勇者ヨシヒコと悪霊の鍵の第1話

ぼうけんを はじめますか?▼

 はい
▶いいえ

え?
もういちど ききます
ぼうけんを はじめますか?▼

 はい
▶いいえ

いやいやいや なんでよ
マジで もういっかい きくよ
ぼうけんを はじめますか?▼

 はい
▶いいえ

なにいってんの? おまえ
バカじゃねえ
「はい」を えらばないと
なにも はじまんないよ!
こんしゅうも
「マジすかがくえん3」に
なっちゃうよ!
そのほうが いいやとか
いってんじゃねえよ!
いや
ほんと
おどすわけじゃ ないけど
もういっかい きくからね?▼

ぼうけんを はじめなくても いいですか?▼

 はい
▶いいえ

はい
ひっかかった~~~~~~▼


それでは ぼうけんを はじめます



伝説の勇者が魔王を倒してから百年……。
何者かによって魔物の封印が解かれ、
世界は再び、悪の支配に落ちようとしていた……。



ここは カボイのむら▼

村人「もう少しだ!」「がんばれ!」
村の女A「どうしたんだい? さっき出かけたばかりじゃないか!」
村人A「もうダメだ! もう、魔物は村のすぐ外まで迫っとる」

むらびとの ひとりは
どくに おかされている!▼

村の女B「そんな! 村から三里は結界が張られてるはず……」
村人B「そんなもの、もうとっくに破られてる!」
村の女A「あっ!!」

バブルスライムが あらわれた!▼

村人B「あいつだ! あいつにやられたんだ!!」
村人C「村がやられるのも、時間の問題だ……」

ここは
この ての ゲームに よく ある
ものしり じいさんの いえ▼

村の長老「かつて、このカボイの村に『ヨシヒコ』という勇者がおった。ヨシヒコは、屈強な仲間たちと共に、魔王を倒し、この世に平安をもたらしたのじゃ…… どうじゃ、そなたたちの中に、我こそは悪を倒す勇者となるという者はおらぬか?」
村の若者A「私は、生まれつき体が弱い故、勇者などと大それたことは…… 失礼します」

むらのわかものAは たちさった。▼

村の長老「強そうだけどなぁ……」

むらのわかものAは
わりと ガタイが よかった。▼

村の長老「ロトヒコはどうじゃ? 名前は、とても勇者っぽい名前じゃがなぁ……」
村の若者B「気持ち的にはやりたいです。ホント気持ち的には、今すぐ冒険に出てもいい感じなんすけどねぇー…… いや、ホンット気持ち的にはぁ…… 気持ち的にはねぇー……」

むらのわかものBは
さんざん いいわけを ならべたてて
たちさった。▼

村の長老「……何的にダメなんじゃ? さて、お前は……」
村の若者C「無理っ!!」
村の長老「早いなー……」

むらのわかものCは にげだした!▼

村の長老「ああ、絶望じゃ。我々はもう、悪の手によって滅ぼされるのを、ただ待つだけなのか……」

そのひの よふけ
キズついた せんしが ひとり
カボイのむらに ながれついた。
そして よるが あけた。▼

村の長老「遠くローラシアからやってきた使いというのは、本当か」
戦士「本当だ。ローラシアの長老・ラボナの使い…… 俺の名は、オルダンだ」
村の長老「で…… この村に勇者ヨシヒコの血を継ぐ者がおるというのは、本当か」
オルダン「本当だ」
+ 【オンエア時にカットされたシーン】
村の長老「伝え聞いた話では、ヨシヒコは魔王との戦いの後、一度はこの村に戻ったが、すぐに世界の平和のために旅立ち…… そのまま、戻ってはこなかったと……」
オルダン「ラボナ様の占いによれば、この村に住む巨乳の女と、旅立つ直前にチョチョッと1回……」
村の長老「うん、その手の話は大体……」
オルダン「夜の……」
村の長老「もういい。もういい、それ以上は」
オルダン「………」
村の長老「……本当か? その末裔がおるというのだな?」
オルダン「ああ。『伝説の勇者ヨシヒコも、自分に子孫がいることは知るまい』ということだ」
村の長老「よもや、その子孫の姿かたちまで占いでお見通しなさったか」
オルダン「ラボナ様に不可能はねぇ! 俺は、こいつを、命がけで魔物から守ってきたのさ」

