イユは、人間の死体をアマゾンと化す4Cの「シグマタイプ」のアマゾン。
そして千翼の正体は、鷹山仁と七羽の間に生まれたアマゾンだった。
4Cは千翼を処分しようとするが、その最中で千翼は暴走し、4Cを脱走する。
イユは4Cの命令で千翼を追うが、千翼の頑なな想いを受け、失っていた感情をわずかに取り戻し、千翼と共に逃亡の身となる。
橘局長は、イユの廃棄を決定する。
イユの体はネオアマゾンレジスター(腕輪)を付けた腕から、徐々に朽ちてゆく。
その後遺症でイユはついに、生前の記憶を取り戻す。
千翼「イユ…… 腕輪を止めなきゃ。行こう」
裕樹「千翼!?」
黒崎「無駄だ。イユの腕輪は外れねぇし、スイッチは押された。あと数時間で、イユは完全に機能を停止する」
裕樹「おい、おっさん…… 何だ、それ? イユは、元に戻りかけてんだぞ? 止めろよぉ!!」
黒崎「だから無理だっつってんだろうがぁ!!」
千翼「イユは、死なせない……!」
黒崎「もう死んでる。お前も、もう諦めろ」
黒崎が銃を連射する。
千翼がイユを庇いつつ、逃げ去る。
黒崎たちが、札森のもとへ帰還する。
札森「殺ったんですか? 千翼とイユ」
黒崎「これがそんなツラかよ? 4Cに戻るぞ。千翼はそこだ」
札森「えっ? 何で?」
黒崎「イユの腕輪を何とかしようと思えば、それぐらいしか思いつかねぇだろ? 本田、4Cに連絡入れとけ」
本田「了解」
黒崎「お前は動ける奴をかき集めろ」
札森「了──解……」
黒崎「くそっ! 感染者がいなけりゃ、今頃終わってたのに…… アマゾンなんか、使うべきじゃなかったんだよ、最初から」
黒崎が、悠を見やりつつ、美月に言う。
黒崎「こっちが片づいたら、あいつも駆除しなきゃな──、水澤」
裕樹は1人、取り残されている。
(千翼『何で、俺たちは生きてちゃ駄目なんだ!? 何で!?』)
裕樹「そんなもん…… 答えられる奴、いんのかよ?」
千翼はイユと共に、ネオジャングレイダー(バイク)で4Cを目指す。
千翼「イユ……」
(イユ『痛かったのは私! 死んだのは……』)
(千翼『やめろぉ!』)
千翼「イユが無くしたのは、記憶じゃなくて…… 自分なんだ。だから痛みも、何も感じない」
(黒崎『あと数時間で、イユは完全に機能を停止する』)
千翼「そんなの、絶対!」
志藤たち駆除班は、林の中でマモルを取り囲んでいる。福田の持つ圧裂弾の銃に、マモルが気付く。
マモル「圧裂弾、だよね? その銃」
福田「オリジナルはどこだ!?」
マモル「あれは僕の物だよ」
望「マモル! 人間をアマゾンにするなんて、やめろ!」
マモルが三崎を捕え、羽交い絞めにして盾にする。
マモル「だったら! 5年前に僕を撃てば良かったんだ。あのときに僕を撃てば! 遅いよ……」
志藤「あぁ。それは、俺もこいつらもずっと考えてきた。今は特に、福田の方がな」
三崎「福さんの、お袋さんが感染してさ…… 駆除したんだ。福さんが、自分で……」
マモル「……じゃあ、僕を撃ちたいよね?」
福田「違う。復讐に来たんじゃない。俺が悔やんでるのは、お前を撃たなかったことだけじゃない。引き留めもしなかったことだ! 強引にでも……」
三崎「助けたつもりでさ、ただ、ただマモちゃんから手を引いただけだったんだよ。俺たちは……」
志藤「で、楽をした分、誰かにツケが回る…… でかいツケがな」
望「今度はきっちりケリをつける。撃つにしても、撃たないにしても、うちらはマモルのそばにいる!」
志藤「ただ…… オリジナルだけは、どうしても渡してもらう!」
マモル「駄目だよ、僕はもう…… うわああぁぁ──っっ!!」
マモルがモグラアマゾンに変身し、三崎に噛みつく。
志藤「和也ぁぁ!!」
駆除班とモグラアマゾンの戦いとなる。
