機動刑事ジバンの第11話

五十嵐家で、まゆみの誕生日パーティーが開かれている。
機動刑事ジバンこと直人、まゆみの両親の俊一と静江、友達みんなが、まゆみを祝う。

一同「お誕生日おめでとう!」「まゆみちゃん、お誕生日おめでとう!」
まゆみ「ありがとう!」
直人「まゆみちゃん。これ、僕からのプレゼント」
まゆみ「ありがとう! 開けてもいい?」
直人「うん」

直人からのプレゼントは、可愛い腕時計。

まゆみ「わぁ~、素敵!」
静江「良かったわね、まゆみ。お爺ちゃんが生きていたら、どんなに喜んでくれたかしら」

直人は、まゆみの祖父、五十嵐博士に想いを馳せる。

直人 (五十嵐博士……)

俊一「これからも隠し事をせず、パパとママに何でも話せる、素直な子でいておくれ」
まゆみ「うん!」
俊一「じゃ、乾杯!」



少女と戦士の心の誓い



パーティーの後。
まゆみが1人で沈み込んでおり、直人が声をかける。

まゆみ「お兄ちゃん……」
直人「博士のことを思い出していたのかい?」
まゆみ「お兄ちゃん。まゆみ、パパとママに内緒にしているのが辛いの。お爺ちゃんやお兄ちゃんのこと、どうしても言っちゃいけないの? 言っちゃいけないの?」

まゆみが直人の体に顔を埋め、目に涙を滲ませる。

直人「まゆみちゃん…… おいで」


直人は、まゆみをジバン基地に招き、ある装置を用意する。

直人「これは博士が造った、過去の記憶を頭の中に再現する装置だよ。ボーイ、ファイル・ナンバー1をセットしてくれ」

基地のコンピューター・ボーイが応答する。

ボーイ「ファイル・ナンバー1は、直人さんがジバンになった経緯を、直人さんと五十嵐博士の記憶を合成し、推理を加えて再現したものです」
まゆみ「お兄ちゃん……」
直人「辛いのはわかるよ、まゆみちゃん。でも、もう一度僕がジバンになったときのことを、思い出してほしいんだよ」

過去の記憶が再現され、直人とまゆみは時間を旅するかのように、過去の世界へと向かってゆく。

まゆみ「お兄ちゃん……」
直人「まゆみちゃん!」


直人たちの脳裏に、過去の光景が再現される。

半年前、僕は初めて五十嵐博士に出逢った。
それがすべての始まりだった
その日、僕はある事件の捜査で、
聞き込みにあたっていた。

半年前の世界。
直人が捜査中、傍らを荒っぽい運転の車が横切って行く。

直人「なんだ、あの運転は!? ひょっとして、何か事件に関係があるんじゃ?」

五十嵐博士がハンドルを握っている。

五十嵐「まゆみ、無事でいてくれよ!」


五十嵐は、海岸の倉庫に辿り着く。

五十嵐「まゆみ──!」

犯罪組織バイオロンのバイオ生命体、ウニノイドが待ち構えている。

ウニノイド「待っていたぞ、五十嵐博士!」
五十嵐「孫を、まゆみを返してくれ!!」
ウニノイド「返してほしければ、貴様が我がバイオロンを倒すためにどんな研究をしているか、話すんだ。さもなければ──」

まゆみが、バイオロンの戦闘員・マスクたちに捕らわれている。

まゆみ「お爺ちゃん、助けてぇ!」
五十嵐「まゆみ!?」
ウニノイド「さぁ、言え! 何を研究してるんだ!?」
五十嵐「研究なんか、何もしていない!!」
ウニノイド「どうしても吐かないなら、命は無いぞ!」

ウニノイドが五十嵐を、執拗に痛めつける。

五十嵐「うぅっ……」
まゆみ「お爺ちゃん、お爺ちゃん!」

直人が五十嵐の車を追い、倉庫に辿り着く。
窓から、五十嵐やウニノイドたちの姿が見える。

直人「ば、化け物!?」

直人が怯むも、意を決して、銃を構えて突入する。

直人「警察だ! おとなしくしろ!」

マスクたちが銃撃し、直人が銃で反撃する。
ウニノイドが直人に迫る。

直人「よせ! それ以上近づくと、撃つぞ!」

直人が銃を放つが、ウニノイドにはまったく通用しない。

まゆみ「お爺ちゃん!」
五十嵐「あっ、危ない!」

ウニノイドが直人を投げ飛ばす。
直人が五十嵐たちをかばいつつ、必死にウニノイドを銃撃する。

直人「さぁ、早く!」


雷雨の中、直人が必死に、五十嵐とまゆみを外へ逃がす。
ウニノイドの攻撃が、直人の背に直撃する。

直人「うわあぁぁっ!!」

直人は傷を負いながらも、必死にウニノイドを銃撃する。
五十嵐たちを庇う直人に、ウニノイドの攻撃が直撃し、直人が倒れる。

直人「うぅっ…… (僕は…… ここで死ぬのか?)」

ウニノイドはさらに、五十嵐たちに迫る。

ウニノイド「貴様もこの男と同じ運命を辿るのだ!」
まゆみ「お爺ちゃん…… お爺ちゃん!」

ウニノイドが攻撃を放ち、その余波で近くの電柱が倒れる。
直人の視界にうっすらと、五十嵐が襲われる様子、電柱からちぎれた電線が見える。
直人は渾身の力で、電線を手にして、ウニノイドに突きつける。
落雷が命中する。