オルダンは
にんそうがきを みせつけた。▼

村人たち「おおーっ!!」
村の長老「これは……!!」

それから しばらくして・・・。▼

村人「あっ、いたいた。おーい、オルトガ! 長老がお呼びだ!」

ここは
この ての ゲームに よく ある
ものしり じいさんの いえ
の とこのま▼

じいさんは
てんに いのっている。▼

+ 【オンエア時にカットされたシーン】
村の長老「おお、神よ! なんという幸運をお与えくださったか! まさかこの村に、伝説の勇者の血を継ぐ者が生きておったとは…… これで、この世界は救われまする!」
オルダン「ラボナ様はおっしゃった。『勇者の血を継ぐ者が伝説の剣を手に旅立つ時、ひと筋の光が差し込む』と……」
村の長老「勇者の血を継ぐ者・オルトガに、力を与えたまえ!」
村人「オルトガを連れてまいりました」
村の長老「おお、来たか…… 早くオルトガをここへ!」

オルトガが はいってきた。
オルトガは まだ おさない
しょうねんだった。▼

オルダン「これが伝説の勇者の血を継ぐ者か……」
村の長老「オルトガ…… 突然じゃが、お前が伝説の勇者の血を継ぐ者だということが判明! そこに、勇者ヨシヒコが残していった伝説の剣がある。よいかオルトガ、よーく聞け。そなたはその剣を持ち、屈強な仲間たちを集め、何者かが持ち去った『悪霊の鍵』を手に入れ、魔物を再び封印するのじゃ。それが、勇者の血を継ぐそなたの使命じゃ! さぁ、今すぐ旅立つがいい! この世界に平和をもたらすため、勇者よ、再び旅立つのじゃあー!!」
オルトガ「……嫌だーっ!!」

オルトガは
しめいを どうどう きょひした!▼

村の長老「……え? なんで? なんで、『やだ』?」
オルトガ「子供だから」
オルダン「なるほど」
村の長老「子供だけどさぁ…… 勇者の子孫だしさぁ……」
オルトガ「勇者の子孫でも子供だし、こんな重たい感じの剣…… ほら、全然重たくて持てもしませんもん」
オルダン「なるほどね」
オルトガ「そもそも子供だから、旅立ったその日に間違いなく魔物に殺されますって」
村の長老「でも、ほら、最初はさぁ…… あの、弱ーい、あの…… 例のあの、『青いやつ』でしょ?」
オルトガ「いやいや、十分あいつにも負けますって」
オルダン「なるほどなるほど」

じいさんは
しつこく くいさがった。
しかし オルトガも
いっこうに ゆずらなかった。▼

オルトガ「逆に、なんで子供を1人で旅立たせようとしてたんですか? 逆に不思議」
村の長老「いや、あの…… なんか、あの…… 『っぽい』じゃん?」
オルトガ「『っぽい』の意味がわかんないっす」
村の長老「あるじゃない、あの、ほら…… 子供だった勇者がさぁ、少しずつ成長していく、物語的な?」
オルトガ「物語ですよね。これ、現実ですからね? しっかりしてくださいよ、長老」

オルトガは きっぱり いいすてた。
こういう ところは たしかに
ヨシヒコに にている。
オルトガは たちさった。▼

村の長老「ちょっ、ちょ…… ちょ、待てよ!」

じいさんは
だい1シーズンでも ネタになった
ぼうジャニタレの まねを しながら
オルトガを ひきとめた。▼

オルトガ「いや…… マジで行かそうとしてるなら、児童虐待で訴えますよ」
オルダン「そりゃまずいよ、そりゃ……」
村の長老「……勇者の子孫なんだぜ? 頑張ろうよ?」
オルトガ「子供は遊ぶのが仕事ですから。遊びを頑張ります」

オルトガは たちさった。▼

村の長老「何これ……」
+ 【オンエア時にカットされたシーン】
オルダン「……しゃーないな」
村の長老「……テメー噓ばっかついてんじゃねーぞ、この野郎!」

じいさんは やつあたりを した。▼

村の長老「なんだよ、そもそもオメーんとこの長老はよぉ!」
オルダン「いや、たまにはあるよ、こんなん」

じいさんは
オルトガに たよるのを あきらめ
てんに いのりを ささげた。▼

村の長老「ああ、天におられまする仏様よ。魔物の影が間近に迫り、今やこの村は、滅びゆくのを待つばかり。ああ、仏様、仏様よ! その姿を現し、この村を救いたまえ!」
村人A「長老、本当にこんなことをして村は救われるのですか?」
村の長老「これもまた、伝説の勇者の教え。『絶望の中で、天の仏を頼れ』と……」
村人B「そもそも、本当にいたのかい? そのヨシヒコってのは……」
村人A「貴様、長老に向かってなんてことを!」
村人B「だってそうだろ!? 天から仏が……」

