マジンガーZの第1話


驚異の
ロボット誕生




エーゲ海に浮かぶバードス島。

潜水艦が浮上する。
右半身が女、左半身が男の怪人物・あしゅら男爵が、鉄仮面の兵士を連れて現れる。

あしゅら「やっと着いたか、つけられたりはしなかったろうな?」
兵士「はい、大丈夫です。あしゅら様」
あしゅら「よろしい。久々にDr.ヘルにお目にかかるとするか」

古めかしい遺跡の中へと入ってゆく。

あしゅら「あしゅら男爵、お呼びにより参上しました」

扉が開く。
中には近代的な秘密基地が築かれており、悪の天才科学者・Dr.ヘルが控えている。

Dr.ヘル「来たか、あしゅら男爵!」
あしゅら「Dr.ヘル、ご機嫌よろしゅう」
Dr.ヘル「ついに、わしが世界を征服するときが来た!」
あしゅら「Dr.ヘル、それはおめでとうございます」
Dr.ヘル「見よ、あの機械獣軍団の姿を!」

巨大ロボット、機械獣の軍団が勢揃いしている。

Dr.ヘル「あの機械獣軍団は、このバードスの杖によって自由に動くのだ。まずはガラダK7!」

Dr.ヘルが杖を振るうと、最初の機械獣・ガラダK7が動き出し、頭に装備されている鎌を引き抜く。

Dr.ヘル「おぉ、よい! やめろ、K7。あの鎌を飛ばされたら、この地下帝国が真っ二つだ。次はダブラスM2!」

次の機械獣・ダブラスM2が熱線を発射する。
たちまち、そばの支柱が溶けてしまう。

Dr.ヘル「やめぃ、M2! あの熱線は、この宮殿を溶かすのに1分とはかからん」
あしゅら「Dr.ヘル、なんと素晴しい機械獣軍団でしょう! これさえあれば世界征服は、いとたやすいこと。すでに世界征服は完了したと同じことでありましょう」
Dr.ヘル「だが、ひとつだけ気がかりが……」
あしゅら「と、申しますと?」
Dr.ヘル「兜博士だ」
あしゅら「兜博士?」
Dr.ヘル「世界的な日本の科学者で、わしのロボット軍団の秘密を知っている、ただ1人の人間だ」
あしゅら「思い出しました。世界の科学界に於いて画期的な発明をした、あの男ですね」


回想──
かつて、科学者の兜博士の大発明が、日本で報じられていた。

『日本の偉大な科学者、兜博士は、人類の長年の夢であった光るエネルギー、つまり光子力を引き出すことに成功しました!』


富士山の裾野の光子力研究所。
所長の兜博士が、助手の弓教授と共に、報道陣を相手に、新たな発明を披露している。

兜博士「これが今度発明した、超合金Zだ」
報道陣「博士、超合金Zの成分は何ですか?」
兜博士「新元素、ジャパニウム」
報道陣「えっ、新元素?」
弓教授「兜博士が富士火山帯の地層から発見した、新元素です。この新元素は、富士火山帯のみにしか、ありません」
兜博士「その新元素ジャパニウムを使って、超合金Zを開発した。今、Zの強さをお目にかけよう」

ガラス窓の向こうに、実験室が設けられている。

兜博士「ガラスの中にあるのは、鋼鉄を一瞬に溶かす力を持つレーザー光線発射装置」

超合金Zの板を目がけ、レーザーが発射されるが、板は傷一つつかない。

報道陣「こりゃすごい!」「ビクともしねぇ!」「本当だ!」

兜博士「では次に、光子力をご覧に入れよう」

ガラスの向こうで、ジャパニウムの塊の生成が行なわれる。
その反応で光のエネルギー、光子力エネルギーが生まれ、凄まじい光に報道陣が目を覆う。

弓教授「今のが、ジャパニウム核分裂の過程で抽出された、光のエネルギーです」
報道陣「凄い! まさに世界科学史上、画期的な発明ですね!」「こりゃ凄い!」「驚いたなぁ!」


記者会見の後、兜博士と弓教授。

弓教授「えっ、引退する!?」
兜博士「そうだ」
弓教授「なぜですか!?」
兜博士「弓教授、私にはやらねばならぬ仕事が残っている。この光子力研究所は、そっくり君が引き継ぐのだ。君は、光子力をあくまで平和利用に役立てるのだぞ」
弓教授「はい。しかし博士が引退されると、寂しくなりますね……」
兜博士「人間には必ず、別れの時が来る。それが自然の摂理なのだ」


