伝説のお母さん(ドラマ版)の最終回


(ナレーション)

「はい、またメイさんが泣いております!」
「ヤバイ、ヤバイよ、これは~」
「最終回、どうなってしまうのか?」
「我々もどういえばいいかわかんない」



魔法使いのメイは、夫モブに子育てを託して、魔王討伐パーティーの1人として、戦いに臨む。
しかしモブは、メイとの些細な行き違いの重なりから、口論にまで発展してしまう。
そして魔王がメイに引き抜きを持ち掛けたことで、パーティーにも不信感が募り、メイはパーティーから外されてしまう。
メイは家でもパーティーでも居場所を失い、1人娘のさつきを抱いたまま、町はずれをとぼとぼと歩く。


王国士官のカトウが、パーティーのつるむバーで、マスターに詰め寄っている。

カトウ「メイさんを外したって、どういうことですか!?」
マスター「だから、抜けてしまったらしいよ。パーティーから」
カトウ「その理由を聞いてるんです!」
マスター「結局、また子供連れて来ちゃったんでしょ」
カトウ「それは、僕が何とかします」
マスター「なんか、魔王から引き抜かれてるらしくて」
カトウ「それは魔王が勝手に言ってるだけです!」
マスター「ってか、なんで俺に聞くんだよ!? ベラたちに聞いてよ」
カトウ「マスターもその場にいたんでしょ!?」

パーティーの1人、シーフ(盗賊)のベラが現れる。

ベラ「仕方なかったのよ」
カトウ「仕方ない?」
ベラ「このままだと、戦う前にチームがバラバラになっちゃうって思ったの」
カトウ「メイさんがどんな状況で戦いに臨んでいるか、わかっているでしょう? 味方にまで見捨てられたら、メイさんの居場所はどこにあるんですか? 誰も寄り添ってあげる人はいなかったんですか?」
ベラ「確かにあんたの言う通り、メイには寄り添ってくれる人が必要だよね」
カトウ「はい。……えっ?」
ベラ「いや、もうあいつさ、行くとこないくせに、家には旦那がいるから帰りたくないって頑なだったから、ま、ここだったら絶対に歓迎してくれるっていう住所、渡したの」


メイは、地図にある家を訪れる。

メイ「誰の家なんだろうね? さっちゃん……」

カトウが息を切らしつつ、駆けつける。

カトウ「メイさん!」
メイ「あれ、カトウさん?」
カトウ「はぁ、はぁ…… ベラさんから、事情は聴きました」
メイ「えっ、どうしてここに?」
カトウ「あの…… ここ、僕の家なんで」
メイ「えっ!?」


パーティー仲間、戦士ポコと僧侶クウカイは、ベラから事情を聴いている。

クウカイ「カトウさんの家って、それ、まずくないっスか?」
ベラ「えっ、なんで?」
ポコ「え~っ!? だってそんな、ひとつ屋根の下で、2人っきりって、ねぇ~!」
ベラ「いやいや、2人じゃないよ」

カトウの家では、カトウの母クミコがメイを迎える。

クミコ「あらぁ~! 誰かと思ったら、メイさんじゃなぁ~い!」

クウカイ「実家なんだ……」
ポコ「な~んだ、つまんな~」
ベラ「でも、カトウさんのお母さんって──」

クミコ「あの子のこと、どう思ってらっしゃるの?」
メイ「どう……とは?」
カトウ「母さん、もう遅いから、寝よ。ねっ?」
カトウの弟「まだ夕方じゃん!」
クミコ「あの子はね、本当によく出来た子でね、親の私をずっと支えてくれてたのよ。さぁ、どうぞ」
メイ「すみません……」
弟・妹たち「お荷物、お預かりします!」「おしぼり、どうぞ!」
クミコ「あとは、いい相手が見つかってさえくれればね、言うこと無いと思ってるのよ。絶対いい夫になるって保証するんだから」
メイ「私も、そう思います」
クミコ「えっ、メイさんもわかる?」
メイ「あっ、はい」
クミコ「ところでメイさん、離婚しそうなんだって?」
カトウ「母さん!?」
クミコ「えっ、違うの? さっきベラさんから、電話で」
メイ「あ…… いえ、離婚は」
クミコ「あら、違うの? 可能性はゼロ?」

