大志はコーチの京に、謎の青年グーや変身のことを秘密にしたまま、車椅子レースの特訓を続ける。
しかし京が怪獣に襲われ、大志は変身して京を救う。
危機は脱したものの、京はショックから脱しきれない。
京「あれは何なんですか!? 何であんなものが襲ってくるんですか!? 大志くん、私に『強くなりたい』って言ってたけど、まさか、あんなのと戦うためだったの!? 『コーチの私には何でも話して』って言ったのに、何で話してくれなかったの!?」
大志「それは……」
源「すみません、俺が大志に口止めしてました」
京「だったらちゃんと説明してください! なんで大志くんが変身とかしてるんですか!? 彼は誰!? 何者!?」
モーメン「あぁ、彼は宇宙からヤッテ来て……」
赤城「モーメン!?」
京「宇宙からって!? そ、そんな……!? 無理…… か、帰ります……」
大志「深井さん! 怖い思いをさせてしまって、申しわけありませんでした」
大志は、深々と頭を下げる。
京「……次の記録会は、どうするつもりなの?」
大志「もちろん、出たいです」
京「なら、私と一緒に来て! うちの大学に合宿所があるから、そこに避難して! トレーニングに専念するの!」
大志「それは…… できません」
京は無言で立ち去る。
後日、京は大学院の食堂で、大志たちのことを思っている。
坂本が背後から、京の肩をポンと叩く。
坂本「よぉ」
京「きゃ、きゃあっ!!」
京が過剰に驚き、食器を落とす。
京「あ、す、すみません!! 私、またトカゲが襲ってきたのかと……」
坂本「トカゲ?」
京「あ、いえ…… すみません、大丈夫ですか?」
坂本「それは、私が君に聞くことだ。──何があった?」
京「……絶対に、信じられないことが起こったら、どう対処すればいいんでしょうか?」
坂本「どの程度の、信じられないことによるんじゃないかな」
京「大志くん…… 怪物を退治するって言いだしたんです」
坂本「……?」
京は真剣に、坂本を見据える。
坂本「──なるほど、真面目な話のようだ。怪物退治?」
京「はい。遥か、宇宙の彼方からやって来たんです」
坂本「つまり、トカゲのような宇宙怪物?」
京が、怪物に襲われた傷跡を見せる。
坂本「まともに信じられる話じゃないが、君が心底怯え、激しく動揺していることは、手に取るようにわかる。だから、その、なんだ…… トカゲ? それも信じよう」
京「はい……」
坂本「彼は、大丈夫なのか? 彼の家族や、工場の人たちは?」
京「はい。というか、あれと戦って、追い返したりしてて」
坂本「戦った? まさか、『シュワッチ』とか、変身して?」
坂本がおどけて、ウルトラマンを真似たポーズをとる。
京の真剣な様子は変わらない。
坂本「マジか…… はぁ……」
京「私…… もう、続けられません。申しわけありません」
坂本「……心底そう思うなら、辞めなさい。『命の危険を冒してまで続けろ』なんて、誰にも言えるわけはない。ただ──」
京「ただ?」
坂本「少し残念かな。君なら、一度は大きな挫折を経験した君なら、大志くんのコーチを任せられると思ったから」
京「……」
坂本「大志くんが陸上を続ける気でいるかどうか、それだけは確認してくれ。君が辞めたら、別の誰かを捜してやらなきゃならない。君を紹介した私の責任もあるし」
京「別の誰かって、自衛隊か何かじゃなきゃ無理ですよ! もし彼が続ける気なら、そのコーチも一緒に戦うことになるかもしれないんですよ!?」
坂本「『選手とコーチは一心同体。アスリートが死ぬ気で努力するなら、コーチも命がけで付き合う』── 一般論だ。『一緒に宇宙怪獣と戦え』なんて、どんなコーチングマニュアルにも書かれてない。君は彼と距離を置きなさい。それが一番だ」
京は、大志の練習場をそっと覗く。
大志は単身、車椅子レースの特訓に励んでいる。
(大志『俺に誰かを守ることなんて、できると思いますか?』)