場面は現在の、Dr.ヘルとあしゅら男爵の会話に戻る。

Dr.ヘル「正義の発明を成し遂げた兜博士は、弟子の弓教授にすべてを任せて引退した── なぜだ!? 兜博士の引退が、どうも気になる。彼はわしの機械獣軍団の秘密を知りながら、それを誰にも洩らさなかった。なぜなのだ!? あしゅら男爵! 世界征服に先立ち、わしの目の上のコブ、兜博士を殺せ!」
あしゅら「Dr.ヘル、その言葉をお待ちしておりました」
Dr.ヘル「ジャパニウムの資源を押さえ、光子力さえ手に入れば、我が機械獣軍団は無敵のものだ」
あしゅら「Dr.ヘル、お任せくださいまし」
Dr.ヘル「このバードスの杖を与える。これで機械獣を暴れさせるのだ!」
あしゅら「かしこまりました」
Dr.ヘル「行け、日本へ! 我が機械獣を海底要塞サルードに積んで、出発せよ!」
あしゅら「おぉ、海底要塞サルード!」
Dr.ヘル「この海底要塞サルードこそ、我が地下帝国にとって機械獣軍団に次ぐ強力な武器なのだ。あらゆる機能を備え、海底を自由に移動することができる。そして、海底発生装置が作り出す渦巻は、巨大な軍艦をも飲み込んでしまうのだ!」

機械獣が海底要塞サルードに積み込まれる。

あしゅら「よし、準備は完了した」
Dr.ヘル「海底要塞サルード、出動せよ!!」


海底要塞サルードが発進する。


日本近海。サルードから、あしゅら男爵たちを乗せた潜水艦が発進する。

あしゅら「よし、浮上だ」

潜水艦が浮上する。
陸上からボートで、スパイの兵士が駆けつける。

あしゅら「わかったか、兜博士の行方は?」
兵士「兜博士には、2人の孫がおります」
あしゅら「何、孫が?」
兵士「奴らが博士の行方を知っているはずです」
あしゅら「兜博士の家はこの東京にある。よし、まずはここをあたってみよう」


兜博士の自宅、兜家の夜。

博士の孫のシローがソファでうたた寝しているところへ、家政婦のルミが声をかける。

ルミ「まぁ。シローおぼっちゃま、こんなところで寝たら風邪ひきますよ」
シロー「……甲児兄ちゃんは?」
ルミ「まだお帰りになりませんよ」
シロー「何してんだろうな。毎晩、夜遊びして」
ルミ「またオートバイにでも、乗ってるんでしょ」
シロー「兄貴のオトキチにも困ったもんだ。すぐにとっつかまえて、意見してやんなきゃ」


シローの兄、物語の主人公である兜 甲児は、夜の道路をバイクで走っている。
目の前のトラックに衝突しそうになりつつ、巧みにバイクを操って走り去る。

運転手「この野郎、気をつけろ!」
甲児「こちとら体が小さくても、ケンカには負けねぇんだ。あばよっ!」


兜家で、玄関の呼び鈴が鳴る。

ルミ「はぁい。甲児お坊ちゃまね。……あら、どなた様で」

あしゅら男爵と、部下の兵士たちの姿。

あしゅら「こんばんは」
ルミ「あ──っ!?」
あしゅら「兜博士はどこにいる?」
ルミ「だ、誰よ!? た、助けてぇ!」
あしゅら「手間をかけるな。言え!」
ルミ「ふ、富士山麓……」
あしゅら「それから!?」
ルミ「あ、青木が原にある、別荘に……」
あしゅら「それだけ聞けば、用はない」

あしゅら男爵が杖から、ルミに光線を浴びせる。

ルミ「あ──っ!?」

甲児が帰宅する。
入替りに、あしゅら男爵たちが去って行く。

甲児「誰だ!? 待て! ……おかしい、確かに変な奴が、うちから出て行った」
シロー「うわぁ~ん!」

家に入ると、事切れたルミに、シローがすがりついて泣いている。

シロー「ルミさぁ~ん!」
甲児「どうしたんだ、シロー!?」
シロー「兄ちゃん! お手伝いのルミさんが殺されたよぉ! うわぁ~ん!」
甲児「なぜ殺されたんだ!?」
シロー「わかんないよぉ!」
甲児「殺した奴は誰なんだ!? ……さては、さっきの奴らだ!」