ほとけが あらわれた!▼

仏「え、え、うそ、これ生クリームと何、カスタード、ダブルで入ってるの? うそ、マジで? あと、バナナと? イチゴと? アボカド? 入れすぎだよそれ。それ完全に入れすぎだろそれ、はみ出ちゃうよ食べたら。つーかさぁ、ねぇ、アボカドって合わなくない? うん…… うそ、合うの? マジで?」

ほとけは
クレープを たべている。▼

村の長老「仏ー! 仏よー!」
仏「まいうー。仏まいうー」

ほとけは
クレープを たべるのに むちゅうで
まだ こちらに きづいていない!▼

村の長老「仏ー!」

ほとけは
ようやく よばれていることに きづき
5かいほど げかいを チラみした!▼

仏「……え? これ、待って? 映ってんの? これ。これ映ってんの?」
村の長老「映っておりまする! この村をお救いになるために……」
仏「いやいや、聞いてない、全然、全然聞いてな…… おい、ちょっ、お前…… お前やれよ、お前! いや、だって、なんでって俺、クレープスタート直後だしさぁ……」
村の長老「仏よ、我々は魔物の手からどう生き延びればよろしいでしょうか?」
仏「え、何? また下界に魔物いるの? ねぇ? ……ん、何? ……『知らねーのかよ』って、知ってたんだったらお前が担当しろバカヤローお前!」
村の長老「仏は、勇者ヨシヒコをご存じか?」
仏「ヨシヒコね。はい、知ってますよ」
村の長老「我々は、再び悪と戦う勇者を探し求めておりますが、いまだ見つからず…… 過去に、幾多の若者が魔物に戦いを挑んだと聞きましたが、いずれも帰らず……」
仏「そりゃ困りましたね」

ほとけは
クレープを たべるのに むちゅうで
ろこつに たいどが わるい!▼

村の長老「なにとぞここは、仏のご助言をいただきたい!」
仏「ほら~、やっぱ…… アボカド合わないよ!」
村の長老「仏!! なにとぞ!!」

じいさんは
じゃっかん キレぎみに たのんだ。▼

仏「はい、ね、下界にね、魔物がね? 困ったね…… ちょっと、お前も考えろよ! ……え、なんだって? え、『ヨシヒコたちを生き返らせろ』って…… そりゃまずいだろうよお前……」
村の長老「ヨシヒコが、生き返るとな!?」
仏「うん、まぁ、あの…… なんとかなりますよ? でもアレでしょ? やっぱりあの、なんか、なんつーか、新しい人がいいでしょ? やっぱりニューフェイスがいいでしょ、やっぱね」
村の長老「いえいえいえ、そんなことない。ヨシヒコでいい!」
仏「いいの? マジで? ヨシヒコで? まぁ、そりゃ全然、なんとかなりますよ。うん」
村の長老「え…… あっ、じゃあ頼んます!」
仏「うん、わかりました。生き返らせます、はい」
村人B「案外簡単なんだな……」
村の長老「それでは、今まさに生き返らせてください!」
仏「あの、つーか、あの、ごめん、一瞬、一瞬待って一瞬。つーかさぁ、ねぇ、これさ、クレープ終わってからでよくない?」
村の長老「もう、今!」
仏「え、だって、手ぇベトベトだしさ……」
村の長老「ベトベトでもいい!」
仏「もう、えー、ホント? ……わかりましたよ、じゃあヨシヒコと、その仲間たちを、生き返らせます。いいですか? いい? ……なななな~~~~ん!!」

ほとけは
ふっかつの じゅもん?を となえた!▼

仏「ほい、これで生き返った」
村の長老「嘘だぁ…… そんなんじゃ生き返らん。なんだ今の、『ななななーん』って」
仏「……おいおいおいおい、びっくりだなおい。そりゃ…… 仏の勝手だろ? そうだろ? 違うの? ねぇ。『ななななーん』って呪文だぜ、それ」
村の長老「そんな呪文はない」
仏「おい、失礼だなおい、ジジイ…… ジジイ、え? あのな…… あの、大丈夫です。今頃、世界中のあちこちでね、ヨシヒコと仲間たちが生き返っているであろう!」
村の長老「『ななななーん』はない」
仏「しつこいな貴様。え? ……いや、あのね、正直なんだってよかったのよ、『るるるるーん』でもよかったの。ただ、気分的には『ななななーん』って気分だっていうの。それだけだよ」
村の長老「『る』の方がまだよかった」
仏「変わんねーだろ」

