夜。
川で金髪の少女、フェシリアが水浴びをしていた。
川辺では、黒髪の少年、勇斗がスマートフォンで何かを調べていた。
勇斗「ファランクス、古代ギリシャで猛威を振った、槍兵による密集陣形、か・・・」
川から上がったフェリシアが勇斗の背中に近寄ってきた。
勇斗「あ・・・」
フェリシア「夜に一人でこそこそと、怪しいですね」
勇斗「勉強してただけだって。夜中に水浴びするのはいいけど、驚かすよな」
フェリシア「うふふ、お兄様をドキドキさせるのが私のお仕事ですから」
勇斗「初耳だな・・・・その仕事」
フェリシア「明日は大事な戦なのですがら、夜更かしは程々にして下さいね。お兄様は私たちの宗主なのですから」
勇斗「分かってる。休むとするか」
勇斗が星空を見上げる。
勇斗(ホント、ここだけは元いた世界と変わらないんだよな・・・)
翌朝。
鉄の槍を構えた軍勢がファランクスの陣形を取り、
迫ってくる軍勢を次々と槍で倒していく。
敵兵たち「おい・・・あの槍、鉄なんじゃ!?」
「バ、馬鹿な!」
そう言っていた敵兵も槍で貫かれた。
ファランクスの軍勢の後方に、勇斗とフェリシアが乗るチャリオットがあった。
フェリシア「大勢は決しましたね、流石はお兄様。実に見事な采配です」
勇斗「ファランクスの陣形、あれは俺が考えた訳じゃない。凄いのはアレクサンドロス大王や織田信長だ」
フェリシア「は、アレク・・・?」
勇斗「俺のは単なるチート」
フェリシア「はあ」
勇斗「よし、明らかに敵は浮き足立ってるな。ここで決めるぞ、軍旗を掲げろ!全軍突撃!」
勇斗(俺がユグドラシルに召還されてから2年が経過していた。
ここでは僅かな土地を巡り、人々は命を奪い合い、弱い者は蹂躙され、虐げられる。
俺は言葉さえ通じないこの野蛮な地で何の因果か狼の氏族を率いる宗主に登りつめていた。
指揮一つで誰かの生死を左右する立場に・・・)
勇斗を狙って矢が飛んできた。
フェリシア「お兄様!」
緑の光に包まれたフェリシアが矢をつかみ取った。
フェリシアの首の後ろに、ある紋章が浮かんでいた。
勇斗「サンキュー、フェリシア。相変わらず、エインヘリヤルってのは人間離れしてるな」
フェリシア「どうやらあそこからですね」
勇斗「角のエインヘリヤル!」
森の中に潜んだ一人の敵兵が勇斗達に多数の矢を飛ばしてきた。
フェリシア「あらら、また来ましたわ」
勇斗「おいおい・・・・」
フェリシア「お任せを」
フェリシアが鞭を抜いて、飛び上がった。
フェリシア「はあ―――っ!」
体を緑の光で包んだフェリシアが、飛んでくる矢を全て鞭ではたき落とした。
フェリシア「お怪我はありませんか?」
勇斗「相変わらず、見事な縄裁きだ。女王様の素質たっぷりだ」
フェリシア「王様はお兄様でしょ。もしかして、結婚して下さるのですか?」
勇斗「ああ、女王様ってのはそういう意味じゃなくて・・・」
フェリシア「うふ、お兄様ったら。まあ、そういう所も魅力なんですけど」
勇斗「・・・っ」
フェリシア「それにしても、ここまで攻撃が及ぶとは。前線はさぞ激しいでしょうね」
勇斗「ルーネは無事・・・だよな?」
フェリシア「御心配には及ばぬかと。あの子は最強の狼、ヴァーナガルムですよ。そろそろ・・・」
