タイガトロンが雪山を歩いていた。
タイガトロン(拙者が剣の道をこころざしてから、どれだけの年月が流れ去ったのか)
(剣とは何か、サムライとはいかに生きるべきか。いまだ答えが見い出せぬ)
(だが、そんなことは今はどうでも良い。内なる声に身をまかせるのみ)
(すなわち・・・・)
(サイバトロン斬るべし!!)
タイガトロンは記憶を失っていた事に付け込まれ、タランスに洗脳されていた。
そこへ、恋人であるエアラザーがやって来た。
エアラザー「タイガトロン様!!」
「私です!エアラザーでございます!」
タイガトロン(エアラザー!?)
タイガトロンは、愛刀「虎鉄」を振り抜いたが、
その一撃はエアラザーに当たらなかった。
タイガトロン(はずした・・・・!?)
エアラザー「タ・・・タイガトロン様・・・・・?」
タイガトロン「えやああああ・・・・!!」
「けええっ!!」
タイガトロンは「虎鉄」を幾度となく振るい、エアラザーはその斬撃をかわしていく。
エアラザー「どうなされたのタイガトロン様、なぜ私をお斬りになろうとなさるの!?」
タイガトロンの動きが止まった。
タイガトロン「なぜ剣気がにぶる・・・・?もう一つの本能がジャマを?」
エアラザー(この目の色・・・この方はタイガトロン様であってタイガトロン様ではないわ。まるで何かにとりつかれているよう・・・・)
「スキャンスコープ!」
エアラザーはスキャンスコープでタイガトロンの内部を透視し、頭の中にあったデストロンマークの付いた蜘蛛を見つけた。
エアラザー「!」
「見つけたわ、デストロンのコントロールユニット!あれを取りのぞけば・・・」
(タイガトロン様・・・このエアラザーが命にかえてもお救いしてさし上げます!!)
エアラザーはビーストモードの足を元にした小手を装備した。
タイガトロン「エアラザー・・・・・この言葉だ・・・この一言が拙者を迷わせる・・・・」
(武士道をジャマする存在だ!!)
「どおりゃああっ・・・!!」
タイガトロンがエアラザーに飛びかかってきたが、エアラザーはバーニアを向けた。
タイガトロン「!」
エアラザーのバーニアからのジェット噴射がタイガトロンを怯ませた。
タイガトロン「ム・・・」
エアラザー「今だわ!」
エアラザーは右の小手から爪の一つを射出し、タイガトロンの左手の小指にケーブルを絡ませた。
タイガトロン「!?」
エアラザーはそのケーブルを、自分の右手にも絡ませた。
エアラザー「この赤いケーブルは二人を結ぶきずなであり・・・あなたを救うただひとつの手段!」
タイガトロン「ぬう・・」
エアラザー「とどけ私の想い!!」
ケーブルの中を、ビーストモードのエアラザーが飛んでいった。
タイガトロン「!」
そのころ`神殿`探しの任務についてたブラックウィドーたちは・・・・
ブラックウィドー「どこ行ってたっシャ、タランス!」
タランス「いやー雪景色に見とれてたらはぐれちゃったっス」
ブラックウィドー「うまいこといってサボってたんじゃないの?」
「まあいい、これを見るっシャ」
タランス「このエネルギー反応は!」
「メガトロンのいってた`神殿`にまちがいないっス」
タランスは、ブラックウィドーに隠れて銃のサークルエッジを取り出した。
タランス(`神殿`が見つかったらチミにはもう用がないっス)
「ム!」
ブラックウィドー「どうしたっシャ?」
タランス「な・・何でもないっス」
(エアラザーがタイガトロンの電脳空間に入りこんできたっス。それならこっちも・・・・)
タイガトロンに撃ちこんだサイバーケーブルを通じてエアラザーは自らの魂をタイガトロンの電脳空間に送りこんだ!
タランスの`虫`によってゆがめられたタイガトロンの理性プログラムを修復するために!!
エアラザー(この疑似肉体とてダメージをうければ魂にも影響がおよぶ。用心して行かなきゃ!)
