シャドームーン復活を急ぐ三神官は、 彼らの命の源である、天・海・地の三つの石を使い、 シャドームーンを蘇らせようと最後の賭けに出た。
一方、同じく次期創世王を狙うビルゲニアは、 創世王のみに与えられる魔剣「サタンサーベル」を手に入れ、 仮面ライダーに戦いを挑んだ。 そしてついに、ビルゲニアの手にかかった仮面ライダーは……。
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ビルゲニアに敗れ、共に崖から落ちていくブラックと杏子。
ブラックは杏子を庇い、地面に叩きつけられた。
杏子「ああ…… ライダー! ライダー、しっかりして!」
ブラックの体を揺さぶる杏子。
だがブラックは死んだように動かない。
杏子「しっかりして、ライダー……!」
そこに光の玉が飛んできた。
杏子がブラックを連れて岩陰に隠れる。
光の玉は地面に降り立ち、ビルゲニアとなった。
ビルゲニア「奴の体からキングストーンを取り出さなければ」
ビルゲニアが再度光の玉となって、去って行った。
安堵の杏子がブラックを見る。
杏子「ああっ……!?」
ブラックは光太郎に戻っていた。
杏子「光太郎さん……!? ありがとう、光太郎さん。私を助けるために自分の体を……! しっかりして、光太郎さん。光太郎さん、しっかりして!」
光太郎「……ああ…… 杏子ちゃん……」
杏子の目に涙が浮かぶ。
杏子「光太郎さん、さあ早く!」
杏子は光太郎を支えて、森の中に入った。
杏子「光太郎さん、大丈夫?」
2人は洞窟に入り、深い水溜まりの中を進み、やがて開けた場所を見つけ、杏子は光太郎を壁にもたれかけさせた。
杏子「光太郎さん! しっかりして…… すぐ、お医者さんを呼んでくるから……」
光太郎「いいんだ。このままにしておいてくれ」
杏子「でも……」
光太郎「うっ……」
杏子「光太郎さん!! しっかりして、光太郎さん!!」
光太郎の左腕には深い傷があった。
杏子は自分の服の袖を破って、光太郎の傷に巻いた。
杏子(光太郎さん…… 死なないで。死なないで!)
信彦(バッタ男)の生命維持カプセルは、三神官の石を捧げられてなお沈黙を保っている。
ダロム「まだなのか!? まだ蘇らぬのか!?」
ビシュムが倒れた。
バラオム「どうした!? しっかりしろ、ビシュム!」
ビシュム「体から、力が抜けてゆく……」
バラオム「ビシュムっ!」
ダロム「あぁっ…… 天・海・地、3つの石のエネルギーが切れかけている」
バラオム「エネルギーを使い果たせば、我々の命もそれまで。何故蘇らないのだ? 何故だ!?」
杏子は火をたいて、眠った光太郎を介抱していた。
光太郎が目覚め、2人が見つめ合う。
不意に杏子が光太郎の左腕をめくると、傷は消えていた。
杏子(傷が治ってる!?)
光太郎「杏子ちゃん……」
杏子「え?」
光太郎「杏子ちゃんに、話しておかなくっちゃいけないことがあるんだ。実は僕……」
杏子「話があるなら後。傷に障るでしょ」
光太郎「でも…… 実は僕は……」
杏子「やめて! そんな話、聞きたくない」
ハッと杏子の心情を察する光太郎。
杏子「……知ってたわ、光太郎さんが仮面ライダーだってことは、前から。いつも1人で悩んでたし…… 辛そうだったし……」
光太郎「…………」
杏子「でも…… でも、私には昔とちっとも変わらない光太郎さん。それでいいでしょ? 何があっても、光太郎さんはいつもそばにいてくれた。それが嬉しくて…… それだけで、幸せで…… だから、だから……!!」
光太郎は、かつて信彦と杏子、克美と共に遊んだ日々を思い返した。
光太郎「許せない…… そんな皆の幸せを、ゴルゴムが奪い取ったんだ! 連中の作ろうとしているのは弱肉強食の世界だ。もしそれが実現したら、この地球はどうなるんだ!? だから僕は仮面ライダーとなって奴らを!」
杏子「光太郎さん!」
光太郎「でも1つだけ心配なことがあるんだ。もし僕の手で信彦を助け出すことができなければ…… その時は……」
杏子「………!!」
光太郎「分かるだろ? 君のお兄さんと、戦う羽目になるかもしれないんだ」
杏子「やめて!! そんなの嫌…… 嫌よ!!」