大志くん、あのとき……
(大志『俺にだって、限界はあるんだよ!』)
京が大志の前に進み出る。
京「次。バトルロープ、いくよ!」
大志「深井さん!? どうして?」
京「選手が逃げないのに、コーチが逃げるわけにはいかないでしょ? そりゃ、今だってあの怪物は怖いし、見たくもない。でも、それは大志くんも同じだよね?」
大志「深井さん……」
京「陸上を続けるって話、信じていいの?」
大志「……もちろんです!」
京「大志くんが本気で陸上を続ける気持ちがあるなら、私も戦う。だって──」
そう。私、言ってたよね……
京「選手とコーチは、一緒に戦うバディだから!」
大志「深井さん……!」
京「あんな怪物には邪魔されたくない。とにかく、トレーニングのときは集中。今できることに集中するの。あっ、でもそれは、ただ練習をこなすってだけのことじゃなくて──」
源と理央が駆けこんでくる。
源「大志ぃ!! っと、深井さん!?」
理央「グーがいなくなっちゃった!!」
大志「えっ!?」
理央「『僕はここにいちゃいけない。けど、どこにも行けない。だから僕は隠れる。絶対に捕まらないように』って」
大志「どういうこと? なんか、怯えてる感じ」
源「あれだ……!」
大志「あれ?」
源「あれを解明すれば、きっとグーのことがわかる。たぶん……」
大志「だから、あれって何!? 親父?」
大志たちに京や工場一同も加わり、第1話でも大志たちが参拝していた、友裡神社へやってくる。
源は一同に、神社の神体を見せる。
源「これだ」
理央「ご神体じゃん、これ」
源「こいつの秘密を解く」
京「秘密って何ですか? これは一体……」
源「大昔、双子星の秘密がこの中に収められたと聞いてる。ただ、何やっても開かない」
理央「お婆ちゃんから教わってた。開けるんじゃない、ご神体の言葉を聞くの」
大志「えっ? これ、喋んの!?」
理央が神体に、手をかざす。
理央「アレット・タエラ── アレット・タエラ── 源さん、トキエ婆ちゃんが『ありがとう』って言ってる」
光があふれ、空中に太陽系の姿が浮かび上がる。
そして、それとそっくりなもう一つの恒星系の姿。
地球とアラート星は、
数十万光年離れた別の銀河にありながらも
互いの命をシンクロさせた、
双子のような存在なのだと、ご神体は、
私たちの心に直接、語りかけてきた。
どちらかが熱を出せば、もう一方も熱を出す。
そんな、双子のような星。
その双子星に住む、とある種族には、
数世代に1人、
とてつもない力を持つ者が生まれるという。
それがどんな力かっていうと……
人間と無機物を植物の力に変える。
これを「緑死(りょくし)」という。
地球とその文明を緑化させ、
アラート星そっくりな星に変えてしまう
強大な力と、ご神体は語った──
京「……って、理解の限界、越えてるんですけど!?」
若林「もしかして、グーがその、数世代に1人の!?」
源「赤い角の女の狙いは、グーのそのパワーか」
大志「えっ? じゃあ…… グーは、人類殲滅兵器ってこと?」
理央「グーが怯えてたのは、それを教えられちゃったから?」
京「赤い角に捕まるわけにはいかない。だけど逃げようにも、地球から離れることも今はできない。だから──」
大志「身を隠すしかない、ってこと? そんなの駄目だよ! グーはどこに!?」
神体が光を放ち、どこかの地を指す。
源「何だ!?」
理央「グーのいるとこ、教えてるのかも?」
大志「じゃあ、行こう!」
理央「ちょっと!? 私、『かも』って言ったんだよ!?」
源「可能性があるなら動くのみだ。君たちはご神体を頼む」
若林「あ、頼まれちゃった……」
大志、源、京、理央が、光の指した辺りを捜しまわる。
源「どっちだ?」
理央「なんで私がわかると思うの?」
大志「『こっちかも』みたいなこと言ってくれるかなって」
源「『かも』はいいから! じゃあ大志、理央、こっちへ。深井さん、我々はこっちへ」