ベラ「──っていう人なのよ」
ポコ「面倒くさそ~」
クウカイ「慌てるカトウさんの顔、浮かんできたわ」
ベラ「でしょ、でしょ?」
一同「ハハハハハ!」
ベラ「よし! じゃ、魔王襲撃、行こうか!」


その夜。
ベラたちパーティーは、魔王の宿屋に忍び込み、寝室へと侵入する。

ベラ「寝てる、寝てる。『せーの』で行くから。OK? ……せ──のっ!」

一気に毛布をはがし、武器を突きつける。
魔王ではなく、メイの後輩の魔法使いメルルが、猿ぐつわを噛まされ、縛り上げられている。

クウカイ「えっ、メルル?」
ポコ「どういうこと?」

一同がメルルの拘束を解く。

クウカイ「大丈夫?」
メルル「逃げて!」
ベラ「えっ?」

壁に魔法陣が描かれている。

ベラ「罠だ!」

部屋が大爆発し、炎に包まれる──!


メイはカトウの家で、彼の家事を手伝っている。

カトウ「すみません、手伝わせてしまって」
メイ「いえ。こちらこそ、急に押しかけてしまって」
カトウ「うるさくて、申し訳ないです」
メイ「いえ、こんな賑やかなのは久しぶりだから、楽しいです」
カトウ「なら、良かったです」
メイ「家族が笑って過ごすのって、いいですね」
カトウ「……すみません。ご主人のこと」
メイ「えっ?」

カトウは前回、モブに心無い言葉をかけていた。

(カトウ『あなたは、何もできていないじゃないですか。メイさんが今、本当に必要としているのは、熱意じゃない。家事と育児ができる人間です』)

メイ「そんなことを……?」
カトウ「本当に、申し訳ありません」
メイ「……最低ですよ」
カトウ「……」
メイ「夫が、『子供なんかいなきゃ良かったのに』って言ったんです。私、それを聞いて、カッとなってしまって……」
カトウ「いえ、ご主人も本気で言ったわけじゃ──」
メイ「私がですよ」
カトウ「えっ?」
メイ「最低なのは、私です。カッとなったのは、夫を許せなかったからではないんです。もしかすると私も、心のどこかで同じこと……」

カトウの部下が駆けつける。

部下「カトウ様ぁ!! 伝説のパーティーが魔王の罠にかかり、襲撃を受けました!」
メイ「えっ!?」
部下「さらに市街地にも、魔王軍がどんどん押し寄せています!」

罠にかかった伝説のパーティーの隙を突き
魔王軍の侵略は城下にまでおよんだ…

ベラたちは深手を負って気絶し、魔王軍へ寝返った勇者マサムネが介抱している。

マサムネ「おい、お前ら! おい、ベラ! ベラ! おい、しっかりしろ!」
ベラ「……あんた!?」
マサムネ「オッス」
クウカイ「マサムネさん!?」
ポコ「なんで!?」
マサムネ「危なかったな。なんとか致命傷は免れた」
ベラ「あんた、なんでここにいんのよ?」
マサムネ「なんでって…… いや、魔王がお前たちを罠にかけようとしてるの知って、助けに来たんだよ」
ポコ「何を今さら、裏切ったくせに」
クウカイ「そうっスよ」
ベラ「ってか、なんで魔王が罠を仕掛けるの、あなた知ってんのよ?」
マサムネ「あぁ、これで」

