穏やかなさざなみの音が聞こえていた。
燃えるような赤い髪がやさしいしおかぜに揺れている。
黒く輝く瞳には、波間をきらめく光のつぶが美しく反射していた。
エステリアの冒険を終えたアドルは、ホワイトホーンの砂浜に一人たたずみ長かった戦いの日々を思いおこしていた。
神官の子孫として最期をとげたダルク=ファクト。
人間の欲望ゆえに悪の元凶となったダーム。
ふりかえれば、すべては遠い過去のことのように思えた。
かつて栄華を誇った理想郷イース。
魔法の宝玉「黒い真珠」の力を使い、二人の女神と六人の神官によって興された国にもいつしか暗雲がたれこめた。
フィーナやレアは、こうなることを知っていたのだろうか……。
アドルは眠りについた二人の女神を思いながらさざなみの打ち上げる砂浜に目をうつした。
(波打ち際で何かが光る。)
「おや、あれは……?
(瓶を見つけたアドルは、それを拾って中身を確かめる。)
瓶の中には、手紙が入っている。その文字は、アドルの知らないものだった。
「詩人のルタなら、読めるかもしれないな」
(ゼピック村のルタ=ジェンマの元へ。)
「これはセルセタの文字ですね。”勇者よ…セルセタをお救い下さい……”そう、書かれてありますね」
セルセタで誰かが救いを求めている……
アドルは小瓶に秘められた呼び掛けに、セルセタに向かうことを決意した
(瓶を流したと思しき少女の面影。)
アドルの冒険が再び始まろうとしている…
最終更新:2020年09月15日 18:48