ポルトガルの公子ジョアン・フェレロはある日、父からの呼び出しを受けた。
(ジョアン)
「父上、わたしをお呼びとか」
(フェレロ公爵)
「おお、ジョアンか
剣術の腕はあがったかな」
(ジョアン)
「ええ、もっとも昔に比べてですが
父上と戦っても5本に1本取れれば良い方かと存じます」
(フェレロ公爵)
「ふむ、航海術は習得できたか」
(ジョアン)
「一応、学問としては修めました
ただし実践の伴わぬ学問ほど役に立たぬ物はございません」
(フェレロ公爵)
「さようか、ならば地理学には堪能になったかな」
(ジョアン)
「こればかりは、リスボンから出ることを許されておらぬ私には書物を通してしか学べません」
(フェレロ公爵)
「ジョアンよ
書物を侮るでないぞ、窮地を救うのは先人の知恵と心せよ」
(ジョアン)
「はっ」
(フェレロ公爵)
「ときにジョアンよ
リュートの腕前はどうじゃ?」
(ジョアン)
「あれは余技です
とても人前で弾けるほどのものではありません」
(フェレロ公爵)
「そうかな、ご婦人方の評判はかなり良いとクリスはいっておったが」
(ジョアン)
「ご冗談を」
(フェレロ公爵)
「ははは、いつか機会があれば聞かせてもらおう
ジョアンよ」
(ジョアン)
「はっ」
(フェレロ公爵)
「今日はお前に告げることがある」
(ジョアン)
「何でしょうか」
(フェレロ公爵)
「お前も知っておろうが、わしがお前の年頃には艦隊を率いて海賊退治をしておったものだ」
(ジョアン)
「はい、存じております」
(フェレロ公爵)
「これまでお前にはこの港から外に出ることを禁じておったが、それはお前の未熟を危惧してのことだ
だが、フェレロ家の者をいつまでも陸で過ごさせる訳にはゆかん
お前の知識はすでに十分、後は実践を積むのみだ
ポルトガル海軍大臣兼宰相レオン・フェレロの命と心得よ、お前はこれより探索に赴け」
(ジョアン)
「はっ」
(フェレロ公爵)
「プレステ・ジョアンの国を見つけ出せ
厳し過ぎる処遇とは思うが、見つけ出すまでこの館に戻ることも許さぬ
さらには街の者にはお前を平民として扱うように布告するゆえ、心いたせよ
お前の船は造船所に造らせておる、その間に出発の支度をしておくのだ
ロッコ、ロッコはおらぬか」
(老航海士ロッコ)
「へい、控えておりやすぜ」
(フェレロ公爵)
「お前にジョアンの教育係を命ずる
こいつを、一人前の船乗りに仕込んでくれ」
(老航海士ロッコ)
「わかりやしたぜ、提督
じゃねぇや公爵閣下」
(フェレロ公爵)
「わしの息子だと遠慮せず、存分に鍛えてやってくれ」
(造船所にて)
(老航海士ロッコ)
「よお、船はできてるかい」
(造船所の親父)
「なんだ、ロッコか
ちゃんとできてるぜ
レオン公爵の命令で、あの方が初めて乗ったのと同じラテン級の船にしておいたぞ
船名は『ヘルメスⅡ世』だ
三角帆で初心者にも操りやすい船だぜ」
(教会にて)
(フェリペ司祭)
「おお、ジョアン殿
ようこそおいでいただきました」
(ジョアン)
「司祭様、何か御用がおありと聞きましたが」
(フェリペ司祭)
「さよう、実はあなたにお願いがあるのです
エンリコ、エンリコ神父
こちらに来なさい」
(エンリコ神父)
「はい、司祭様」
(フェリペ司祭)
「彼はフランシスコ会から派遣された宣教師でエンリコといいます
ところでジョアン様、法王庁が東方への布教を望んでいるのは御存知ですね
折り入っての頼みとは、彼をジパングの地へ送り届けて欲しいのです」
(ジョアン)
「ジパングですって!