マサムネがスマホのSNS画面を見せる。

ベラ「えっ、何これ?」
マサムネ「魔王のグループに入れてもらってさ」

魔王「桔梗の間に魔法陣描いて
罠にはめるというのはどうだ?」
側近「さすが我が王。名案ですな」
魔王「奴らを八つ裂きにしてくれるわ」
側近「頼もしい」
魔王「勇者はどう思う?」
マサムネ「あ いいと思いまーす!」
魔王「おけ」

クウカイ「何スか、これはぁ!?」
ポコ「完全に魔王側の人間じゃないですか!?」
マサムネ「助けに来たじゃないですかぁ!」
クウカイ「助けるなら、宿屋に入る前に助けてくださいよ!」
マサムネ「それはお前、ピンチのときに助けに来た方が、勇者っぽいだろ?」
ポコ「じゃあ、一緒に戦ってくれる?」
マサムネ「あ…… ちょっと、ごめんなさい。それはちょっと、あの、息子をお風呂に入れなきゃいけないんで、ちょっと…… ドロン」
クウカイ「何スか、それ!? こんなときにどうでもいいでしょ!?」
ベラ「ちょっと! あんた、あんた。『どうでもいい』は聞き捨てならないよ」
メルル「ちょっと、いつまで喋ってんの!? 状況わかってる!? ってか、先輩は? 一緒じゃないの?」
ポコ「メイは…… 戦えないよ」
クウカイ「魔王に引き抜かれてんだよ」
メルル「引き抜かれてる!?」
ポコ「そうだよ。そんな状態じゃ、連れて来られないでしょ」
マサムネ「馬鹿!! それも魔王の罠だよ!!」
ベラ「罠?」
マサムネ「メイを孤立させる作戦だよ。お前らの疑心暗鬼を誘ってな! 魔王が話してるのを聞いたんだ。『メイだけ仲間外れにしちゃおう大作戦』ってな!!」
一同「……ダサ~っ!」
ベラ「大作戦って言ったよね。これさ、あいつ考えてるよね。絶対」
ポコ「いや、そうだよね!」
マサムネ「違う違う…… 俺が言ったんじゃないから」


カトウの家でも、一同が避難の準備をしている。

クミコ「メイさん、早くいくよ!」
メイ「はい!」
クミコ「大丈夫だから」
メイ「すみません」

メイが荷物をまとめていると、育児ノートがこぼれ落ちる。
モブの育児のメモが書かれている。

3月7日 朝8時
さっちゃんが泣き出した。
泣きやむ方法を教えてもらったはずだけど、
なかなかできない。悔しい。
メイ「え……?」
朝メシ、お粥と、ニンジンカボチャスープ。
メイのレシピ通りに出来たと思う。
でも、なかなか食べてくれない。
なんでだ?

今日も、朝メシ失敗。
ニンジンをもっと細かく切ってみたけど、
スプーンを口に入れてくれない。
何がいけないんだろう。

俺、さっちゃんに
受け入れられてないのかな……

離乳食、再チャレンジ!
新しく買ってきた木製のスプーンで
離乳食を口に運んでみる。

『わぁ~! 食べたぁ! 美味しいねぇ!』

さっちゃん、パクッと食べてくれた!
やった~!

ようやくお父さんって、認めてくれたかも!
このスプーン、魔法じゃね?
早くメイに教えたい!

スープで染みたページに、メイがしみじみと見入る。


メイの家では、モブが避難の荷物をまとめつつ、電話をかけている。

モブ「くそ…… 出ろよ、メイ」

メイが現れる。

モブ「メイ? あ、避難しよう! おむつとか色々、入れといたから」
メイ「あなたが持ってて」
モブ「えっ?」
メイ「私…… 魔王と戦いに行くから」
モブ「はぁ?」
メイ「魔王を倒しに行く」
モブ「お前が行くこと無いだろ。何言ってんだよ。母親に何かあったら、その子どうすんだよ?」
メイ「あなたがいるでしょ?」
モブ「えっ?」
メイ「あなたがいるじゃない」
モブ「俺は…… お前みたいにできないよ。お前だって俺にその子を預けるの、もう嫌だろ?」

