「私は科学者だが宇宙のことは専門じゃないし、あまり興味もなかった。
しかし、ある日、なんと宇宙人に出会ってしまったのだ」
「それは10年ほども前のこと。その宇宙人は広い広い銀河の彼方から宇宙船を飛ばし、目的の星である地球へあとほんのわずかにまで迫っていた。しかし・・・・・」
宇宙船が進む方に、月があった。
宇宙人「あっ!!」
「ま、まずい!!」
宇宙船は軌道を変えたが、突き出た岩にぶつかってしまった。
宇宙人「ひいっ!!」
「あああ―――――っ!!」
宇宙船は地球の方へと落ちていった。
「そしてここはわたしがたったひとりで住んでいる小さな地球の小さな島である・・・」
その島では、大盛徳之進老人がある装置の実験を続けていた。
大盛「・・・くそ・・ダメか・・・、・・・・・また失敗だ・・・・・」
大盛が「大盛飯子」と刻まれた墓に花を備え、手を合わせた。
大盛「・・・・・・」
やがて日が沈み、大盛は夕飯を食べながら、テレビを見ていた。
キャスター「・・・はじめのニュースはこちから。スーパーアイドル、葉月アンさんを乗せ・・・地球を2周する予定のロケット『キラキラ8号』の打ち上げまで・・・・」
「いよいよあと3日となりました。それでは、葉月アンさんに現在の心境をきいいてみましょう・・・いかがですか?」
アン「もお、すっごくわくわくしてますぅ♡宇宙で歌うのがこどものきとからの夢だったんですぅ♡」
大盛はテレビを消した。
大盛「くだらん・・・・・」
大盛は縁側でタバコを吸いながら雑誌を読んでいたが、何かが落ちる音を聞いた。
大盛「なんの音だ?・・・・こんなところを飛行機か?」
「え!?」
あの宇宙船が墜落してきた。
大盛「な・・・・・・なんだ!?」
宇宙船が海に落ちた。
大盛「お、落ちた・・・落ちたぞ・・・・!!たいへんだっ!!」
大盛が船着き場に向かった・
大盛「まずいな、もうずいぶん暗い・・・・オバケ鮫が動き出すから船を出せんぞ・・・・・」
海から巨大なサメのヒレが出ていた。
大盛「出た!!やっぱりだ!!食われるぞ、かわいそうに・・・・・」
「ん!?」
宇宙船が浮かび上がり、船着き場の方に進む。
大盛「え?・・・・・・」
宇宙船が船着き場に着いた。
大盛「・・・・・」
海から、宇宙船を持ち上げる小柄な宇宙人が出てきた。
大盛「な・・・・・・」
宇宙人が宇宙船を置いた。
大盛「・・・・・・」
宇宙人「ふうっ」
大盛「おい!」
宇宙人「!」
「なんだ、おまえは!ここでなにをしている!!」
大盛「それはこっちのセリフだろ」
宇宙人「なるほど・・おまえ地球人だな?」
大盛「地球人?・・・・・」
宇宙人が靴を脱いで、入った砂を出す。
宇宙人「ちかくにこの島があってとても幸運だった」
大盛「よくオバケ鮫から逃げ切ったな」
宇宙人「なんだ?そいつは」
大盛「さっきあんたが海で食われそうだった巨大な鮫だよ」
宇宙人「大きな生物が追いかけてきたのは知っていたが、悪いヤツだったのか?」
大盛「夜の間は大きな船だって近寄れないほどのおそろしい怪物だ。ところでかわった飛行機だな、あんた外国人か?」
宇宙人「外国人なわけないだろ、わたしは宇宙人だ」
大盛「え!?なんだって?」
宇宙人「ただし、ただの宇宙人だとおもったら大マチガイだぞ。わたしは、銀河の平和を守る、選ばれし超エリート・・・・・」
「銀河パトロール隊員だ!!」
大盛「・・・・・・・・・・・・あ・・そう・・・・・・」
「・・・とにかく宇宙人でもなんでもかまわんから、さっさとこの島から出ていってくれ!」
宇宙人「そうはいかない。宇宙船がこわれてどこにも行けないのだ」
大盛「態度がでかいな。ふん、なにが宇宙船だ」
宇宙人「これはこまった!無線機も食料庫もビデオもなにもかも使えない!」
大盛「・・・・ふう・・・しょうがないから、みてやろう。修理がすんだらすぐに出ていってくれよ、わたしは人間が嫌いなんだ」
宇宙人「メカにくわしいのか!?」
大盛「工学博士だ・・・・・・」
宇宙人「おお!なんという幸運!さすが超エリートは運にも恵まれている!」
大盛が宇宙船を見てみた。
宇宙人「どうだ?」
大盛「・・・・・・・・え!?・・・・こ・・・これは・・・・・」
「・・・・見たこともないメカだ・・・・・・ま・・・まさか・・・そんな・・・・」
「・・・・・・」