甲児が家を飛び出すが、あしゅら男爵たちはすでに姿を消している。

甲児「畜生、一体どこへ行きやがったんだ?」


あくる日、あしゅら男爵たちが、兜博士の別荘のもとを訪れている。

兜博士「とうとうDr.ヘルの配下が、ここに気づいたようだ」


兜家の電話が鳴る。

甲児「もしもし、兜ですが」
兜博士「甲児か? 私だ」
甲児「あっ、お爺さん」
兜博士「大事な話がある」
甲児「こっちもだ。ルミさんが殺されちまったんだ!」
兜博士「何だって!?」
甲児「殺したのは、鉄仮面をかぶった奴らなんだ」
兜博士「何、鉄仮面!?」

あしゅら「別荘を爆破して、兜博士を殺せ!」

兜博士「甲児。お前とシローに大事な話がある。すぐ、ここへ来てくれ!」
甲児「えっ、大事な話だって?」
兜博士「私の話には、世界の平和が懸かっているんだ。とにかく、すぐに──」

電話が切れる。

甲児「あっ!? もしもし、もしもし!?」
シロー「どうしたんだい?」
甲児「わからない……」

あしゅら男爵の部下の兵士が、電話線を切断していた。

兵士「爆破準備、完了!」
あしゅら「よろしい」

甲児「シロー、お爺さんの身に何か起こったんだ!」
シロー「お爺さんを助けなきゃ、兄ちゃん!」
甲児「任しとき!」
シロー「あっ、僕も行くよ!」

甲児がバイクに乗り、後ろにシローが乗る。

甲児「しっかり捕まってるんだぞ! 振り落とされたって知らねぇぞ!」


あしゅら「爆破装置を」
兵士「はっ」

兜博士は、別荘の地下室へと入っていく。

あしゅら「さぁ、兜博士の最期だ!」

別荘が大爆発──!

あしゅら「これでDr.ヘルの目の上のコブだった兜博士は死んだ! ハハハハハ!」


甲児たちがバイクで、別荘を目指す。

甲児「この森の向こうが別荘だ」
シロー「ふぅん」
甲児「あっ!」

別荘は爆破され、瓦礫の山と化している。

シロー「別荘がない!? お──い!」
甲児たち「お爺さぁ──ん!」「お爺さぁ──ん!」

瓦礫の上を歩いている内に、シローが足元を踏み外し、転落する。

シロー「わぁっ!? 助けてぇ!」
甲児「シロー!? シロー、どうした!? どこへ行っちゃったんだ!? ──な、何だ、この穴は!?」

シローは、地下室への入口を踏み抜いて、階段を転げて地下室で気絶している。

甲児「あっ、シロー!?」

甲児が地下への階段を駆けおり、シローを助け起こす。

甲児「シロー、しっかりしろ! 大丈夫か?」
シロー「う、うぅん…… ここはどこ?」
甲児「どうやら別荘の真下に作られていた、地下室らしい」
シロー「だけど別荘にはこんな地下室、なかったはずだよ。もしかしたら、お爺ちゃんが造ったんじゃ?」

崩れた地下室の一角で、兜博士が梁の下敷きになって倒れている。

甲児「あっ!?」
シロー「お爺ちゃん!?」

2人が兜博士を助け起こす。

甲児「お爺さん! わかるかい、甲児とシローだよ!」
兜博士「ま、間に合ったか…… あ、後でこれを読むんだ」

兜博士が甲児に、手紙を差し出す。

甲児「シロー。お爺さんの体を、梁の下から引きずり出すんだ」
兜博士「む、無駄だ。よせ」
甲児「し、しかし!」
兜博士「私は助からん……」
シロー「お爺ちゃん!?」
甲児「お爺さんをこんな目に合せた奴は一体、誰なんだ!?」
兜博士「Dr.ヘル……」
甲児「えっ、Dr.ヘル?」
兜博士「世界征服を企む、悪の科学者だ。甲児、あれを見ろ……」

兜博士が、地下室の隅を指差す。

甲児「えっ? あそこに何が?」
兜博士「あのコンピューターパネルの向こうの、地下広場だ」

甲児たちが、その示された場所へ行ってみる。
そこには身長10メートル以上の巨大ロボット、マジンガーZの姿がある。

シロー「わぁ~っ、ロボットだ!」
甲児「こんな物を一体、誰が!?」
兜博士「私が作り上げたのだよ」
甲児「えっ? 何だって、こんな化け物みたいなものを?」
兜博士「私はどんなことをしても、このマジンガーZを完成させなければならなかったのだ」
甲児「なぜなんだい、お爺さん」
兜博士「Dr.ヘルの野望を挫くためさ。マジンガーZは、私が開発した超合金Zで身を固め、光子力によって作動する。そして、あらゆる武器が内蔵されておる」
甲児「えっ、武器が?」
兜博士「あのロボットは完全だ。もう何一つ、修正するところも調整するところもない。甲児、シロー。あれは、お前たちのものだ。私のただ一つの心残りは、あれを操縦するお前たちの姿を、見られなかったことだ…… 甲児! お前はあのマジンガーZさえあれば、神にも悪魔にもなれる。甲児、マジンガーZさえあれば、おまえは超人・兜 甲児として生きていける。さぁ、行け。操縦法は、マジンガーZのそばにある、ホバーパイルダー号だ」

