「この世界を創りし者―――」
「その名を女神クリューネアという。」
「古来より、女神クリューネアは地に住む者たちの願いを叶えてきた。」
「どのような願いであろうとも、1つだけ叶えられる奇跡の力を
女神クリューネアは持つという。」
「彼女の住む大神殿は、はるか天空に存在し、地上に住む者たちの日々の営みを見守ってきた。」
「いま、女神クリューネアの神殿を目指して、大空を駆ける5つの影があった・・・。」
天空の大神殿へ5体のドラゴンが向かっていた。
その前に天使が現れる。
天使「――何者か?」
「ここを天空の大神殿と知って近づいてきたのか?」
「この大神殿に無断に立ち入るのは決して許されぬこと。」
「ただちにこの場から立ち去るがいい。」
『竜皇』「お前が―――神」なのか?」
天使「そうではない。我は女神クリューネアに仕える者。」
『竜皇』「ふん・・・要するに女神の手下ということか。」
「―――ならば、用はない!」
竜皇の攻撃で天使が倒される。
『竜皇』(以下ファング)「ひ弱なザコが・・・・・。ドラゴン界を統べる『竜皇』の力、思い知ったか。」
ファング「俺様の行く手をさえぎることなど、この世の誰にもできはしない。」
カンヘル「・・・ふふっ。」
「有無を言わさず、女神のしもべを葬るとは。」
「相変わらず、恐ろしいお方ですね。」
エキドゥナ「―――何を言うの?お前はわかっていない。」
「『竜皇』の魅力は、その恐ろしさこそが源泉なのだということを。」
ファング「やめろ。無駄口はいい。他の連中は、どうした?」
ベルーダ「オレたち、四天王だけだよ。『竜皇』様についてこられたのは。」
「どうする?兵たちが追いつくまで待つ?」
ファング「そんな必要はない。足手まといなど、いらん。」
「お前たちも、肝に命じておけ。俺様の邪魔になったら、捨ててゆくからな。」
ニーズヘッグ「御意。全ては竜皇の御心のままに。」
ファング「―――行くぞ。神を探せ!!」
天空の大神殿に入ったファング達は、天使たちを蹴散らし奥まで進んでいった。
?「――なんとも珍しいこと。」
その声の主は、優雅な羽ばたきとと共にゆっくり舞い降りてきた。
白亜の神殿よりも、まばゆい輝きを放つ、純白の羽をまとっている。
クリューネア「この神殿に客が訪れるなど、何千年ぶりでしょう。」
ファング「現れたな・・・。お前が『神』なのか?」
クリューネア「えぇ、その通り。私が女神クリューネアです。」
「――さあ、翼を持つ者よ。」
「そなたの望みを言いなさい。どんな願いでも、1つだけ、叶えてあげましょう。」
ファング「いいか・・・・よく聞け。俺様は、この世で1番、強い奴を探している。」「そいつの名を教えるがいい!」
クリューネア「それが・・・そなたの願いですか?」
ファング「あぁ?願い・・・・・?」
「いや、願ってなどいない。俺様は、ただ命じただけだ。」
「この世で誰よりも強い奴の名を教えろ、とな。」
クリューネア「その者の名を聞いて、どうするつもりなのですか?」
ファング「はんっ!わかりきったことを!」
「会いに行って、戦いを挑む。俺様の乾きをうるおすためにな。」
「そいつを倒して、この世で1番になれば、きっと――」
クリューネア「・・・・わかりました。」
「その願い叶えてあげましょう。」
「そなたを、この世で最も強き者に―――」
ファング「やめろ!ふざけるな!」
「俺様は、最強のドラゴンだ。お前の力など借りる必要はない。
「――余計な真似をするな!」
クリューネア「・・・・・・・・・。」
「そなたが、私に会いに来たのは願いを叶えてもらうためではないのですね?」
ファング「くどいぞ、貴様。この世で1番、強い奴の名前を聞きにきたと言ったはずだ。」
「・・・・ちっ!」
「役に立たないな。神だというから、わざわざ会いにきたというのに。」
「知らないなら、もういい。」「俺様が、自分で捜す。」
クリューネア「―――待ちなさい!」
「神である私に、どうしてそのように粗野な振る舞いができるのでしょう?」
「その上、神を前にして、何も願いが無いなどと言うなんて・・・・。」
「すべては、そなた自身でも持て余すほどの『力』のせいですね。」
「それならば―――」
「その思い上がり、正してあげましょう!」
ファング「――うおおっっっ!?」
ファングが姿を消した。
クリューネア「・・・・・・・。」
「大地をさすらい、自らの身の程を知りなさい。」
「そうすれば、神に願いを求める気にもなるでしょう。」
「その日が来るのを楽しみに待っていますよ、ファング・・・・・」
ファングが赤い光に包まれ、天空から落ちていく。
居合わせていた四天王も、それぞれ光に包まれ落ちていく。
光の中でファングの体は、人間の少年のものに変わっていき、
そのまま『試しの神殿』に落ちた。
ファング「くっ・・・やってくれたな・・・・。」
「いったい、何がどうなったんだ・・・・?」
「身体が・・・・変だぞ・・・・?」
「――なんだ、これは!?」
「まるで・・・この身体は、子供のときに戻ったかのような・・・。」
「そうか・・・・」
「女神のしわざだな・・・・。こんな仕打ちをしてくるとは・・・・!」
「覚えていろよ・・・・。俺様の力、すぐに取り戻してやる・・・・!」
「だから、それまでおとなしく待っていやがれ!」
「――女神クリューネア!」
最終更新:2015年05月14日 19:02