肩を抉られて倒れる三崎を、望が助け起こす。
望「大丈夫か!?」
三崎「あぁ、大したことねぇよ」
望「マモルぅ!」
戦いから逃れたマモルが、池の水で喉を潤しつつ、先の言葉を思い出す。
(三崎『駆除したんだ。福さんが、自分で……』)
仁は海辺で、七羽の変貌したクラゲアマゾンと、ついに対峙する。
仁「この目で良かったと思ったのは初めてだ。見たくないからなぁ! けど、匂いだけはどうしようもない……」
音声『アルファ』
仁「アァァ──マァァ──ゾォォ──ン!! うわああぁぁ──っっ!!」
仁が絶叫と共にアマゾンアルファに変身し、クラゲアマゾンに挑む。
(七羽『まったく、馬鹿なんだから……』)
(七羽『大丈夫……』)
アルファ「何でそんな奴について来たあぁぁ──!?」
(七羽『ずっと、泣いてるのがわかったから……』)
クラゲアマゾンが無数の触手を伸ばし、アマゾンアルファの体を抉る。
4Cの社屋で橘局長が見下す中、隊員たちがバリケードを張り、入口を固める。
千翼が次第に近づいてくる。
隊員「来た!」
千翼「イユ、ここにいて。やめさせる。今すぐ!」
千翼がイユを残し、単身、4Cへと突き進む。
橘「完全に駆除を!」
隊員「了解です。構えろ! 撃てぇ!」
隊員たちが一斉に発砲する。
千翼が銃弾を浴び、血しぶきが飛ぶ。
千翼「うぉぉ──っ!! アマゾォ──ン!!」
千翼がアマゾンネオに変身、隊員の中へ突入しようとするが、悠の変身したニューオメガが食い止める。
オメガ「千翼、よせぇ!」
ネオ「離せぇ!!」
オメガ「よせ、千翼!」
アマゾンネオはニューオメガを吹っとばし、隊員たちも蹴散らしつつ、玄関へと突き進む。
黒崎や美月たちが合流する。
黒崎「ここじゃ圧裂弾、使えねぇな」
隊員「黒崎! 絶対に入れるなと、局長からの指示だ!」
黒崎「わかってるよ! 全員、入口をガードしろ」
美月たち「了解!」
アマゾンネオが隊員たちを次々に蹴散らし、美月目がけて刃を振り下ろす。
だがニューオメガがそれを食い止め、再びアマゾンネオとニューオメガの戦いとなる。
ニューオメガが、ネオの首を絞め上げる。
ネオ「うぅおおぉぉ──っっ!!」
ネオの全身から無数の触手が飛び出し、ニューオメガを吹き飛ばす。
さらにネオの体の装甲が砕け、異形の怪人態としての真の姿が露わになってゆく。
ネオアマゾンズドライバーが作動、再びアマゾンネオの姿となって突進する。
激戦の最中に、1台の車が停車する。
黒崎「おい!? こんなとこ入って来んな!」
車内には令華の姿。
黒崎「あんた、確か野座間の」
美月「お母さん!?」
黒崎「何の用だ?」
令華「会長がご覧になりたいと仰るので」
黒崎「会長?」
隣には野座間製薬の、天条会長が同乗している。
黒崎「あんたか」
天条「邪魔はしないから、安心して任務を続けたまえ。それにしても──」
天条が局内の、橘を見上げる。
天条「意に沿わぬ命を慌てふためいて潰そうとは、相変らず見苦しい。一体、何を恐れる? ある命がある命を脅かすのは、自然の摂理。脅かされない命は弱い」
黒崎「ほぅ~。本当に言えますかねぇ?」
黒崎がフロントガラスに手を突く。
真っ赤な血が、べっとりとガラスを濡らす。
黒崎「自分が食われても」
天条「ふん、願ってもないことだ」
裕樹も4Cに駆けつける。
裕樹「イユ! 千翼……!」
アマゾンアルファとクラゲアマゾンとの戦いに、モグラアマゾンが割って入る。
アルファ「お前……!」
アマゾンアルファとモグラアマゾンの戦いとなる。
志藤たち駆除班も駆けつける。
志藤「鷹山……!」
三崎「で、あれがオリジナルってこと?」
志藤「福、圧裂弾使うチャンスを狙え。俺たちは鷹山の援護だ」
望「了解」
