エーゲ海に浮かぶバードス島。
潜水艦が浮上する。
右半身が女、左半身が男の怪人物・あしゅら男爵が、鉄仮面の兵士を連れて現れる。
あしゅら「やっと着いたか、つけられたりはしなかったろうな?」
兵士「はい、大丈夫です。あしゅら様」
あしゅら「よろしい。久々にDr.ヘルにお目にかかるとするか」
古めかしい遺跡の中へと入ってゆく。
あしゅら「あしゅら男爵、お呼びにより参上しました」
扉が開く。
中には近代的な秘密基地が築かれており、悪の天才科学者・Dr.ヘルが控えている。
Dr.ヘル「来たか、あしゅら男爵!」
あしゅら「Dr.ヘル、ご機嫌よろしゅう」
Dr.ヘル「ついに、わしが世界を征服するときが来た!」
あしゅら「Dr.ヘル、それはおめでとうございます」
Dr.ヘル「見よ、あの機械獣軍団の姿を!」
巨大ロボット、機械獣の軍団が勢揃いしている。
Dr.ヘル「あの機械獣軍団は、このバードスの杖によって自由に動くのだ。まずはガラダK7!」
Dr.ヘルが杖を振るうと、最初の機械獣・ガラダK7が動き出し、頭に装備されている鎌を引き抜く。
Dr.ヘル「おぉ、よい! やめろ、K7。あの鎌を飛ばされたら、この地下帝国が真っ二つだ。次はダブラスM2!」
次の機械獣・ダブラスM2が熱線を発射する。
たちまち、そばの支柱が溶けてしまう。
Dr.ヘル「やめぃ、M2! あの熱線は、この宮殿を溶かすのに1分とはかからん」
あしゅら「Dr.ヘル、なんと素晴しい機械獣軍団でしょう! これさえあれば世界征服は、いとたやすいこと。すでに世界征服は完了したと同じことでありましょう」
Dr.ヘル「だが、ひとつだけ気がかりが……」
あしゅら「と、申しますと?」
Dr.ヘル「兜博士だ」
あしゅら「兜博士?」
Dr.ヘル「世界的な日本の科学者で、わしのロボット軍団の秘密を知っている、ただ1人の人間だ」
あしゅら「思い出しました。世界の科学界に於いて画期的な発明をした、あの男ですね」
回想──
かつて、科学者の兜博士の大発明が、日本で報じられていた。
『日本の偉大な科学者、兜博士は、人類の長年の夢であった光るエネルギー、つまり光子力を引き出すことに成功しました!』
富士山の裾野の光子力研究所。
所長の兜博士が、助手の弓教授と共に、報道陣を相手に、新たな発明を披露している。
兜博士「これが今度発明した、超合金Zだ」
報道陣「博士、超合金Zの成分は何ですか?」
兜博士「新元素、ジャパニウム」
報道陣「えっ、新元素?」
弓教授「兜博士が富士火山帯の地層から発見した、新元素です。この新元素は、富士火山帯のみにしか、ありません」
兜博士「その新元素ジャパニウムを使って、超合金Zを開発した。今、Zの強さをお目にかけよう」
ガラス窓の向こうに、実験室が設けられている。
兜博士「ガラスの中にあるのは、鋼鉄を一瞬に溶かす力を持つレーザー光線発射装置」
超合金Zの板を目がけ、レーザーが発射されるが、板は傷一つつかない。
報道陣「こりゃすごい!」「ビクともしねぇ!」「本当だ!」
兜博士「では次に、光子力をご覧に入れよう」
ガラスの向こうで、ジャパニウムの塊の生成が行なわれる。
その反応で光のエネルギー、光子力エネルギーが生まれ、凄まじい光に報道陣が目を覆う。
弓教授「今のが、ジャパニウム核分裂の過程で抽出された、光のエネルギーです」
報道陣「凄い! まさに世界科学史上、画期的な発明ですね!」「こりゃ凄い!」「驚いたなぁ!」
記者会見の後、兜博士と弓教授。
弓教授「えっ、引退する!?」
兜博士「そうだ」
弓教授「なぜですか!?」
兜博士「弓教授、私にはやらねばならぬ仕事が残っている。この光子力研究所は、そっくり君が引き継ぐのだ。君は、光子力をあくまで平和利用に役立てるのだぞ」
弓教授「はい。しかし博士が引退されると、寂しくなりますね……」
兜博士「人間には必ず、別れの時が来る。それが自然の摂理なのだ」
