現代日本のとある会社。
社員たち「あぁ~~~終わったぁ~~~っ」
「そっちはどうよ?終わったんなら飲みにでも行かね?」
もう一人の社員「いやこっちは全然っすよ・・・時間かかりそうなんで、お先にどうぞ」
社員たち「そっかぁ。じゃあお先」
「お前も程々にな」
残った方の社員「はあ・・・」
(・・・終わねぇ・・・・・ま、早く帰ったところで家族や恋人が待ってるわけでもない・・・・録りためたテレビ見るか、やり残したゲームするぐらいだしな・・・)
残った方の社員が会社から出た。
社員「やっと帰れる~~~~っ」
(この地球には俺みたいな奴一杯いるんだろうな・・・・)
横断歩道の歩行者信号が赤になったが、社員は気づかず、歩き続け・・・
通行人「おいあんた・・・」
前の車を追い抜いた車が社員に迫り・・
通行人「危ないぞっ!!!」
社員「あっ・・・」
社員が車に轢かれ・・・・
通行人「救急車!」
社員は目を閉じ・・・
次に目を開いた時に見えたのは、雨空の下で、光の膜に覆われた老人―――
その老人は赤子を抱えていた。
とある森。
木に止まる鳥を誰かが見ていた。
?「いひひ、はっ!」
その手に風が収束させ、風の刃を放ち、鳥を切り裂いた。
シン「よっし食糧ゲット!」
風の刃を放った者は―――8歳の少年、シン=ウォルフォードだった。
シン(俺の名前は、シン=ウォルフォード。この森で爺さんと二人、暮らしている。俺には前世の記憶がある。地球という星の、日本という国で育った記憶だ。どうやって死んだのかは思い出せないけどね)
森の中にある家にシンが戻った。
シン「たっだいま―――!」
マーリン「おう、おかえり。どうじゃ、今日の狩りの成果は」
シンを迎えたのは、先程の老人だった。
シン(この爺さん、マーリン=ウォルフォード。魔物に襲われた馬車から唯一生き残った赤ん坊のオレを拾って、今日まで育ててくれた命の恩人だ)
シンがマーリンに狩ってきた獲物を見せた。
マーリン「ほう、鳥が三羽に猪か」
シン「あんまり獲りすぎてもいけないしね」
マーリン「風の刃か。見事なもんじゃの」
シン「狩りには一番向いてるからね」
シンが風の刃を放って、薪を切った。
シン(以前、俺がいた世界とは違い、ここには魔法ってのが存在している。爺さんは魔法に造形が深いらしく、色々教えてもらった)
マーリン「では、炎はどうじゃな。シン、火をつけてみい」
シン「うん!」
シンが薪に火の玉を放って、火を付けた。
シン(魔法は無詠唱で成立する。要はイメージさえしっかりしてればいい」
マーリン「おお」
シン(正直これには助かった。向こうの記憶があるだけに、呪文の詠唱とか魔法名を叫ぶとか、抵抗あるんだよな・・・)
家に老婆と中年の男が近づいていた。
シン「あっ!メリダ婆ちゃんとミッシェルさんが来た」
マーリン「シンよ、儂の魔法だけでなく、魔道具や剣術についても学ぶがいい」
シン「うん!」
メリダ「シシ狩りだって!シン!あんた何て危ないことしてるんだい!」
シン(この人はメリダ=ボーウェン。爺さんの知り合いでよく訪ねてくる)
シン「別に危なくないよ。この前婆ちゃんと一緒に作った魔道具だってあるし」
メリダ「やれやれ、どこの世界に8歳でイノシシ仕留める子がいるんだい!」
シン「ここ」
メリダ「おバカ!!」
マーリン「シンの魔法の腕はお前も知っておろう。この森はシンにとっては庭みたいなもんじゃ」
ミッシェル=コーリング「しっかし、猪まで仕留めるとは次からは武術の鍛錬もっと厳しく
シン「エー――っ、ヤダよ――――」
2年後
10歳になったシンとマーリンが森の中を歩いていた。
シン「魔物狩り?」
マーリン「シンも10才になったことじゃし、そろそろ経験しておいたほうがいいじゃろ」
シン「魔物かあ」
マーリン「この世界に充満する魔力、全ての生き物はその恩恵を得ることが出来る。じゃが制御に失敗すると、生き物は凶暴になり、辺り構わず攻撃するようになる。それが魔物じゃ。人も例外ではないぞ」
シン「昔一度、人が魔物化し、国が一つ滅びかけた。それを救ったのはじいちゃんなんだよね?その国では今でもじいちゃんは英雄なんでしょ」
マーリン「ほほほほ、それでは始めようかのう。まず魔物を探すのじゃ」
シン「どうやって?」
マーリン「魔力を周囲に薄く拡げていく。そこに別の魔力が触れると、その存在を感じ取れるのじゃ。生き物は全て魔力を持っておるから、どこに何がおるのかすぐわかる、これを‘索敵魔法‘ という。とはいえ、これはある程度魔力を制御出来んと難しいが・・・おっ!?」
シンの放った魔力は森全体へと広がっていった。
シン(わ――っ・・・すごい、森中の生き物が・・家にいるメリダ婆ちゃんの魔力も!!)