マジンガーZのそばには、小型のホバー機、ホバーパイルダーがある。

甲児「そのホバーパイルダーを、どうやって操縦するの?」
兜博士「操縦法は、あのホバーパイルダー号に乗って、マジンガーZの頭の部分に、そして……」
甲児「そして?」
兜博士「そしてだ、う、うぅっ……!」
甲児「あっ、お爺さん!?」
シロー「お爺ちゃん、しっかりして!」

兜博士が事切れる。

甲児「お爺さん!? お爺さぁ──ん!!」
シロー「お爺ちゃん!? うぅっ、お爺ちゃん、死んじゃいやだよぉ~!」
甲児「お爺さん……」
シロー「お爺ちゃ~ん!」

甲児「くそぉ…… お爺さんを殺しやがって。今に見ていろ!」


あしゅら「Dr.ヘル。お喜びくださいませ。兜博士はご命令通り、あの世に送りました」
Dr.ヘル「でかしたぞ、あしゅら男爵! ただちに日本の街々を破壊し、機械獣軍団の強さを見せつけてやれ。そして、光子力研究所を占領せよ」
あしゅら「わかりました。ただちに海底要塞に戻り、作戦を開始します」

あしゅら男爵を乗せた潜水艦が、海底要塞に戻る。

あしゅら「行動開始! 海底要塞サルード、これより駿河湾へ移動する!」


甲児「まったく、なんてでっかいんだ、こいつは」

(兜博士『甲児、マジンガーZさえあれば、おまえは超人・兜 甲児として生きていけるぞ』)

甲児「シロー、マジンガーZに乗ってみるぞ」
シロー「大丈夫かい? 兄ちゃん」
甲児「任しとけ」

甲児が、ホバーパイルダーに乗り込む。
操縦席には、たくさんのスイッチ、ボタン、レバーで埋め尽くされている。

甲児「とは言ったものの……」
シロー「頼りねぇ~」
甲児「ま、気にしない、気にしない。オートバイの要領でやってみるぜ。こりゃ随分、ボタンだのスイッチだの、ありやがるなぁ。驚いたなぁ~。ま、いいや。片っ端から動かしてやれ」

ボタンの一つを押すと、ランプが光り、稼働音が響く。

甲児「おぉ、結構ちゃん、結構ちゃん! よし、今度はこいつだ」

レバーを倒すと、キャノピーが降り、甲児の頭はキャノピーと機体に挟まってしまう。

甲児「わぁ~っ!?」
シロー「だから言わないこっちゃない」
甲児「痛痛痛…… 畜生、この野郎、逆らいやがって!」

もがく内に手がレバーに触れ、キャノピーが開く。

甲児「ふぅ、戻った。びっくりしたぁ~!」
シロー「ねぇ、もうやめよう」
甲児「何の何の。これぐらいのことで、あきらめてたまるか。ホバーパイルダーのヘソ曲がり野郎! ふてぇ野郎だ! いい加減にご主人様の命令に従わねぇと、ぶっ飛ばすぞ!」
シロー「機械に文句言ったって、始まらないだろう!?」
甲児「今度は慎重に……」「よし、いいぞ。次はこいつだ」

両翼のファンが回転を始める。

甲児「思った通りだ! 名調子、ざまぁ見ろ! いよいよ動くぞ」
シロー「兄ちゃん! だけど、どうやってあのマジンガーZの頭に、ピッタリはまり込むんだい? こりゃ、兄ちゃんの腕でも、ちょっと無理だと思うけどね」
甲児「黙ってろ、調子出てんだから」
シロー「生兵法は大怪我の元って、ことわざもあるだろ」
甲児「キーッ! くそ、いちいちケチつけやがって! ヘタな鉄砲も数撃ちゃ当たるって、ことわざもあらぁ! くそぉ、こうなったら意地でもマジンガーZの頭にドッキングしてやらぁ!」