4Cでは、アマゾンネオとニューオメガの戦いが続いている。
激戦の末、渾身の刃が互いの体を抉り、血が飛び散る。
オメガ「千翼ぉぉ!!」
イユがついに、立っている力も失い、ガックリと膝をつく。
裕樹「イユ!? おい、イユ!!」
ネオ「イユ……!?」
アマゾンネオの隙を突き、ニューオメガがさらに一撃を見舞う。
だがニューオメガも深手を負い、ふらふらと倒れる。
黒崎「撃てぇ!!」
隊員たちの銃撃が次々に、アマゾンネオに炸裂する。
ネオ「うぅっ…… イユ!!」
ついに変身が解除される。
生身で無防備の千翼に、容赦なく弾丸が突き刺さる。
千翼「イユ!!」
千翼は地面を這い、必死にイユのもとへと近づこうとする。
イユがその姿を目の当たりにして、倒れそうな足取りで、千翼へと歩み寄る。
裕樹「おい!?」
イユがフラフラと千翼に歩み寄り、そっと顔に手を触れる。
黒崎「撃てぇ!!」
隊員たちがなおも発砲する。
とっさに千翼がイユを抱きしめ、自らの体を盾にする。
無防備な千翼の体に、次々に弾丸が撃ち込まれる。
千翼が血まみれになって、弾丸を浴び続ける。
発砲し続けていた隊員たちが、その凄惨な光景に、次第に銃を下ろす。
黒崎「撃て…… 撃てぇぇ──!!」
誰も発砲する隊員はいない。
黒崎が銃を構えるが、裕樹が飛びかかってそれを食い止める。
裕樹「やめろぉぉ!!」
黒崎「どけ、クソガキぃ!」
裕樹「もう、いいだろ!? もう…… 頼むってぇ!!」
裕樹が大の字になって千翼を庇う。
なおも黒崎が銃を構えるが、裕樹が黒崎に飛びかかる。
裕樹「クソがぁ!!」
千翼「イユ、行こう」
裕樹「千翼、逃げろぉぉ!!」
イユ「千翼…… 痛い?」
千翼「痛いよ。でも、イユは……」
千翼に触れるイユの手は、廃棄システムにより、すでにボロボロに朽ちている。
千翼「こんなになってまで……」
(イユ『痛かったのは私! 死んだのは……』)
千翼「こうなったのも、結局は……」
千翼がネオジャングレイダーにイユを乗せ、共に走り去る。
令華「悠!!」
令華が呼び止めるも、悠は令華を一瞥しつつ、ジャングレイダーで走り去る。
令華「美月! 悠も撃つつもりなら、やめなさい」
美月「……」
令華「待ちなさい! あなたは知らないわ。悠がどれだけ優秀な──」
美月「お母さん! 自分の手でアマゾンを殺したこと、ある?」
令華「……!?」
美月「私は悠とちゃんと向き合うために、4Cに入った。この銃はそのためにあるの」
言葉を失う令華を残し、美月が立ち去る。
令華「美月……」
海辺での戦い。
クラゲアマゾンの触手が駆除班をも襲い、志藤たちは接近すらおぼつかない。
志藤「福、構えろぉ!!」
望「福さぁん!」
福田が必死に銃を構える。
志藤たちが深手を負いつつも、這うように福田のもとへ集まり、彼の体を支える。
アマゾンアルファの手刀が、クラゲアマゾンの体を貫く。
志藤「福ぅ!!」
圧裂弾が放たれる。
とっさにモグラアマゾンが飛び出し、自分の体を盾にする。
モグラアマゾンの体が、圧裂弾の銃撃により大きくえぐられる。
三崎「マモちゃぁん!?」
志藤たちが目を見張る中、変身の解けたマモルの体が、消滅してゆく。
アマゾンアルファに貫かれたクラゲアマゾン。
光があふれる中、その姿が七羽に戻り、仁と対峙する。
七羽「仁…… ごめんね」
仁「……何で?」
七羽「最期に我がままを、聞いてもらった」
七羽が幼い千翼を育てていた廃屋には、七羽の描いた天使の絵が遺されていた──
仁「そうか…… あれは七羽さんでもあったってことか。やられたな、フフ……」
七羽「仁。千翼は、仁にそっくり。いいお父さん。本当に……」
仁「七羽さん……」
七羽「仁……」
突如、七羽が仁を突き飛ばす。
