「「戦車道」、それは世界中の女子の嗜みとして受継がれてきた―――伝統的な文化であり「武道」です」
「鉄のように熱く強く―――履帯のようにカタカタと愛らしく――――そして大砲のように情熱的で――――狙えば絶対外さない」
「そう、戦車道を学ぶ事により、乙女に必須の徳目が自然とその身に備わるのです」
「そして健康的で優しく――――たくましいあなたは――――必ずや殿方からも好意を持たれる事でしょう」
「―――さあ、皆さんもぜひ戦車道を学び、心身ともに健やかで美しい女性を目指しましょう」
そんなプロモーション映像を見ている生徒達の中に、秋山優花里はいた。
好子「優花里ちゃん今日は早いのね」
優花里「だって今日は戦車道の授業の日だからっ!わたしの電撃戦がごとき浸透戦術でしっかりと皆をフォ・・・・」
好子「ハア---、優花里ちゃん外でそういう事あんまり言っちゃ・・・」
優花里「うっ・・・イッ、イエスマムッ!!」
優花里「じゃ、じゃあ行ってきますっ」
優花里は実家の秋山理髪店から出た。
優花里(桜の花咲く季節――――今日からわたし――――秋山優花里の――――)
(戦車道が始まります)
みほ「秋山さん、おはよー」
優花里「あっ、西住みほ殿っ!?」
(わたしの憧れ、西住みほ殿☆)
優花里「おはよ、おはようございますっ!」
優花里は敬礼しながら、挨拶した。
優花里(―――あの日、)
杏「とりあえず何人かでチーム組んでみて―――」
優花里(初めての戦車道の授業の日・・・)
みほ「良かったら一緒に探さない?」
優花里(西住殿は1人だったわたしに声を掛けてくれた・・・西住殿は、一人ぼっちだったわたしの、最初の友達になってくれた「)
みほ「秋山さん、今日は明るいね」
優花里「いよいよ教官をお招きして、初の本格的な授業ですからっ!!第2次ドイツ軍の主力、Ⅲ号戦車に乗れるっ!!」
「わたしこの前のオリエンテーションの日っ!!」
みほ「「戦車道」入門の?」
優花里「あの日から早く今日が来ないかなって、楽しみにすてたんですっ!!」
みほ「そうですか・・・・」
優花里「あれっ?」
沙織「そっこの彼女たちィ~~~~~~」
「おっはよーっ!!」
沙織、華、麻子の3人が来た。
優花里「おっはようございます!!武部沙織殿!五十鈴華殿!!冷泉麻子殿!!!」
沙織「いや、敬礼はいいよ。あと沙織って呼んで・・・フルネーム・・・・」
華「お二人ともごきげんよう」
みほ「おはよう、華さん、沙織さん。冷泉さんも・・・」
麻子「・・・・つ・・・・・つらい・・・生きてるのが・・・」
「・・・お、おはよう・・・・」
みほ(ワンテンポ遅れたっ!?)
沙織「ねーねー、今日って超イケメンの教官が来るんでしょーっ!?」
優花里(武部沙織殿、かわいくていつも明るい、まさに恋多き乙女といった感じの方です。恋愛トークのネタが豊富で感心しっぱなしです)
華「イケメンって・・・沙織さん何を期待してるんですか・・・?」
優花里(五十鈴華殿、常に落ち着いていて物腰のやわらかい、大和撫子を絵に描いた様な方です。すごくきれいでうらやましいです・・・・)
麻子「朝はつらい・・・朝はつらい・・・」
優花里(冷泉麻子殿、無口で沈着冷静な方ですが朝に弱いみたいです。現在、学力と遅刻回数の両方で首位を独走中です。わたしも冷泉殿くらい頭が良かったらなぁ)
「冷泉殿、今日の午後の戦車道まではがんばってください」
麻子「遅刻援助のためがんばる・・・・」
沙織「わたし声掛けられちゃったりしてさー、楽しみ-!」
優花里「ハハハ・・・・」
優花里「ついに午後は戦車道の授業ですねっ!待ちにまった―――」
沙織「ゆかりんはりきってるねー」
優花里「ゆ、ゆかりん?」
華「いよいよ本格授業ですね」
みほ「ですね-」
優花里「ゆかりん、初めてのあだ名・・・・」
沙織「秋山さん歩くの速い~おーい」
優花里「わ、わたしのあ、あだ名・・・・」
優花里「ほわっ、ほわぁぁあぁ」
「キャ~~~~~~!Ⅲ突カワイイ~!」
「M3リー!3段砲塔カッコイイイイ!!」
「八九式は鋲打ちがたまらないいいいいん♪」
「そしてっ!愛しのDちゃあああんっ!!あ~~、30ミリの装甲が・・・」
みほ達は、そんな優花里を呆然とした様子で見ていた。
優花里(しまったああああああああ!!!!)