マーリン「予想はしとったが一回で成功しよるか・・・・」
シン(!?何だこの・・・禍々しい・・・)
マーリン「ほ、見つけたかの。それが魔物の魔力じゃ」
シン「じいちゃん早く行こう!!あんもん放っといたら大変な事になる!!」
マーリン「そうじゃのう、これはちとマズイかもしれん」
シンとマーリンが駆けつけた場所に居たのは、赤い目をした熊だった。
シン「これが、魔物・・・こんな奴放置してたら・・・!」
シンが剣を抜いた。
マーリン「待つんじゃ!シン!」
シンが抜いた剣には、「超音波」と「振動」の魔法が付与されていた。
シン 「ふう―――っ!」
シンはブーツに付与していた「空気噴射」の魔法で加速して、熊に突っ込んでいく。
シン「はあっ!た―――っ!」
シンは熊の攻撃をかいくぐり、剣で熊の頭を切り落とした。
マーリン「おおっ・・・!」
その様を見てマーリンは、破壊された馬車から赤子を見つけた過去を思い返し―――
シン「じいちゃん、じいちゃん?これで良かった?失敗してよね」
マーリン「じいちゃん?お?おお!すまんすまん、ちょっとボーッとしてしもうた。これ以上ない程完璧にできておったぞ」
シン「ホント!?じゃあ魔物狩りは成功?」
マーリン「勿論じゃ」
シン「やった―――!」
マーリン「しかし剣とブーツに何の魔法を付与しておるんじゃ?」
シン「まあ、これは・・・その・・・」
その夜。
シンが寝ている部屋の隣で、マーリンとメリダ、ミッシェルが話していた。
ミッシェル「魔物化したレッドグリズリーを、シンが!?」
マーリン「ああ、ワシが助ける間も無くじゃ」
メリダ「全く何者なんだろうね、あの子は。魔法を習得するスピードも尋常じゃないし・・・ミッシェルの武術だって付いてこられる。付与魔法に至ってはオリジナルの言語だしね。別の世界か何かから来たと言っても信じられるよ?」
マーリン「何者でも構わんよ。ワシをじいちゃんと呼んで慕ってくれてる、あの子が可愛ゆうてしょうがない。今では本物の孫じゃと思っとる」
メリダ「おやおや、かつて`破壊神‘と呼ばれた男のセリフとはねえ」
マーリン「やめてくれんか、昔を思い出して身悶えそうじゃ・・・・」
ミッシェル「それが今では賢者様ではございませんか」
メリダ「まぁ、あの子が可愛いのはアタシも同じさ。こうしてたまにしか来られないけど・・それでも、あの子を本当の孫だと思ってる」
翌日。
シンはミッシェルの稽古を受けていた。
ミッシェル「今日はここまでだ」
マーリン「稽古は終わったかの」
シン「最近またきつくなって来たんだけど」
マーリン「そう言ってもついて来てるおるではないか。 ところでシン、ちょっと話がある」
シン「オレがじいちゃんの・・・本当の孫じゃない?」
マーリン「うむ・・・スマンのう、今まで黙っておって・・・」
シン「・・・ごめん、それ知ってた」
10年前、マーリンは雨の降る森の中で破壊された馬車を見つけた。
マーリン「魔物にやられたか・・・何と惨い、せめて弔って・・・ん?赤ん坊の泣き声じゃと!?」
マーリンは馬車の中で泣く赤子を見つけ、抱え上げた。
マーリン「奇跡じゃ!」
マーリンが赤子を光の膜で覆うと、赤子の頬の傷が消え、赤子が眠った。
そして空を見上げると、雨雲の中に一筋の光が射していた。
マーリン「これは天命かのう・・・」
マーリン「雨で体温が下がり、魔物はお前に気づかなかんだのかもしれん。ひょっとしたら、あの魔物は・・・いや」
シン「この前のレッドグリズリーとか?」
マーリン「シン」
シン「いや何となくそう思っただけ。だとしたら一応、親の敵を討てたのかなって」
マーリン「そうかもしれんのう」
シン「それで、俺の両親は何処の誰なの?」
マーリン「無残に破壊されておって、身元を示す物は見つけられなかったのじゃ」
