苦戦する。
ハルヲたち街の人々が、その光景を固唾を飲んで見上げている。
やがて、ジードの胸のカラータイマーが点滅を始める。

ペガ「リク!?」
リク「何て破壊力だ……」
レム『間もなく活動限界時間です』
リク「えっ!?」
レム『この星でウルトラマンジードでいられるのは、およそ3分間で、次に変身できるのは、およそ20時間後です』

スカルゴモラが地上の人々に矛先を向け、人々が怯える。

ヒロヲ「来るな、来るなよぉ!」

リク「駄目だ! みんなが危ない! 今、何とかしないと!」
レム『光子エネルギーを放射しますか?』
リク「やり方は!?」
レム『すでに知っているはずです』
リク「お前、何言って…… いや、頭に浮かんだ!」

ジードが大ジャンプでスカルゴモラの前に立ち塞がる。
突進してくるスカルゴモラを目がけ、ジードが構えをとる。

ジードが必殺光線を発射し、スカルゴモラ目がけて炸裂──!
スカルゴモラは木端微塵となって大爆発し、ジードは初勝利を収める。
呆然とその光景を見上げる人々、喚起する人々。

ペガ「勝った……!」
レム『はい。先ほどの光線は『レッキングバースト』です』
ペガ「でも、リクの、あの姿は…… まるで……」


翌朝。街頭ビジョンがジードと怪獣の戦いを報じている。
大勢に通行人の中、リクも、変身した自分の姿を初めて目にする。

リク「あれが…… 僕!?」

ペガ「レム。リクの中にある、強大な力って?」
レム『血液から、Bの因子が確認されました。リクはこの基地の本来のマスターと、99.9パーセントの確率で、親子関係にあります』
ペガ「親子!? リクが誰の子か、知ってるの!?」

レム『はい。彼の父親は、ベリアル。ウルトラマンベリアルです』


(続く)

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最終更新:2018年07月25日 08:02