操縦席がキャノピーで覆われ、ファンが回転を増す。

甲児「さぁ、ホバーパイルダー。これで動かなかったら、バラバラに壊してやるからな!」

操縦桿を引き、ペダルを踏む。
ホバーパイルダーが床から舞い、空中に飛び上がる。

シロー「あっ、動いた! ヒャッホー! 飛んだ飛んだ、飛んだぁ!」
甲児「さてと、あの頭に乗っかるには、と」
シロー「そっから先が、難しいっスよ~!」
甲児「これかな?」

ボタンを押すと、ホバーパイルダーがマジンガーZの頭部へと近づいてゆく。

甲児「うまくいきますように…… あら?」

ホバーパイルダーは、確かにマジンガーZの頭上に降りたものの、翼が引っかかり、完全に合体できずにいる。

甲児「これじゃ、サマになんねぇや! これかな?」

ボタンを押すと、翼が折り畳まれ、ホバーパイルダーはマジンガーZに合体を完了する。

シロー「やったぁ! さすが、俺の兄貴だぁ!」
甲児「さぁ、マジンガーZを動かすぞ!」

スイッチを入れ、ボタンを押すと、マジンガーZから稼働音が響く。

シロー「すげぇ!」

マジンガーZが腕を振り上げる。

甲児「それぇ! 動けぇ!」

甲児が機器を、次々に操作する。
マジンガーZが地下室の支柱を殴り、頭上から瓦礫が降り注ぐ。

シロー「わぁ! た、大変だぁ!」

シローが慌てて、地上へ這い出す。

シロー「助けてくれぇ~! わぁっ!」

マジンガーZも地上に現れ、シローは必死に逃げ出す。

シロー「わぁ! 嫌だよぉ~っ! 何すんだよぉ!」

マジンガーZが、逃げるシローを追って来る。

シロー「助けてぇ~っ! やめ、やめろぉ! 何だって、僕を追っかけて来んだよぉ!? 兄貴ぃ!」
甲児「こらぁ! 勝手に動くなぁ! て、てめぇ、生意気だぞ!!」

シローが腰を抜かして転ぶ。
マジンガーZがシローを目がけ、脚を振り上げる。

シロー「わぁ──っ!? 兄ちゃん、俺を殺す気かぁ!?」
甲児「こいつが勝手にやってるんだぁ! 何とかしてくれぇ──っ!!」
シロー「助けてくれぇぇ!! 踏み潰されるよぉ──っ!! わぁ、もう駄目だぁぁ!!」

脚が振り落ろされる──
ギリギリのところで、誰かがその脚をつかむ。

甲児「あれ……?」

女性型巨大ロボットのアフロダイAが、マジンガーZの脚を止めている。
頭部の操縦席には、弓教授の娘、弓さやかがいる。

甲児「何だ、君は?」
さやか「君こそ何よ。こんな乱暴な運転なんかして」

マジンガーZが、アフロダイAを蹴り飛ばす。

さやか「きゃあっ!?」

光子力研究所では、弓教授がその様子をモニターしている。

弓教授「あっ、あれは!?」

さやか「やったわね!?」
弓教授「まて、さやか」
さやか「えっ?」
弓教授「そのロボットの、操縦席の男の子の名前を聞くのだ」
さやか「でも、お父様」
弓教授「言われた通りにするんだ!」
さやか「誰なの? 君の名は、何ていうの?」
甲児「兜 甲児だ」
弓教授「やっぱり、兜博士の……!」

マジンガーZが歩き出す。

さやか「待ちなさい! ロボットを止めるのよ」
甲児「止まらないんだよ!」
さやか「どこへ行く気なの?」
甲児「知るもんか! 前へ回って、マジンガーZに聞いたらいいだろう?」

その頃、日本近海では海中から、あの機械獣2体が上陸している。

Dr.ヘル「我が機械獣どもよ。悪魔の強さを見せてやれ! 街を徹底的に破壊し、光子力研究所を占領するのだ! お前たちの前に立ち塞がる者はない」

機械獣たちが建物、船舶、列車、工場を次々にを破壊する。
人々が悲鳴を上げて逃げ惑う。



Dr.ヘルの世界征服の火ぶたは
ついに切って落とされた。

だが、Dr.ヘルの機械獣に立ち向かうはずの
正義のロボット、マジンガーZを
兜甲児はまだ、操縦することができない。

そしてマジンガーZは果たして
恐るべき機械獣軍団に
立ち向かうことができるのであろうか?



(続く)

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最終更新:2019年07月13日 18:00