狼を象った軍旗が掲げられた。
ルーネ「〈〈角〉〉の宗主、狼のジークルーネが召し捕ったり!」
フェリシア「思った通り。ルーネがやってくれたようですね」
勇斗「ああ」
ルーネ「父上!」
銀髪の少女、ジークルーネの乗る馬が、勇斗とフェリシアの元に来た。
ルーネ「ご無事でしたか?お怪我などされておりませんか?」
勇斗「前線に出てもないのに、怪我なんかしてないって。むしろルーネこそ大丈夫か
ルーネ「ご安心を。女神の加護により私は至って無事。かすり傷一つ負ってはおりません」
勇斗「ご苦労だったな。褒美は何がいい、何でも好きなものを与えよう」
ルーネ「何でもですか?」
勇斗「俺が与えられるものならな」
ルーネ「で、では!その・・・」
勇斗「?」
ルーネ「あ、頭をなでて頂けますか?」
勇斗「え、それだけ?」
ルーネ「私にとってはこれが何よりの褒美でございます!」
勇斗「ま、まあそんなにいうなら」
勇斗がルーネの頭を撫でた。
フェリシア「ルーネったら、ホント忠犬なんだから」
犬の耳と尻尾が生えたルーネを想像し、勇斗は吹き出した。
ルーネ「父上?何かおかしなことでも?」
勇斗「いや、何でもない。そういえばルーネ、お前の捕らえた〈〈角〉〉の宗主はどうした?」
ルーネ「は、宗主の身柄は近くの兵士に預けておきました」
勇斗「おし!天幕を張れ!会談の準備だ!」
天幕が張られ、勇斗達の元に〈〈角〉〉の宗主である、桃色の髪の少女、リアーネが引き立てられてきた。
勇斗「この子が〈〈角〉〉の宗主?」
フェリシア「はい、彼女がリネーアルドです」
勇斗「まだ子供じゃないか」
リアーネ「貴様だって僕と同じぐらいだろうが!」
勇斗「取りあえず、自己紹介しておこうか。俺は勇斗、〈〈狼〉〉の宗主だ」
リアーネ「フン」
勇斗「言葉を弄するのは好かん。単刀直入に訊こう。俺の子分に
リアーネ「断る!何故角が犬ごときの風下に立たねばならぬ!寝言は大概にしろ!」
フェリシア「うふ、あなたこそ寝言は大概にしなさい」
リアーネ「何が寝言だ!」
フェリシア「確かに以前までの我らは、犬だったかもしれません。しかし我らはお兄様の手で生まれ変わりました。強くたくましい、本物の狼へと」
リアーネ「そんな貧弱そうなヤツがどれ程のものだと言うんだ!」
ルーネが緑の光を纏い、机を殴り砕いた。
ルーネ「口を慎め、父上への侮辱は許さん」
勇斗「控えろ、二人とも。彼女は曲がりなりにも角の宗主だ。無礼な口は慎め!」
フェリシア・ルーネ「「はっ!」」
勇斗「女どもが失礼したな」
リアーネ「いや、僕も犬とか言ってすまなかった・・・」
勇斗(高圧的な態度で反感を買わせれば、救いの手を指しのべた者に好意を抱く。本で読んだ交渉術の効果抜群だな)
勇斗「さて、話を戻そう。どこまで話したか、そう、子分の話だったな」
リアーネ「なる気はないと言ったぞ!」
勇斗「では妹分ならどうだ?」
リアーネ「妹分?」
勇斗「譲歩はこれが最初で最後だ。
弟分や妹分なら子分とは違い、絶対服従の義務はないぞ
リアーネ「しかし、やはり我ら角は・・・」
勇斗「そうか、ならしかたない・・・お前達の街をヴァンの街の二の舞にしてやろう!
