私、能力は平均値でって言ったよね!(漫画版)の第1話

ブランデル王国郊外を走る馬車の乗客の中に、
少女、アデル・フォン・アスカム十歳がいた。

アデル「水よ集え我が元へ、水球錬成・・・!」

第一話 転生


アデル「うぐぐぐぐ・・・・」
アデルは、やっとの思いで錬成した水をコップに注ぎ、隣にいた老婆に渡した。
アデル「どうぞ」
老婆「ありがとう」

女性「やっぱり魔法が使えるのは便利ねえ」
アデル「でも水は今のが精一杯で一度出したらしばらく使えないんです。学園でもっと勉強して魔法を覚えたいなぁ!」
乗客「アードレイ学園に入るのかい?」
アデル「いえ、エクランド学園です!新しいお母様が入れてくださったんです!」
乗客「新しいお母様?」

アデル「お母様は死んでしまって・・・でもすぐに新しいお母様と義妹が来てくれたんです。私一人っ子だったから嬉しくて・・・私はいっぱいお友達できるようにって寮のある学園を選んでくれて・・・楽しみだなぁ!」

乗客たち「可哀想に・・それじゃ厄介払いじゃない」
「しっ!」

アデルのお腹が鳴った。
老婆「アデルちゃん、これをお食べ」
老婆がアデルにお菓子を渡した。
アデル「わあっ!ありがとうございます!」

御者「この森を抜けると王都だよ」

アデル(王都・・・どんな所なんだろう・・・!)

その馬車を上から見ている盗賊の一団があった。
盗賊「野郎共行くぞ!」

盗賊達が馬車の前に出た。

盗賊「表へ出ろ!」

アデル達は外に出された。

盗賊たち「おい、金目のものはあるか!」
「いえ・・・ただの乗合馬車みたいっす」
「チッ、外れかよ・・・ん?」

盗賊の一人がアデルを見た。
盗賊「ほう・・・そこの娘前へ出ろ!」
「この顔・・・この髪・・・こいつは高く売れるぜ!」
「儲けたな!」

乗客達の後ろの茂みから音が聞こえてきた。
乗客たち「なんだあれは・・・」
「まさか・・・!」

茂みから一匹の怪物が出てきた。
乗客「オーク!?ま、まずいぞ!」

盗賊「へっ、オークごとき、俺たちに勝てるとでも・・・!」
そう言った盗賊の後ろに、もう一匹のオークがいた。
盗賊「なっ・・・後ろ!?」

オークの一撃で盗賊は吹き飛ばされ、木に叩きつけられた。

乗客たち「盗賊がやられた!」
「ここはオークのテリトリーだったのか!?」

盗賊「殺してやる!」
別の盗賊がオークに突っ込んだが、オークに首を絞められた。
盗賊「がはっ」

乗客たち「ひいっ!」
「た・・・助け・・・」
「し!静かに!」

オークが振り返り、腰を抜かしたアデルに迫り寄る。

アデル(動けない・・・怖い・・・!)

老婆「アデルちゃん早く逃げて!」
飛び出した老婆に二匹のオークが向かって行った。

アデル(ダメ!)
「水・・・!ありったけの水よ、出てこい!」
(ナノマシンさんお願い!)
(え・・・?私、今なんて・・・・?)

アデルの鼻に水滴がかかり、アデルが空を見上げた。
アデルが生み出した水の固まりが大きく広がっていき、
やがて無数の槍となって、オークと盗賊達に降り注いだ。

乗客たち「水の槍よ!」
「アデルちゃんやったわね!」

アデル「あれっ、ちょっとまって・・・」
乗客たち「良かったわね!」
「おかげで助かったぞ!」
アデル「ごめんなさい・・・制御できなくて、だんだん大きく・・・!」

水の固まりが上空で弾け、アデルや乗客たちに降り注いだ。

アデル「げはげほげへごぼ」
(思い・・・出した・・)
(私は栗原海里・・・あの時・・・)