「す・・・・・すいません」
沙織「秋山さん、戦車の前だとすごいイキイキしてるよね・・・・」
華「戦車っていっても色とりどりなんですね。形もすべて違っていて・・・・」
優花里「校内各所で眠っていた車両のかき集めですしね・・・」
沙織「そう?わたしには全部一緒に見える――――」
優花里「ち、違いますっ!全っ然違うんです!」
沙織「おおっ!?」
優花里「装甲の厚さによる設計!砲身の口径や砲身長!使用する砲弾の種類!」
「車体においては転輪の数と重さ!サスペンション!エンジンの配置っ!
「何から何まで、どのコもみんな個性だらけ!さらには動かす人っ!整備する人によっても、その顔は変わるんですっ!」
「「撃って」、「走って」、「守る」。戦車の定義はこの単純な3つの特徴だけなのに、実にたくさんの車輌があって、そのどれもがまったく別物なんですっ!」
華「分かります、華道もそうです」
「花ひとつとっても、花弁の色や形・・・・またその花が生まれた場所・・・気候や土地による違い、その種類は実にさまざまです」
「その上で活ける人がどの花を使うのか・・・・そして同じ花でも人が変われば、彩りは変わる」
「花器に飾られた花にも、まったく別の世界が宿る――――」
優花里「なるほど・・・戦車道や華道の「道」って似てますね」
華「そうですわね」
沙織「さすが華道の家元が言うと違うわね~」
優花里「えっ!?」
華「いえ・・・実家がそうなだけです・・・・」
みほは浮かない顔をしていた。
沙織「うんうんっ♪女の子だって、美人じゃなくても胸が小さくても目鼻立ちが違っても、それなりの良さがあるしねーぅ!!目指せ「モテ道」!」
優花里「うわーっ」
麻子「・・・沙織が話すと話がおかしな方向に向かう・・・・」
沙織「失礼ねっ!別に変な事は言ってないもんっ!」
みほ「アハハハ・・・・」
優花里「あとは生徒会の方たちだけですね」
沙織「ちょっと遅いんじゃないの~」
華「何かあったのでしょうか?まさか!ご家族に不幸とかっ!?」
沙織「いや・・・華は話が飛躍しすぎ・・・・」
そう言ってた所へ、38(t)戦車が突っ込んでいた。
みほ「え?」
沙織「ドリフトっ!?」
38(t)から、生徒会長角谷杏、副会長小山柚子、広報河嶋桃が出てきた。
杏「やーやー、戦車道履修の特典にむらがって来たウジ虫野郎どもーっ!!!!お前ら最高だぜーっ!!!」
柚子「ぶつけずにすんだ・・・・」
桃「やらせる方もやる方もヒドイ・・・・」
柚子「角谷会長!「つっこめ!」とかいいかげんにしてくださいっ!ひきますよっ!」
華「か、会長さんと生徒会の皆さん、ご・・・ごきげんよう・・・・」
優花里「あわわ、第7装甲師団の主力戦車になんて無茶な機動ヴォっ!?」
沙織「ヴォ?」
杏「どっこいしょ・・・・諸君!今日はよく集まってくれたっ!じゃあ河嶋、あとはよろしく~」
桃「本日から教官に入っていただいての本格的な授業の開始となるっ!部活の再起!単位の獲得!遅刻回数の・・・
優花里(――――今までわたしはずっと一人ぼっちだった・・・)
(昔から戦車が好きで――――最初は楽しくて――――)
(でもいつしか自分の周りから・・・)
(みんな離れていって・・・・)
(長い1人の時間・・・)
(だけど去年のある日――――西住殿を見た。戦車道をやっている西住みほ殿を!)
(そしてここ、大洗女子学園での戦車道復活)
みほ「一緒にやらない?」
沙織「秋山さんよろしくっ!」
華「よろしくお願いします」
優花里(今―――わたしは1人ではなくなった。皆と戦車道がやれる―――やっていけるっ!)