リアーネ「!、住民を一人残らず虐殺し街を焼き払おうというのか!?」
勇斗「俺の杯を受けんのならな!」
リアーネが膝を付いた。
勇斗「早く決めろ、俺はそう気は長くない」
リアーネ「判った・・・妹分になる・・・
だが、子分にはならないからな!あくまで妹分だ!」
勇斗「それでいい」
リアーネが天幕から出て行った後、勇斗は椅子から滑り落ちた。
勇斗「はー」
ルーネ「だ、大丈夫ですか父上!?どこかお体の調子でも・・・!」
勇斗「いや、疲れただけだ」
ルーネ「良かった・・・」
フェリシア「ヴァンの街を焼き払った悪名高き男だとはとうてい思えませんね」
ルーネ「当たり前だ。父上はそんなことしてないぞ。やはり納得出来ません。父上は本当は
とても慈悲深い方なのに・・・」
勇斗「俺は慈悲深いんじゃなくてただ甘いだけさ。ああいう噂があった方が流す血が少なくて済むこともあるんだ」
フェリシアが勇斗を抱きしめた。
フェリシア「私は、お兄様の甘さをとても尊く思ってますわ。あまりご自分を責めないで下さいませ」
勇斗「フェリシア、いつもありがとな」
フェリシア「感謝など・・・お兄様をこの世界に呼び寄せてしまったのは私なのですから」
ルーネ「わ、私も父上のことを尊敬しております!」
勇斗「うん、ルーネもありがとうな」
ルーネ「はい!」
勇斗「よし、帰ろう。俺たちの町、イヤールンウィズへ!」
フェリシア
称号・「賢狼(ラーズスヴィトニル)」
ルーン〈無貌の従者〉〈スキーニル〉
濃緑:オールラウンダー
(なんでも一流レベルにこなせる、ただし超一流には及ばない)
〈〈狼〉〉
勇斗との関係:義妹
ユグドラシルへ勇斗を呼び寄せた諜報人で、呪歌の使い手
その力を使い、言葉も分からないまま蔑まれていた勇斗を、
影で支え続けた。
当初より彼を勝利の御子として敬っていたが、
今ではそれ以上の感情で副官として仕えている
ファランクス Phalanx
重装歩兵は、左手に円形の大盾を、右手に槍を装備し、通例8列縦深ほどの横隊を組む。戦闘経験の少ない若い兵を中央部に配置し、古兵を最前列と最後列に配することが大切だが、右半身が露出していることから、特に最右翼列に精強な兵が配置された。
攻撃の際は横隊が崩れないように笛の音に合わせて歩調を取るなどしながら前進した。
戦闘時は100人前後の集団が密集して陣を固め、盾の上から槍を突き出して相手を攻撃し、前の兵が倒れると後方の者が進み出て交代した。
また、後方の者が槍の角度を変更することで敵の矢や投げ槍を払い除けることも可能で、戦闘状況に柔軟に対応できる陣形でもあった。
しかし、部隊全体の機動性は全くなく、開けた場所でないと進化を発揮することが難しく、また側面、後方からの攻撃には脆いなど弱点もある。
基本的にファランクスは正面に攻撃力を集中しており、一旦乱戦になると転回起動は難しく、機動力を使った戦術としては用をなさなかった。
後世、会戦において数的に劣勢であった側がファランクスの陣形をとり、戦力を補充した例もある。
イヤールンウィズ。
人々「「「ジーク・パトリアーク!ジーク・パトリアーク!ジーク・パトリアーク!」」」
勇斗とフェリシアの乗るチャリオットが街中を進み、人々が歓声を上げていた。
フェリシア「相変わらず凄い人気ですね、お兄様。お兄様?」
勇斗「あ、ああ・・・どうした?」
フェリシア「声援に応えてあげてはいかがですか?」
勇斗「そ、そうだな」
勇斗が剣を掲げ、人々がより大きな歓声を上げた。
勇斗の乗るチャリオットはある神殿の前で止まった。
勇斗「やっと着いた」
神殿の前には、ブルーノという中年の男ともう一人の男がいた。
ブルーノ「お帰りなさいませ、勇斗殿」
男「おめでとうございます、大勝だったそうですね」
勇斗「・・・ありがとうございます」
ブルーノ「女神アングルボダへと戦勝を祈願しておりました」
勇斗「勝ったのは自分らが祈ったお陰ってことかよ」
フェリシア「うふふ」
勇斗「すみません、今急いでますのでお話はまた後で」
ブルーノ「仮にも叔父に対してその態度は無礼すぎませぬか、勇斗殿?」
男「我らは先代宗主の弟分、敬うのが礼儀」
ブルーノ「盃の関係とはですな、いかなる事情より優先せなばならぬもので、それが古代よりのしきたり・・・」
勇斗「急いでるのに・・・」
フェリシア「その話は私がお聞きしますわ!」
勇斗(サンキューな、フェリシア!)