場面は現在の、Dr.ヘルとあしゅら男爵の会話に戻る。
Dr.ヘル「正義の発明を成し遂げた兜博士は、弟子の弓教授にすべてを任せて引退した── なぜだ!? 兜博士の引退が、どうも気になる。彼はわしの機械獣軍団の秘密を知りながら、それを誰にも洩らさなかった。なぜなのだ!? あしゅら男爵! 世界征服に先立ち、わしの目の上のコブ、兜博士を殺せ!」
あしゅら「Dr.ヘル、その言葉をお待ちしておりました」
Dr.ヘル「ジャパニウムの資源を押さえ、光子力さえ手に入れば、我が機械獣軍団は無敵のものだ」
あしゅら「Dr.ヘル、お任せくださいまし」
Dr.ヘル「このバードスの杖を与える。これで機械獣を暴れさせるのだ!」
あしゅら「かしこまりました」
Dr.ヘル「行け、日本へ! 我が機械獣を海底要塞サルードに積んで、出発せよ!」
あしゅら「おぉ、海底要塞サルード!」
Dr.ヘル「この海底要塞サルードこそ、我が地下帝国にとって機械獣軍団に次ぐ強力な武器なのだ。あらゆる機能を備え、海底を自由に移動することができる。そして、海底発生装置が作り出す渦巻は、巨大な軍艦をも飲み込んでしまうのだ!」
機械獣が海底要塞サルードに積み込まれる。
あしゅら「よし、準備は完了した」
Dr.ヘル「海底要塞サルード、出動せよ!!」
海底要塞サルードが発進する。
日本近海。サルードから、あしゅら男爵たちを乗せた潜水艦が発進する。
あしゅら「よし、浮上だ」
潜水艦が浮上する。
陸上からボートで、スパイの兵士が駆けつける。
あしゅら「わかったか、兜博士の行方は?」
兵士「兜博士には、2人の孫がおります」
あしゅら「何、孫が?」
兵士「奴らが博士の行方を知っているはずです」
あしゅら「兜博士の家はこの東京にある。よし、まずはここをあたってみよう」
兜博士の自宅、兜家の夜。
博士の孫のシローがソファでうたた寝しているところへ、家政婦のルミが声をかける。
ルミ「まぁ。シローおぼっちゃま、こんなところで寝たら風邪ひきますよ」
シロー「……甲児兄ちゃんは?」
ルミ「まだお帰りになりませんよ」
シロー「何してんだろうな。毎晩、夜遊びして」
ルミ「またオートバイにでも、乗ってるんでしょ」
シロー「兄貴のオトキチにも困ったもんだ。すぐにとっつかまえて、意見してやんなきゃ」
シローの兄、物語の主人公である兜 甲児は、夜の道路をバイクで走っている。
目の前のトラックに衝突しそうになりつつ、巧みにバイクを操って走り去る。
運転手「この野郎、気をつけろ!」
甲児「こちとら体が小さくても、ケンカには負けねぇんだ。あばよっ!」
兜家で、玄関の呼び鈴が鳴る。
ルミ「はぁい。甲児お坊ちゃまね。……あら、どなた様で」
あしゅら男爵と、部下の兵士たちの姿。
あしゅら「こんばんは」
ルミ「あ──っ!?」
あしゅら「兜博士はどこにいる?」
ルミ「だ、誰よ!? た、助けてぇ!」
あしゅら「手間をかけるな。言え!」
ルミ「ふ、富士山麓……」
あしゅら「それから!?」
ルミ「あ、青木が原にある、別荘に……」
あしゅら「それだけ聞けば、用はない」
あしゅら男爵が杖から、ルミに光線を浴びせる。
ルミ「あ──っ!?」
甲児が帰宅する。
入替りに、あしゅら男爵たちが去って行く。
甲児「誰だ!? 待て! ……おかしい、確かに変な奴が、うちから出て行った」
シロー「うわぁ~ん!」
家に入ると、事切れたルミに、シローがすがりついて泣いている。
シロー「ルミさぁ~ん!」
甲児「どうしたんだ、シロー!?」
シロー「兄ちゃん! お手伝いのルミさんが殺されたよぉ! うわぁ~ん!」
甲児「なぜ殺されたんだ!?」
シロー「わかんないよぉ!」
甲児「殺した奴は誰なんだ!? ……さては、さっきの奴らだ!」
甲児が家を飛び出すが、あしゅら男爵たちはすでに姿を消している。
甲児「畜生、一体どこへ行きやがったんだ?」