しかし ほとけの ことばどおり
せかいの あちこちにある
ヨシヒコたちの はかが
うごきはじめて いた!▼

メレブは いきかえった!▼

メレブ「ん? ……これどういうことだ!?」

メレブは あたりを みわたした。▼

メレブ「……ん!? なんだ!? 現世の香りするぞ、これ!? どういうことだ!? ん!? これ…… 生き返った感じがするぞ、これ!? なんだこれ!?」
仏「勇者ヨシヒコと、仲間たちよ……」
メレブ「この声、仏!」

ほとけが あらわれた!▼

仏「魔物たちの、封印が、何者かによって、解かれた」
メレブ「何食ってんだ、おい」
仏「まいうー」

ほとけは まだ
クレープを たべている。▼

仏「えー、再び、悪と、戦うのだ……」
メレブ「食べながらじゃ聞こえないでしょうよ!」
仏「戦えよ! ……まいうー」
メレブ「おい」
仏「え? もういいから戦えよ、もう……」

ほとけは クレープを たべながら
すがたを けした!▼

メレブ「おい!! そのクチャクチャクチャクチャ…… なんだかわからないスイーツを食べながら天のお告げって! どういうこった!!」

そのとき てんから
みっつの ひかりが さしてきた!▼

メレブ「はい、なるほどな。生き返ったなこれ、間違いなく。で、これヨシヒコ、ムラサキ、ダンジョーも生き返ると、そういう意味の光だー、な、これな。なるほど、よし、再び冒険が始まると…… よし!」

ダンジョーは いきかえった!
ムラサキは いきかえった!
ヨシヒコは いきかえった!
しかし なぜか さんにんとも
としおいた すがたで いきかえった!▼

メレブ「……ん? お? これ、なんだ? ん? これ…… なんだ……?」
老ヨシヒコ「メレブさん!」
メレブ「おっ、ヨシヒコ…… ではあるのな?」
老ムラサキ「ヨシヒコ……? あんたヨシヒコなの?」
老ヨシヒコ「ああ…… ダンジョーさん、お久しぶりです」
老ダンジョー「これはどういうことだ、ヨシヒコ」
+ 【オンエア時にカットされたシーン】
メレブ「うん、うん、うん、冷静になろう? ちょっとゆっくり考えよう?」

そういう メレブが
いちばん うろたえている!▼

老ムラサキ「悪い歳の取り方したねぇ、おっさんもヨシヒコも」
老ダンジョー「お前もだぞ、ムラサキ!」
老ムラサキ「うっせーよ、おっさん! レディーに歳のこと言ってんじゃなし!」
老ヨシヒコ「やめんか、ムラサキ。今、メレブさんが考えてくれているんだぞ」
老ムラサキ「どうせまともな答え出さないよ、こいつ」
メレブ「ババアになっても口減らねーな。まぁもともと胸は、減るほどなかったがな、もともと!」
老ムラサキ「てめえ! ぶっ殺すぞ!」
老ヨシヒコ「ムラサキ!」
老ダンジョー「ところで、謎は解けたかな? メレブ」
メレブ「うむ、うむ、うむ、うむ。わかったよ」
老ヨシヒコ「さすがです! ……で、どういう?」
メレブ「あのね? 俺たちは、再び魔物を封印するために、生き返らせられたのね、仏に」
老ムラサキ「ふーん、あのクソ仏にねぇ」
メレブ「そう、その…… ま、それはそれとして、確かにその…… 確かにあの仏、クソじゃん?」
老ダンジョー「ああ、クソだな」
メレブ「察するに…… 死んだ時の状態で、生き返らせちゃったね、仏ね」
老ヨシヒコ「死んだ時の状態で……!?」
+ 【オンエア時にカットされたシーン】
メレブ「うん、それは、困るね? この状態ではね」
老ダンジョー「そうだな……」

ムラサキの ようすが おかしい!▼

メレブ「仏!! どうすんだ、これ!? うんうん言ってるぞ!?」

メレブは
てんに むかって よびかけた。
しかし なにも おこらなかった。▼

老ダンジョー「現れる気配すらないな」
老ヨシヒコ「なんか疲れましたね」
メレブ「そうだな、そういうことだな。ま、もう、お年寄りだからな……」
老ムラサキ「あ~~~~、お茶飲みた~~~~い!! お茶~~~~!!」
メレブ「後であげるから。後であげるから! お前はなんで叫ぶんだ、そういう歳の取り方をしたかお前は……」