勇斗が神殿の中に駆け込んだ。
勇斗「日光に当てとけば良かったな・・・来た!」
勇斗がスマートフォンで電話をかける。
かけた相手は、現代日本にいる少女、美月だった。
美月「もしもし!勇くん、無事だったんだね・・・」
勇斗「悪いな、心配かけた。でも俺はピンピンしてるから」
美月「うんうん、ホント良かったよ・・・お帰り、勇くん」
勇斗「ああ、ただいま、美月」
美月「ねえ勇くん、帰る方法見つかった?」
勇斗「いや、まだ」
美月「そう。でも絶対帰ってきてね。私、待ってる。ずっと待ってるから」
勇斗「ああ」
フェリシアが扉の影から勇斗を見ていた。
勇斗が寝床で横になった。
勇斗(ここユグドラシルは恐らく異世界などではなく、地球の何処だ。
使ってる道具や文化から推測するに、紀元前1300年から2000年あたり、つまり青銅器時代後期の地球。その理由は地上から見える星が全く同じだったから。
ここが北半球の何処ということは分かったが、正確な位置までは分からない・・・)
翌朝。
フェリシア「起きて下さいませ、お兄様」
勇斗「おはよう・・・」
ルーネ「おはようございます、父上
フェリシア「おはようございます、お兄様。朝食をお持ちしましたわ」
勇斗「うん、いい臭いだ」
フェリシア「えっと、ろーた・・・」
勇斗「ロータリカーンな・・・」
フェリシア「ああ、はい。お陰で毎日美味しいパンが焼けるようになりましたから」
ルーネ「父上は本当に不思議な知恵をお持ちですね」
勇斗「スマホのお陰だけどな」
ルーネ「すまほ?」
勇斗「久しぶりに熟睡できた、もう元気いっぱいだ」
フェリシア「それは確かみたいですね」
勇斗のズボンの、股間の辺りが盛り上がっていた。
フェリシア「うふふ、私でよければ今からお鎮め致しましょうか?」
勇斗「いや、そういうのは結構っていつも言ってるだろ!」
フェリシア「あら、でもここはそうは仰ってはないようですが?」
勇斗のズボンの、股間の辺りは盛り上がったままだ。
ルーネ「フェリシア!おふざけも大概にしないと、不敬罪でたたっ切るぞ!」
フェリシア「あのねルーネ、男の人は出すもの出さないと健康に悪いそうなのよ」
ルーネ「何、そういうものなのか?」
フェリシア「お兄様が悪女の手練手管に惑わされるよう、前もって手ほどきしてさしあげねばならねば、危険でしょ?」
ルーネ「うむ、なるほど一理あるな」
勇斗「あっさり丸めこまれるな!」
ルーネ「父上!貧相ながら私の体もよろしければ使って下さい!」
勇斗「い、今は色気より食い気!メシだメシ!」
ルーネ「うむ、腹が減っては何も出来ませぬな」
フェリシア「女の抱き方を憶えればその間だけでも色々なことを忘れられますのに・・・」
勇斗「〈〈角〉〉と盃を交わすとなると彼ら用の鉄武器がたくさんいるな。イングリット作れるかな?」
鍛冶場では少女、イングリットが指揮を執っていた。
イングリット「よーし、そろろそノロを抜くぞ」
そこへ勇斗とフェリシアが入ってきた。
イングリット「ゆ、ユウト!?」
勇斗「いやー久しぶりだな、イングリット。そこまで驚くことはないだろ」
イングリット「おおう、久しぶり・・・そういや帰ってきたんだっけ」
勇斗「何だよ、冷てえヤツだな。友達だろ」
イングリット「うるさいな!あたしは昨日から火入れで忙しいんだよ。お、お前のことなんか気にしてられるか」
勇斗「そうか、忙しいならまた出直すぞ」
イングリット「気にしなくていいって!まあ久しぶりに来たんだ、ゆっくりしていけ」
き、気にしなくていいって!