シン「・・・・そっか」
マーリン「随分とあっさりしてるのう」
シン「う―――ん、両親って言われても覚えてないし・・・それにオレには、じいちゃんがいるからさ」
マーリン「!!」
シン「それにメリダばあちゃんもミッシェルさんもいる。寂しいなんて思った事一度もないよ」
マーリン「シン・・・・」
シン「だからさじいちゃん、オレを拾ってくれてありがとう。じいちゃんに拾われて、幸せだよ」
マーリン「・・・・シン・・・」
マーリンが涙を溜めていた。
シン「泣かないでよ、みっともない」
マーリン「う、う、うおおおお~~~~~」
マーリンが大泣きして、シンを抱きしめた。
シン(爺ちゃん、本当にありがとう)
5年後
ディセウム(ディスおじさん)「おほん、我らが英雄マーリン殿のお孫さんがこの度めでたく15歳になり、成人した。それではシン君の15歳と成人を祝って、乾杯!」
マーリンたち「「「乾杯!!」」」
メリダ「あの小っこい赤ん坊だったシンが成人するとはねえ」
マーリン「あっという間じゃったのう」
ディセウム「そういえばシン君、これからどうするのかね?」
シン「これから?」
ディセウム「今日から立派な大人だ。今後、やりたい事などあるのかね?」
シン「うーん・・・とりあえずオレ一度も森を出た事ないし・・・・近くの街へは行ってみようとは思ってるよ」
ディセウム「ほう、それから?」
シン「それから?」
ジークフリード=マルケス「何かあるだろ」
クリスティーナ=ヘイデン「ミッシェル様に武術を習ったシンなら王国騎士団への入隊や魔物ハンターにもなれそうですね」
ミッシェル「うむ」
シン「魔物ハンター?何それ?」
トム=ハーグ(商人)「魔物ハンター協会というものがありましてね。魔物を討伐すると報酬がもらえるんです」
ジーク「おいそんなことも知らないのかよ」
シン「うん、そんな仕事があるんだね」
ジーク「付与魔法で魔道具屋だって出来るだろうし、男前だから女の子と仲良くなって養ってもらえるかもしれないぞ」
クリス「そんな考え持ってるのはアナタだけです」
ジーク「あっ!」
クリス「何か?」
ジークとクリスがにらみ合い、火花を散らす。
シン「そっか、成人したからお金を稼がないといけないし、使い方も勉強しないとな」
トム「まさか・・・シンさん、今まで買い物とかは・・・・」
シン「した事ないです」
ディセウム・ジーク・クリス「「「!」」」
メリダ「マーリン、アンタまさか・・・・」
マーリン「常識教えるの忘れとった」
ディセウム達「「「なあ~~~~~~~っ!!」」」
シン「そういや、魔法ばっかでその辺何も教わってなかった」
マーリン「ま、何とかなるじゃろ」
その後、シンとマーリンにメリダ達は、シンの転移魔法で魔法練習場である荒野に来た。
ディセウム「何と!一瞬でこの様な場所に」
ジーク「まさか、転移?」
マーリン「シンのオリジナルじゃよ」
トム「これは世界の流通を、いや常識そのものを覆しかねませんね・・・」
メリダ「こんな空間移動の魔法が使えるだけでも驚きなのに・・・」
ミッシェル「こんな場所まで来るということは、何か理由が?」
マーリン「まあこれぐらい周囲に何もない場所でないと危険じゃろう」
メリダ「危険?」
マーリン「ふほほ、ワシはもう知っとるからのう。くれぐれも驚かんように」
トム「?」
マーリン「シン、卒業試験の様にあれを見せてやるのじゃ」
シン「あれ?取りあえず、火でいいかな?」
シン(イメージは燃焼、火種を生み出し、酸素を加えて燃焼を促す)
シンの出した炎が青白くなって、大きくなっていく。
ジークフリード「青白い炎なんて初めて見たぞ!」
シン(酸素と水素の混合、これを空気の壁に包んで、着弾と同時に火種から引火させる!!)