ヨシヒコたちは
ちかくの こやに いどうした。▼

老ヨシヒコ「そういうことだったのか」
メレブ「うん、そうなのよ。俺、みんなと別れたあと、魔法の修行に行こうと思って旅立ったんだけど…… 旅立ちました→道に出ました→牛が来ました→轢かれました→死にました→俺、終了。はい」
老ダンジョー「あれだけ呪文を手に入れて、牛に轢かれて死ぬとはな」
老ムラサキ「まぁ、どれも使えない呪文だったからな」
老ダンジョー「それでお前だけ若いのか?」
メレブ「そのようだ」
老ヨシヒコ「メレブさん、久しぶりに、どんな呪文でもいいからかけてください」
メレブ「変わらないな、ヨシヒコは。よかろう、スイーツ!」

メレブは スイーツを となえた!▼

老ヨシヒコ「……ああ、甘いものが…… とにかく甘いものが食べたい!」
老ムラサキ「こんなとこでそんなもん言われたってねぇ! お前、どうしてスイーツなんかかけたんだよ!」
老ダンジョー「どうするんだ、メレブ! 何もないぞ、甘いものなんて!」
メレブ「どうしようもないな」
老ヨシヒコ「持ってます……」
メレブ「何を?」

ヨシヒコは
おまんじゅうを ほおばった。
あんこの あまみが クチいっぱいに
ひろがる。
ヨシヒコの
あまいものたべたさが おちついた。▼

メレブ「うわ、なんだ、すごいジジイっぽい。っていうか、わー、おじいちゃんだ。おじいちゃんだ」
老ムラサキ「ふふふ、やっぱりお前はクソ魔法使いだね!」
メレブ「…………チョヒャド」

メレブは チョヒャドを となえた!
たしょう はだざむく かんじる
ていどの れいきを おこす
チョヒャドも いまの ムラサキには
とても たえがたい さむさだ!▼

老ムラサキ「うわー、寒い寒い寒い、寒いよー!! 寒いの弱いんだよー!!」
メレブ「だろうな、お年寄りめ」
老ヨシヒコ「しかし、仏はこんな私たちに、魔物と戦えとおっしゃるのか?」
+ 【オンエア時にカットされたシーン】
老ムラサキ「無理だよ。私が村へ帰った時、完全に普通の女の子に戻ってしまって、呪文はすっかり忘れてしまったよ」
メレブ「嘘だろ!? お前、生き返りの呪文まで覚えたんだぞ!?」
老ムラサキ「うん。それもすぐ、使えなくなったよ!」
老ダンジョー「歴戦の戦士だった俺も、さすがに晩年は衰えたからなぁ」
老ヨシヒコ「私も、晩年は勇者であることを疑われるまでに弱くなっていた……」
老ムラサキ「やめようぜ、戦うの。義務じゃないっしょ」
老ダンジョー「うーん、まぁなぁ……」
老ヨシヒコ「ダメだ! 再び世界が魔物に支配されている今、私たちが戦わずして誰が戦うんだ」
メレブ「うん、言うと思った、それ」
老ダンジョー「ヨシヒコ、お前にはかなわんよ」
老ムラサキ「マジで?」
メレブ「みんな、まかしとけ。1人だけ若い、クソ若い、ピチピチ若いこの俺が、次々と呪文を繰り出して、魔物たちを、倒そうぞ!」
老ヨシヒコ「お願いします、メレブさん!」
メレブ「うむ」

スライムが あらわれた!▼

老ダンジョー「この程度の魔物、俺が1発で仕留めてみせるわ!」

ダンジョーの こうげき!
しかし
つるぎを ふりかざした とたん
ダンジョーの こしが ひめいを
あげる!▼

老ダンジョー「うぐっ!! い、いかん…… こ、腰が……」
メレブ「おい、あんま無理すんなよ……」
老ダンジョー「メレブ、呪文で回復させてくれ」
メレブ「バンテリン! ……とかいう呪文ないんだ。な?」
老ムラサキ「メレブ…… ちょっと歩いたから、膝が痛いんだ。呪文、頼むよ……」
メレブ「グルコサミン! アンド、コンドロイチン! ……とか、だから、そういう呪文ねーんだよ。な?」
老ヨシヒコ「私が…… 勇者である私が、仕留めてみせます」