メイ「食べてくれないときさぁ、不安になるよね……」
モブ「えっ?」
メイ「私も最初は、そうだっだ。何度やっても、スプーンを口に入れてくれなくて。食べてくれても、吐き出されたりして…… でも、食べてくれたときは、嬉しい気持ちでい──っぱいになって…… 私も一緒だよ」
モブ「……」
メイ「私は、2人で守りたい。私たち2人の子供だから」
モブ「俺たち、2人の……」

メイがさつきを差し出し、モブが抱きとめる。


ベラたちパーティーは、魔王と側近を相手に、戦いを繰り広げている。

側近「せいっ!」
ベラ・ポコ「クウカイ!?」
そっきんの こうげき!
そっきんは りもこんを ふりまわした!
くうかいは 708の ダメージを うけた!
側近「我が王。そろそろ、とどめを刺しましょう」
魔王「うむ。食らうがいい── この煉獄の業火で焼き捨ててやる!」
まおうの こうげき!
まおうは れんごうくのごうかを はなった!
魔王「死ねえぇ──っっ!!」

強烈な攻撃が迫る。
メイが駆けつけ、攻撃を受け止める。

ポコ「えっ!?」
メイ「皆さん、お待たせしました!」
ベラ「子供はどうしたの?」
メイ「夫に預けてきました!」
ベラ「え~っ! 大丈夫なの?」
メイ「はい、もう大丈夫です! とにかく皆さん、回復を! はい!」
めいは まほうのれじゃーしーとを つかった!
一同「わぁ~!」
メイ「薬草でお茶作って、水筒に入れてきました~!」
ポコ「なんか、遠足みた~い!」
クウカイ「このタイプの水筒、懐かしい~!」
メイ「ポーション練り込んだクッキーもあるよ~!」
ポコ「えっ、マジでぇ!?」
クウカイ「自分で作ったお菓子は500ゼニーの制限無しでしたっけ?」
ベラ「そりゃそうでしょ、あんた」
ポコ「え~っ!? うち、NGだったよ~!」
側近「お──い!! お前ら、こっち向けぇ──っ!!」

メイたちが我に返り、戦闘態勢に入る。

メイ「魔王!!」
魔王「フフフフ…… やはり人間は愚かだ! 我の新しい力を見せてやろう。お前らを倒すため、人間を研究し身に着けた、恐ろしい力をな!」」
ベラ「新しい力!?」
魔王「まずはお前たちだ!」

魔王が、ポコとクウカイを指す。

魔王「あの子、そろそろ天然キャラはキツイね~!
側近「だね~!
魔王「キャラ変が必要な歳だな
ポコ「うぅっ!? あぁっ!!」

魔王たちの言葉が突き刺さり、ポコが倒れる。

メイ「ポコちゃん!?」
魔王「親の仕送りで家賃払うなんてね~!

クウカイもまた、魔王の言葉を受けて倒れる。

メイ「そうだったの?」
クウカイ「払ってるんだからいいだろ……」
側近「流石は我が王。これは精神攻撃。普通の人間が口にするならモヤモヤする程度の言葉を、言霊にまで昇華したのだ」
ポコ「倒すんなら、もっと格好いい技で倒してよ~!」
クウカイ「魔王さん。さっきの煉獄なんちゃらでとどめを刺してください!」
ベラ「残念だけどそんな攻撃、私には通用しないよ。もうそんな言葉で傷つくような歳でも立場でもないからね!!」
魔王「やっぱり女は20代までよね~!
側近「だよね~!
魔王「劣化~!
ベラ「うわぁぁ──っっ!!」

ベラも倒れる。

メイ「あぁっ、ベラさぁん!?」
魔王「メイよ! お前はこの程度では済まないぞ」
メイ「……!」
魔王「子供がかわいそうじゃない」「育児って、女の仕事だよね~!
メイ「うぅっ!」
魔王「育児なんて楽! 仕事の方が大変だから~!」「母親なんだからこれくらいできるでしょ~?
メイ「あぁぁっ!?」

