前回、流れ暴魔ヤミマルとの戦いを試作武器「Zバズーカ」で切り抜けたターボレンジャー。
戦いの中でヤミマルの正体が「高校流れ者」「さすらい転校生」こと流星 光であることは分かったものの、Zバズーカはエネルギー炉が暴走して壊れ、未だプラズマシュートに代わる新必殺武器の開発は難航していた。
岩山で、レッドターボが仲間たちに見守られながら専用バギーカー・ターボアタッカーを走らせている。
レッドターボ「出力、パワーアップ!」
レッドがペダルを踏みこむ。炎を噴いて加速するターボアタッカー。
最大まで加速したところで車体後部からパラシュートを開き、停車──大地たち4人がレッドに駆け寄る。
レッドターボ「みんな、やったぞ!」
うなずく4人。
レッドがターボアタッカーの後部ハッチを開くと、無骨なエンジンが水蒸気を噴き上げて存在感をアピールしていた。
レッドターボ「博士! 『Vターボバズーカ』のエンジン出力実験、成功しました!」
太宰博士「よくやった! こちらもバズーカ本体の実験は成功した」
太宰博士の研究所には、巨大な白いバズーカ砲が据え置かれている。
太宰博士「これでそのエンジンと、この本体が合体すれば、必殺武器・Vターボバズーカは完成だ! すぐに帰ってきたまえ」
5人はVターボバズーカのエンジンを取り外して研究所へ向かう。
はるな「ついにやったわね!」
俊介「これで怖いもんなしだよ!」
洋平「ヤミマルでも暴魔百族でもドーンと来いって……」
と言いかけた途端、地面に火花が散る。流星 光こと流れ暴魔ヤミマルである。
ヤミマル「お言葉に甘えて、ヤミマル参上」
力「ヤミマルっ!」
ヤミマル「かかれ、暴魔獣コブボーマ!!」
ヤミマルの号令を受けて、全身コブだらけの不気味な暴魔獣が出現。
暴魔獣コブボーマはVターボエンジンを狙って一直線に突っ込んでくる。
力「みんな、Vターボエンジンを守るんだ!」
俊介「おう!」
5人がコブボーマに挑むが、敵の怪力にことごとく跳ね飛ばされていく。
投げ飛ばされ、地面を転がる大地。
力「行くぞ!」
大地、洋平、俊介、はるな「おう!!」
5人がターボレンジャーに変身し、戦闘を再開。
ターボレンジャーの攻撃でコブボーマの体に次々とたんこぶができるが、すぐに消えていく。
イエローターボ「コブが消えてる!? なんて奴だ!」
コブボーマが口から破壊光線を放って反撃。直撃を受け、Vターボエンジンが爆発する。
ブルーターボ「Vターボエンジンが!!」
爆発に巻き込まれ、吹き飛ぶターボレンジャー。
太宰博士「Vターボバズーカのエンジンが! やっと完成させたというのに……」
がっくりとうなだれる太宰博士。
断崖に追い詰められたターボレンジャーに、ヤミマルとコブボーマが迫る。
背後には流れの激しい川──レッドが足を滑らせ、危うく落ちそうに。
ヤミマルの左肩に現れた使い魔・ヤミクモが吐き出した糸が固まって剣となる。
ヤミマル「ヤミマル流星剣!!」
ヤミマルの必殺剣技を受け、ターボレンジャーのスーツから色が失われて真っ白になった。
レッドターボ「これは!?」
そこへさらにコブボーマが追撃。破壊光線をまともに食らったターボレンジャーは全員、崖から転落した。
太宰博士「ターボレンジャー!!」
シーロン「ターボレンジャー!!」
妖精シーロンが研究所内に置かれたドールハウスを飛び出し、ターボレンジャーのもとへ向かう。
ヤミマルとコブボーマが崖下を見下ろす。
ヤミマル「この目で死体を確認しなければ安心できん。追え!」
うなずくコブボーマ。
変身の解けた力たち5人は傷だらけの体で岩場にたどり着いていた。
そこへシーロンが来る。
シーロン「みんな、大丈夫!?」
息も絶え絶えの5人。
シーロン「ダメ、こんなとこで休んじゃ。ヤミマルが探しているのよ?」
