魔法騎士レイアース (テレビアニメ版)の第1話

湖の奥深くに存在する花。
そこでエメロード姫が祈っていた。

エメロード「助けて…… この世界を助けて…… 伝説のマジックナイトたちよ……」



伝説のマジックナイト始動



1994年 東京

東京タワーは人で賑わっていた。

女子生徒たち「社会見学で東京タワー選ぶなんて、やっぱりうちの学校は変よ」「ほんと、小学生じゃあるまいし」「光もそう思うでしょ?」

獅堂光は双眼鏡を除いで喜んでいた。

光「わあーっ、高いな。凄いな。社会見学でこんなところに連れてきてもらえるなんて嬉しいな…… ね?」
女子生徒「喜んでる……」
光「わあーっ‼︎」
女子生徒「どうしたの、光?」
光「双眼鏡、切れた……」
女子生徒「だああっ!!」
光「えっと、お金。お金……」

そこへ鳳凰寺風が現れ、光に200円を差し出す。

風「よろしかったらどうぞ…… 楽しそうなあなたを拝見してわたくしも楽しませていただきましたから、お気になさらずに」
光「あっ……」
女子生徒「あれ、有名な私立学校の制服よ」「あの頭のよくて有名な?」
光「お礼に行ってくる!」

すると光は他校の生徒につっかえる。その中に龍咲海がいた。

女子生徒「小さくてつかえてる……」「あれ、お嬢様御用達で有名な女子中じゃない? 財閥とか政治家とかの娘が通ってる……」「ほんと。今日は有名校の東京タワー見学かしら?」「ねぇあの子、綺麗…… モデルみたい」

すると空に巨大な光が出現。

一同「うわああーっ!」
エメロード「この世界を、セフィーロを助けて。伝説のマジックナイトたちよ……」
3人「わあっ!」

すると光たちは別の場所にワープ。
そのまま落ちてしまう。

3人「わあーっ!」

そこへ巨大トビウオが現れ、光たちを受け止める。

海「な、何これ?」
風「大きなトビウオのようですね……」
光「どうなってるんだ? 一体…… ここは、どこなんだ‼」


その光景を神官ザガートとイノーバが見ていた。

ザガート「最後の力で、伝説のマジックナイトを異世界から呼んだか……」
イノーバ「まさか伝説が現実になるとは、考えてもみませんでした……」
ザガート「何を案じておる? 伝説は伝説だ、事実ではない…… あのような子供ではエメロード姫を助けるどころかマジックナイトにもなれまい」
イノーバ「御意」
ザガート「無論、伝説と侮って用心を怠るのも愚かだがな……」
イノーバ「仰せの通りでございます……」


巨大トビウオは光たちを下ろし、去っていく。

海「イッタァ…… なんなのよここは?  一体どうなっちゃったのよ!?」
風「東京でないことは確かですね……」
海「そんなの見りゃわかるわよ」
光「ここは東京じゃない。あの大きなトビウオに乗ってた時、空に浮かんだ山が見えた…… 遠くに火山も」
海「来週には大事なフェンシングの試合があるのよ。どうしてくれるのよ!」
光「そうだ! 自己紹介しよう!」
海「自己紹介? こんな時に何のんきなこと言ってんのよ!」
風「そうですか? 名案だと思いますわ……」
海「どこが!」
風「東京タワーからここにきたのはわたくしたち3人だけのようですし、これからどうするかとにかく3人で協力していくしかありませんわ」
光「だから、それにはまず自己紹介!」
海「わかったわよ…… 私は龍咲海。中学2年……」
風「わたくしは鳳凰寺風。同じく中学2年」
光「獅堂光。14歳、中学2年!」
2人「ええーっ?」
海「あなた、私と同じ歳なの? 小学生だと思ってた……」
風「申し訳ありません、わたくしも……」
海「どう見ても11歳くらいだわ……」

するとそこへ再び巨大トビウオが現れる。

海「わあーっ! ちょっとあなた、早く逃げなさい!」
光「大丈夫。この子大人しいよ……」
海「この状況でその子がおとなしくてなんになるのよ? ん? ねぇ、私たちを東京に戻して。私たちをここに運んできたあなたならできるでしょう?」
声「精獣来会!」

謎の声によってトビウオは杖の中に消えて行った。
その杖を持っていたのは導師クレフだった。

クレフ「お前たちはもう戻れん……」
風「あ、あなたは?」
クレフ「私は導師クレフ。お前たちを導きにきた…… お前たちは元の世界に戻れん。このセフィーロを救うまではな……」

ザガートの拠点。

イノーバ「伝説のマジックナイトが召喚された!」
声「えっ? マジックナイトが?」「どういうことなんだ?」「さすがはエメロード姫。とらわれの身でもそれだけの力が使えるとは……」「伝説の通り、3人?」「魔神を蘇らせるの?」
イノーバ「静かに! ザガート様が話される」
ザガート「召喚された異世界の者たちはまだ子供だ。魔神が蘇ることはない…… しかし、導師クレフの元にいる」
声「あの目障りなやつのところか!」「そりゃ面倒やねぇ……」
ザガート「アルシオーネ……」
アルシオーネ「はっ!」