シンの前で炎の渦が生まれ―――― 放たれた炎は、大爆発を起こし、地面を大きく削り取った。
シン「今はこのくらいかな」
その威力にメリダ達は驚愕していた。
シン「あれ、どうしたのみんな・・・・?」
メリダ「マーリン・・・・・・アンタ!なんでこの子に自重ってもんを教えなかったのさ!」
マーリン「だって、教えた事はみんな吸収しよるんじゃ・・・どこまで出来るのか見たかったじゃもん!」
メリダ「何がじゃもんだい!気持ち悪いんだよ!」
シン「婆ちゃん!そんなに興奮すると体に悪いよ!」
メリダ「誰のせいだい誰の!」
シン達はマーリンの家に戻った。
ディセウム「これは、おいそれと世に出せなくなったな。これ程の攻撃魔法に転移魔法!」
クリス「更にミッシェル様が鍛えた武術、各国がシンを取り込もうと躍起に
ミッシェル「争いの火種になる」
シン(俺ってヤバイの・・・?)
ディセウム「マーリン殿、シン君の力は各国の勢力バランスを狂わせる程です」
トム「加えて、この森以外を知らない世間知らずです」
ディセウム「このまま社会に放り出したら、大変になる。軍事拡大に積極的な帝国は云うに及ばず」
マーリン「そうじゃのう」
ディセウム「そこで考えがあります。シン君を高等魔法学院に入学させまんか?」
シン「え?」
マーリン「それは・・・シンをお主の国に取り込もうという考えか?」
ディセウム「軍事利用しないことはここで誓います。私にとっても甥っ子同然、国の争いなど巻き込みたくはない」
シン「高等魔法学院って?」
ディセウム「王都にある魔法学校だよ。中等学院で特に優秀だった者が進学する高等教育機関。そこに行けばシン君がいかに規格外か知ることが出来るはず」
シン(俺って規格外なの・・・?)
ディセウム「それに今まで同年代と付き合ったことの無いシン君にとって、友人を得る丁度良い機会だと思いませんか」
マーリン「なるほどのう・・・どうかのうシン?」
シン「それでいいよ。学校って通ってみたいし」
ディセウム「学院には私から言っておこう。クラス分けは入試が元になってるから、受けてもらうよ。我が国の高等魔法学院は貴族の権威を一切受けない、完全実力主義でね。私が便宜を図ることも出来んのだ」
シン「我が国って・・・デイスおじさんって何者なの?」
ディセウム「おお、そう言えば言ってなかったな。私の名はディセウム=フォン=アールスハイド、アールスハイド王国の国王だ」
シン(まさかの王様!?)
「じゃあクリス姉ちゃんとジーク兄ちゃんは・・・」
クリス「私は近衛騎士団所属、陛下の護衛としてここにいるの」
ジーク「俺は宮廷魔法師団所属の魔法使いさ。同じく護衛だよ」
シン「えーーーっ!クリス姉ちゃんはともかくジーク兄ちゃんは嘘だ―――!?」
ジーク「待てコラぁ!」
クリス「ふふ、やはりシンは見る目がありますね」
ジーク「何だとコラ」
クリス「何ですか」
シン「じゃあミッシェルさんは?」
ミッシェル「もう引退したが、かつては騎士団総長をしていたよ」
シン(何この、王国の重鎮勢揃いな状況・・・)
メリダ「ホントに、何も話してないんだね」
マーリン「いやぁ~・・・・」
シン「でも、何で王様が爺ちゃんを訪ねてくるのさ」
ディセウム「マーリン殿が昔、魔物化した人、魔人を討伐した話は?」
シン「じいちゃんから聞いたことあるけど」
ディセウム「それは他のでもない、我が国での出来事だった。王国初の魔人の出現、二度に及ぶ討伐隊の壊滅。そして一つの街がこの国から消えた。緊急事態に国は学徒動員を決め、高等魔法学院で王太子だった私も、周囲の反対を聞かず討伐隊に志願した。だが・・・・」
兵士「で、殿下!」
ディセウム(当時)「う、あ、ああっ・・・・」
デイセウム「魔人を前に命を奪われかけた時―――」
魔人がディセウムに迫り―――
そこへマーリンとメリダが駆けつけた。
マーリン「坊主!危ねえから後ろに下がってろ!」
ディセウム「それがマーリン殿とメリダ師だった」
「妖艶的な容姿で魔道具を操るメリダ師と猛烈な勢いで敵と相対するマーリン殿。その姿に震えが来る程のあこがれを持ったものだ・・・」
シン「妖艶、猛烈?」
マーリン「若気の至りじゃ・・・」
メリダ「私はまだまだ捨てたもんじゃないだろ?」