ヨシヒコの こうげき!
ミス!
スライムに ダメージを あたえられない!
ヨシヒコの こうげき!
ミス!
スライムに ダメージを あたえられない!▼

メレブ「まったく…… まったくダメージを与えられていない様子」

スライムの こうげき!▼

老ヨシヒコ「うわっ!!!」

ヨシヒコは
1か 2くらいの ダメージを うけた!▼

メレブ「弱い、相手も弱い。ここは、俺の呪文で……!?」

ヨシヒコは しんでしまった!▼

メレブ「ええーっ!? 弱すぎる、勇者! こいつに? 勇者…… おい……」

ヨシヒコは
ゲートボールを している。▼

老ムラサキ「ナイス!」
メレブ「ナイスじゃねぇじゃねーか」

ダンジョーは
サプリメントを つかった。
ダンジョーの かんせつつうが
やわらいだ
ような きがする。▼

老ヨシヒコ「いかん…… ふと気が付くと、いつもこの玉突きをしている自分がいる……」
+ 【オンエア時にカットされたシーン】
メレブ「おかげさまで、年寄りだから金は持ってるし、生き返るのはなんぼでもできそうだけどさ…… 敵に勝てない分、強くなっていく気がしないよね、これ」
老ヨシヒコ「しかし、仏様は、なんで私たちをこんな姿でよみがえらせたんだろう」
メレブ「そんな深い意味ないと思うよ。単なるうっかりだと思うよ」
仏「ヨシヒコ! ヨシヒコー!」

ほとけが あらわれた!▼

メレブ「やっと出たか、仏!! おい、見ろ、この…… この、素敵な面倒の数々を!! おい、なんでこんな感じにしてくれてんだ!!」
+ 【オンエア時にカットされたシーン】
仏「まぁ、その…… やいのやいのわめくな! この…… あの、ひとつひとつのパーツはまあまあなのに、トータルだと不細工なメレブよ」
メレブ「誰がトータル不細工だこの野郎、このペヤングフェイスが!」
仏「誰がペヤングフェイスだ! ちょっとうまいこと言うな、この…… 仁鶴師匠に謝れ!!」
メレブ「誰なんだ、仁鶴って!」
老ヨシヒコ「仏様! どうか、私たちを戦える年齢まで戻してください! でないと、いつまでたっても前進できません」
仏「うん、わかっておる。ただ、私が君たちをこのような状態でよみがえらせたのには、理由(わけ)がある」
老ダンジョー「どんな理由(わけ)だ!」
仏「なんだとお思いかな?」
老ヨシヒコ「若い力のありがたみをわかれということですか」
仏「うーん、そうではない」
老ムラサキ「人生の意味を知れとか?」
仏「そうではない」
メレブ「いいから早く言ってくれよ、っていうか言ってあげなさいよ。どうせ『うっかり』だろ?」
仏「私が君たちを死んだ時の状態でよみがえらせた、その理由(わけ)とは…… うっかりです!」
+ 【オンエア時にカットされたシーン】
メレブ「おい!! ホントぶっ飛ばすぞ、仏だろうがなんだろうが!!」
仏「来れるもんなら来てみろ~♪ YES!!」
老ヨシヒコ「うっかりだったら、今すぐ戻してください!」
仏「OK、わかりました、戻します戻します…… 仏ビーム!!」

ほとけは ほとけビームを はなった!
ダンジョーは
わかい ころの すがたに もどった!
ムラサキは
わかい ころの すがたに もどった!
ヨシヒコは
わかい ころの すがたに もどった!▼

メレブ「おおっ、ダンジョー!! 胸平らさん!! ヨシヒコ!!」

ムラサキは
メレブを にらみつけた。▼

ヨシヒコ「ありがとうございます」
メレブ「おい、あいつのうっかりだから、お礼とか言わなくていいぞ」
仏「というわけでヨシヒコよ、今回のお前の目的は、『悪霊の鍵』と呼ばれる、魔物たちを封印する鍵を取り戻すこと」
ヨシヒコ「悪霊の鍵……」
仏「お前が魔王を倒してから時は流れ、魔物たちの封印を解いた者がある。その者を探し出し、悪霊の鍵を取り戻すのだ。その…… ね……」

ほとけは あいかわらず
せりふを おぼえていないようだ。▼

仏「……封印だ、封印! その封印を、解いた者は、おそらく、悪魔族の者であろう。えー、魔物たちから、悪の力を、を? が? 集め…… すごい…… すごい大きな…… あの…… 力を持っているはず。ね。えー、もはや、そやつに勝つことは、お前とて、到底、容易なことではないず、『ないず』ってなんだよ! 『ないぞ』!」