魔操士アルシオーネが現れる。

ザガート「邪魔な目は早めに積むがよかろう……」
アルシオーネ「仰せのままに」


クレフ「ここはセフィーロ。お前たちはマジックナイトとなってセフィーロを救うべくエメロード姫に召喚されたのだ……」

すると海がクレフのマントを掴む。

海「何偉そうなこと言ってんのよ。年下でしょあなた!」
クレフ「放せ、ふざけるな!」

クレフが杖で海を叩く。

クレフ「全く。エメロード姫は何を考えてこんな子供を……」
光「海ちゃん、後ろ!」

地中から魔物が出現。

海「わああーっ!」
クレフ「稲妻招来!」

クレフの起こした稲妻が魔物を消滅させる。

光「すごい!」
クレフ「エメロード姫のおられたセフィーロはこうではなかった…… 人や精霊、精獣たちが、仲良く幸せに暮らしていた。ところが、神官ザガートがエメロード姫を捉えてからセフィーロは一変した。セフィーロは、魔物の徘徊する闘争と混乱にあふれた世界と化したのだ…… もはやセフィーロはマジックナイトによってしか救われない。お前たちはそのマジックナイトなのだ」
光「マジックナイト……」
海「確かに、その話が本当なら大変な話ね。でも私たちには関係ないわ…… この国の問題はこの国の人が解決すればいいのよ」
クレフ「セフィーロの者ではできないのだ。できればお前たちには頼まん! 様々な魔術師、戦士たちが姫を助けるためにザガートと戦った。だが勝てなかった……」
光「私やるよ! そのマジックナイトになって必ずセフィーロを救う!」
海「ちょっと待ちなさいよ。そんな重大なこと、簡単に決めていいの?」
光「困っている人が目の前にいるのに放っておけないよ!」
海「はぁ…… あなたもなんとか言ってやってよ。バカなことはするなって!」
クレフ「お前たちに選択の余地はない…… マジックナイトとなってセフィーロを救わぬ限り、お前たちは元の世界には戻れん」
海「冗談やめてよ! 私には1週間後にフェンシングの大事な試合があるのよ!」
クレフ「エメロード姫は、この世界の柱なのだ…… エメロード姫は、祈りでこのセフィーロの平和と秩序を支えておられた。このセフィーロでは、何よりも意思が勝るのだ…… 信じる心こそが、このセフィーロでの力となる」
光「信じる心……」
クレフ「姫の願いがお前たちをこの世界に呼んだ。姫の願いが叶えられなければ、お前たちは元の世界に戻れない! 姫の願いはこのセフィーロを救うことだ。それにはお前たちがマジックナイトとなり、魔神を蘇らせなければならないが……」
光「魔神?」
クレフ「お前たち、魔法は使えるか?」
海「使えるならとっくに東京に戻ってるわよ!」
クレフ「魔法も使えんのか。それにその装備もなんとかせねばならないか…… 魔法伝承!」
3人「わあっ!」

クレフの魔法により光たちに防具が装着される。

光「わあーっ……」
海「何? これ……」
風「まぁ……」
クレフ「お前たちに魔法を授けようとしたのだが、魔法の方でお前たちを選んだようだ……」
光「魔法が使えるの?」
クレフ「呪文を唱えればな…… 私のする通りにやるがいい」
海「なにそれ。お遊戯?」
クレフ「目を閉じよ…… わかるか? お前の中に力があることが。今までとは違う力だ……」
光「わかる…… なんだか、胸の奥が熱い。何か言葉が浮かんできて……」
海「そうだ…… それがお前の魔法だ……」

すると空が暗くなる。

海「なんなの?」
クレフ「ザガートの手の下が現れたらしいな……」
3人「ええっ?」

雷鳴が轟く。

クレフ「霊獣召喚!」

クレフが霊獣を召喚。
すると森からエネルギーが放射される。

クレフ「早く乗れ!」

光たちは霊獣に乗り込む。

光「あなたはどうするんだ?」
クレフ「追っ手を防ぐ」
光「そんな……」
クレフ「いいからいけ!」

すると光が降りようとする。

光「私も一緒に戦う!」
クレフ「私のためを思うなら、一刻も早くマジックナイトとなってこのセフィーロを救ってくれ!」
光「クレフ!」
クレフ「西へ行け、沈黙の森にプレセアがいる。そこで武器とモコナを!」

霊獣は飛び去っていった。
そこへアルシオーネが馬に乗って現れる。

アルシオーネ「お久しぶりです。導師クレフ……」
クレフ「ザガートに与するとは、我が教子ながら呆れたやつだな。アルシオーネ!」
アルシオーネ「導師には感謝していますわ、素晴らしい魔法を授けて下さいましたもの。こんな風に…… 氷尖撃射」
クレフ「殻円防除!」