宇宙人「なんだ?」
大盛「・・・・・・ちょっと・・・・・」
宇宙人「え?」
大盛は宇宙人の頬を引っ張った。
宇宙人「な、なにをする!やめろ!」
大盛「マスクでもかぶっているかとおもったら素顔じゃないか・・・・!!」
宇宙人「あたりまえだ!失敬な!」
大盛「ま・・・まさかあんた・・・ほ、ほんとに宇宙人か・・・!?」
宇宙人「ただの宇宙人ではないぞ、わたしは銀河の平和を」
大盛「わ、わかった!超エリートの銀河パトロール隊員だろ?・・・それにしても信じられんよ・・・宇宙人なんて・・・・・・・いったいなぜ地球にきたのかね?」
宇宙人「もちろんパトロールだ」
大盛「パトロールにきてどうして墜落したんだ?」
宇宙人「ちょっと夢中になってビデオをみていたら月にぶつけてしまったのだ」
大盛「超エリートじゃないじゃん」
大盛「やれやれ無線で仲間もよべないのか・・・・・あした明るくなったら故障の原因を調べてみよう。ただし自信はないぞ」
「しょうがないから今夜だけは泊めてやる。この島にはわたしひとりしかいないから、宇宙人がいたって大さわぎにはならない」
宇宙人「それはありがたい」
宇宙人は大盛の家に入った。
宇宙人「原始的な暮らしだ」
大盛「わるかったな・・・・野菜炒めが残っているが食べるか?」
宇宙人「いらない」
「ミルクとチーズを希望する。調査によれば、それがわれわれの食料に近い」
大盛「・・・・・ずうずうしいな・・・・チーズはないが、ミルクだったらすこしあるはずだ・・」
「・・・・しかし、そんなことまで調べてあるんだな。なん回か地球にきてるのか?」
宇宙人「大昔から偵察ロボットを送りこんであり、あらゆる情報が流れてくる。地球にいるハエの10万匹に1匹は、銀河パトロール隊の偵察ロボットだ」
大盛「・・・くそ~~~~、どうやっても退治できないハエはそいつかもしれんな・・・」
宇宙人は、大盛が出したミルクを飲んだ。
宇宙人「ぷはあっ、これはうまい!ほめてやるぞ!」
大盛「われわれの言葉もそいつで分析したのか?」
宇宙人「まあな、文化や歴史まで頭に入れてきたぞ。超エリートならとうぜんのことだ」
大盛「すごいな!すべて記憶したのか」
宇宙人「4時間かけてデータを脳にインプットしてもらった」
大盛「そんなことができるのか・・・・・だったら機械のこともインプットすれば宇宙船の修理ができたんじゃないか?」
宇宙人「ふん・・・そういうのは有料だからな」
大盛「・・・・・・・・・・・・ひとつたずねたいことがある・・・・あんたたちの世界にタイムマシンはあるか?過去や未来に行くことができる機械だ・・・・・」
宇宙人「そんな機械はない。時間のコントロールは危険なので銀河法で禁止されている」
大盛「・・・・・・そうか・・・・・」
宇宙人「なぜだ?」
大盛「いや・・・・きいてきただけだ・・・・・・」
大盛「客なんてきたことないからな、座ブトンをしいて寝てくれ」
宇宙人「がまんしよう」
宇宙人はユニフォームを脱いだ。
宇宙人「そういえばおまえ名前はあるのか?」
大盛「あるに決まっている。大盛だ」
宇宙人「オーモリ?くす・・・・」
大盛「・・・・なんだ」
宇宙人「オーモリというのはわれわれの星では、会話中についポロリと落ちてしまったハナクソのことだ」
大盛「・・・・・・・よくそんなどうでもいい単語があるな・・・で、あんたの名前は?」
宇宙人「これは失礼、わたしの名前は選ばれし超エリート、銀河パトロール隊員にふさわしい・・・」
ジャコ「ジャコ!」
大盛「・・・・・・・ふん、むかしとなりの家が、そういうおいしそうな名前の犬を飼っていたよ」
大盛「じゃあな、わたしはむこうで寝る」
ジャコ「おやすみ、オーモリ」
しばらくして、ジャコが起きた。
ジャコ「う――――ん」
ジャコは座ふとんを畳み、ユニフォームを着て、そして海に飛び込んだ。
海の中には巨大なサメがいた。
ジャコ「おっと!こいつがオバケ鮫だな」
オバケ鮫はジャコに向かってきたが、ジャコのパンチがオバケ鮫の頭を打ち据えた。
翌朝。
大盛「ふあ~」
大盛が目覚めた時、ジャコはテレビをみていた。
大盛「・・・・・・おい、ずっと寝ないでテレビをみていたのか?」
ジャコ「30分眠った、それでじゅうぶん。それに島を走りまわった、読書もした、パトロール隊のテーマソングも歌った」