しかし、5人はシーロンの呼びかけになんの反応も示さない。
シーロン「どうしたの!? 私の声が聞こえないの!? 力! 俊介、大地! 洋平、はるな……!」
5人の顔は疲れきっている。
シーロン「まさか、私まで見えなくなっているなんて…… そうだわ!」
シーロンが力に近づき、たまたま彼のズボンのポケットに入っていたサインペンを取り出す。
シーロンと交信できない今の5人には、サインペンがひとりでに宙に浮いているように見える。
力「! おい、みんな!」
力の手にシーロンがサインペンで文字を書いていく。
力「『に』『げ』『て』…… 『シ』『ー』『ロ』『ン』…… シーロン? シーロンかい!?」
シーロン「ええ、そうよ! シーロンよ!」
しかし、未だ5人にシーロンの姿は見えず、声も聞こえない。
はるな「シーロン……? ……見えない! シーロンが見えない!」
シーロン「やっぱり……」
洋平「声も聞こえないなんて…… いったい俺たちはどうしちまったんだよ!?」
そこにヤミマルとコブボーマが出現。
ヤミマル「ターボレンジャー!!」
力「ヤミマル!!」
シーロンが慌てて岩陰に隠れる。
ヤミマル「生きていたのか、ターボレンジャー!」
力「行くぞ!」
大地、洋平、俊介、はるな「おう!!」
5人「ターボレンジャー!!」
ターボブレスのスイッチを押すが、5人がターボレンジャーに変身することは叶わない。
力「変身できない!」
ヤミマル「ハハハハハ! 変身もできないとは。今度こそ最期だな!」
剣を振り上げて跳びかかるヤミマルに、力が石を投げつける。
剣を取り落として着地するヤミマル。
力「今だ!」
大地、洋平、俊介、はるな「おう!!」
川を渡って逃げ出す5人。
ヤミマル「コブボーマ、追え!」
コブボーマが駆け出す。
はるな「太宰博士、こちらはるな! ……ダメだわ、通信もできなくなってる!」
追いかけるコブボーマ。なかなかの快足ぶりである。
大地「いったい俺たちはどうなっちまったんだ!?」
俊介「もう戦士じゃないってことさ! だってそうだろ? 地球の妖精を見、その声を聞くことができる者だけがターボレンジャーになれたんだ。でも俺たちはもう……!!」
逃げ続ける5人の様子を暴魔百族が暴魔城から観察している。
暴魔博士レーダ「変身もできぬターボレンジャーなど、もはや敵ではない。我らが出ていくほどのことはあるまい」
暗闇暴魔ジンバ「うむ」
かっとび暴魔ズルテン「そりゃそうだな」
暴魔大帝ラゴーン「それにしても流れ暴魔ヤミマル…… 暴魔百族にも入れなかった者が、よくもここまで腕を上げたものよ」
太宰博士の研究所──
太宰博士「どうすればいいんだ…… 落ち着け…… 落ち着くんだ……! ターボレンジャーが、負けるわけがないんだ……! 今…… 私に、できることと言えば……」
壁に貼られたVターボエンジンの設計図が、憔悴しきった博士の目に留まる。
力たち5人は川を抜けて森を進んでいる。
息を切らせたはるなが立ち止まる。
はるな「もうダメ…… 走れない……」
洋平「はるな……」
大地「はるな!」
疲れ果てたはるなを支える大地。
大地「頑張るんだ! 俺たちが負けたら、誰が暴魔百族からこの世を守るんだ!」
力「なんとしても俺たちのパワーを取り戻すんだ!」
はるな「でも…… あの力はなんだったの? 妖精が見えたり、声が聞こえたりするあの力は……」
そこにヤミマルの口笛が響く。
ヤミマル「ターボレンジャー!!」
木の上からヤミマルが降り立つ。さらに背後からはコブボーマが。
洋平「ヤミマル!」
ヤミマル「もう逃がさんぞ!」
迫るヤミマル、コブボーマ。
そこへシーロンが飛んでくる。
シーロン「危ない!!」
