科学忍者隊ガッチャマンIIの第1話


総 裁 Ⅹ の 逆 襲



夜の海を行く豪華客船。
船内で華やかなパーティが開かれている一方、幼い少年が、船内をさまよう。

少年「ママぁ? ママぁ!」

操舵室。
窓の外、空の彼方から謎の光球が飛来している。

船員たち「船長、あれです!」「何だ!?」「ものすごいスピードで接近してきます!」
船長「いかん、こっちへ向かって来るぞ! 方向を変えろ。お客を避難誘導するんだ」

少年「ママぁ…… ママぁ……!」

船員「船長、危なぁい!」

光球が船に激突する。
船体を貫き、海の中へと消える。
破壊された船から少年が投げ出され、海の中へ。

少年「ママぁ…… ママぁ……!」

海中を漂う謎の機械が、少年を取り込み、海底へと沈んでゆく。
そして海底深くに築かれた巨大な建造物の中へ、その機械が収容される。

そして、何か月が過ぎた。
豪華船クイーンマーガレット号の
沈没した海底深く、
今、不思議なことが進行していた。
海底に捕われた子供は今、
カプセルの中で恐るべき速度で成長した。
そして、間もなく
完全な大人になろうとしていた。

海底の建造物の中。
カプセル内では、冒頭の少年がすっかり成人の姿へと変っている。

目の前に、異形の怪物の姿が浮かび上がる。

「フフフ…… 私は、宇宙から来た総裁X。わしが見込んだとおり、お前は立派なミュータントに成長した。お前は生まれながらにして、異常な染色体を持っている。そのお前が人間改造機によって今、素晴しい新人類として誕生したのだ! 目を覚ませ。そして出でよ。私の忠実なしもべよ…… お前は今から、わしの命令に従い行動する。強力なギャラクターを組織するのだ。これからお前を『ゲルサドラ』と呼ぼう。ゲルサドラ…… フフフフフ! 行け、ゲルサドラ!!」


国際科学技術庁・加賀博士を乗せた車が夜道を行く。

加賀「な、何だ!?」
運転手「あ、あれを!」

奇妙な衣装に身を包んだゲルサドラが立っている。加賀が車を降りる。

加賀「何か用かね?」
ゲルサドラ「国際科学技術庁、特殊理化学研究室所属、加賀博士」
加賀「私を知っているとは……?」
ゲルサドラ「車から離れるのだ」
加賀「何をする!?」
ゲルサドラ「離れろ!」

ゲルサドラが銃から光線を放ち、車は跡形もなく蒸発する。
空に巨大な飛行体が現れ、加賀が吸い込まれてゆく。


国際科学技術庁の会議の席。アンダーソン長官と、各国の代表たち。

アンダーソン「──そして、第3機動部隊将校バラム・シャター大佐。すべて、謎の失踪をしています。この1か月間に科学者23名、軍事部官93名が消えているのです。しかも、このような奇怪な事件が今、この地球のあちこちに起こっているのです。そのいずれもが、国家にとって重要な人物です! 我々国際科学技術庁としては、もうこのまま放っておくわけにはいきません」

前作で科学忍者隊の指揮をとっていた、南部博士が発言する。

南部「アンダーソン長官!」
アンダーソン「おぉっ、南部博士!」
南部「皆さん。3か月ほど前、南太平洋ギルバード諸島、東方100キロの洋上に、宇宙からと思われる落下物があったことは、ご存じと思います」
一同「あぁ、あれは大きな隕石だった」「それが何か関係があるというのか?」
南部「あれが隕石とは断定できませんし、まだ発見されていません」
アンダーソン「だとすると?」
南部「宇宙からの到来者だと思われます」
一同「そんな、宇宙人がやって来たというのか!?」「SF映画の見すぎだ!」
南部「今度の事件は、総裁Xの2度目の挑戦とは考えられないでしょうか?」
一同「ギャ、ギャラクターだと!? 総裁Xが再び現れたというのか?」「確固たる証拠もないのに、そんなことが言えるか!?」
一同「総裁X!? もし本当に総裁Xなら、大変なことだ」「地球にとっては、再び危機だ!」「どうしたらいいんだろう?」
一同「そうだ、ガッチャマンだ!、ほら、あのとき大活躍してくれた、ガッチャマンだ!」「ガッチャマン?」「ガッチャマン!」
一同「そうだ! 地球の救世主、ガッチャマンだ!」「夢のようなことを言うな…… 科学忍者隊は、とっくに解散しておるわ」
南部「科学忍者隊ガッチャマンは、健在です!」
アンダーソン「な、何だって!?」
南部「私はこのような日が来るのを恐れ、密かに待機させてあったのです。忍び寄る白い影、ガッチャマンは素晴しく成長しております。ガッチャマン、出動せよ!」