母親「あなた見て、海里が笑ったわ」

海里「栗原海里、それが私の名前」
「勉強、スポーツ、芸術、将棋、大人との会話。私は少しだけ「出来る子」だった」
「皆は私に期待をかけた、かけすぎたのだ」

親戚たち「この子は百年に一人の天才だ!」
「この子はうちに・・・」

海里「おじいちゃん、おばあちゃん、親戚たちは私を取り合った」
「やめて、私は天才じゃない、特別じゃない」
「ちょっと勉強ができて、読書が好きなだけの・・・」

同級生たち「あの子は特別だから」
「私たちなんかとは・・・次元がちがうよね」

海里「本当は馬鹿話したり、男の子の話で盛り上がりたかった」
「普通の女の子として生きたかった」

海里「そして高校の卒業式」
「少女がトラックに轢かれそうになった、なぜか皆は見ているだけ」

同級生たち「あの子は運動神経がいいから・・・」
「栗原さんなら助けられるんじゃない?」

海里「どうして誰も動かなかったの?」

そして海里は少女を庇い――――


海里は白無垢の神殿のような場所で目覚めた。
海里「ここは・・・・?」

?「栗原海里さん」
海里の側に、一人の少年が立っていた。

少年「あなたは、お亡くなりになりました」
「ここは皆さんの概念で説明するならば「天国」のようなものであり、私は「神」に相当する立ち位置でしょうか。あなたをここにお呼びしたのはあるお礼をするためです」
海里「・・・お礼?」

少年「我々は滅び行く世界を守るためいろいろな手助けをしています。私は特定の個体に知識を与え支援し、世界の崩壊をくい止めてきました。しかしその個体は消滅の危機を迎えた。我々にはどうすることもできなかった・・・それをあなたは救ってくれたのです」
海里「それっと・・・」
少年「そう、あの少女。あの子は将来、人類発展に偉大な功績を残すことになるのですよ」

海里(私の人生にも意味があったのか・・・)

少年「そこであなたには私から、新たな人生を贈りたいと思います。いわゆる記憶を持ったままの転生、というものですね」
海里「えぇ!?」
少年「何かお望みはありますか?こんな力が欲しいとか・・・・」
海里「能力は、平均値でお願いします」

少年「え・・・し・・・しかし転生して頂くのは魔物の蔓延る危険な世界ですよ?何か能力も無いと安全に生きていくことが・・・」
海里「いえ、平均値でお願いします!今度こそごく普通の女の子として自分の力で幸せになってみせます・・・」
(そうすれば、もう孤独な思いは・・・)

少年「わかりました」
「今度転生していただく世界は生物の思念波に反応するナノマシンが散布されています。それによって魔法のようなものが使えるので、覚えておいてください・・それでは転生処理を始めます。どうか、よき人生を・・・・・・」


アデルが目覚めた。
アデル「ここは・・・盗賊に襲われて・・・オークが・・・」

周りでは盗賊や乗客たちが倒れていた。

アデル「これ・・・私が魔法でやったの・・・?確かナノマシンとかなんとか・・・う~ん・・・・」

ナノマシン「御用ですか?」
アデル「うひゃあっ」
小さな球みたいな機械がアデルの前に出てきた。

アデル「あっ、あなたがナノマシンさん?」
ナノマシン「はい」
アデル「ていうかナノマシンって眼にみえるものなの・・・?」
ナノマシン「光を屈折させて仮の姿を映し出しています。このほうがわかりやすいでしょう?」
アデル「あ・・・そうだ!さっきの・・・私の魔法がありえない程の威力になった理由を知りたいのだけど・・・」
ナノマシン「それはナノマシンに対する貴女の思念波出力が強大で・・・・送られた魔法のイメージが明確勝つ具体的であったためです」
アデル「思念波?って・・・?」

ナノマシン「魔法は全て私たちナノマシンによって引き起こされます。術者は魔法を放つという意思を思念波としてナノマシンに放射します。私たちナノマシンはそれを受信し、様々な現象を起こすのです」
「そして貴女の思念波出力は、この世界で最も強い出力の古竜種の半分くらいあります」
アデル「えっ、それって人間に比べると・・・?」
ナノマシン「魔力を有する人間の平均値の」
「6800倍です」
アデル「えぇええ!?」

乗客たちが目覚めた。
乗客「いったい何が・・・?」

アデル「とっとにかく!今のうちに逃げましょう!さあ皆さん早く馬車へ!」
アデルは乗客たちを馬車に押し込んだ・

老婆「そういえばさっきの水は・・・あれ?アデルちゃんはどこ?」

アデルは一人、外を走っていた・
アデル「最も強い古竜種の半分、魔力最大の者と最小の者とちょうと真ん中・・・違うでしょ・・・そうじゃなくて・・・」
「私、能力は」
「平均値でって言ったよ!」


(続く)

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最終更新:2019年10月27日 09:02