メイも倒れる。

ポコ「メイさぁん!?」
ベラ「なんてひどい攻撃!」
魔王「他愛もない!」

しかしメイが、力を振り絞って立ち上がる。

メイ「これくらいの攻撃…… もう私には、通用しません!」
魔王「なぜだ!?」

(モブ『子供がかわいそうでしょ?』『育児って女の仕事じゃん』『母親なんだからさ~』『母親なのに?』)

メイ「夫で慣れましたから!!」

(モブ『主婦はいいよな~』)

クウカイ「ここに来てモブさん、役に立ったじゃないスか!」
ベラ「なんだかね……」
メイ「魔王。私はもう、こんなことくらいじゃ負けませ──ん!!」

メイが魔法を放ち、側近が消滅する。

ベラ「よしっ!」
クウカイ「あとは魔王だけっスね!」
ポコ「一気に行こう!」
メイ「行きます!」
魔王「待て! メイ。その前に、お前に渡したいものがある。きっと気に入るぞ」
メイ「渡したい物……?」

魔王の手に、光輝くアイテムがある。

魔王「これをくれてやろう。『セーブポイント』だ」

なんばんのぼうけんのしょに きろくしますか?
1:めい 2010.06.01 じょうかまち
2:めい 2020.03.10 じょうかまちのはずれ

ベラ「世界の情報を記録し、そこまで時間を戻すことができる、幻のアイテム!? なんであいつが持ってんの!?」
クウカイ「マジっスか!?」
魔王「ここには、貴様が子を授かる前の世界の情報がセーブされている。これをロードすれば、子供を産む前の時間に戻れるのだ」
メイ「……」
魔王「今の貴様は、哀れなほどに弱い! 我を封印したあの頃とは、比べ物にならないくらいにな。何が貴様を弱くした? 答は、もうわかっているはずだ」
ベラ「メイ、これは罠だよ。耳、塞いで!」

メイは虚ろな目で、魔王の言葉にとらわれている。

メイ「子供がいなかったら…… 私は……」
クウカイ「ヤバ! メイさん、声、届いてないっスよ!」
魔王「さぁ── やり直そうじゃないか」

メイが魔王のもとに手を伸ばすと思いきや、その手を引っ込める。

メイ「使いません!」
魔王「何っ!?」
メイ「子供がいなかったら、今の私はいません! 今の私にしかできないことがあります!」
魔王「……」
メイ「歌える子守唄だって増えたし! ご飯の途中に、うんちおむつだって替えられます!!

メイの言葉が攻撃となって、魔王に痛烈に突き刺さる。

魔王「うぅっ!! うっ…… なんだ!? 攻撃が…… 心に響く!?」
ベラ「あれ? なんかこれ、効いてる?」
クウカイ「あいつ、いい奴だ!」
メイ「8キロの娘を抱えながら、5キロのお米だって持てます! どんなに泣かれても暴れられても、娘を着替えさせるスピードは誰にも負けませ──ん!!
魔王「うぅっ!! うぐっ、ぐぐっ……」
クウカイ「何、この戦い?」
ポコ「超恰好悪い……」
魔王「後悔は…… 無いと、申すのか……!?」
メイ「これが、今の私なんです!!」


翌朝

戦場跡で、ベラは炊き出し、ポコは重傷者の搬送、クウカイは負傷者の治癒を手伝っている。

ポコ「よいしょ! 1・2…… はい、すいませ~ん」
クウカイ「今、治しますからね~」
ベラ「一皿で大丈夫ですか? はい、どうぞ」


カトウが国王に、戦況を報告する。

国王「本当かぁ!?」
カトウ「はい。メイさんたちの徹底抗戦により、魔王軍は撤退いたしました!」
大臣たち「おぉっ!」
カトウ「建造物には甚大な被害が出たものの、避難が早かったおかげで、幸い死者はいないようです!」


