仮面ライダーBLACKの第35話


シャドームーン復活を急ぐ三神官は、
彼らの命の源である、天・海・地の三つの石を使い、
シャドームーンを蘇らせようと最後の賭けに出た。

一方、同じく次期創世王を狙うビルゲニアは、
創世王のみに与えられる魔剣「サタンサーベル」を手に入れ、
仮面ライダーに戦いを挑んだ。
そしてついに、ビルゲニアの手にかかった仮面ライダーは……。



ビルゲニアに敗れ、共に崖から落ちていくブラックと杏子。
ブラックは杏子を庇い、地面に叩きつけられた。

杏子「ああ…… ライダー! ライダー、しっかりして!」

ブラックの体を揺さぶる杏子。
だがブラックは死んだように動かない。

杏子「しっかりして、ライダー……!」

そこに光の玉が飛んできた。
杏子がブラックを連れて岩陰に隠れる。
光の玉は地面に降り立ち、ビルゲニアとなった。

ビルゲニア「奴の体からキングストーンを取り出さなければ」

ビルゲニアが再度光の玉となって、去って行った。
安堵の杏子がブラックを見る。

杏子「ああっ……!?」

ブラックは光太郎に戻っていた。

杏子「光太郎さん……!? ありがとう、光太郎さん。私を助けるために自分の体を……! しっかりして、光太郎さん。光太郎さん、しっかりして!」
光太郎「……ああ…… 杏子ちゃん……」

杏子の目に涙が浮かぶ。

杏子「光太郎さん、さあ早く!」

杏子は光太郎を支えて、森の中に入った。



対決! 二人の王子



杏子「光太郎さん、大丈夫?」

2人は洞窟に入り、深い水溜まりの中を進み、やがて開けた場所を見つけ、杏子は光太郎を壁にもたれかけさせた。

杏子「光太郎さん! しっかりして…… すぐ、お医者さんを呼んでくるから……」
光太郎「いいんだ。このままにしておいてくれ」
杏子「でも……」
光太郎「うっ……」
杏子「光太郎さん!! しっかりして、光太郎さん!!」

光太郎の左腕には深い傷があった。
杏子は自分の服の袖を破って、光太郎の傷に巻いた。

杏子(光太郎さん…… 死なないで。死なないで!)

その頃、ゴルゴムの神殿では……。

信彦(バッタ男)の生命維持カプセルは、三神官の石を捧げられてなお沈黙を保っている。

ダロム「まだなのか!? まだ蘇らぬのか!?」

ビシュムが倒れた。

バラオム「どうした!? しっかりしろ、ビシュム!」
ビシュム「体から、力が抜けてゆく……」
バラオム「ビシュムっ!」
ダロム「あぁっ…… 天・海・地、3つの石のエネルギーが切れかけている」
バラオム「エネルギーを使い果たせば、我々の命もそれまで。何故蘇らないのだ? 何故だ!?」

杏子は火をたいて、眠った光太郎を介抱していた。
光太郎が目覚め、2人が見つめ合う。
不意に杏子が光太郎の左腕をめくると、傷は消えていた。

杏子(傷が治ってる!?)
光太郎「杏子ちゃん……」
杏子「え?」
光太郎「杏子ちゃんに、話しておかなくっちゃいけないことがあるんだ。実は僕……」
杏子「話があるなら後。傷に障るでしょ」
光太郎「でも…… 実は僕は……」
杏子「やめて! そんな話、聞きたくない」

ハッと杏子の心情を察する光太郎。

杏子「……知ってたわ、光太郎さんが仮面ライダーだってことは、前から。いつも1人で悩んでたし…… 辛そうだったし……」
光太郎「…………」
杏子「でも…… でも、私には昔とちっとも変わらない光太郎さん。それでいいでしょ? 何があっても、光太郎さんはいつもそばにいてくれた。それが嬉しくて…… それだけで、幸せで…… だから、だから……!!」

光太郎は、かつて信彦と杏子、克美と共に遊んだ日々を思い返した。

光太郎「許せない…… そんな皆の幸せを、ゴルゴムが奪い取ったんだ! 連中の作ろうとしているのは弱肉強食の世界だ。もしそれが実現したら、この地球はどうなるんだ!? だから僕は仮面ライダーとなって奴らを!」
杏子「光太郎さん!」
光太郎「でも1つだけ心配なことがあるんだ。もし僕の手で信彦を助け出すことができなければ…… その時は……」
杏子「………!!」
光太郎「分かるだろ? 君のお兄さんと、戦う羽目になるかもしれないんだ」
杏子「やめて!! そんなの嫌…… 嫌よ!!」
光太郎「僕だって嫌だ!! でも……」
杏子「光太郎さん…… ああっ……!!」