ウニノイド「ギャァア──ッッ!!」

ウニノイドが大爆発、そして直人も倒れる。
五十嵐が直人に駆け寄ろうとし、自身も傷の痛みで倒れる。

五十嵐「うっ、うぅっ……」
まゆみ「お爺ちゃん!? お爺ちゃん!?」

五十嵐博士の助手、警視庁秘密調査官の柳田が駆けつける。

柳田「五十嵐博士、五十嵐博士!? しっかりしてください!!」
五十嵐「う、うぅっ…… この若者を……」
柳田「おい、おい!? ……死んでます」

柳田が、直人の警察手帳を見つける。

柳田「セントラル署勤務、田村直人── この若者のことは、私が何とかします。それより博士、病院へ!」
五十嵐「ま、待ってくれ…… 私は、もう助からない」
柳田「何を言ってるんですか!?」
まゆみ「お爺ちゃん!?」
五十嵐「頼む、柳田くん…… この若者を早く、私の研究室に運んでくれ」
柳田「えっ!?」
五十嵐「早く!」


柳田とまゆみは、五十嵐と直人を、後のジバン基地となる研究所へ運び込む。

五十嵐「ボーイ、改造手術の準備をしてくれ」
ボーイ「わかりました」
柳田「博士、ジバン計画はやめると仰ったのでは? 確かにバイオロンを倒すには、ジバン計画しかない。しかし人間の体を改造するなんて、たとえ志願する人間がいたとしても、できないと……」
五十嵐「わかっている。しかしこの若者は、私たちを助けようとして死んだんだ。だから、どうしても助けてやりたいんだ」
柳田「博士……」
五十嵐「あの若者の体なら、手術に耐えられるはずだ。ボーイ、準備はできたか?」
ボーイ「準備完了、いつでも手術を行えます」

五十嵐「柳田くん、マイクロハンドを」
柳田「はい」
五十嵐「柳田くん、手術を開始するぞ」
柳田「わかりました」

僕はあのとき、完全に死んでいた。

改造手術が始められる。

直人 (ここはどこだ? 僕を一体、どうしようというんだ?)

ボーイ「ニューロンの生体反応、わずかながら上昇中」

五十嵐は傷の痛みを堪えつつ、手術を進める。

五十嵐「う、うぅっ……」
まゆみ「お爺ちゃん!? 大丈夫?」

五十嵐がびっしょりと汗をかき、まゆみが汗を拭う。

五十嵐「あぁ…… ありがとう」

改造手術が完了する。
直人は、全身を銀色の装甲に包まれた「ジバン」の姿となっている。

五十嵐「終わったよ、柳田くん…… 手術は完了した。後は活動スイッチを入れるだけだ。柳田くん」
柳田「はい!」

柳田がスイッチを入れる。

五十嵐「甦れ…… 甦るんだ、ジバン!」

機器に光が明滅するが、ジバンはまったく動かない。

五十嵐「ジバン!?」

ジバンの体に火花が飛び交い、とっさに柳田が五十嵐をかばう。

柳田「は、博士!?」
五十嵐「どうした、ジバン!? どうして動かないんだ!?」

機器に灯っていた光も、消えてしまう。

五十嵐「そ、そんな、馬鹿な!? う、うぅっ……」

五十嵐が倒れる。

まゆみ「お爺ちゃん、お爺ちゃん!?」
柳田「博士!?」
五十嵐「どうしてだ、ボーイ…… 手術を頭から再チェックしてくれ……」
ボーイ「わかりました」
五十嵐「ジバンは…… 必ず甦る! きっとだ…… まゆみ…… まゆみがいてくれたおかげで、お爺ちゃんはどんなに励まされたか…… ありがとうよ、まゆみ……」

五十嵐が事切れる。

まゆみ「お爺ちゃん!」
柳田「博士!? 博士ぇ!!」
まゆみ「お爺ちゃん、死んじゃ嫌ぁ!!」


五十嵐は病院へ運ばれる。
まゆみが廊下で涙ぐみ、柳田が付き添う。

柳田「まゆみちゃん。こんなときに何だけど…… おじさん、ひとつだけ頼みたいことがあるんだ」
まゆみ「……」
柳田「今日見たこと、博士の秘密研究所やジバンのこと、パパやママに内緒にしてほしいんだ」
まゆみ「……」
柳田「もしバイオロンに知られたら、きっとまた襲って来る。恐ろしい連中だからね。パパやママを、怖い目に遭わせたくないだろう? だから」
声「まゆみぃ!」「まゆみ!」