一同は手分けして、グーを捜す。
大志「グー!」
理央「グー!」
大志「……理央、こっち!」
理央「ちょっと、何!?」
大志が理央を連れ、木陰に身を隠す。
アラート星から来た怪物ラゲルトが、頭上で空を舞っている。
大志「あいつもグーを捜してるんだ」
理央「早く見つけなきゃ…… グーを1人にしとけない」
大志「……こんな真剣な理央、初めて見た」
理央「グーは生まれて初めて、『私でも何かできる』って思わせてくれた人だから……」
大志と理央は、グーの捜索を続ける。
理央「大志はさ、何があっても前向きだったじゃん。馬鹿みたいな夢も本気で語っちゃってさ。でも私には、やりたいことなんて何もない…… 『何のために生きてんだろ。生きる意味あんのかな』って。でもグーの絵文字を読めて、初めてみんなの役に立てた気がして、すごく嬉しかったんだ。『生きてていいんだ』って言われてるみたいでさ」
大志「ずっと前から…… 理央は俺らの役に立ってるよ」
理央「?」
大志「俺は、理央がいてくれるだけで嬉しい」
理央「やだ…… 告ってる? この非常事態の真ん中で」
大志「いや、そうじゃなくて──」
不意に脳裏に、グーの姿が浮かぶ。
大志「理央!」
理央「何? どうしたの?」
一方の源と京。
源「すいません、こんなことに巻き込んでしまって……」
京「いいんです。大志くんのコーチになるってことは、私が決めたことですし、ここで中途半端なことしたら、絶対後悔しちゃいますから」
大志たちが、源と鉢合わせする。
源「大志!?」
大志「親父! 頭ん中で、グーが俺に助けを! こっち!」
グーが頭に血を流して倒れている。
大志「グー! 親父、手伝って!」
源「大丈夫か!? おい!」
ラゲルトの声が迫ってくる。
大志が変身し、手を宙にかざす。
周囲に無数のツタ植物が張り巡らされ、大志たちを覆う。
理央「大志、すげぇ……」
大志「シッ!」
ラゲルトは大志たちの姿を見失ったように、飛び去ってゆく。
グーは森宮家に連れ戻され、意識を取り戻し、傷の手当てを受ける。
グー「ダイシ……」
理央「喋った!?」
それ以上は喋れないようで、空中に絵文字のメッセージを表示する。
理央がそれを読み取り、通訳する。
理央「『君たちを巻き込んでしまった』──」
大志「今さら何言ってんだよ」
源「お前さんが人類絶滅規模の危険物なら、そこらへんに放っとけんしな」
理央「『僕のせいで』──」
大志「待って、読まなくてもわかる」
赤城たちは工場で、大志のために、レーサー用車椅子を戦闘用に改造している。
赤城「レーサーでいくって選択、間違ってないですよね」
若林「強度より速さだ。どのみち向こうの攻撃をまともに食らったら、どんなに強度を上げたってもたない。なら攻撃を受ける前に、素早くよけられるほうがいい」
理央が顔を出す。
理央「モーメン、できた?」
若林「えっ、何何?」
モーメンがボディのロゴを示す。
英字の「G AND D」をデザインしたロゴが描かれている。
若林「あっ! グーと大志で、ジー・アンド・ディー!」
赤城「じゃなくて、ガンディーだ!」
モーメン「ノーノー!」
理央「もっと、ヒーローらしく! せーの!」
理央・モーメン「ガンディーン!!」
理央とモーメンがポーズを決め、その姿に番組ロゴが重なる。
若林「え~、何それ?」
赤城「やりたいやりたい!」
若林「せーの!」
一同「ガンディーン!!」
源まで加わっている。
源「ガンディーン…… 何?」
グーは一同に、輪状のカッター武器を示す。
赤城「おぉ! 凄い!」
若林「グー、それ使っていいの?」
モーメン「でも、何に使います?」
一同「ホイール!」
源「ハンドル! ……あっ、違う?」
大志は京のコーチのもと、より一層、練習に励んでいる。
京「もっともっと! ほら、視線! 上に上げて! 下げないで!」「もっと大きく、上まで降って! そうそう、いい感じ!」
