超力戦隊オーレンジャーの第15話

マシン帝国バラノイアの月面基地。
皇帝バッカスフンドのもと、工場で次々にマシン獣が製造されている。

バッカスフンド「もっともっと、ペースを上げろぉ! 出来損ないはブッ潰せ! マシン・エリートだけが、我が帝国で生きることができるのだぁ!! つまらぬ感情を持つマシンなど、生きる資格はない!」

その一方、出来損ないのマシン獣の残骸が、次々にスクラップ場に廃棄されてゆく。
落雷が轟き、スクラップが寄せ集まり、1体の、歪な人型のマシン獣の姿を成してゆく。

そのマシン獣が、バッカスフンドのもとに現れる。

バッカスフンド「貴様は!?」
マシン獣「なぜ捨てた? なぜ殺した!?」
バッカスフンド「何ぃ!?」

バッカスフンドはおもむろに、杖でマシン獣を叩きのめす。
マシン獣がバッカスフンドに槍を振るうものの、まったく歯が立たない。

マシン獣「俺は貴様が捨てた、数多くのスクラップから生まれた。マシンたちの怨念が俺を造った!」
バッカスフンド「何を偉そうに!? スクラップならスクラップらしく、おとなしくしていろぉ!」
マシン獣「俺が再び眠るのは、復讐を終えたとき!」
バッカスフンド「落ちこぼれの分際で皇帝に歯向かうとはな。宇宙の塵となるがいい! 身の程知らずが! 死ねぇぇ!!」

一際強力な攻撃で、マシン獣は吹っ飛ばされ、宇宙へと放逐される。

マシン獣「俺は死なん! 死なんぞぉ!!」



友よ 熱く眠れ!!



地球上。
遊園地のベンチに、超力戦隊オーレンジャーのオーブルーこと三田裕司が佇んでいる。
そばではカップルが、楽しそうに談笑している。

裕司「あ~ぁ、せっかくのオフだっていうのに。俺もガーフルレンド、欲しいよなぁ……」

1匹の犬が、裕司のそばにやって来て、鳴き声をあげる。

裕司「おっ、よしよし。どうした? お前も1人ぼっちなのか?」

そこへ通信が入る。

裕司「こちら、裕司」
通信『中央エネルギーセンターが襲われた模様。至急、現場に急行せよ』
裕司「了解!」

裕司が愛車のバイク・ブルージェッターに跨ると、先ほどの犬が追いかけてくる。

裕司「しょうがねぇな」


中央エネルギーセンター。
あのマシン獣が電源室から、電気エネルギーを奪っている。

マシン獣「パワーレベル2、3…… 7…… 駄目だ。この程度のエネルギーでは、バッカスフンドには勝てん」

裕司の変身したオーブルーが、エネルギーセンターに到着する。

ブルー「ここにいろよ」

オーブルーは犬を残し、センターへ。
職員たちが倒れている。

ブルー「気絶してるだけだ」

センター内にいるマシン獣を、オーブルーが見つける。

ブルー「貴様、バラノイア!」

オーレンジャーのオーレッドたち4人も駆けつける。

レッド「オーレッド!」
グリーン「オーグリーン!」
ピンク「オーピンク!」
イエロー「オーイエロー!」
マシン獣「どけ! 貴様たちに用はない」
ピンク「とぼけないで! エネルギーセンターを狙うなんて、見え見えの作戦じゃない、バラノイア!」
マシン獣「違う! 俺はバッカスフンドを狙う者。バラノイアではない!」

マシン獣が逃走する。

レッド「待てぇ!」

オーレンジャーたちがマシン獣を追うが、見失ってしまう。

ブルー「しかし、何者なんだ? 奴は。『バッカスフンドを狙っている』と言っていたが」
グリーン「我々を惑わすために、適当なことを言ったんじゃないですか?」
ブルー「だとしたら、思いっきり汚ねぇ野郎だぜ」

犬の鳴き声がする。

ブルー「あっ、ジロー!」
ピンク「ジロー?」
ブルー「捨て犬なんだ。さっき拾ったんだよ」

裕司がジローと名付けたその犬が、車道に迷い出る。
トラックが走って来る。
危うく轢かれそうになるジローを、先のマシン獣が救う。


変身を解いた裕司が、ジローを捜し回る。

裕司「ジロー! ジロー!」

マシン獣がジローを抱いている姿を、裕司が見つける。
ジローを愛でるその仕草に、思わず裕司の頬が緩む。

裕司「驚いたぜ。ロボットのくせに、情けがあるんだな」
マシン獣「人間にかける情けはない」
裕司「何!?」
マシン獣「少しでも欠陥のあるロボットを、バッカスフンドは数多く処分した。その処分されたスクラップから、俺は生まれたのだ。俺は憎い! バッカスフンドが!」
裕司「えっ?」
マシン獣「俺は人間に興味はない」