これより先、潜水空母Gタウンが誕生していた。
南部博士が密かに有志を集めて建造した
移動基地である。

科学忍者隊の新たな本拠地・Gタウンの南部博士のもとに、健、ジュン、甚平(じんぺい)、竜の4人が集合する。

健「それじゃ博士、最近の事件は、やはりギャラクターの逆襲だというんですか!?」
南部「恐らく、そうだろう。総裁Xは有能な人物を誘拐し洗脳して、ギャラクターを再組織しようとしているに違いない」
ジュン「これから、行動を開始するわけね?」
竜「腕が鳴るぜぃ!」
甚平(じんぺい)「コンドルのジョーが生きてたらなぁ…… おいら、それを思うと悔しくて、悔しくって……」
ジュン「甚平…… ジョー……」

コンドルのジョー……
彼こそ、地球を救うべく、
恐るべきギャラクターと戦い、
尊い命を代償として散った、
勇敢なガッチャマンの一員であった。

健「……」
南部「思うまい、健…… ジョーは立派に戦って死んだのだ。今は忘れることだ」
ジョーは、私たちの心の中に生きてるわ。死んじゃいないわ
南部「その気持ちを忘れないでほしい」
健「はい……」
南部「さて、そのジョーの替りだが、G2号として、ある男を補充する」
一同「えぇっ!?」「な、何だって!?」「ジョーの替りだって!?」「G2号は永久欠番だって、おいらたち、決めてたのに!」
南部「わかっている。だが、情報部から特に推薦してきたのだ。情報部員のホーク・ゲッツくんだ」


同じく、ニューゴッドフェニックスも誕生した。
最高時速マッハ8.5、航続距離18000キロである。
ニューゴッドフェニックスは科学忍者隊と共に、
新たな敵に向かって出動する。

ゴッドフェニックスの後継機であるニューゴッドフェニックスに乗り、健たちが空を行く。

竜「ニューゴッドフェニックスの性能は素晴しいぞい!」
健「俺たちの初出動だ! ギャラクターだろうが何だろうが、叩き潰してやる。……ホーク・ゲッツはどこへ行った?」
ジュン「ゴッドフェニックスを見学中だって」
甚平「ヘッ! あの新人、どうも好かねぇや。自信過剰ってんだ、ああいうのを」

ジョーと同じ忍者隊姿の新G2号、ホーク・ゲッツが現れる。

ゲッツ「いやぁ、さすがは南部博士の作ったニューゴッドフェニックス。すばらしいメカだ。とくと拝見させてもらったぜ、隅から隅までな。しかしよぉ、これでギャラクターの科学力に勝てるかな、健?」
健「もちろんだ。今までだって、負けはしなかった」
ゲッツ「だが、もしギャラクターの二度目の挑戦だとしたら、科学力が違うだろう。なぁ、坊や?」
甚平「ぼ、坊や!? おいらのことか!?」
健「甚平!」
ゲッツ「怒るな、怒るな。そのときになったら、本物の戦いかたを教えてやるよ」
健「ゲッツ! 科学力も必要だが、俺たちはチームの団結力が一番大切だと思う!」
ゲッツ「ハハっ、団結だと!? 人間の力なんて弱いものさ。ギャラクターの科学力に比べたらな」
健「何だとぉ!?」

南部博士からの通信が入る。

甚平「あっ、指令だ」
南部『科学忍者隊の諸君、早速仕事だ。イーストン島の海岸で、ドライツ空軍の輸送機が発見された。3日前行方不明になっていた、200人乗りの輸送機だが、乗員はすべて消えた』
ジュン「蒸発……?」
南部『いいか、その島に神殿の遺跡がある。調査してみる価値のある神殿だ』
健「神殿?」
南部『案内はゲッツに頼むといいだろう。ゲッツは一度そこを、情報部員として調査したことがある』
ゲッツ「そう、3年前にね。まぁ、任しときな。俺がいりゃ、科学忍者隊も少しはマシになるさ」
甚平「ヘン!」
南部『相手がギャラクターだとしたら、今までとは違うだろう。充分に気をつけて行くんだ!』
健「はい!」
竜「どぉれ、おらも今度からは、留守番から解放されるわい。ここは『パイマー』がやってくれる。コンピューター頭脳を持った優秀なヤツだわ」

竜に代り、自動操縦用ロボットのパイマーが操縦席に就く。

竜「パイロット・マシン、略してパイマーだわ」
甚平「パイマーか。ま、竜のつけた名前にしちゃ、いい名だな」
ジュン「フフッ。パイマー、後は頼んだわよ」
甚平「大丈夫、大丈夫。竜よりは頼りになるかもね」
竜「このぉ!」
健「ゴッドフェニックス、発進!」
パイマー「ラーサー」