あくる日、あしゅら男爵たちが、兜博士の別荘のもとを訪れている。
兜博士「とうとうDr.ヘルの配下が、ここに気づいたようだ」
兜家の電話が鳴る。
甲児「もしもし、兜ですが」
兜博士「甲児か? 私だ」
甲児「あっ、お爺さん」
兜博士「大事な話がある」
甲児「こっちもだ。ルミさんが殺されちまったんだ!」
兜博士「何だって!?」
甲児「殺したのは、鉄仮面をかぶった奴らなんだ」
兜博士「何、鉄仮面!?」
あしゅら「別荘を爆破して、兜博士を殺せ!」
兜博士「甲児。お前とシローに大事な話がある。すぐ、ここへ来てくれ!」
甲児「えっ、大事な話だって?」
兜博士「私の話には、世界の平和が懸かっているんだ。とにかく、すぐに──」
電話が切れる。
甲児「あっ!? もしもし、もしもし!?」
シロー「どうしたんだい?」
甲児「わからない……」
あしゅら男爵の部下の兵士が、電話線を切断していた。
兵士「爆破準備、完了!」
あしゅら「よろしい」
甲児「シロー、お爺さんの身に何か起こったんだ!」
シロー「お爺さんを助けなきゃ、兄ちゃん!」
甲児「任しとき!」
シロー「あっ、僕も行くよ!」
甲児がバイクに乗り、後ろにシローが乗る。
甲児「しっかり捕まってるんだぞ! 振り落とされたって知らねぇぞ!」
あしゅら「爆破装置を」
兵士「はっ」
兜博士は、別荘の地下室へと入っていく。
あしゅら「さぁ、兜博士の最期だ!」
別荘が大爆発──!
あしゅら「これでDr.ヘルの目の上のコブだった兜博士は死んだ! ハハハハハ!」
甲児たちがバイクで、別荘を目指す。
甲児「この森の向こうが別荘だ」
シロー「ふぅん」
甲児「あっ!」
別荘は爆破され、瓦礫の山と化している。
シロー「別荘がない!? お──い!」
甲児たち「お爺さぁ──ん!」「お爺さぁ──ん!」
瓦礫の上を歩いている内に、シローが足元を踏み外し、転落する。
シロー「わぁっ!? 助けてぇ!」
甲児「シロー!? シロー、どうした!? どこへ行っちゃったんだ!? ──な、何だ、この穴は!?」
シローは、地下室への入口を踏み抜いて、階段を転げて地下室で気絶している。
甲児「あっ、シロー!?」
甲児が地下への階段を駆けおり、シローを助け起こす。
甲児「シロー、しっかりしろ! 大丈夫か?」
シロー「う、うぅん…… ここはどこ?」
甲児「どうやら別荘の真下に作られていた、地下室らしい」
シロー「だけど別荘にはこんな地下室、なかったはずだよ。もしかしたら、お爺ちゃんが造ったんじゃ?」
崩れた地下室の一角で、兜博士が梁の下敷きになって倒れている。
甲児「あっ!?」
シロー「お爺ちゃん!?」
2人が兜博士を助け起こす。
甲児「お爺さん! わかるかい、甲児とシローだよ!」
兜博士「ま、間に合ったか…… あ、後でこれを読むんだ」
兜博士が甲児に、手紙を差し出す。
甲児「シロー。お爺さんの体を、梁の下から引きずり出すんだ」
兜博士「む、無駄だ。よせ」
甲児「し、しかし!」
兜博士「私は助からん……」
シロー「お爺ちゃん!?」
甲児「お爺さんをこんな目に合せた奴は一体、誰なんだ!?」
兜博士「Dr.ヘル……」
甲児「えっ、Dr.ヘル?」
兜博士「世界征服を企む、悪の科学者だ。甲児、あれを見ろ……」
兜博士が、地下室の隅を指差す。
甲児「えっ? あそこに何が?」
兜博士「あのコンピューターパネルの向こうの、地下広場だ」
甲児たちが、その示された場所へ行ってみる。
そこには身長10メートル以上の巨大ロボット、マジンガーZの姿がある。
シロー「わぁ~っ、ロボットだ!」
甲児「こんな物を一体、誰が!?」
兜博士「私が作り上げたのだよ」
甲児「えっ? 何だって、こんな化け物みたいなものを?」
兜博士「私はどんなことをしても、このマジンガーZを完成させなければならなかったのだ」
甲児「なぜなんだい、お爺さん」