桃「――――気を引き締めて、今日からの授業に臨んでほしいっ!」
柚子「教官が来られるまでは整列して待機ですー」
杏「という事でよろしくーっ!」
杏「ねむい・・・」
柚子「まだいらっしゃいませんね・・・・」
桃「もう来られてもいい頃なのだが・・・・」
優花里「あ・・・・」
みほ「!?」
沙織「何の音?」
カエサル「敵襲かっ!?」
飛行艇が飛んできて、そこから1台の戦車が降下してきた。
沙織「何か出た?」
その戦車は、近くの駐車場に着陸した。
優花里「え?何!?」
杏「お――――スゲ~~~~」
柚子「学園長の車・・・・」
その戦車は車をなぎ倒しながら、みほ達の元へ来た。
戦車のキューポラから女性教官が出てきた。
亜美「皆さんこんにちはーっ!」
桃「紹介しよう。我が校の戦車道特別講師」
亜美「陸上自衛隊戦車教導隊の蝶野亜美1尉ですっ!戦車道は初めての方が多いと聞いていますが一緒にがんばりましょうね~」
「よろしくお願いします!」
沙織「騙された・・・生徒会め・・・」
みほ「まーまー」
優花里「カッコイイ・・・」
亜美「さて、今日はさっそく練習試合をやってみましょう♪」
優花里「え?」
柚子「あの・・・蝶野教官いきなりですか?」
亜美「大丈夫よっ!戦車なんてバーッと動かしてダーッと操作してドーンと撃てばいいんだからっ!!」
「団体戦は全ての車両が動けなくなるか、もしくは根拠地を奪われた者が負け。つまりガンガン前進してバンバン撃って、やっつけるか奪うかしちゃえば勝ち!わかった?」
杏「ずいぶんざっくりでうSね0」
柚子「いや、会長に言われたくないんじゃ・・・」
優花里「何て、分かりやすい説明・・・」
亜美「じゃあ全員整列っ!戦車道は礼に始まり礼に終わる、一同礼!」
1年生 Dチーム M3中戦車リー
華「大きな戦車ですねー」
優花里「アメリカの戦車で3つも砲塔があって「動く要塞」って言われてるんですよ!イギリス仕様の「グラント」って姉妹車輌もあるんですよっ!」
歴女 Cチーム Ⅲ号突撃砲E型
沙織「こっちは頭が無くてカワイイね」
麻子「さっきのと比べて背が低いな・・・」
優花里「第二次世界大戦中、戦車キラーとして大活躍したんですよっ!砲塔を無くすKとで強力な砲を載せられるようになったんですっ!」
バレー部 Bチーム 八九式中戦車甲型
華「なんかボッチがいっぱいありますケド・・・」
優花里「日本初の国産戦車なんですよっ!!13トンという軽量で鋲接組み立てになってます!!」
生徒会 Eチーム 38(t)軽戦車B/C型
沙織「生徒会のヤツらの戦車ねっ!」
麻子「一番小さいな・・・」
優花里「確かにこの5台で最軽量の9・5トンなんですよっ!名前に(t)はチョコ=スロバキア製を意味しますっ!!」
優花里達は自分達の戦車に乗った。
「んしょ」
華「わぁ・・・・上からだと景色が変わりますね」
優花里「戦車の車体の分だけ高さが変わりますから」
華「気持ちいいですね」
沙織「なんかさー、このまま街に行けばそこら中のイケメンがソッコーで見つかりそうよね☆」
華「沙織さん、それはどうでしょうか・・・」
優花里「アハハ・・・」
優花里(いよいよ・・・わたしたちの戦車道が始まるっ!)
Aチーム Ⅳ号戦車D型
沙織「華、気をつけて―――」
華「降りるのちょっと怖いです」
みほ「大丈夫?華さん」
麻子「酸素が少ない・・・」
亜美「じゃあ各チームそれぞれ役割を決めてください。3名のチームは車長と操縦手、砲手。4名のチームはそれに加えて通信手、5名ではさらに装填手もね!」
沙織「じゃあ経験者だからみほ!車長よろしく!」
みほ「えっ!?」
優花里「ですよねーっ!」
みほ「いやいや!ムリムリムリ~~~っ!」
優花里「アレ?」
華「ええと・・・わたし操縦手をやってみたいと思うのですが・・・・」
沙織「わ、わかった-、じゃあ他どう決めよっか?」
みほ「では-」
沙織「フムフムフム―――」
優花里「西住殿・・・」
役割決定!
優花里(戦車長、武部沙織殿)
沙織「暑い・・・・狭い・・・」
優花里(操縦手、五十鈴華殿)
華「鉄臭いです・・・」
優花里(通信手、冷泉麻子殿)
麻子「酸素・・・・」
優花里(装填手、西住みほ殿。砲手、わたし秋山優花里となりました。い、いよいよ戦車を動かす時がっ!)