島に着陸した一同が、ゲッツを先頭に、神殿の遺跡内を進む。
奇妙な形の神像がそびえたっている。

ゲッツ「甚平、怖気づいたか?」
甚平「ヘン! なんでぇ、こんなとこ!」
竜「おい、もう少し先へ行ってみよう」
甚平「ま、待ってよぉ!」

竜「あれ? こっちは行き止まりだわ」
甚平「なんで?」
竜「こ、この像、さっき見たぞ!」
ジュン「私たち、同じところをグルグル回ってるんだわ」
甚平「おかしいなぁ。ここ、開いてたはずだけど」
健「ゲッツ。お前の案内ってのも、当てにならないようだな」
ジュン「ここに何があるっていうの、ゲッツ?」

いつの間にか、ゲッツが姿を消している。

健「……ゲッツは? ゲッツ!?」
甚平「いないぜ!」

神像の目が、怪しく光る。

健「危ない!」

神像の目から光線が放たれる。
健はそれをかわして銃撃すると、神像が砕け、内部から機械構造が覗く。

健「ゲッツめ! 俺たちを謀ったな!」

物陰から健を狙う人影。

ジュン「健!」
健「バードソーサ──っ!」

健の攻撃で、健を狙っていたゲッツが銃を取り落とすが、ゲッツはさらにナイフを抜いて健に飛びかかる。

ゲッツ「死ねぇぃ!!」

逆に健がゲッツを投げ飛ばす。
さらに健が追いつめようとするが、ゲッツはヒラリと身をかわす。

健「待てぇ!」
ゲッツ「ハハハ、さすがガッチャマン! 身のこなしはまぁまぁだな」
甚平「くそぉ! だましやがったな、こいつ!」
ゲッツ「お前たちの秘密は全部わかったぜ!」
竜「畜生! ただじゃおかねぇぞぃ!」
健「貴様、何者だ!?」
ゲッツ「フフフ。お前ら、いや、地球上すべての人間が最も恐れていた、ギャラクターだ! ハハハハハ!」
健「ギャラクター!?」
ジュン「やっぱり!?」
甚平「じゃあ、俺たちをここへ案内したってのも……」
ゲッツ「お前たちをまずこの世から抹殺する使命を受けた案内役さ。見ろ!」

数十人ものギャラクター隊員たちが現れ、さらにゲルサドラも姿を現す。

竜「しまった……」
ゲルサドラ「ホホホホホ! よく来た、ガッチャマン! 待っていたぞ」
健「貴様がギャラクターの参謀か! 二度までも野望を果たそうと企てたのは立派だが、実体を見せずに忍び寄る白い影、科学忍者隊も立派に生きていることを忘れるな!」
ゲルサドラ「しかし、それも今日までだ。お前たちがいる限り、私たちの野望は望めぬ。ガッチャマン、覚悟!」

隊員たちが一斉に襲いかかる。

ジュン「オーロラリボン!」
甚平「リバウンドボ──ル!」
竜「グリッパ──!」

健たちは新たな武器や体術を駆使し、隊員たちを次々に蹴散らす。

ゲッツ「くそぉ!」
健「ゲッツを逃がすな! あいつはGタウンの秘密を知っている!」

一同がゲッツを追うが、目の前の壁がひとりでに閉まり、行き止まりとなる。

健「あっ、しまった!」

轟音が響き渡る。

甚平「な、何だよ、この音は!?」
ゲルサドラ「お前たちはどうあがいても、逃げられないのだ。見るがいい、ギャラクターの恐ろしさを。ハハハハハ! 騒いでも無駄だ!」

四方の壁がひとりでに動き、密室となって健たちを閉じこめてしまう。

甚平「い、一体、何が始まるんだよ!?」
竜「な、何が来ようが、ビクともせんぞい!」

床を砕き、奇妙な形の巨大な神像が出現する。
竜が銃で攻撃するが、まったく歯が立たない。

健「竜、やめろ。どうやらムダらしい」

そばの壁を、ヤモリが這っている。
神像がレーザーを撃ち出し、ヤモリが焼き消える。

ゲルサドラ「ホホホホホ! 少しでもこの世に未練があるのなら、そこを動かぬことだ。レーザー光線の恐ろしさは、科学忍者隊ならよく知ってるはずだ」

甚平「畜生!」
健「甚平!?」

神像から放たれたレーザーを、甚平が危うくかわす。

健「動くな!」
ゲルサドラ「そう、それがいい。もうすぐ楽になれる。ほぉら、そろそろ武神像のお目覚めだ。お前たちはその目より発するブラスターで、一瞬にして焼き消されるのだ。ハハハハハ!」

神像の胴にゆっくりと、巨大な目が開いてゆく。

健「ダメだ…… 手の出しようがない!」
ゲルサドラ「ハハハハハ! ハハハハハ!!」


(続く)

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最終更新:2014年09月08日 07:20