マシン獣がジローを放し、ジローが裕司に駆け寄る。

裕司「良かったな、ジロー」

裕司が視線を戻すと、すでにマシン獣は姿を消している。

(マシン獣『俺は憎い! バッカスフンドが!』)


一方、バラノイア基地のバッカスフンドと、執事のアチャ。

アチャ「あのスクラップ野郎、まだ生きていたとは!? 生意気なぁ!」
バッカスフンド「奴の存在はバラノイア帝国の恥。抹殺せよ!」
アチャ「いえいえ、ただ殺しては面白くありません。奴の処分は、この私にお任せを」


地球上では、今度は関東エネルギーセンターに、マシン獣が現れている。

警備員「中央エネルギーセンターを襲ったマシン獣だぁ!」

警備員たちが、マシン獣を取り囲む。

警備員「止れ! 止まらんと撃つぞ!」
マシン獣「エネルギーを…… もっとエネルギーを!」
警備員「撃てぇ!」

警備員たちが一斉に発砲する。

マシン獣「うおぉぉ──っ!!」

マシン獣は抵抗もせずに銃弾を浴び続け、ガックリと膝を突く。

警備員「まだ動いているぞ!? 撃て、撃てぇ!」

マシン獣が銃弾を浴び続け、倒れる。
警備員たちはなおもマシン獣を取り囲み、銃を突きつける。
そこへ、裕司が駆けつける。

裕司「やめろぉ! やめるんだ! オーレンジャーの三田裕司だ」
警備員「なぜ、こいつを庇うんですか!? バラノイアですよ!」
裕司「違う! こいつは…… 違うんだ!」

裕司がマシン獣を助け起こし、去ってゆく。

裕司「しっかりしろ。しっかりするんだ」


裕司はマシン獣をどうにか、人里離れた場所まで連れてゆく。
マシン獣は全身に傷を負い、煙を吹き出している。

裕司「これは…… よし」

変身ブレスレット・パワーブレスから、そのエネルギー源であるストレージクリスタルを外し、マシン獣に握らせる。

裕司「受け取れ、俺の超力エネルギーを」

裕司はマシン獣の手を握り、必死に思念を込める。
マシン獣の傷が、次第に治癒してゆく。
やがて、マシン獣の霞んだ視界に、汗まみれで息を切らす裕司の姿が映る。

マシン獣「助けたのか……? 俺を」
裕司「お前だって、ジローを助けてくれた。それにさっきだって、人間を傷つけなかったじゃないか」
マシン獣「俺の敵はバッカスフンド1人。他の者は傷つけん。それが、俺の誇りだ」
裕司「戦おうぜ。一緒に! 俺たちとお前、敵は一緒だ!」

裕司の掲げる拳を、マシン獣がしっかりと握り返す。

マシン獣「お前のような者がいるとは…… 見直さなければならないな。人間について」

裕司も頷き返す。
だがその場をぶち壊すように、銃撃が炸裂する。
アチャが、雑兵のバーロ兵たちを引き連れて現れる。

アチャ「友情ごっこはそこまでです! スクラップ野郎、バッカスフンド様の(めい)により、お前に名前を与えましょう。お前は『バラリベンジャー』! バラノイア帝国のために、働きなさい」
マシン獣「無駄だぁ! バラノイアに就くくらいなら、死を選ぶ!」
アチャ「むぅ~っ、バーロ兵!」

バーロ兵たちが一斉に襲いかかり、マシン獣──バラリベンジャーが、裕司と共に応戦する。

裕司「超力変身!」「オーブルー!