光太郎「僕だって嫌だ!! でも……」
杏子「光太郎さん…… ああっ……!!」
杏子が光太郎に抱きつき、泣き出した。
何も言わずそれを受け止め、ゴルゴムへの怒りをたぎらせる光太郎──。
一方、ビルゲニアは町にいた。
ビルゲニア「仮面ライダーブラック、貴様が出てくるようにしてやる!」
ビルゲニアはサタンサーベルを抜き、自身の愛剣・ビルセイバーと交差させた。
ビルゲニアが交差させた剣から放たれた光が、下でたむろしていた若者たちに降り注ぐ。
若者達は苦しみだしたが、やがて黒い隈を浮かばせて──
若者たち「とうとう俺たちの時代が来たぞ!! やっちまえ!!」「おう!!」
若者たちはジープやバイクに乗って、人々を追い回し、痛めつけ、物を壊していった。
ビルゲニア「はっはっはっ! もっとやれ、暴れろ! もっとだ!」
若者たちが、停まっていた車を壊していく。
ゴルゴム神殿では──
バラオム「ああ……」
ダロムとバラオムも倒れていて、ビシュム共々その顔はしわ枯れていた。
ダロム「シャ、シャドームーン、早く蘇ってくれ……」
神殿の天井に、町で高笑いするビルゲニアの映像が映った。
バラオム「おのれ……」
ダロム「ビルゲニア……」
ビシュム「苦しい…… もう、駄目……」
バラオム「お答えください、創世王様…… 天・海・地の石で…… 本当にシャドームーンが蘇るのですか……?」
克美がいる喫茶店・キャピトラのテレビに速報が入った。
レポーター「一体どうしたんでしょう! 暴走族や非行少年たちの様子がおかしくなり、略奪を繰り返しています! 危険です! 市民の皆さん、町に出ないでください。あっ、今また新しいニュースが入りました!」
克美が外を見ると、表で若者たちが暴れていた。
克美は中に戻ったが、若者たちが入ってきて暴れ出した。
克美は奥の部屋に逃げた。
克美「どこにいるの、光太郎さん…… 助けて、光太郎さん!!」
光太郎と杏子が街に戻ったが、町は荒れ果てていた。
光太郎が倒れた女性に駆け寄る。
光太郎「どうしたんですか、しっかり!」
杏子「助けてー!!」
若者たちが杏子に襲いかかってきた。
光太郎は襲ってくる若者たちを返り討ちにする。
若者たちはジープとバイクで2人を追いかけたが、2人は物陰に隠れ、やり過ごした。
光太郎「ゴルゴムの仕業だ! 克美さんが心配だ、キャピトラへ行こう」
杏子「うん!!」
キャピトラの中はめちゃくちゃに荒らされていた。
光太郎「克美さん!!」
杏子「克美さん!!」
奥から克美が出てきた。
光太郎「あっ、克美さん!」
杏子「光太郎さん……」
光太郎「大丈夫か、克美さん!?」
克美「光太郎さん……!」
光太郎に抱き着き、激しく泣き出す克美。
光太郎「おのれゴルゴムめ!! 杏子ちゃん、君はここに残って克美さんを介抱してくれ。誰が来てもドアを開けちゃ駄目だぞ!」
杏子「はい!」
光太郎はゴルゴムを探して無法地帯と化した町を駆けずり回る。
廃工場の屋根にビルケニアがいた。
ビルゲニア「待っていたぞ、南光太郎! よく生きていたな」
光太郎「貴様のような悪魔がいる限り、俺はいつでも蘇る!!」
ビルゲニア「今度こそキングストーンは頂いた! サタンクロス!!」
ビルゲニアが交差させた剣から光線を放ち、光太郎は飛び退いて避ける。
さらに飛び降り、光太郎に斬りかかるビルゲニア。
光太郎「変…… 身っ!!」
光太郎が仮面ライダーブラックに変身し、廃工場の屋根の上に飛び上がった。
ブラック「仮面ライダー・BLACK!!」
ブラックがビルケニアに飛びかかるも、サタンサーベルで切り払われる。
ブラックとビルケニアが戦うが、やがて地鳴りが起こりだした。
ブラック「何だ、この地鳴りは!?」
ゴルゴム神殿──
ダロム「こ、この地鳴りはぁっ……」
信彦の生命維持カプセルがひび割れていき、火花と共に砕け散った。
そこから現れたのは、銀色の装甲を纏ったもう1人の世紀王・シャドームーンだった。
ダロム「シャ、シャドームーン様……」
シャドームーンが右腕を掲げ、光線を放つ。
ブラックとビルケニアが戦い続ける中、雷鳴が轟き、辺りが闇に包まれた。
ビルゲニア「一体何だ!?」