源が練習場に飛び込んでくる。
源「大志! またトカゲが出たぞ!」
大志「どこに!?」
そして場面は、第1話冒頭の場面となる。
テレビのニュースが、街中に現れた怪物ラゲルトのことを報じている。
アナウンサー『午後2時頃に現れた巨大生物は依然、破壊行為を続けています。その影響で、近隣では停電が起き、交通網も麻痺して…… あっ、あちらをご覧ください! 巨大生物が見上げる先に、人影が!』
ビルの上に、グーを狙う謎の女、大志たちが言うところの「赤い角」のラルーがいる。
京「あの女!?」
ラルーが宙に、絵文字のメッセージを描き出す。
若林「女からの絵文字!?」
アナウンサー『これは、何かのメッセージなのでしょうか?』
理央「『お前の視線を感じる。逃げても隠れても、お前の種族は救えない。それがわからないのか』── どうするのよ、大志!?」
大志「どうするも何も……」
戦闘用の車椅子「ハイパーホイール」は、すでに完成している。
大志「グーは、俺が守る。もちろん、みんなも」
源「……大志の覚悟は決まった。君はどうする?」
源がグーを見やる。
グーは静かに頷き、大志を見据える。
工場の外で、グーが手をかざす。
光があふれ、宙に穴が開く。
大志はハイパーホイールに乗り、装甲に身を固めたヒーロー・ガンディーンに変身する。
怪物ラゲルトが街中で、暴挙を続ける。
空間を突き抜けて、ガンディーンが姿を現す。
ガンディーンが突進して、火炎放射を見舞う。
ラゲルトはそれをかわし、ガンディーンを跳ね飛ばし、自らも翼で宙を舞う。
ガンディーンが蔓草を伸ばして、怪物にしがみつく。
ビルを砕きつつ、空中戦が続く。
ガンディーンが振り落とされ、どうにか地上に着地する。
ラゲルトは地面を砕きつつ、激しく突き進んでくる。
そこへガンディーン同様、空間を突き抜けて、京の運転する軽トラックが飛び出す。
京のトラックがラゲルトをはね飛ばして、ガンディーンを窮地から救う。
京「大志くん!」
ガンディーン「深井さん!?」
京「グーからの伝言! 『あの怪物は、ただ操られてるだけ。だから怪物を止めるなら』──」
ガンディーン「あの女を!」
ラゲルトは翼で宙を待っている。
ガンディーンのハイパーホイールから、グーに託されたカッターが伸びる。
ビルの垂直な壁を駆け登って大ジャンプ、カッターでラゲルトに攻撃をしかける。
ガンディーンと戦いの様子が、テレビで報じられている。
源や理央たちが、固唾を飲んで見入っている。
アナウンサー『現在、香布市駅前から、中継でお送りしています。午後2時頃に現れた巨大生物は……』
源「俺たちはチームだ。サポートするぞ!」
一同「えっ!?」「ちょ、ちょっと」「まさか、社長さん!?」
源が、大志のために作っていたロケットを示す。
源「こいつをミサイルにする。尻に火ぃつけてぶっ飛ばせばいい。んなもん、花火と同じだ」
若林「でも町にミサイルだなんて、無茶です!」
源「グーの力を使えば、あの怪物の真ん中まで一瞬で飛ばせる。だよな、グー?」
グーが力強く、サムズアップを決める。
グー「グー!」
赤城「……だったら、私たちもやりますよ!」
モーメン「地球の一大事ダア!」
若林「怖気づいてる場合じゃねぇな!」
源「おい理央、当たったら痛そうなもん、何でもいいから集めて来い! 弾頭に詰め込む!」
理央「はい!」
源「やるぞぉぉ!!」
一同「お──っ!!」
ガンディーンはラゲルトに捕らわれて、絶体絶命。
源「カウントダウン、開始!」
若林「10…… 9…… 8……」
源「7654321! 点火!」
赤城「う、嘘ぉ!?」
ミサイルが噴煙を上げて、飛び立つ。
工場の上空から、グーの力で空間を超えて、ガンディーンのもとへ飛び出す。
ガンディーン「無茶だろ、親父!?」
ミサイルがラゲルトに炸裂する。
大爆発と共にラゲルトが落下、ガンディーンも解放される。
京「よしっ!」