裕司がオーブルーに変身する。
オーレッドたち他のオーレンジャー4人も駆けつける。
一同が勢いづくが、それも束の間、一際激しい攻撃が炸裂する。
なんと、皇帝バッカスフンドが自ら地上に降り立つ。

レッド「バッカスフンド!?」

バッカスフンドの激しい攻撃が炸裂し、バラリベンジャーが大きくふっ飛ばされる。

バッカスフンド「今だ! アチャ、やれ!」

バーロ兵たちがバラリベンジャーを取押え、その顔に、アチャが小さな機械を取り付ける。

ブルー「あっ、バラリベンジャー!?」
アチャ「見たか! このコントローラーを付けられたものは、殺人マシンと化す!」
バッカスフンド「やれぃ! バラリベンジャー、オーレンジャーを倒せ!」
バラリベンジャー「うぅっ…… おのれぇ、バッカスフンド!」
ブルー「バラリベンジャー!?」

バラリベンジャーは苦悶の声を漏らしつつも、必死にバッカスフンドに挑もうとする。

バッカスフンド「何をしている、アチャ!? コントローラーのパワーを上げろ!」
アチャ「はっ!」
バラリベンジャー「おぉ!? おぉ…… おぉっ!?」
ブルー「バラリベンジャー!?」

バラリベンジャーが理性を失い、オーレンジャーたちを攻撃し始める。

ブルー「やめろ、目を覚ますんだ! お前の敵は、バッカスフンドなんだ!」

バラリベンジャーの攻撃は、なおも続く。

ブルー「やめろおぉ! 目を覚ますんだぁ!」
レッド「無駄だ! 奴は所詮、バラノイアなんだ!」
ブルー「違う!! 違う、違うんだぁ!!」

攻撃しようとするレッドを、ブルーが制する。
さらなるバラリベンジャーの攻撃で、レッドたち4人が吹き飛ばされる。

ブルー「みんなぁ!?」

そしてバラリベンジャーは、ブルーにも矛先を向ける。
抵抗できないブルーに、バラリベンジャーの槍が、深々と突き立てられる。

(バラリベンジャー『俺の敵はバッカスフンド1人。他の者は傷つけん。それが、俺の誇りだ』)

ブルー「ぐぅっ……! お前の誇り、俺が…… この俺が守ってやる!!」

ブルーが決意を固めて、バラリベンジャーの槍を胴から引き抜く。

ブルー「激突ローリングボンバー!!」「稲妻・超力トンファ!!

ブルーの連続攻撃の前に、バラリベンジャーが大きく後ずさる。

レッド「出動、スカイフェニックス!」「ジャイアントローラー、投下!」

レッドの愛機スカイフェニックスから、必殺武器のジャイアントローラーが投下される。

ブルー「隊長、俺にやらせてください!」
レッド「駄目だ、危険すぎる」
ブルー「しかし、隊長! あいつだけは、俺に!」
レッド「……」

レッドが頷く。
レッドしか乗り込むことのできないジャイアントローラーに、ブルーが乗り込む。

ブルー「ジャイアントローラー・シュート!!」「許せ、バラリベンジャー! アタ──ック!!

ブルーを乗せたジャイアントローラーが、火の玉と化してバラリベンジャーに炸裂。
大爆発──!
ブルーもまた衝撃で吹っ飛ばされて地面に叩きつけられ、変身を解除される。

裕司「うわああぁっ! うぅっ、ぐおっ!」

変身を解いた吾郎隊長たちが駆け寄る。

吾郎たち「裕司!」「裕司!」「しっかりして!」「大丈夫か!?」

裕司が傷ついた体を引きずりつつ、倒れているバラリベンジャーに駆け寄る。
動かなくなったバラリベンジャーを前にし、裕司は悲痛な面持ちで、言葉を失う。

バラリベンジャー「何を悲しむ? お前たちは、正しいことをしたのだ。俺の誇りを、守ってくれた……」
裕司「……」
バラリベンジャー「俺の魂は、お前たちと共に…… いつか、お前たちがバッカスフンドを倒すまで……」

一同が頷く。

裕司「あぁ…… 必ず!」
吾郎「必ず……」
バラリベンジャー「俺は、スクラップから生まれた…… そして今、スクラップに還る……」

ボロボロになったバラリベンジャーが、自分の体を引きずるように立ち上がり、去ってゆく。
裕司が跡を追おうとするが、吾郎が制し、静かに首を横に振る。


無人のスクラップ場。

バラリベンジャーがやって来る。
犬のジローが駆けて来る。
バラリベンジャーが震える手で、愛おしそうにジローを撫でる。

やがて、その手がピタリと止まる。
指先がボロボロと崩れ、腕が崩れ、そして体がバラバラに崩れてゆく。


元のスクラップ、機械の残骸と化したバラリベンジャーは、もう動かない。

ジローの悲しげな鳴き声が、乾いた風の吹く中に響く。


つづく

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最終更新:2019年05月16日 21:09