ディセウム「魔人を討伐した2人は国難を救った英雄として取り上げられてな。
それ以来、私達は立場を越えた友人になったんだ。今もちょくちょく愚痴を聞いてもらいに来てるんだよ」
シン「そう・・・って愚痴!」
ディセウム「はっはっは、私が国王だと分かっても態度は変えないのだな」
シン「だって昔から知ってるし、親戚のおじさんだと思ってたよ」
ディセウム「よいよい、こんな砕けた会話が出来るのはシン君だけだ。くれぐれも変わらないでくれよ」
シン「でもそっか・・・爺ちゃんと婆ちゃんって昔一緒のパーティ組んでたんだね」
マーリン・メリダ「「・・・・・」」
クリス「一緒のパーティど言うか、お二人は元夫婦ですよ」
シン「え?え?え?マジイ!?」
半月後
シンとマーリン、メリダは王都へ向かう馬車に乗っていた。
シン(もうすぐ王都か・・・)「ねえ爺ちゃん、王都にある家ってどれくらいの大きさなの?」
マーリン「覚えとらんのう。国から与えられたものだから大きかったと思うが」
シン「異空間収納があると引っ越しも超簡単だねー。婆ちゃん、一緒に住んで欲しいって無理言ってゴメン。でも来てくれて凄く嬉しいよ」
メリダ「ま、まあこの爺さんに任せるのは心許ないからね」
シン「王都が見えてきた」
馬車が王都の門で検問を受けた。
門番「市民証はお持ちですか」
マーリン「これでいいかの」
メリダ「はいよ」
門番「け、賢者マーリン殿と道士メリダ殿でありますか!?」
通行人「賢者様!?」
「道士様も!」
その場に居た人達が一斉に馬車に向かってきた、
マーリン「早いとこ済ませてもらっていいかの」
門番「申し訳ございません!あの、そちらの坊ちゃんは?」
シン「坊ちゃん?」
マーリン「シン=ウォルフォード、儂らの孫じゃ」
門番「シン様――――!!」
シン達の済む家は、とても大きな豪邸だった。
シン「でっか・・・・」
シン達が家に入ると、大勢の使用人達が出迎えた。
スティーブ・マリーカ・コレル「「「お帰りなさいませマーリン様、メリダ様、シン様」」」
シン「シン・・・様・・・?」
スティーブ「執事長のスティーブです」
マリーカ「メイド長のマリーカです」
コレル「料理長のコレルです」
スティーブ「御用があれば何なりとお申し付け下さい」
シン「何このVIP待遇・・・」
マーリン「ディセウムが派遣してくれたようじゃの・・・」
メリダ「こういうのがあるから嫌なのさね」
マーリン「後のことは儂らに任せて街でも見てきたらどうじゃ?」
シン「そうする・・・」
シンが街に出た。
シン「あの、これで買える?」
シン「初めて買い物しちゃった」
シンは買ったリンゴを食べながら、街を歩き、
やがて路地裏に出た。
シン「迷いそう・・・」
?「やめて下さい!」
?「あんた達いい加減にしなさいよ!」
そこでは、2人の少女が鎧を着けた3人の男達に絡まれていた。
男たち「おお怖っ、そんな怒るなよ」
「一緒に遊ぼうって言ってるだけじゃん」
「俺らと遊ぶと楽しいぜ、ついでに気持ちいいかもな!」
シン(何とテンプレな・・・)「あー、もしもし。お困りですか?」
シンがそう言うと、赤髪の少女、マリアは即返答した。
マリア「はい!超お困りです!」
シンは男達の前に出た。
男たち「何だガキ!何だ用か!」
「正義の味方気取りぃ?」
「俺らハンターは魔物狩ってこいつら守ってんだぜ。俺らが正義の味方だろ!」
シン「お兄さん達、魔物を狩るのは正義の味方かもしれないけど、女の子まで狩っちゃたら悪人だよ」
男たち「んだとこのガキ!」
「死ね!コラァ!」
男たちがシンに殴りかかってきた。
シン(遅っそ)
シンは男のパンチを簡単に受け止め、投げ飛ばし、
2人目の男も同じ様に投げ飛ばした。
最後に残った男は短剣を出して、シンに斬りかかったが
シンは剣も受け止めて、男を投げ飛ばした。
シン「大丈夫?怪我とかしてない?」
マリア「あなたこそ大丈夫!?あいつ剣を抜いて・・・」
シン「平気だよ、あんな遅い剣筋」
シシリー「あの、本当にありがとうございました」
お礼を言ってきた青髪の少女、シシリーを見たシンは―――
シン(!!)
シシリー「どうかしましたか?」
シン(か、可愛すぎる!!)
一目惚れした。
(続く)
最終更新:2020年08月30日 10:34