杏子が光太郎に抱きつき、泣き出した。
何も言わずそれを受け止め、ゴルゴムへの怒りをたぎらせる光太郎──。


一方、ビルゲニアは町にいた。

ビルゲニア「仮面ライダーブラック、貴様が出てくるようにしてやる!」

ビルゲニアはサタンサーベルを抜き、自身の愛剣・ビルセイバーと交差させた。
ビルゲニアが交差させた剣から放たれた光が、下でたむろしていた若者たちに降り注ぐ。
若者達は苦しみだしたが、やがて黒い隈を浮かばせて──

若者たち「とうとう俺たちの時代が来たぞ!! やっちまえ!!」「おう!!」

若者たちはジープやバイクに乗って、人々を追い回し、痛めつけ、物を壊していった。

ビルゲニア「はっはっはっ! もっとやれ、暴れろ! もっとだ!」

若者たちが、停まっていた車を壊していく。


ゴルゴム神殿では──

バラオム「ああ……」
ダロムとバラオムも倒れていて、ビシュム共々その顔はしわ枯れていた。

ダロム「シャ、シャドームーン、早く蘇ってくれ……」

神殿の天井に、町で高笑いするビルゲニアの映像が映った。

バラオム「おのれ……」
ダロム「ビルゲニア……」
ビシュム「苦しい…… もう、駄目……」
バラオム「お答えください、創世王様…… 天・海・地の石で…… 本当にシャドームーンが蘇るのですか……?」

克美がいる喫茶店・キャピトラのテレビに速報が入った。

レポーター「一体どうしたんでしょう! 暴走族や非行少年たちの様子がおかしくなり、略奪を繰り返しています! 危険です! 市民の皆さん、町に出ないでください。あっ、今また新しいニュースが入りました!」

克美が外を見ると、表で若者たちが暴れていた。
克美は中に戻ったが、若者たちが入ってきて暴れ出した。
克美は奥の部屋に逃げた。

克美「どこにいるの、光太郎さん…… 助けて、光太郎さん!!」

光太郎と杏子が街に戻ったが、町は荒れ果てていた。
光太郎が倒れた女性に駆け寄る。

光太郎「どうしたんですか、しっかり!」
杏子「助けてー!!」

若者たちが杏子に襲いかかってきた。
光太郎は襲ってくる若者たちを返り討ちにする。
若者たちはジープとバイクで2人を追いかけたが、2人は物陰に隠れ、やり過ごした。

光太郎「ゴルゴムの仕業だ! 克美さんが心配だ、キャピトラへ行こう」
杏子「うん!!」


キャピトラの中はめちゃくちゃに荒らされていた。

光太郎「克美さん!!」
杏子「克美さん!!」

奥から克美が出てきた。

光太郎「あっ、克美さん!」
杏子「光太郎さん……」
光太郎「大丈夫か、克美さん!?」
克美「光太郎さん……!」

光太郎に抱き着き、激しく泣き出す克美。

光太郎「おのれゴルゴムめ!! 杏子ちゃん、君はここに残って克美さんを介抱してくれ。誰が来てもドアを開けちゃ駄目だぞ!」
杏子「はい!」

光太郎はゴルゴムを探して無法地帯と化した町を駆けずり回る。
廃工場の屋根にビルケニアがいた。

ビルゲニア「待っていたぞ、南光太郎! よく生きていたな」
光太郎「貴様のような悪魔がいる限り、俺はいつでも蘇る!!」
ビルゲニア「今度こそキングストーンは頂いた! サタンクロス!!」

