科学忍者隊ガッチャマンFの第1話
ガッチャマンたちの決死の活躍によって、 宇宙の悪魔・総裁Xはついに滅びた。 しかし、ギャラクターの ソーラーシフト計画による被害もまた、 大きなものであった。 各国は全力を挙げて、 地球再建に乗り出していた。 だが……
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ガッチャマンとギャラクターの最終決戦の跡地。
無数に散乱した機械片の中、総裁Xの破片の一つが光り出し、宙に浮き、どこかへと飛んで行く。
夜の造船工場の中。
通路を行く警備員が、何か光っている物を見つける。
そこには、冒頭の総裁Xの破片。
「な、何だ、あれは!?」
破片が突如、激しく光り始める。
「わぁぁっ!」
工場内の機械が、目に見えない力でひとりでに動き始め、積み上げられた資材も動き始める。
大量の資材がひとりでに組み合さり、巨大な塔のように築き上げられてゆく。
後日。
科学忍者隊の憩いの場、スナックJUN。甚平は無邪気に、トランプで遊んでいる。
竜「ちぇっ。甚平の奴、トランプに夢中だぜ」
ジュン「甚平を見てると、平和そのものね」
竜「まったくだ。ジョーのことも考えねぇで」
健「いや、あいつだって考えているさ。考えたってしょうがないから、あんなことに熱中しているんだ」
ジュン「この平和、いつまで続くかしら?」
健「永遠に続いてほしい……」
竜「そうじゃ。でなければ、ジョーがかわいそうじゃ。サイボーグにまでなって、やっと勝ち取った平和だもんなぁ」
ジュン「そうね。早く、元気になってほしい」
健が、入院中のジョーのもとを訪ねる。
ドアの開く音で、ベッドの上のジョーが目を覚ます。
健「すまない、起こしてしまったか?」
ジョー「健か…… 今、夢を見てたんだ」
健「夢?」
ジョー「ハハッ。俺だって、夢を見るさ。パンドラ博士の夢だった」
健「パンドラ博士か…… いい人だった」
ジョー「よく、俺の面倒を見てくれたぜ」
健「生きていたら、お前のことを……」
ジョー「やめてくれ。ギャラクターは滅びたんだ。俺はもう、必要のねぇ人間さ」
健「ジョー……」
ジョー「わかってる。ひがみじゃねぇ。だがよぉ、俺は戦いがあってこそ生きる道があったんだ。ただ生きるために、みんなに迷惑をかけたくねぇ」
健がカーテンを開く。
まばゆい陽の光が差し込み、ジョーが目を細める。
健「見ろ。やっと勝ち取った、平和の光だ」
ジョー「眩しいぜ……」
健「生きるんだ、ジョー。この光を自分のものにするんだ!」
ジョー「健……!」
ところ変って、悪の組織、エゴボスラー・ファミリーの総会場。
「ただ今より、エゴボスラー・ファミリーの総会を開会する。我が盟主エゴボスラー伯爵、どうぞ!」
盟主であるエゴボスラーが、幹部たちの前に立つ。
エゴボスラー「我がエゴボスラー・ファミリーの幹部諸君。世界各国から集まってくれたことを、感謝する。我々の組織は、今や世界的に拡大し、数十万の忠実な同志を得た。もちろん悪の組織は、星の数ほどある。しかし諸君! 総裁Xのギャラクター亡き今、世界を征服するのは、我々エゴボスラー・ファミリーのみだ! 諸君、私はギャラクターを尊敬している。ベルク・カッツェとゲルサドラは、偉大な統率者であり戦略家であった。私は、あの2人に負けない統率者になることを誓おう。エゴボスラー・ファミリーは、世界を征服するのだ! そのためには手段を選ばん! ジャマ者は叩き潰せ! 諸君、我々はただちに行動を起こす。エゴボスラー・ファミリーに栄光あれ!」
幹部たち「エゴラー!」「エゴラー!」
無数の戦車、ヘリコプター、兵士たちにより、街の襲撃が始まる。
砲撃で建物が砕け、街が炎に包まれ、人々が逃げ惑う。
津波に襲われ壊滅した平和の殿堂、
国際科学技術庁も新しく再建され
アンダーソン長官の後任として、
南部考三郎博士が選任された。
一同「まったく大変な一団が現れた」「南部博士もひどいときに長官になられたものだ」
一同「早速ですが南部新長官、エゴボスラー・ファミリー対策は、どうなってるんですか?」
南部「皆さん。エゴボスラー・ファミリーは確かに恐ろしい、非情な一団です。国連軍も歯が立たない有様です。考えようによっては、あのギャラクターより恐ろしい一団かもしれません」
そこへ、健からの通信が入る。
南部「南部だが」
健「南部博士、大変です!」