ほとけは こんかいも
せりふを まちがえた!▼

仏「えー、戦いの末に力と、あの、アレを身に着け、アレ、アレ…… 勇気を身に着け、巨大な敵に立ち向きゃうのだ、『立ち向きゃう』って言っちゃった! 『立ち向かうのだ』!」
ヨシヒコ「しかし、魔王を倒した時点で我々も相当な力をつけていました。その敵を倒すのも時間の問題でしょう」
仏「うん、いやいや、ごめんごめん、あのね、ホントごめん。君らね、今ね、レベル0なの」
ヨシヒコ「なんだと……!?」
メレブ「なんでよ!? 魔王を倒したとこにしてよ!」
仏「うん、ごめんごめん、あの、ちょっとあの、そこでセーブしてなかったから」
メレブ「セーブってなんだ!」
ムラサキ「どこまでクソ仏なんだよ、テメー!」
ダンジョー「ありえん。まったくありえん!」
仏「ごめーん、ごめーん。今ちょっと急いでるのー。ちょっと今から家族旅行なのー」
メレブ「お前、家族いたんか!」

ほとけは
よていひょうを つかった。
ほとけは よていひょうの
「ほとけ4ごう」の らんに
よていを かきこんだ。▼

メレブ「なんだ、そのホワイトボードは。書くのか、予定をそこに。『かぞくりょこー』……!? ちょっと待て! お前、4号だったのか!?」
ムラサキ「1号出してこいよ、1号を!」
仏「じゃあ…… 家族旅行、行ってきまーす!」
ムラサキ「待てよ!!」

ほとけは にげだした!▼

ヨシヒコ「なんということだ…… レベル0とは……」

ヨシヒコは
はがねのつるぎを ふりかざした。
しかし ヨシヒコの たいりょくは
おとろえていた。▼

ムラサキ「あー…… ゼロな感じ出てるねー……」
メレブ「なんだろう、もろもろ記憶もあやふやだな」
ダンジョー「ということはメレブ、お前の呪文もゼロってことか?」
メレブ「いや、意識できている呪文が1つだけある」
ムラサキ「それ、回復の呪文だったら相当いいよ」
メレブ「お前にかけてやろう」

メレブは
なんらかの じゅもんを となえた!▼

ムラサキ「……ん? なんも起こんないけど?」
メレブ「見ろ。眉毛が太くなっている」

ムラサキの まゆげが
ごくぶとに なった!▼

ヨシヒコ「おおっ!!」
ダンジョー「うおぉ……!!」
メレブ「この呪文、『ヨシズミ』という呪文だよ」

メレブは
ヨシズミの じゅもんを おぼえた!▼

ムラサキ「つか、自分じゃ見えねーし。早く戻せよ!」
ヨシヒコ「メレブさん、私にもかけてください!」
メレブ「うむ、よかろう」

メレブは ヨシズミを となえた!
ヨシヒコの まゆげが
ごくぶとに なった!▼

ヨシヒコ「太く、なりましたか?」
ダンジョー「お、俺にも!」
メレブ「ダンジョー、お前にかけると顔がすべて眉毛になるぞ」
ムラサキ「つか、この呪文なんの役に立つわけ?」
メレブ「敵の眉毛を太くすることによって、目に汗が入るのを防ぐ……」
ムラサキ「助けてますよね? それ」

メレブは なんともいえない かおで
ムラサキを あおった!▼

ムラサキ「ムカつく~…… はよ戻せや」

ムラサキの ヨシズミが とけた!
ムラサキの まゆげは
もとに もどった!
ヨシヒコの ヨシズミが とけた!
ヨシヒコの まゆげは
もとに もどった!▼

ダンジョー「さて…… 悪霊の鍵、探しに行くか」
ヨシヒコ「すみません、その前に…… 故郷のカボイの村に寄らせてください」
ムラサキ「え? なんで?」
ヨシヒコ「殺生をせず、敵を眠らせるだけの平和の剣『いざないの剣』がそこに……」
メレブ「行こう。『殺生せぬ』は、ヨシヒコの信条だからな」

ヨシヒコたちは
カボイのむらへ むかった。▼

ここは カボイのむら▼

村の長老「お前たちは……」
ヨシヒコ「勇者ヨシヒコです」
村の長老「ああ…… 本当じゃった! 仏様がおっしゃったのは本当じゃった!!」
メレブ「やはり、疑っていたのだな」
ヨシヒコ「私たちは仏の命により、奪われし悪霊の鍵を取り戻す旅に出ます。その前に、私が死ぬ前にここに届けておくようお願いした……」
村の長老「いざないの剣じゃな? ……剣を! 剣を持て!」

