岡本太郎式特撮活劇 TAROMANの第1話

突然、大地を割って、森の中から怪獣「森の掟」が姿を現した。
東京へ向けて進撃を開始する森の掟。



1970年代のある日、
世界をべらぼうなものが襲い始めた。

突如現れた、アバンギャルドな怪生物。
大東京に迫るのは、山を削り、ビルを建てる
人類への大自然の怒りであろうか。



逃げ惑う人々「なんだ、これは!」「なんだ、これは!」「なんだ、これは!」
女性アナウンサー「各地は大混乱、『なんだこれは』の大合唱。まさに、地球危うしといった状況でございます」
ニュースの司会者「あんなでたらめでべらぼうな怪物、どうすればいいんですかねぇ?」
解説者・高津博士「私にはわかります。でたらめなものにはでたらめなもの、べらぼうなものにはべらぼうなもので対抗するしかありません」
ニュースの司会者「しかし、あれ以上にでたらめなものなんて……」

その時、宇宙のかなたから何かでたらめっぽそうなものが地表に落下した。
若い太陽のような顔をして、胸に巨大な単眼を持つ銀色の巨人である。



なんだ、これは!
そう、それは芸術の巨人「タローマン」である!




岡本太郎式特撮活劇
TAROMAN


第一回
でたらめをやってごらん




にらみ合うタローマンと森の掟。
ふいに、タローマンが体をくねらせ始める。

一般市民「なんだ、これは!」「怪獣の仲間よ!」「いや、味方だ。人間には見えない光線を出して、戦っているんだ」「あれは、怪獣をふしぎなおどりでなだめているんじゃ」

地球防衛軍CBGの戦闘機が、タローマンとニアミス。

CBG隊長「あの巨人は、敵ではなさそうだが……」

タローマンは団地の給水塔をもぎ取って中の水を一気飲みしたり、ビルの上に乗ったりしている。

女性隊員「もう! でたらめなことばっかりしてるじゃない」
高津博士「私にはわかります。あれはでたらめなことをやっているんです」

そんなタローマンの行動を見て、宙に浮いていた森の掟が苦しみだし、地面に墜落。

女性隊員「まあ、苦しそうよ!」
隊長「あの『でたらめ』が、効いているのか!」

場面は再びニュース番組のスタジオへ。

ニュースの司会者「なんだ、でたらめなことぐらい私にも……」
高津博士「では、今ここででたらめなことをやってみてください」
ニュースの司会者「……いや、私は人前では……」
高津博士「ほら、どうぞ。どうぞ」
ニュースの司会者「……おしりぺんぺん…… ガチョーン……」

一瞬の静寂──

高津博士「……このように、人は『でたらめなんて簡単』と言いながら、自分の知っている何かを持ち出してしまうものなのです」

一方、タローマンも決め手を欠いて立ち尽くし、戦いは膠着状態に陥っていた。



なぜ、彼らは動かないのか?

いざ、でたらめなことをやろうとしても、
どこかで見たことのあるものになってしまう……
それは、タローマンでも同じだからだ。



頭を抱えて悩むタローマン。
うっかり足元の車を踏んで転び、ビルに倒れ込んで壊してしまう。

ビルの持ち主「わしのビルが~!!」
秘書「社長~!!」



タローマンは行き詰まった。
行き詰まってしまった!

しかし、行き詰まりからこそ芸術は開けるのだ。
そう、岡本太郎も言っていた!!



タローマンが立ち上がり、必殺技「芸術は爆発だ!」を放つ。
粉々に吹き飛ぶ森の掟。



生き急ぐ現代人に合わせた、
唐突な勝利と君は思うだろうか。
しかし、深く考え込むより、
衝動こそが大事なのだ。
そう、岡本太郎も言っていた……。



角を1本外し、中に入っている「太郎汁」を飲み干すタローマン。
その姿を、怪しい風来坊が見つめる。

謎の男「随分と、イカした野郎が来たもんだ……」



でたらめをやってごらん。
口先では簡単にでたらめなら、と言うけれども、
いざでたらめをやろうとすると、それができない。

-TARO-

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最終更新:2022年07月31日 22:11