ヤミマルが剣を振り上げた瞬間、シーロンの全身が黄金の光を発した。
ヤミマルとコブボーマがたじろぐ。
ヤミマル「ううっ! おのれ、妖精め!」
大地「妖精!?」
コブボーマ「まぶしい! やめろ、やめろっ!」
コブボーマが口から破壊光弾を放つ。
シーロン「きゃああああっ!!」
光弾がシーロンを直撃。枯葉のように力なく地面に落ちていくシーロン──
力「よし、今のうちだ!」
はるな「シーロン……」
後ろ髪を引かれながらも、5人が駆け出す。
5人はほら穴の中に逃げ込んだ。
力「急げ!」
洋平「おう!」
はるな「あの光は、シーロンが命を振り絞って出した光に違いないわ。シーロンは、私たちを助けるために……」
大地「俺たちが無力なために…… シーロン…… 生きていてくれ……」
力「……あの光だ!」
4人が力に注目する。
力「思い出したぞ、あの光だよ! 俺がまだ小学校に上がる前、さっきシーロンが発したのと同じような光と出会ったんだ」
森の中で不思議な光に触れた当時の力は、そのことを猟師の老人に話した。
老人「坊や、すごいものに会ったなぁ! それは妖精たちの魂なんだよ。
傷つき倒れた妖精たちは、その魂を、聖なる光として森の奥深くに残しておいたのだ。
その聖なる光を浴びた者だけが、特別な力を持つことができるのだ……」
大地、洋平、俊介、はるな「妖精!?」
力「ああ! その時、森一番の物知りの猟師のおじいさんはそう言ったんだ」
大地「おい、待ってくれよ!」
力「えっ?」
大地「それなら俺も子供の時、同じ体験をしたぜ!」
洋平「大地もか!? 俺もだぜ……」
俊介「俺もだ……」
はるな「私も……」
力「そうか! 俺たちは子供の時、みんな同じ体験をしていたんだ。俺たちはその時妖精を見、声を聞く力を身につけたんだ!」
洋平「もう一度あの森へ行こう!」
俊介「ダメだよ!」
駆け出す傭兵を俊介が引き留める。
洋平「えっ……」
俊介「あの森はズタズタに切り開かれて、もうほとんど残っちゃいないよ……」
うなだれる洋平。
力「探し出すんだよ! この近くにもまだ昔のままの森…… 妖精の聖なる力を守っている森が残っているはずだ!」
大地「『ラキアの森』は!?」
力「!! ……そこだ!」
5人が妖精の守り神・聖獣ラキアの姿を思い返す。
自分たちに暴魔百族打倒を託し、星となって今も見守っているラキアを──。
力「そうだ! 傷つき弱ったラキアが傷を癒すために逃げ込んだあの森こそ、俺たちが探し求めている森に違いない!!」
ラキアの森を目指す5人に、ヤミマルが矢を放ってきた。
ヤミマル「今度という今度こそは逃がさんぞ!」
力「みんな、走れ!」
大地、洋平、俊介、はるな「おう!!」
ヤミマルが繰り出す矢の連射をかいくぐり、森の中を駆ける5人。
はるな「どこにあるの? 妖精の光はどこに……?」
そこへコブボーマが襲い掛かる。体当たりを受け、吹き飛ぶ5人。
さらにヤミマルも槍を手に迫る。
槍、銃、鎖鎌──数々の武器を駆使して5人を徹底的に痛めつけるヤミマル。
5人が傷つき、倒れる。
洋平「もうダメだ…… もうあんな森はないんだ!」
力「へこたれるな! 俺たちが地球を守らなければ、誰が守るんだ!!」
力に続き、反省した4人も立ち上がって身構えた。
力「みんな、行くぞ!」
大地、洋平、俊介、はるな「おう!!」
5人が駆け出す。
力がヤミマル、それ以外の4人がコブボーマに挑む。
力の首に鎖鎌の鎖を巻き付け、締め上げるヤミマル。さらに剣を取り出して振り下ろすが、力は渾身の真剣白刃取りで刃を受け止めた。
刃を押さえる力の右掌から真っ赤な血が流れる。
刃を押し込もうとするヤミマル。
力「この地球を守るのは…… 俺たちしかいないんだっ!!」
力の絶叫がこだました、その瞬間──森が、揺れた。