ビルゲニアが交差させた剣から光線を放ち、光太郎は飛び退いて避ける。
さらに飛び降り、光太郎に斬りかかるビルゲニア。

光太郎「変…… 身っ!!」

光太郎が仮面ライダーブラックに変身し、廃工場の屋根の上に飛び上がった。

ブラック「仮面ライダー・BLACK(ブラック)!!」

ブラックがビルケニアに飛びかかるも、サタンサーベルで切り払われる。
ブラックとビルケニアが戦うが、やがて地鳴りが起こりだした。

ブラック「何だ、この地鳴りは!?」


ゴルゴム神殿──

ダロム「こ、この地鳴りはぁっ……」

信彦の生命維持カプセルがひび割れていき、火花と共に砕け散った。
そこから現れたのは、銀色の装甲を纏ったもう1人の世紀王・シャドームーンだった。

ダロム「シャ、シャドームーン様……」

シャドームーンが右腕を掲げ、光線を放つ。


ブラックとビルケニアが戦い続ける中、雷鳴が轟き、辺りが闇に包まれた。

ビルゲニア「一体何だ!?」

空からシャドームーンの光線が落ちてきて、サタンサーベルに当たると、サタンサーベルは空の彼方へ飛んでいった。

ビルゲニア「サタンサーベルが!? おのれ、大神官どもの仕業だな!」

その隙に、ブラックが構えた。

ブラック「ライダー、パーンチ!!」

ブラックのライダーパンチをビルケニアはビルセイバーの柄で防ぐも、吹き飛ばされる。

ブラック「ライダー、キ──ック!!」

続けて放たれたライダーキックがビルケニアの肩に炸裂し、ビルケニアは吹き飛びながらも、屋根の上に着地した。

ビルケニア「仮面ライダー、今日のところはこれで引き上げてやる。だが…… 勝ったなどとは思うな!!」

ビルケニアが姿を消すと、辺りを覆っていた闇も消えていった。
暴れていた若者たちが正気に戻った。

若者たち「あれ?」「俺は一体、何やってたんだ?」「どうなってんだよ、おい?」「何があったんだ?」


ビルゲニアがゴルゴムの神殿に戻った。

ビルゲニア「どこだ、大神官!!」

ビルゲニアが弱りきった三神官を見つけたが、そこへシャドームーンが来た。

シャドームーン「ふふふふ……」
ビルゲニア「シャドームーン……! ついに蘇ったのか」

ビルゲニアはシャドームーンが持つサタンサーベルに気づいた。

ビルゲニア「サタンサーベル!? その剣は俺のものだ。返せ!」
シャドームーン「ふふふふふ…… この剣は私のために用意されたものだ。取れるものなら取ってみるがいい」
ビルゲニア「ふざけるな!! たとえシャドームーンが蘇ろうと、次期創世王はこの俺だ。貴様などの好きにさせてたまるか!!」

ビルゲニアがビルセイバーを抜いた。
シャドームーンは身構えもしない。

ビルケニア「はーっ!!」

ビルケニアがビルセイバーでシャドームーンに斬りかかるも、おもむろに振り上げたサタンサーベルでたやすく払われてしまう。

ビルケニア「おのれぇ…… シャドームーンっ!!」

ビルケニアが飛び上がり、再度シャドームーンに斬りかかったが、またもサタンサーベルで払われる。
ビルセイバーが弾き飛ばされ、壁に突き刺さった。
シャドームーンがサタンサーベルを振りかぶる。
ビルゲニアは盾のビルテクターを構えたが、サタンサーベルの一撃はビルテクターごとビルゲニアを切り裂いた。

ビルゲニア「……俺は利用されたに過ぎなかったのか……!? ……創世王様っ!!!

ビルゲニアが倒れ、炎に包まれ、やがて消滅した。

シャドームーン「所詮キングストーンを持たぬ者に創世王の座など叶わぬ夢だったのだ」
三神官「…………」
シャドームーン「だが、そのキングストーンの1つを依然として仮面ライダーが持っている。よいか三神官、地底に眠る怪人たちよ、私は世界にゴルゴム帝国を築くために復活した。これからはこのシャドームーンが全ての実権を握る。直ちに世界制覇の準備を進めるのだ」


バイクで走る光太郎にシャドームーンの声が聞こえてきた。

シャドームーン「ふっふっふ……」

光太郎がバイクを止めると、陽炎と共にシャドームーンが現れた。

シャドームーン「南光太郎、いや仮面ライダーブラック。私は次期創世王・シャドームーンだ。ビルゲニアは滅び、今日よりゴルゴムの指揮はこの私が執る」
光太郎「蘇ったのか、信彦……」

シャドームーンは何の反応も示さない。

光太郎「目を覚ませ!! お前はゴルゴムに操られているんだ、信彦!!」
シャドームーン「信彦? ……そんな名前は忘れたな。よいか仮面ライダーブラック、必ずや貴様を倒し、この地上にゴルゴム帝国を築いてみせるぞ。覚悟しておけよ? はっはっはっはっ……!!」
光太郎「信彦っ!!」

シャドームーンが姿を消した。

光太郎「信彦、俺は絶対諦めないぞ。必ずゴルゴムから救いだし、お前を元通りにしてみせる!!」



天・海・地の石のエネルギーを得て、
ついにシャドームーンは蘇り、光太郎に挑戦状を叩きつけた。

果たして光太郎は、信彦を救い出すことができるのか?
ゴルゴムから地球を守ることができるのか?
負けるな、南光太郎!
戦え、仮面ライダーブラック!!



(つづく)

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最終更新:2022年11月14日 20:36