亜美「決まったー?じゃあ発進するわよー!全戦車パンツァー・フォー!」
沙織「パンツの、アホ-?」
みほ「パンツァー・フォー・・・・「戦車前進」って意味なの」
優花里(やっぱり西住殿はさすがですっ)
優花里(ついに・・・)
華「あの、どうやって動かせば?」
みほ「まずイグニッション入れて」
優花里(戦車が動く)
華「これですか?」
Ⅳ号が起動し――――
優花里「!」
「YAAAHOoOOHHHH!」
沙織「人が変わった・・・・」
優花里「はっ!?」
(あ・・・・)
みほ「パンツァー・・・ハイ・・・」
優花里「す、すいません」
1年生 Dチーム
「あっ、今ネットに書き込みあったー、左折するには―――」
「お尻がブルブルする~」
「聞こえない~」
生徒会Eチーム
桃「会長!快調に進んでますっ!」
杏「ざぶとん一枚~~~~♪」
バレー部 Bチーム
「木がっ!」
「バックトス」
「意味が分からないよ~」
歴女 Cチーム
「前進前進、また前進!」
「曲がれない!」
「フェスティーナ・レンテ!(急がば回れ)
Aチーム
沙織「ちょ・・・・ちょっと!」
「ぶつかる――――っ!左!左ィっ!!」
「きゃ~~~~!!」
沙織「左って言ったのに~っ!」
華「すみません、聞こえなくて・・・」
優花里「武部殿、そこは車長が足で方向を合図するんですよ」
沙織「足で?そんな方向があるんだー」
みほ「えっとね・・・・操縦手の肩を進む方向に蹴るんだけど・・・」
沙織「そんな事できないよ~」
みほ「えっ・・・でも聞こえないから何かで合図を・・・」
沙織「仕方ないな~それじゃ・・・えいっ!!」
意を決して沙織が足を出したが、華に届かなかった。
沙織「ちょっと足届かないじゃないいいっ!!」
優花里「あ、すいません、足で合図するのは日本の戦車の場合でした・・・エヘヘ・・・」
みほ「と、とりあえずこの棒で合図して下さい・・・」
沙織「もーっ!」
沙織「ここがわたしたちのスタート地点なの?みほ」
みほ「うん」
優花里「いっ・・・いよいよ攻撃開始ですね」
沙織「・・・って、どこを攻撃すれば?」
優花里「と・・・とりあえず撃ってみます?」
みほ「え?闇雲に撃っても敵チームにこちらの位置を教えるようなものだから・・・」
沙織「生徒会チームはここかあ、よし!真っ先に生徒会潰さない?」
麻子「なぜ?」
沙織「だって、教官女の人だったんだもん」
華「沙織さん・・まだ言ってるんですか・・・」
沙織「わたしが決めていいんでしょっ!?戦車長だもんっ!」
みほ「う、うん・・・」
優花里(武部殿・・・そんなのでいーんですか?)
沙織「じゃー、生徒会チームのいる方へ前進!」
優花里「何だかな~」
Ⅳ号が進みだした所へ、側に砲撃が来た。
華「きゃぁああああっ」
沙織「何?何が起きたのっ!?」
みほ「2時の方向、敵戦車!」
「八九式っ!」
「バレー部チームっ!?」
みほ「ハッチ閉じて、中入って!」
優花里(すごい衝撃波だ!)
八九式が再度、砲撃してきた。
沙織「また来る~~~~!頭引っ込めて!」
沙織「もうやだ~~~~逃げよ~~~~」
Ⅳ号は逃げるも、八九式は追ってきた。
沙織「追ってきてるっ!!」
みほ「前方11時!」
優花里「あっ」
Ⅳ号が進む方に、Ⅲ突が出てきた。
沙織「えっ!?挟まれた!?」
華「ど、どうすれば」
沙織「あっちに逃げよ!」
華「聞こえません!」
沙織が棒で華の肩を突いた。
沙織「右斜め前っ!」
華「ん・・・・」
優花里「五十鈴殿っ!前に逃げて—っ!」
沙織「どーしたらいいのーっ!?」
逃げるⅣ号を、八九式とⅢ突が砲撃しながら追いかける。
沙織「ああああああああ、もうやだ—っ!」
みほ「落ちついてっ!」
優花里(わたしたちどうしたらいいの~!?)
(続く)
最終更新:2020年06月27日 18:36