健たちの待つガッチャマン基地に戻った南部博士。
そこには、エゴボスラーからの通信が入っていた。
エゴボスラー「フフフ、南部新長官殿。初めての電話で恐縮です」
南部「君は一体、何者だ?」
エゴボスラー「これは失礼。私は、エゴボスラー伯爵」
健「何だって!?」
南部「すると、君があのエゴボスラー・ファミリーの?」
エゴボスラー「その通り。私は、この世界を支配することを誓いました」
南部「そんなことができると思っているのか!?」
エゴボスラー「私の強大な力はもうご存知のはずです。国際科学技術庁はただちに降伏し、全世界の軍隊を解散させなさい!」
南部「バカな!」
エゴボスラー「フフフ、そう言うと思っていた。私も一言言っておくが、私はギャラクターを模範にしている。ベルク・カッツェとゲルサドラを、最も尊敬している人物だ」
甚平「畜生!」
エゴボスラー「全世界が地獄の炎と化そうと、私の知ったことではない。新長官として降伏を拒否した、あなたの責任だ」
南部「何と言われようが、君の言うことを聞くわけにはいかん!」
エゴボスラー「ハハハハハハ!」
通信が切れる。
南部「エゴボスラー……」
健「畜生ぉ! 博士、俺たちに出動させてください!」
南部「いかん! いかん。相手はただのギャングの集団にすぎないのだ」
健「しかし、奴らは軍隊と何ら変りません。平和を守るのが俺たちの仕事です!」
南部「健。科学忍者隊は、総裁Xのように科学を悪用する者だけが相手だ。エゴボスラー・ファミリーは国連軍や国防軍が対処するはずだ」
健「博士! 待ってください。博士、いや、南部新長官。俺は1人でも出動します!」
一同「!?」
南部「健……」
健「奴らは、俺たちが傷だらけになりながら、やっとの思いで奪い返した平和を、噛みしめる間もなく踏みにじったんです! 奴らをこのまま放ってはおけない……!」
南部「健!」
健「南部博士……」
南部「……」
健「博士、ジョーのことは頼みます」
エゴボスラーや幹部のメカンドルの指揮で、戦車団が地上を突き進む。
エゴボスラー「進め、進めぃ!」
健たちの乗るニューゴッドフェニックスが飛来。
健「よぉし、奴らを蹴散らしてやる!」
ニューゴッドフェニックスが地面すれすれを超低空飛行する。
衝撃波で戦車たちが吹っ飛び、次々に爆発する。
メカンドル「おぉっ、ゴッドフェニックス!」
エゴボスラー「フフフ。南部の奴、科学忍者隊を出動させたな」
健「バードミサイル!」
そのとき突如、大地を叩き割り、ニューゴッドフェニックスの数十倍はあろうかという超巨大な鉄獣メカが出現する。
健たち「おぉっ!?」「すげぇ……!」「竜、いったん離れろ!」
エゴボスラー「何だ!?」
健「危ない! 旋回!」
鉄獣メカの振るう鋭いツメを、ニューゴッドフェニックスが危うくかわす。
健「くそぉ、バードミサイルを撃ち込んでやる!」
バードミサイルが炸裂するが、敵のあまりの巨大さに、ミサイルはまったく通じない。
竜「なんてバカでかいメカなんじゃい!」
健「垂直上昇、反転!」
ニューゴッドフェニックスが敵の攻撃をかわそうとするが、ついに巨大な爪により翼を砕かれる。
健「うわぁぁっ!」
ニューゴッドフェニックスが煙を吹きつつ落下する。
さらに鉄獣メカの無数の光線が炸裂し。操縦席が大爆発する。
ボロボロとなったニューゴッドフェニックスが森の中へ墜落、健たちは機外へ放り出され、気を失う。
なおも鉄獣メカが迫る。
かすかに意識を取り戻した健。
鉄獣メカの頭上に、巨大な機械の塔の姿が見える。
声「フハハハハ! ガッチャマン、ついに最期のときが来たようだな」
健「何者だ!?」
声「総裁Zと呼んでもらおう」
健「総裁Z……!?」
声「総裁Xは、お前たちによって滅ぼされた。だが、メカブレインである私までは倒すことはできなかったのだ。ガッチャマン、我々スペース・ブレインは偉大だ。その偉大なる宇宙の超意思に刃向う地球人には、制裁を加えてやる! フハハハハハ!」
健「くそぉ……!」
健が立ち上がろうとするが、体に力が入らない。次第にメカ怪獣の爪が迫る──
新たに姿を現した総裁Z。 第二の敵を前にして、 科学忍者隊の運命は風前の灯であった。 立て、科学忍者隊。負けるな、ガッチャマン!
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最終更新:2016年01月07日 19:52