メイは避難民の行き交う中、モブを捜し回る。

メイ「モブくぅ──ん! モブくぅん!」

自宅へ駆け込む。

メイ「モブくん!」

無数の護符の貼られたベビーサークルの上で、モブが布をかぶって、眠っている。
さつきがその下で、モブに守られているように寝ている。

メイ「モブくん…… ありがとう」
モブ「……メイ!? お前、大丈夫か?」
メイ「うん……」

モブの片手に、ゲーム機がある。

メイ「フフ…… なんでゲームやってんの?」
モブ「いや、いつ魔族が来るか怖くて、気を紛らわすために……」

メイが泣き崩れる。

モブ「え!? え、え、ごめん! ゲームやめるから!」
メイ「うぅん…… モブくんがこの子を守ってくれてたのが、嬉しくて…… 昨日は…… ごめんなさい」
モブ「いや、俺の方こそ…… やっぱりお前は、外に出て戦うべきだよ。子育てなんかしてる場合じゃねぇよ」
メイ「違うよ。子育て『なんか』なんて、言わないで。モブくんがこの子を守ってくれてたから、私は戦いに出れたの。私は、モブくんと一緒に、魔王を追い払ったんだよ」

メイが、モブの手をとる。

メイ「これからも…… 一緒に戦ってほしい」
モブ「……俺でいいのかな?」
メイ「いっぱいいっぱい、同じことで悩んで、同じことで喜びたい。モブくんじゃなきゃ、駄目だよ」

モブがしっかりと、メイの手を握り返す。

モブ「俺、すっげぇ──弱いけど…… がんばるよ!」

さつきが目覚め、愛らしく笑っている。

メイ「さっちゃ~ん! ただいまぁ!」
モブ「さっちゃん、お母さん帰ってきたよ。おかえり~!」

夫が仲間になった


数か月後

伝説のパーティーが
再び魔王討伐の旅に出る日を迎えた

王城で、パーティー再出発の祝宴が開かれている。

カトウ「また、お集まりいただき、ありがとうございます」
メイ「いよいよですね!」
ポコ「ついにこの日が来たね」
クウカイ「マジで、ようやく伝説、作れるわ」
ベラ「ってかさぁ、あの旦那がちゃんと、母親代りできるようになるとはね~」
メイ「母親代りじゃなくて、父親ですよ」
ベラ「……そうだね」
メイ「はい!」


メイたちパーティーが、王城一同の万歳三唱を浴びて、新たな魔王討伐の旅に出る。

モブ「お──い! おぉい! 行ってらっしゃい!!」

モブが笑顔で、手を振って見送る。
さつきもモブに抱かれ、小さな手を振っている。

メイが笑顔で、大きく手を振って応える。

メイ「行ってきま──す!!」



(カトウのナレーション)

いくつもの困難を乗り越え
彼女たちは再び、旅に出る。

伝説には、こうある。

かつて、魔王を封印した人々がいた。
あらゆる情報に精通し、世界を見通すシーフ。
巨人の鉄槌が如く、大剣を振り降ろす戦士。
神の声を聴き、傷を癒す僧侶。
そして── 史上最強と謳われた魔法使い。

彼女の生き方は人々に支持され、
国の政策にも影響を与えた。

国を生まれ変わらせた彼女は、
親しみを込めて、こう呼ばれた──




伝説のお母さん

The End




ぼうけんのしょに きろくしますか?

なんばんのぼうけんのしょに きろくしますか?
▶1:めい 2010.06.01 じょうかまち
2:めい 2020.03.10 じょうかまちのはずれ

ほんとうにデータをうわがきしますか?
▶はい
いいえ

なんばんのぼうけんのしょに きろくしますか?
▶1:めい 2020.05.05 じょうかまち
2:めい 2020.03.10 じょうかまちのはずれ

おつかれさまでした。
リセットボタンをおしながら
でんげんをきらないで
チャンネルはそのまま。


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最終更新:2020年04月09日 20:04