兜博士「Dr.ヘルの野望を挫くためさ。マジンガーZは、私が開発した超合金Zで身を固め、光子力によって作動する。そして、あらゆる武器が内蔵されておる」
甲児「えっ、武器が?」
兜博士「あのロボットは完全だ。もう何一つ、修正するところも調整するところもない。甲児、シロー。あれは、お前たちのものだ。私のただ一つの心残りは、あれを操縦するお前たちの姿を、見られなかったことだ…… 甲児! お前はあのマジンガーZさえあれば、神にも悪魔にもなれる。甲児、マジンガーZさえあれば、おまえは超人・兜 甲児として生きていける。さぁ、行け。操縦法は、マジンガーZのそばにある、ホバーパイルダー号だ」
マジンガーZのそばには、小型のホバー機、ホバーパイルダーがある。
甲児「そのホバーパイルダーを、どうやって操縦するの?」
兜博士「操縦法は、あのホバーパイルダー号に乗って、マジンガーZの頭の部分に、そして……」
甲児「そして?」
兜博士「そしてだ、う、うぅっ……!」
甲児「あっ、お爺さん!?」
シロー「お爺ちゃん、しっかりして!」
兜博士が事切れる。
甲児「お爺さん!? お爺さぁ──ん!!」
シロー「お爺ちゃん!? うぅっ、お爺ちゃん、死んじゃいやだよぉ~!」
甲児「お爺さん……」
シロー「お爺ちゃ~ん!」
甲児「くそぉ…… お爺さんを殺しやがって。今に見ていろ!」
あしゅら「Dr.ヘル。お喜びくださいませ。兜博士はご命令通り、あの世に送りました」
Dr.ヘル「でかしたぞ、あしゅら男爵! ただちに日本の街々を破壊し、機械獣軍団の強さを見せつけてやれ。そして、光子力研究所を占領せよ」
あしゅら「わかりました。ただちに海底要塞に戻り、作戦を開始します」
あしゅら男爵を乗せた潜水艦が、海底要塞に戻る。
あしゅら「行動開始! 海底要塞サルード、これより駿河湾へ移動する!」
甲児「まったく、なんてでっかいんだ、こいつは」
(兜博士『甲児、マジンガーZさえあれば、おまえは超人・兜 甲児として生きていけるぞ』)
甲児「シロー、マジンガーZに乗ってみるぞ」
シロー「大丈夫かい? 兄ちゃん」
甲児「任しとけ」
甲児が、ホバーパイルダーに乗り込む。
操縦席には、たくさんのスイッチ、ボタン、レバーで埋め尽くされている。
甲児「とは言ったものの……」
シロー「頼りねぇ~」
甲児「ま、気にしない、気にしない。オートバイの要領でやってみるぜ。こりゃ随分、ボタンだのスイッチだの、ありやがるなぁ。驚いたなぁ~。ま、いいや。片っ端から動かしてやれ」
ボタンの一つを押すと、ランプが光り、稼働音が響く。
甲児「おぉ、結構ちゃん、結構ちゃん! よし、今度はこいつだ」
レバーを倒すと、キャノピーが降り、甲児の頭はキャノピーと機体に挟まってしまう。
甲児「わぁ~っ!?」
シロー「だから言わないこっちゃない」
甲児「痛痛痛…… 畜生、この野郎、逆らいやがって!」
もがく内に手がレバーに触れ、キャノピーが開く。
甲児「ふぅ、戻った。びっくりしたぁ~!」
シロー「ねぇ、もうやめよう」
甲児「何の何の。これぐらいのことで、あきらめてたまるか。ホバーパイルダーのヘソ曲がり野郎! ふてぇ野郎だ! いい加減にご主人様の命令に従わねぇと、ぶっ飛ばすぞ!」
シロー「機械に文句言ったって、始まらないだろう!?」
甲児「今度は慎重に……」「よし、いいぞ。次はこいつだ」
両翼のファンが回転を始める。
甲児「思った通りだ! 名調子、ざまぁ見ろ! いよいよ動くぞ」
シロー「兄ちゃん! だけど、どうやってあのマジンガーZの頭に、ピッタリはまり込むんだい? こりゃ、兄ちゃんの腕でも、ちょっと無理だと思うけどね」
甲児「黙ってろ、調子出てんだから」
シロー「生兵法は大怪我の元って、ことわざもあるだろ」
甲児「キーッ! くそ、いちいちケチつけやがって! ヘタな鉄砲も数撃ちゃ当たるって、ことわざもあらぁ! くそぉ、こうなったら意地でもマジンガーZの頭にドッキングしてやらぁ!」