父の話では遥か東の彼方に浮かぶ美しい島だと聞きましたが
今の私には無理です
まだインドはおろかイベリアの地から離れたこともないのですよ」
(エンリコ神父)
「しかし、彼の地にはまだ神の教えが入っておりません
幾多の民が我らの教えを待っているのです
とにかく、法王庁は私に布教を命じました
お願いです何年かかっても構いません
私をジパングに連れていってください」
(ジョアン)
「そこまでいわれるのでしたら引き受けましょう
ただし、本当に何年かかるかわかりませんよ」
(老航海士ロッコ)
「いいんですかい、坊っちゃん
安請け合いしちまって」
(ジョアン)
「確かにジパングは遠いだろうけれど、時間をかけて少しずつ進んで行けばいつかはたどり着くさ」
(老航海士ロッコ)
「それもそうですね
坊っちゃん」
(出港所にて)
(老航海士ロッコ)
「ところで坊っちゃん、差し当って何をなさる気ですかい」
(ジョアン)
「ああ、とりあえずあちこちの港を見て回ろうかと思うんだが」
(老航海士ロッコ)
「そいつはあんまり賢いやり方じゃありやせんぜ」
(ジョアン)
「どうしてだい?」
(老航海士ロッコ)
「資金ですよ、船を動かすにはとんでもなく金がかかるもんですぜ
水はタダだからいいとして、水夫を集めたり食糧を買ったりで大変な出費でさあ」
(ジョアン)
「この金貨じゃあ不足だっていうのかい」
(老航海士ロッコ)
「ええ、まあなんとか1カ月は保つでしょうが資金を使い果たしてからでは遅いってことですよ
あちこちの港を見て回るのに関しては大賛成ですがね」
(エンリコ神父)
「ロッコさんは同時に交易をするべきだとお考えなのですね」
(老航海士ロッコ)
「そうそう、その通りでさあ」
(ジョアン)
「しかし、交易といっても何を買ってどこで売れば良いのか分からないからな」
(エンリコ神父)
「たとえばリスボンならその特産品、岩塩を買うべきでしょうね」
(ジョアン)
「………」
(エンリコ神父)
「わたしは以前、教会で会計係をやっていましたからわかるのですよ
この港で金貨40枚程度で買える岩塩は地中海の別の港では金貨60枚以上で売れる筈です」
(老航海士ロッコ)
「提督、エンリコ神父は会計に明るそうですから主計長になってもらったらいいんじゃないですか」
(YESにするとそこで任命される)
(ジョアン)
「そうですね、ではお願いしましょう
それから、ロッコには副長を頼むよ」
(エンリコ神父)
「そうそう、私は今まで寄稿した先の物価をある程度覚えています
積荷一覧で積載している積荷を選択すれば、その商品をどこで売れば最も利益が上がるかをお教えしますよ」
(出港して数日後)
(老航海士ロッコ)
「坊っちゃん、大変です
密航者を見つけやしたぜ」
(ジョアン)
「ロッコ、頼むから提督って呼んでくれないか
しかし僕の船に乗り込むとは物好きなやつだな」
(老航海士ロッコ)
「感心している場合じゃねえでしょう
ほれ、こいつでさあ」
(密航者)
「いたたた、何をする
乱暴者め!」
(老航海士ロッコ)
「何が乱暴者だ、この野郎」
(ジョアン)
「まあまあ、ロッコよさないか
なあ、君は何て名前だ?」
(密航者)
「今日は何曜日だ?」
(ジョアン)
「日曜日だが」
(密航者)
「なら、ドミンゴ(日曜)にしよう」
(ジョアン)
「名前を言いたくないのか
まあいい、そんなにこの船に乗りたいのなら構わないさ」
(老航海士ロッコ)
「坊っちゃん、じゃねえ提督
本気ですかいこんな得体の知れねえ薄汚い野郎を仲間にするなんて?」
(ジョアン)
「まあいいじゃないか
仲間が多い方が楽しそうだ
エンリコ神父はどう思いますか?」
(エンリコ神父)
「神の前には人は皆平等です
これは髪の与え賜うた試練かも知れません」
(老航海士ロッコ)
「ちっ、仕方ねえな
おい、小僧!
提督がお目こぼしで乗せてくれるってよ、感謝しろ」
(密航者)
「ありがとう、感謝するよ」
(ジョアン)
「しかし姓がないと不便だな
そうだ明日のことをイスパニアの言葉でマニャーナというんだ、それにすればいい」
(密航者)
「ああ、結構だ」
(ゲーム本編開始)
最終更新:2021年05月22日 14:22