ヤミマルがたじろぐ。
地面が割れ、シーロンが放った命の光や、5人が浴びた光と同じ黄金の輝きが場に満ちていく。
恐れをなし、逃げ出すコブボーマ。
俊介「この光だ……」
聖なる光が安堵する5人の体を満たしていく。
力「あっ、パワーがよみがえったぞ! ……行くぞ!!」
大地、洋平、俊介、はるな「おう!!」
5人「ターボレンジャー!!」
5人が再びターボブレスを構え、スイッチを押した。
ターボレンジャーの復活だ。
ヤミマル「ぬううっ、おのれターボレンジャー!!」
レッドターボ「妖精の魂が、俺たちをよみがえらせてくれたんだ!!」
そこに太宰博士が通信を入れる。
太宰博士「よくやった、ターボレンジャー! Vターボバズーカも完成したぞ」
研究所内のVターボバズーカには、復元されたVターボエンジンが取り付けられている。
太宰博士「いつでもいいぞ!!」
自分たちの使命を再確認し、妖精の聖なる力に助けられた今のターボレンジャーには、コブボーマなど敵ではない。
怒涛の連続攻撃がコブボーマを追い詰める。
レッドターボ「Vターボバズーカの威力を見せてやる!!」
太宰博士「よし! ターボレンジャー、行くぞ!!」
太宰博士がVターボバズーカを戦場に転送。
5人がそれを受け取る。
レッドターボ「Vターボエンジン・オン!!」
唸りを上げるVターボエンジン。
Vターボバズーカにエネルギーが満ちていく。
ブラック、ブルー、イエロー、ピンク「レディ!!」
レッドターボ「マックス!!」
レッドがコブボーマに照準を合わせる。
レッドターボ「GO!!」
バズーカから撃ち出された黄金のエネルギー波がコブボーマに炸裂──する瞬間、ヤミマルがコブボーマを庇って立ちはだかる。
ヤミマル「負けるものか! 流星剣!!」
しかし、プラズマシュートを破った必殺剣技もVターボバズーカには敵わなかった。
コブボーマは跡形もなく消滅し、ヤミマルは爆発に巻き込まれて大きく吹き飛ばされ墜落する。
水たまりに突き刺さるヤミマルの剣。
ヤミマル「流星剣が負けるとは……!」
レッドターボ「見たか! Vターボバズーカの威力を!!」
悔しがるヤミマルの指笛を合図に、ヤミクモが暴魔再生巨大化光線を照射。
コブボーマが巨大な姿となって蘇生される。
レッドターボ「ターボマシン、発進!」
太宰研究所から5台のターボマシンが出撃。
レッドターボ「合体シフト・ターボロボ!!」
ターボレンジャー「チャージアップ! ターボロボ!!」
ターボマシンが合体してターボロボとなる。
剣を取り出してターボロボを切りつけるコブボーマ。
ターボロボはコブボーマの剣を真剣白刃取りで受け止め、パンチで反撃。光線銃・ターボガンでコブボーマの剣を弾き飛ばす。
地面に突き刺さるコブボーマの剣。
レッドターボ「ターボパンチ!!」
空中回転の勢いをつけたパンチがコブボーマを吹き飛ばした。
さらに地面に刺さったコブボーマの剣を抜いてコブボーマに投げつけ刺し、とどめにターボガンで撃ち抜く。
コブボーマが爆発四散し、最期を遂げる。
戦い終わって、力たちは傷ついたシーロンを聖なる光の噴き出す穴に連れていった。
聖なる光を浴びて、気を失っていたシーロンが目覚める。
はるな、大地「シーロン……!」
力「よかった…… 元気になってくれて」
シーロン「みんな…… ありがとう!」
ターボレンジャーは、今初めて、 自分たちの力の秘密を知った。
この大自然を一番愛する子供たちに、 妖精たちは、未来の戦士となるべく 素晴らしい力を与え、 いつまでも美しく、清らかな自然を 守るように、願いを託したのだ!
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最終更新:2020年12月25日 00:32