むらびとが ヨシヒコに
いざないのつるぎを てわたした。
ヨシヒコは
いざないのつるぎを てにいれた。
ヨシヒコは
いざないのつるぎを そうびした。▼

ヨシヒコ「ありがとうございます」
村の長老「必ずや…… 必ずやこの世界に、再び平和をもたらしてくれ」
ヨシヒコ「はい」
オルトガ「ご先祖様!」

オルトガが あらわれた!▼

ヨシヒコ「今、なんと言った?」
村の長老「あなた様の子孫…… そう、勇者の血を継ぐ者…… オルトガでございます」
ヨシヒコ「子孫……? 私に子孫がいるのか!?」
オルトガ「私も勇者になれるでしょうか」
ヨシヒコ「勇者……」
ダンジョー「……どうだ。そなたも俺たちと、旅をしてみるか?」
オルトガ「はい! 伝説の勇者がご一緒ならば、旅にお供して、私も強くなりとうございます」
メレブ「ほほう、勇者が2人とは心強いな」
ムラサキ「1人、仲間が増えたってわけね」

オルトガが なかまに・・・▼

オルトガ「……しかし、ダメなんです」
村の長老「……なぜじゃ? 強い味方が、こんなにおるのじゃぞ?」
ムラサキ「そうだよ。お姉ちゃんたちが守ってあげるよ」
ヨシヒコ「そうだ、戦わずとも共にいるだけで戦闘レベルは上がる。最後の敵と戦う時には立派な勇者になっているはずだ」
オルトガ「それでもダメなんです……」
村の長老「なんだなんだ? お母さんと離れるのがさみしいか?」
ダンジョー「勇者たる者、そんなことあるまい」
オルトガ「そんなんじゃないんです」
ヨシヒコ「では、なぜだ? 正直に申してみよ」
オルトガ「実は…… スケジュールがないんです!」

オルトガは いそがしかった!▼

ヨシヒコ「す、スケジュールがないだと……!?」
オルトガ「すいません! ご一緒したいのはやまやまだったんですが……」
メレブ「……まぁ…… うーん…… 仕方ないよね…… スケジュールというのは、大切だからね……」
ムラサキ「旅、長いしね……」
ダンジョー「今どきの子供は、忙しいようだな」
メレブ「まぁ、彼は、あの、特別なんでしょう。あの…… いろいろと……」
ヨシヒコ「……わかった。ではスケジュールをこなしつつ、立派な勇者として成長するのだぞ」
オルトガ「はい!」

オルトガは おとなの じじょうで
なかまに ならなかった。
ヨシヒコたちは ふたたび よにんで
カボイのむらを たびだった。
ふいに ヒサが
きのかげから かおをだした。▼

ヒサ「兄様……」
メレブ「ヨシヒコ、今チラリと妹が見えた気がするが」
ヨシヒコ「そんなはずはありません。ヒサまでよみがえるなど……」
ムラサキ「あのうっかり仏ならありうるぜ」
ヨシヒコ「何……!?」

そのとき どこからともなく
らいめいが とどろいた!▼

仏「ごめんごめんごめんごめん、あの、またうっかり」

ほとけが あらわれた!
どうやら りょこうに いってきたのは
ほんとうだった ようだ。▼

メレブ「なんだ! 八兵衛か!」
仏「ごめん、ちょっとごめん、今のツッコミもう1回言って? もう1回言って、今の」
メレブ「何が? 合ってるだろ。なんで? 何度も言わせるなよ、恥ずかしいな。なんだよ」
仏「……えー、もう1つセーブポイントが、ありました!」
ヨシヒコ「えっ…… 一気に強くなれるんですね?」
仏「うん…… いや、ちょっとね、そうかな? そうじゃないかな? よくわかんない、ごめんなさい、あの…… 仏ビーム!!」

ほとけは ほとけビームを はなった!
ヨシヒコたちは
さいごに セーブした ばしょに
とばされた!▼

ヨシヒコ「ここは……」
メレブ「何か、見覚えがあるような……?」

ヨシヒコたちは
とりあえず あるきだした。▼

メレブ「呪文は増えた気がするが……」
???「ふふふふ……」

まおうガリアスが あらわれた!▼

魔王ガリアス「勇者よ! 私の本当の力を、思い知るがいいっ!!」

なんと ほとけが
さいごに セーブした ばしょは
いちど たおした まおうガリアスが
しょうたいを あらわす
ちょくぜんの ばめんだった!▼

ヨシヒコ「魔王……!!」
ムラサキ「これ、まずいっしょ!?」
ダンジョー「ひとたまりもないぞ!!」
メレブ「道具、何もねーし……」
ヨシヒコ「こ、これはまずいですよ仏……!! 仏ーーーーっ!!!!」


つづく▼

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最終更新:2023年10月14日 19:19