「オバケ鮫という怪物も退治しておいた」
大盛「絵!?それは宇宙人的なつまらないギャグかね?」
ジャコ「海を見てみろ」
海には、倒されたオバケ鮫が浮かんでいた。
大盛「あっ・・・・!!ほ、ほんとだ・・・!どうやったかしらんが、す・・・・すごいな」ジャコ「恩を売って宇宙船をなおしてもらう」
大盛「・・・ふん、ジャマなヤツは退治というのは野蛮な考えだ・・・・・・まあ、たしかにちょっと助かるが・・・・」
ジャコ「それにしてもテレビのニュースは原始的なロケットとアイドルのことばかりだな」
大盛「ふん、バカバカしい話だ・・・宇宙局は資金集めと話題作りのために、ろくに訓練もしていない人気アイドルを乗せてロケットを打ち上げるつもりだ」
大盛とジャコは朝食を食べた。
大盛「・・・さて、宇宙船をみてみるかな」
ジャコ「そういえばあっちにある、こわれた建物はなんだ?」
大盛「・・・・・・・あれは、研究施設の跡だ・・・昔、この島では政府の要求でタイムマシンという途方もない機械を開発していた・・・わたしの研究理論に注目した政府が資金を出し、この島で極秘に多くのスタッフとな・・・」
「開発責任者であるわたしは妻もよびよせてこの島で一緒に住むことにした・・・・そうじゃないとことわると言ったから・・・・妻はここがとても気にいってたよ・・・・
不便だが空気も自然もすばらしいうからね・・・・・」
「ところがある日、助手のひとりが高圧ガスの管理をミスして大事故が起こった・・・・・多くの犠牲者を出してしまったよ・・・・わたしはケガだけですんだが・・・・・妻はダメだった・・・・」
「その事故で研究もこの島も見捨てられたが、わたしだけは残ることにした・・・・・妻の墓とともに・・・・・」
ジャコ「おい!この動いているのはなんだ!?」
大盛「・・・・・・・・・・フナムシだ・・・・・」
大盛とジャコは、宇宙船の元に来た。
ジャコ「だからタイムマシンのことをたずねたのか。昨夜も言ったが銀河法で時間のコントロールはきびしく罰せられる。結果的に完成しなくてよかったな」
大盛「・・・・・まあな・・・・・・・冷静になって考えればわかったことだが・・・・・どうやら政府はよからぬことに利用するつもりだったようだ・・・・
残念ながらこの地球にはろくでもない連中が多すぎるよ・・・」
「・・・・・・うむ、どういう原理かはさっぱりわからんが、どうやらすべての動力の根本部分がすこしこわれただけのようだな」
ジャコ「修理できるか?」
大盛「それはわからん」
ジャコ「それにしても地球人は情報どおりかなりダメな生物のようだな。せっかく助けにきてやったが、どうやらその価値はなさそうだ」
大盛「助けに?」
ジャコがアクションを交えながら、説明しだした。
ジャコ「本部のレーダーが凶悪な宇宙人の星から飛行物体の発進を捉えた!そのルートと速度を計算したら3日後の午前10時頃、地球のこのあたりにやってくることがわかった!飛行物体にはおそろしい宇宙人が乗っている!そいつを倒して地球人を救うのが本当の任務である!」
大盛「・・・・・・・・いまのアクションはなんだったんだ?」
ジャコ「セリフがながいので動きで変化をつけてみた。と、いうわけで救ってやるつもりだったが、地球人のオーモリさえあきれるほどおろかなようだな」
大盛「ああそのとおり!わたしが人間嫌いなのもとうぜんだ!」
「強欲!暴力!嫉妬!かんたんなルールやマナーさえ守れないバカが・・・・」
ジャコは腰のポーチから、小さなカプセルを取り出した。
ジャコ「こいつを使うか。凶悪宇宙人と地球人との争いで自然を荒らされるよりずっといい」
「これは絶滅爆弾だ。このスイッチを押して爆発させればウイルスが飛び散って、地球から人間だけが絶滅していなくなる」
大盛「え!?人間だけが絶滅!?」
「そ、そりゃいかん!ぜったいにいかんよ!ちょっとおおげさに言ったけど、いい地球人だっていっぱいいるんだからさ!」
ジャコ「まあとりあえず、もうすこしだけ観察して判断するか。でもイラッとしたらすぐにスイッチを押すかも」
大盛「言っておくが、そいつを使ったらわたしまで死んで宇宙船はなおせなくなるんだからな」
ジャコ「なるほど・・・・・・じゃあそれまで待つか・・・・・」
(続く)
最終更新:2020年05月07日 19:03