物陰に隠れていた、蜘蛛型の量産型TF達が飛び出してきて、
糸を吐いて、エアラザーの疑似肉体を絡め取った。
エアラザー「しまった・・・!」
現実でも、タイガトロンの「虎鉄」の切っ先がエアラザーの眼前に迫っていた。
エアラザー「!」
エアラザーはバーニアで体を沈めて、「虎鉄」をかわした。
タイガトロン「でりゃあああ」
タイガトロンは「虎鉄」を反転させて、振り下ろした。
エアラザーは今度は飛び上がって、かわした。
タイガトロン「おのれ!」
エアラザー「あ・・」
タイガトロンは左手を引いて、エアラザーを引き寄せた。
タイガトロン「しえいっ!」
タイガトロンは「虎鉄」で突いてきたが、エアラザーは「虎鉄」を足場にして、タイガトロンの背後に回った。
タイガトロン「ムッ」
エアラザーはケーブルをタイガトロンの首に巻き付けた。
タイガトロン「ググ・・・・き・・・・きさま・・・・」
エアラザー「おゆるしくださいタイガトロン様!今しばらくのしんぼうです!」
電脳空間では、エアラザーの疑似肉体が、巻き付いていた糸を翼で切り裂いた。
エアラザーは大回転し、量産型TFを切り倒して、先に進んでいった。
タランス「くっ・・・・」
ブラックウィドー「どうしたっシャ、タランス」
タランス(思ったよりやるっスね、あのトリ娘。恋する女はこわいっス。こうなったら・・・・)
「ん?」
ブラックウィドーが右足を絡めて、タランスの首を絞めていた。
ブラックウィドー「さっきからなにコソコソしてるっシャ。また何かたくらんでるっシャ?」
タランス「あ~やめて~、苦しいっス~~~~いうっス、いうっス~」
そのころサイバトロン基地では・・・
ラットル「エアラザー、タイガトロンに会えたかな」
ライノックス「たぶんね・・・愛の力は偉大なんだナ」
ラットル「ちょっと様子見てみよーかな、モニターON!」
ライノックス「よすんだナ、ラットル。二人っきりのとこのぞくなんてヤボなこと」
ラットル「おおっ、これは!?」
ライノックス「えっなに?あの二人なにしてんの!?」
ライノックスがのぞき込んだモニターには、戦っているエアラザーとタイガトロンが映っていた。
ラットル「あの二人が戦ってる!?」
ライノックス「なーんだ。どんな大胆なことしてんのかとドキドキしたんだナ。戦ってるんなら心配ナシ・・」
「・・じゃないんだナ!大変なんだナ、コンボイ!」
タランス「ひ・・・」
ブラックウィドーはタランスの首を折り、タランスの頭が落ちた。
ブラックウィドー「恋人同士を戦わせるなんて。デストロンでもやっちゃいけないことっシャ!」
タイガトロンは尻尾をエアラザーの首に絡ませた。
エアラザー「!」
エアラザーは地面に叩きつけられ、そこへタイガトロンが斬りかかってきた。
エアラザー「くっ・・・・」
そこへブラックウィドーが糸を飛ばしてきて、タイガトロンの右手を止めた。
ブラックウィドー「情けないっシャ、タイガトロン!」
「たとえ記憶をうしなっているとて、たとえ・・・洗脳されているとて、愛する女に手をかけるようなヤツは男じゃないっシャ!」
エアラザー「ブラックウィドーさん・・」
ブラックウィドー「なにグズグズしてるっシャ、エアラザー!タランスは倒した、もうジャマはいないっシャ」
エアラザー「ありがとうブラックウィドーさん!」
エアラザーの疑似肉体が、蜘蛛の糸に絡み取られたタイガトロンの元に辿り着いた。
エアラザー「タイガトロン様!今おたすけいたします」
しかし、タイガトロンはニヤリと笑い・・・
エアラザー「!?」
タランスのサークルエッジでエアラザーを撃った。
そして、現実でもタイガトロンがブラックウィドーの糸を千切り、「虎鉄」の一撃でエアラザーを切り裂いた―――――
ブラックウィドー「なにをするっシャ、タイガトロン!?エアラザーはお前の愛した女・・・・・」
「!」
背中を撃たれ、ブラックウィドーが倒れた。
撃ったのは、自分の頭を抱えてきたタランスだった。
タランス「ラブストーリーは好きじゃないっスよ、アタチは」
タランスは頭を戻した、
タランス「しょせん愛なんて幻想っスよ」
電脳空間にいたタイガトロンも、タランスの疑似肉体の変装だった。
タランス「愚かな男と愚かな女のくだらぬ夢芝居にすぎないっス」
「現実に勝利するのは頭に切れるヤツっス。このアタチのようなね、うひゃひゃひゃひゃ・・・」
「ん」
高笑いするタランスの横で、倒れたエアラザーの疑似肉体が輝きだした。
エアラザー「悲しい人ね、あなた・・・」
エアラザーがロボットモードに変形して立ち上がった。
エアラザー「肉体をうしなったおかげでこちらの疑似肉体に魂を集中できたわ」
タランス「く・・しょせん消えかけの魂・・そのかがやきもあとわずかっス!」
エアラザー「あなたをしとめるのぬ・・・・必要なのは、ただ一瞬!!!」
「猛禽旋空斬!!」
エアラザーのバーニアで回転しての翼の斬撃が、タランスを真っ二つに切り裂き、
タイガトロンが正気に戻った。
タイガトロン(・・!!)
エアラザー(タ・・・・タイガトロン様・・・・)
エアラザーの疑似肉体が倒れながら消滅していき、
エアラザー自身も、タイガトロンの胸の中に倒れていった・・・
タイガトロン「エ・・・」
「エアラザ―――――――ッ!!」
エアラザーの亡骸を抱え、タイガトロンは号泣する・・・・・
タランス「ぐわあぁあぁ・・・魂が・・アタチの魂がぁ」
苦しむタランスの元に、コンボイが来た。
コンボイ「おそかったか・・・・」
タランス「コンボイ!!た・・・たすけ・・ヒィッ!!!」
その命乞いは聞き入れられる訳もなく、コンボイのエナジーメイスの一撃がタランスを粉々に打ち砕いた。
コンボイ「再生不可能!」
そして瀕死のブラックウィドーがたどりついたのは・・
ブラックウィドー「ついに・・見つけたっシャ・・・・」
(続く)
最終更新:2021年04月14日 07:10