フェリシア「コホン、イングリット殿。いつも言っているようにお兄様にぞんさいな口調は・・・その・・・
イングリット「以前のこいつ、じゃなかった。父上を知ってるから、どうにもその時の癖が抜けなくて・・・」
「す、す、すみませんでひた、父うへっ!?」
イングリットが舌を噛み、勇斗とフェリシアが笑った。
イングリット「笑うな!・・・笑わないでくださいよ!」
勇斗「今まで通りでいいって。イングリットから敬語使われるとうっすら寒いぜ」
フェリシア「そうですね。二人きりの時などは名前で呼び合っても全然構いませんよ」
イングリット「ふ、二人きり!?」
勇斗「おいおい。変な意味に取るなよ。またそのうち一緒に何か作ろうぜってことだよ
イングリット「ああ、そういうこと・・・じゃなくて、そういうことですね」
勇斗「今後、角の宗主が俺の子弟、妹分となる」
イングリット「角が、姉弟に?」
勇斗「となると同じ武器を使うこともあると思ってな」
イングリット「そうか・・・じゃなくて!そうですか・・・」
勇斗「ますます忙しくなるだろうけど、よろしく頼むな、イングリット」
イングリット「お、おう・・・じゃなくて、はい!」
フェリシア「ふふふ」
そして、勇斗とリアーネが盃を交わした。
アレクシス「ではこれより、私、神儀使アレクシスが神帝の名代として、誓杯の儀を執り行われていただきます」
勇斗(ユグドラシルでは氏族の人間全てはその宗主の子弟となり、盃を交わす。
杯の関係は血の繋がりよりも絶対で誓杯という神聖な儀式によって、宗主と子弟は固い絆で結ばれる。
それがこの世界の習わしだ。この杯によって敵対種族のいなくなった〈〈狼〉〉は平和な日々を謳歌できるはずだ。
つまり俺は、心おきなく元の世界へ帰れる方法を探すことができる)
リアーネ「兄上、ちょっと風に当たりませんか?」
勇斗「別にいいけど」
勇斗とリアーネが外に出た。
リアーネ「すみません、急にお誘いしてしまい」
勇斗「いいさ、何だよ話って」
リアーネ「・・・・」
勇斗「?」
リアーネが頭を下げた。
リアーネ「〈〈角〉〉の民を〈〈狼〉〉の民と同様に扱いますよう、平に平にお願い致します・・・」
勇斗「え・・・・」
リアーネ「僕の身でよければ、お好きになさって下さって構いません・・・・」
勇斗「あ・・・・えっと・・・・」
勇斗がリアーネの頭に手を当てた。
勇斗「何もしないよ」
リアーネ「え・・・?」
勇斗「妹分の可愛い我が儘ぐらいただで聞いてやるよ」
リアーネ「兄上・・・あ、ありがとうございます・・・」
そこへフェリシアが来た。
フェリシア「お兄様!」
勇斗「何事だ、フェリシア」
フェリシア「国境ホルン砦より伝書鳩が届きました!」
勇斗がブルーノ達高官を集めた。
勇斗「火急の用件ゆえ本題に入る。今より4日前、西の大氏族、〈〈蹄〉〉が兄弟国、〈〈角〉〉に侵攻し、その国境沿いの砦を落としたそうだ。〈〈蹄〉〉の兵数、およそ一万!」
高官「い、一万!?」
勇斗「〈〈角〉〉は大敗したばかりで消耗して、リアーネは国内に不在。侵略するのにこれ以上の好機はない」
リアーネ「ぼ、僕のせいだ・・・僕が、負けたから・・・」
勇斗「事態は緊急を要する。ただちに〈〈角〉〉へと救援に向かわねばならない」
ブルーノ「し、しかし勇斗殿、攻められたのはあくまで角であって、我ら〈〈狼〉〉ではありません」
高官たち「ブルーノの言うとおりじゃ」
「角には悪いが、誓盃も交わしたばかり・・・友好を育んだわけでもない」
リアーネ「そ、そんな!」
ブルーノ「元々角は我らの宿敵。本来なら奴隷にしていたところを、しかたなく妹分で妥協してやったのこと」
高官「勇斗殿はまだお若い、それが理解できないだけのこと・・・」
勇斗が机を殴りつけた。
勇斗「ふぬけたことを・・・抜かしてんじゃねえぞ!テメエら!!」
ブルーノたち「「っ!?」」
フェリシア「うふ」
勇斗「だいたい、その日のうちに盃の誓いを反故にしてみろ!〈〈狼〉〉の価値は地に墜ちるぞ!」
ブルーノ「っ!」
勇斗「〈〈角〉〉は助ける!これは!決定事項だ!!」
(続く)
最終更新:2019年06月19日 22:23