操縦席がキャノピーで覆われ、ファンが回転を増す。
甲児「さぁ、ホバーパイルダー。これで動かなかったら、バラバラに壊してやるからな!」
操縦桿を引き、ペダルを踏む。
ホバーパイルダーが床から舞い、空中に飛び上がる。
シロー「あっ、動いた! ヒャッホー! 飛んだ飛んだ、飛んだぁ!」
甲児「さてと、あの頭に乗っかるには、と」
シロー「そっから先が、難しいっスよ~!」
甲児「これかな?」
ボタンを押すと、ホバーパイルダーがマジンガーZの頭部へと近づいてゆく。
甲児「うまくいきますように…… あら?」
ホバーパイルダーは、確かにマジンガーZの頭上に降りたものの、翼が引っかかり、完全に合体できずにいる。
甲児「これじゃ、サマになんねぇや! これかな?」
ボタンを押すと、翼が折り畳まれ、ホバーパイルダーはマジンガーZに合体を完了する。
シロー「やったぁ! さすが、俺の兄貴だぁ!」
甲児「さぁ、マジンガーZを動かすぞ!」
スイッチを入れ、ボタンを押すと、マジンガーZから稼働音が響く。
シロー「すげぇ!」
マジンガーZが腕を振り上げる。
甲児「それぇ! 動けぇ!」
甲児が機器を、次々に操作する。
マジンガーZが地下室の支柱を殴り、頭上から瓦礫が降り注ぐ。
シロー「わぁ! た、大変だぁ!」
シローが慌てて、地上へ這い出す。
シロー「助けてくれぇ~! わぁっ!」
マジンガーZも地上に現れ、シローは必死に逃げ出す。
シロー「わぁ! 嫌だよぉ~っ! 何すんだよぉ!」
マジンガーZが、逃げるシローを追って来る。
シロー「助けてぇ~っ! やめ、やめろぉ! 何だって、僕を追っかけて来んだよぉ!? 兄貴ぃ!」
甲児「こらぁ! 勝手に動くなぁ! て、てめぇ、生意気だぞ!!」
シローが腰を抜かして転ぶ。
マジンガーZがシローを目がけ、脚を振り上げる。
シロー「わぁ──っ!? 兄ちゃん、俺を殺す気かぁ!?」
甲児「こいつが勝手にやってるんだぁ! 何とかしてくれぇ──っ!!」
シロー「助けてくれぇぇ!! 踏み潰されるよぉ──っ!! わぁ、もう駄目だぁぁ!!」
脚が振り落ろされる──
ギリギリのところで、誰かがその脚をつかむ。
甲児「あれ……?」
女性型巨大ロボットのアフロダイAが、マジンガーZの脚を止めている。
頭部の操縦席には、弓教授の娘、弓さやかがいる。
甲児「何だ、君は?」
さやか「君こそ何よ。こんな乱暴な運転なんかして」
マジンガーZが、アフロダイAを蹴り飛ばす。
さやか「きゃあっ!?」
光子力研究所では、弓教授がその様子をモニターしている。
弓教授「あっ、あれは!?」
さやか「やったわね!?」
弓教授「まて、さやか」
さやか「えっ?」
弓教授「そのロボットの、操縦席の男の子の名前を聞くのだ」
さやか「でも、お父様」
弓教授「言われた通りにするんだ!」
さやか「誰なの? 君の名は、何ていうの?」
甲児「兜 甲児だ」
弓教授「やっぱり、兜博士の……!」
マジンガーZが歩き出す。
さやか「待ちなさい! ロボットを止めるのよ」
甲児「止まらないんだよ!」
さやか「どこへ行く気なの?」
甲児「知るもんか! 前へ回って、マジンガーZに聞いたらいいだろう?」
その頃、日本近海では海中から、あの機械獣2体が上陸している。
Dr.ヘル「我が機械獣どもよ。悪魔の強さを見せてやれ! 街を徹底的に破壊し、光子力研究所を占領するのだ! お前たちの前に立ち塞がる者はない」
機械獣たちが建物、船舶、列車、工場を次々にを破壊する。
人々が悲鳴を上げて逃げ惑う。
Dr.ヘルの世界征服の火ぶたは ついに切って落とされた。
だが、Dr.ヘルの機械獣に立ち向かうはずの 正義のロボット、マジンガーZを 兜甲児はまだ、操縦することができない。
そしてマジンガーZは果たして 恐るべき機械獣軍団に 立ち向かうことができるのであろうか?
|
最終更新:2019年07月13日 18:00