仁を庇いつつ、クラゲアマゾンが圧裂弾の余波を浴びて大爆発──
千翼とイユは、かつてイユの思い出の場所、閉鎖された動物園・ふれあい動物パークに佇んでいる。
イユは生前の、父の誕生パーティの記憶を脳裏によぎらせつつ、土をケーキの形に盛り上げ、石を並べている。
千翼がその土のケーキを覗き込み、ふと、顔を上げて気づく。
千翼「イユ…… 今、笑ってる!」
土のケーキを作りながら、イユは楽しそうな笑顔を、初めて千翼に見せている。
千翼「笑ってるよ!」
もはや歩く力すら失ったイユを、千翼がおぶって歩きつつ、千翼が好きだった童謡を口ずさむ。
イユの脳裏には、幼い自分が父に背負われつつ、童謡を口ずさんでいた記憶が甦っている。
イユ「千翼……」
千翼「ん?」
イユ「私…… 楽しい……」
千翼「……うん」
そう言い遺し、イユは静かに目を閉じる。
そこに悠、そして仁が現れる。
千翼「どうしても?」
悠「溶原性細胞は危険すぎる。君自身にもコントロールできないぐらいに」
千翼「……そうだね。イユがこうなった原因は、俺だ。他の人も、それに、母さんも」
仁「違う。……俺だ。だからな、俺が送ってやるよ。母さんのところへ」
千翼「わかった。でも…… 俺は、最後まで生きるよ!」
仁「やっぱり、七羽さんそっくりだ……」
千翼は、動かなくなったイユを地面に下す。
仁「アマゾン……」
悠「アマゾン!!」
千翼「アマゾォン!!」
仁がアマゾンアルファ、悠がニューオメガ、千翼がアマゾンネオに変身する。
アマゾンネオ「イユ……」
イユにそっと触れると、2人に向き直る。3人のアマゾンが激突する──
3人「うぅおおぉぉ──っっ!!」
海辺での戦いの後。
圧裂弾でできた巨大なクレーターに、マモルが仲間の証として作った5円玉のネックレスがある。
三崎「マモちゃん…… 作ってた……」
福田「戻って来たんだ…… 俺たちのところに!」
駆除班一同が涙ぐみつつ、それを見つめる。
4Cでの激戦跡。
天条「行こう。人に、アマゾンは早すぎたようだ」
令華が天条と共に、車で走り去る。
黒崎「札森。おめぇ、死にたくねぇって思ったこと、あんだろ?」
札森「当──然。毎日ですよ」
黒崎「生きたいって思ったこと、あるか?」
札森「へっ? 同じでしょ?」
黒崎「……」
黒崎が愛銃を地面に置いたまま、どこかへ去ってゆく。
変身を解いた悠が、全身に返り血を浴びた姿で歩いている。
目の前に、美月が立ち尽くしており、その手には、圧裂弾の銃がある。
悠「終ったよ。あとは──」
美月の銃を悠がつかみ、その銃口を自分の胸に当てる。
悠「これだけ」
しばしの沈黙の後、美月が銃を下ろす。
美月「生きて……」
町外れのトンネルを、仁がフラフラと歩いている。
仁「はぁ、はぁ…… 俺は連れて行かないとか、キツイのも相変らずだなぁ…… 七羽さぁぁ──ん!! ハハハハ……」
裕樹は学園生活に戻り、大勢の生徒たちと共に登校している。
スマートフォンを見て微笑む。
千翼とイユを写したプリクラが、血まみれのまま貼られている。
七羽が千翼を育てていた廃屋。
天使の絵の下。
イユのストールの上に、千翼とイユの物と思しき2つのネオアマゾンズレジスターが、寄り添うように置かれている。
エンディングテーマとスタッフロールの後、4Cの施設に橘局長が新たな決断を下した。
橘「アマゾンの残党は1匹残らず、たとえ子供であろうと絶対に残してはならない。5年前の事件はまだ続いている。完全なる終結まで脅威は去らない! そのためにも、新しいシグマプロジェクトを!!」
そして、物語はそれから2年後を描く劇場版『仮面ライダーアマゾンズ THE MOVIE 最後ノ審判』へと続いていく…。
最終更新:2022年09月20日 08:41