空からシャドームーンの光線が落ちてきて、サタンサーベルに当たると、サタンサーベルは空の彼方へ飛んでいった。
ビルゲニア「サタンサーベルが!? おのれ、大神官どもの仕業だな!」
その隙に、ブラックが構えた。
ブラック「ライダー、パーンチ!!」
ブラックのライダーパンチをビルケニアはビルセイバーの柄で防ぐも、吹き飛ばされる。
ブラック「ライダー、キ──ック!!」
続けて放たれたライダーキックがビルケニアの肩に炸裂し、ビルケニアは吹き飛びながらも、屋根の上に着地した。
ビルケニア「仮面ライダー、今日のところはこれで引き上げてやる。だが…… 勝ったなどとは思うな!!」
ビルケニアが姿を消すと、辺りを覆っていた闇も消えていった。
暴れていた若者たちが正気に戻った。
若者たち「あれ?」「俺は一体、何やってたんだ?」「どうなってんだよ、おい?」「何があったんだ?」
ビルゲニアがゴルゴムの神殿に戻った。
ビルゲニア「どこだ、大神官!!」
ビルゲニアが弱りきった三神官を見つけたが、そこへシャドームーンが来た。
シャドームーン「ふふふふ……」
ビルゲニア「シャドームーン……! ついに蘇ったのか」
ビルゲニアはシャドームーンが持つサタンサーベルに気づいた。
ビルゲニア「サタンサーベル!? その剣は俺のものだ。返せ!」
シャドームーン「ふふふふふ…… この剣は私のために用意されたものだ。取れるものなら取ってみるがいい」
ビルゲニア「ふざけるな!! たとえシャドームーンが蘇ろうと、次期創世王はこの俺だ。貴様などの好きにさせてたまるか!!」
ビルゲニアがビルセイバーを抜いた。
シャドームーンは身構えもしない。
ビルケニア「はーっ!!」
ビルケニアがビルセイバーでシャドームーンに斬りかかるも、おもむろに振り上げたサタンサーベルでたやすく払われてしまう。
ビルケニア「おのれぇ…… シャドームーンっ!!」
ビルケニアが飛び上がり、再度シャドームーンに斬りかかったが、またもサタンサーベルで払われる。
ビルセイバーが弾き飛ばされ、壁に突き刺さった。
シャドームーンがサタンサーベルを振りかぶる。
ビルゲニアは盾のビルテクターを構えたが、サタンサーベルの一撃はビルテクターごとビルゲニアを切り裂いた。
ビルゲニア「……俺は利用されたに過ぎなかったのか……!? ……創世王様っ!!!」
ビルゲニアが倒れ、炎に包まれ、やがて消滅した。
シャドームーン「所詮キングストーンを持たぬ者に創世王の座など叶わぬ夢だったのだ」
三神官「…………」
シャドームーン「だが、そのキングストーンの1つを依然として仮面ライダーが持っている。よいか三神官、地底に眠る怪人たちよ、私は世界にゴルゴム帝国を築くために復活した。これからはこのシャドームーンが全ての実権を握る。直ちに世界制覇の準備を進めるのだ」
バイクで走る光太郎にシャドームーンの声が聞こえてきた。
シャドームーン「ふっふっふ……」
光太郎がバイクを止めると、陽炎と共にシャドームーンが現れた。
シャドームーン「南光太郎、いや仮面ライダーブラック。私は次期創世王・シャドームーンだ。ビルゲニアは滅び、今日よりゴルゴムの指揮はこの私が執る」
光太郎「蘇ったのか、信彦……」
シャドームーンは何の反応も示さない。
光太郎「目を覚ませ!! お前はゴルゴムに操られているんだ、信彦!!」
シャドームーン「信彦? ……そんな名前は忘れたな。よいか仮面ライダーブラック、必ずや貴様を倒し、この地上にゴルゴム帝国を築いてみせるぞ。覚悟しておけよ? はっはっはっはっ……!!」
光太郎「信彦っ!!」
シャドームーンが姿を消した。
光太郎「信彦、俺は絶対諦めないぞ。必ずゴルゴムから救いだし、お前を元通りにしてみせる!!」
天・海・地の石のエネルギーを得て、 ついにシャドームーンは蘇り、光太郎に挑戦状を叩きつけた。
果たして光太郎は、信彦を救い出すことができるのか? ゴルゴムから地球を守ることができるのか? 負けるな、南光太郎! 戦え、仮面ライダーブラック!!
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(つづく)
最終更新:2022年11月14日 20:36