源たちが、煤だらけの真っ黒な顔で歓喜する。
一同「やったぁ──!!」「大志! 大志!」
ラゲルトが地上に叩きつけられ、ガンディーンも着地する。
ラゲルトは片翼を失い、再び地上戦となる。
ガンディーンは攻撃を避けつつ、矢のように疾走する。
しかし連続攻撃を避けきれず、ハイパーホイールから投げ出されてしまう。
ガンディーン「駄目か……!?」
(京『やる前からできないなんて言わないで。やれるだけ、やってみるしかないっしょ!』)
京「大志いぃぃ──!!」
ガンディーンが体一つで、ラゲルトの体にしがみつく。
ガンディーン「やれるだけ、やってみるしかないっしょ!!」
そのまま、腕2本だけで力強く、ラゲルトの体表をよじ登り、頭上までたどり着く。
ガンディーン「うぅおおぉぉ──!! どりゃああ!!」
渾身の鉄拳を叩き込み、ラゲルトの額の角が砕け散る。
ラゲルトが制御を失って倒れ、ガンディーンが宙に投げ出される。
京はとっさにトラックに乗って、その真下へと走り出す。
ガンディーンが手を伸ばす。
京が腕を伸ばす。
2つの手が空中で結ばれる。
京のトラックが走り去る。
ラゲルトが倒れ、完全に動きを止める。
ラルーは絶叫しつつ、姿を消す。
その様子を、誰かが密かにスマートフォンに収めている──
その夜。
源は工場で、巡査の聞き込みに応対している。
源「いやいや。『ミサイル』ってお巡りさん、ちょっと待って。花火、花火です。火薬が多くてね、ちょっと……」
巡査「中で何やってんの?」
源「うちは、夢と希望を作ってます」
巡査「みんな顔、真っ黒だけど、何?」
源「いや、ちょっと花火に火つけたら、ちょっと……」
巡査「いや、花火にしちゃ規模が大きいでしょ?」
テレビのニュースで、ガンディーンの戦いが報じられている。
アナウンサー『現場の瑞原です。競技用の車椅子に似たあの乗り物には、こんな文字が── これは、ジー・アンド・ディーと読むのでしょうか?』
理央「じゃなくて、ガンディーン!」
源「あ~、参った参った。何とかごまかせたけどなぁ」
若林「もう、あのロケットに何年かかったと……」
源「大志が無事なら、また何年かかったって、作り直しゃいいだろ」
赤城「まぁ、確かに……」
京「もう、大志くんたちは安全なの?」
グーが頷く。
大志「今日は、グーを守れた。だから、きっと明日も大丈夫」
理央「宇宙船が直るまでここにいるならさ、言葉おぼえなよ。通訳は、私のやりたいことじゃないし」
大志「おぉ? 何か、やりたいこと見つかった?」
理央「やりたくないことは何かってこと、リストアップすることにした! 通訳はその1番目」
源「炊事のバイトは何番目だ? あ~、腹減ったぁ!」
理央「バイト代、上げてね! ここ結構、危険な職場だし!」
グーが大志を真似るように、拳を突き出す。
大志が拳を重ね、白い歯を見せて笑顔を返す。
グーもかすかに、頬を緩めて応える。
どこかの部屋。
黒い服の怪しげな男たちが、書類とガンディーンの写真を見ている。
「穏便に処理したと、本庁から連絡が」
「この男の持つ力…… 興味深いね」
「すでに捜させています」
男たちの目の前で、シャッターが開く。
防護服姿の作業員たちが、怪物ラゲルトの死体の解析に当たっている。
青空の下の競技場。
大志が京のもとで、車椅子レースの準備を進めている。
私の大志くんの前に立ちはだかる壁。
それがどんなものであっても、
これからは一緒に乗り越えていく。
そう、もう迷わない。
だって── だって私は、
大志くんのコーチで、バディなんだから!
大志「深井さん、誰と話してるんですか?」
京「あっ、何でもない! じゃあ、行くよ!」
「オン・ユア・マーク。セット・ゴー!!」
大志が勢いよく駆け出す。
青空がどこまでも広がっている。
その向こう、不穏な空気を予感させるように暗雲が満ち始め、雷が不気味に鳴っている──
最終更新:2021年07月23日 21:12