まゆみの両親が駆けつける。

まゆみ「パパぁ! ママぁ!」

まゆみが大泣きしながら、両親に抱き着く。

静江「まゆみ!」
俊一「交通事故だって聞いて、飛んで来たんだ! 一体、何があったんだ!?」
まゆみ「パパ…… あのね」

まゆみが、柳田と目が合う。

まゆみ「……うぅん、何でもないの。何でもない」


テレビがニュースを報じる。

『今日の午後、世界的に有名な工学博士、五十嵐健三さんが、交通事故で死亡しました。博士は物理工学だけでなく、バイオ工学での権威でもあり、大学教授の傍ら、警視庁科学研究所の所長も兼任していました。──』

バイオロンの基地で、首領ドクターギバ、秘書のマーシャとカーシャ、人工生物ブビたちもテレビを見ている。

マーシャ「ギバ様、結局博士は、私たちを倒す研究なんか、してなかったんですわ
カーシャ「博士の家を家探ししても、何も出てこなかったし」
ギバ「これ以上、五十嵐の周辺を探る必要はあるまい。ファイルから抹消だ」

ギバがコンピューターを操作し、五十嵐の記録を消去する。

カーシャ「やったぁ! これで私たちがどんどん活躍できるわけね!
マーシャ「世界は、私たちのものよ!」
ブビ「バイオロン、万歳!」
ギバ「見ておれ、人間ども。最早、容赦はしない。バイオロンの恐ろしさを見せつけてやる!」


まゆみが再び、研究所に現れ、動かないジバンの体にすがりつく。

まゆみ「ジバン! 生き返るのよ、ジバン! お爺ちゃんの願いをかなえて! ジバン、生き返って! ジバン!」

涙を流しつつ、ジバンに必死に訴える。

まゆみ「ジバン!、ジバン!」

涙の雫が、ジバンの体にこぼれる。
機器が作動し、指先が微かに動く。

ボーイ「ジバンの生体反応が急上昇! ジバンが誕生するまで、あと5秒、4秒、3秒、2秒、1秒── ジバン、活動開始!」

ついにジバンが、新たな命を得て甦り、動き出す。
研究所内を歩き回り、装置類のボタンを触れる。

五十嵐「いけません! 勝手にあちこと触らないでください!」

ボーイのカメラアイを持ち上げる。

五十嵐「あっ、駄目です! 落としたら壊れるじゃないですか!?」

そこへ柳田が現れる。

柳田「おぉっ、ジバン!?」
ジバン「ここは── どこですか? 僕は一体、どうなったんだ?」
柳田「君は一度死んで、五十嵐博士の手で、機動刑事ジバンとして生まれ変わったんだ」
ジバン「機動刑事、ジバン?」
柳田「それはバトルスタイルだ。君は自分の意思で、元の姿に戻ることもできる」

ジバンが自分の体を見回すや、体が光に包まれ、元の直人の姿に戻る。

まゆみ「良かったわね、お兄ちゃん。お爺ちゃん……」


柳田は海岸で、直人にバイオロンの事情を説明する。

直人「バイオロン?」
柳田「バイオテクノロジーによって作り出された怪物で世界制服を企んでいる、恐ろしい連中だ。五十嵐博士はバイオロンから地球の平和を守るために、日夜研究を続け、そして生まれたのが君だ。もう一つだけ、君に伝えておかなければならないことがある。実は……」
直人「……」
柳田「はっきり言おう。君の命は、いつまでもつかわからん」
直人「えっ!?」
柳田「五十嵐博士は自分の命と引き換えに、君を造り上げた。バイオロンと戦えるのは君しかいないんだ! やってくれるね? 田村直人、いや、機動刑事ジバン。本日付けをもって君を、警視正に任命する」

柳田が電子手帳を差し出し、直人は決意と共にそれを受け取る。

直人「やります…… 命の続く限り!」


過去の記憶の再生が終わり、現在。

直人「僕は博士に命を貰って、生まれ変わった。だから…… わかるだろう? まゆみちゃん」
まゆみ「……」
直人「パパやママに秘密を持つって辛いけど、でも悲しい時や辛いときは、お互いに励まし合ってやっていこうよ。2人で頑張れば、いつかきっと平和になって、本当のことが言えるようになるよ」
まゆみ「お兄ちゃん……!」


まゆみは笑顔を取り戻し、公園で、直人や友達みんなと楽しく遊ぶ。
両親の俊一と静江が、微笑ましく見守っている。



心と心、固い絆で結ばれた、直人とまゆみ
苦しいとき、辛いとき、
2人は支え合って頑張ってくのだ。

頑張れ、直人!
1日も早くバイオロンを倒し
地球に平和を取り戻してくれ!

戦え、機動刑事ジバン!!



(続く)

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最終更新:2020年11月13日 21:14