クレフの魔法がアルシオーネの魔法を弾く。

アルシオーネ「さすが我が師。セフィーロ最高の魔導師……」
クレフ「私がお前に魔法を教えたのは、エメロード姫付きの魔導師として姫をお守りするためだ。このセフィーロを脅かすためではない!」
アルシオーネ「ふふふ。相変わらず手厳しいこと…… でもお話している間はないのです、導師クレフ。精獣召喚!」

アルシオーネが精獣を召喚。

アルシオーネ「ふふふ…… まともに戦って私があなたに勝てるはずはありませんわ。私の目的はあのマジックナイトの卵たちの抹殺!」

アルシオーネが去る。

クレフ「待てアルシオーネ!」

精獣が襲いかかる。

クレフ「稲妻招来!」

クレフの起こした稲妻が精獣を消滅させる。

クレフ(もしあのものたちがアルシオーネに破れるようなら、魔神を蘇らせ、マジックナイトになることなど不可能だ…… マジックナイトの真の敵は、アルシオーネなど問題にならぬほど強い)

すると背後からザガートがクレフを襲撃。
クレフは石となって落下。

ザガート「私の気配の気づくとは、さすが導師。しかし遅かったな…… これではエメロード姫は救えまい。はっはっは!」


霊獣は西に向かって飛んでいた。

光「クレフ……」
風「大丈夫ですよ、あんなに強い方ですもの……」
海「じゃ、じゃああれはなんなのよ?」

アルシオーネがまっすぐ光たちの元に向かっていた。

アルシオーネ「氷槍投射!」

アルシオーネの魔法が光たちに襲いかかる。

海「わあーっ! なにが『追っ手を防ぐ』よ。あいつ口ばっかりじゃない!」
光「戻ろう! クレフのところへ。今行けば助けられるかもしれない」
海「ちょ、ちょっと! このまま見捨てるなんて絶対嫌だ!」
風「あなたがクレフさんのためを思うなら、戻るべきではありませんわ! クレフさんはわたくしたちになんと言いました? セフィーロを救ってくれと言ったのではありませんか? それも一刻も早く……」
光「……」
風「クレフさんは私たちがクレフさんの元へ戻ることを望んでいませんわ……」
光「うん……」

霊獣は氷の魔法を精一杯交わす。

アルシオーネ「さすが導師の精獣…… でもここまでよ」

アルシオーネは霊獣を止め、前に行く。

アルシオーネ「はじめまして、異世界から来たマジックナイトの卵さんたち…… 知り合ったばかりで残念だけど、死んで頂くわ!」
風「マジックナイト……」
海「このまま死ぬだなんて……」
光「死ぬ…… 私が死んだら……」

(クレフ『セフィーロはマジックナイトによってしか救われない。お前たちがそのマジックナイトなのだ……』)

アルシオーネ「さようなら……」

光が立ち上がり、左手を構える。
炎が光を包み込む。

アルシオーネ「少しは芸当ができるようね。それで?」
光「炎の矢!!」
アルシオーネ「何?」

炎の矢によって馬が消える。
光は倒れてしまう。

海「大丈夫?」
風「あれがクレフさんがおっしゃっていた魔法ですのね?」
光「う、うん……」
海「ねぇ、この変な鳥に頼んで東京に戻してもらえない?」

霊獣は首を横に振る。

光「ダメだ!」
風「わたくしも反対ですわ……」
海「どうしてあなたまで反対するの? あの子憎たらしいやつのこと信用してるの⁉︎」
風「全てを信じてるわけではありませんが、マジックナイトの話は信憑性があります。あの追っ手も同じ話をしていましたわ……」
風「とにかく1度クレフさんが言った通りにしてみませんか? 知らない世界で闇雲に行動するのは危険ですわ……」
海「クレフが大嘘つきだったらどうするのよ?」
光「そんなこと絶対にない!」
風「嘘はいつかバレます。当てもなく行動するよりは嘘でも従ったほうがマシです。
それとも海さんは何か当てが?」
海「クレフに従うたって、どっちに行ったらいいかもわからないじゃない……」
光「この鳥さんがきっと知っているよ……」
風「わたくしもクレフさんの言葉に従います…… 海さんはどうなさいます?」
光「海ちゃんは1人でどっかいっちゃうの?」
海「……仕方ないわね。付いて行ってあげるわよ。あんたたち2人じゃ心配でしょう?」

エメロード「導師クレフ……」
ザガート「異世界からマジックナイトを召喚しましたね?」
エメロード「ザガート……」
ザガート「無駄なことはおよしなさいエメロード姫。魔神が蘇ることはない…… 伝説のマジックナイトも誕生しない」
エメロード「なぜ? なぜ神官であるあなたがこんな真似をするのです? セフィーロがどうなっても良いのですか?」
ザガート「ええ……」



(続く)

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最終更新:2019年11月06日 21:00