ウルトラマンGの第1話

第1話
銀色の巨人



太陽系第4惑星、火星──

人類は新たな開拓地(フロンティア)として、
今、この星の開発に乗り出していた。

ジャック・シンドーとスタンレー・ハガードは、
有効な鉱物資源を求めるうちに、
驚くべき光景に遭遇したのだった──。



宇宙服に身を固めた主人公ジャックとその同僚スタンレーが、火星の大地にうごめく巨大な生物──邪悪生命体ゴーデスを目撃する。

スタンレー「生物です!」
ジャック「静かに! 奴に通信を聞かれたらどうする?」

ゴーデスがジャックたちを見つけ、次第に近づいてくる。
スタンレーがビデオカメラを取り出し、ゴーデスの姿を撮影する。

ジャック「スタンレー、着陸船に戻ろう」
スタンレー「待って下さい、今ビデオを…… こいつは大発見です!」
ジャック「でも、生きて帰らなかったら全ては無駄になるんだ」

そこへ銀色の巨人・ウルトラマングレートが登場し、ゴーデスに立ち向かう。
巨体同士の戦いで砂と岩が飛び散り、ジャックの足が岩の下敷きになってしまう。
スタンレーが必死に、岩をどかそうとする。

ジャック「僕はいい、着陸船に急げ。君の撮ったビデオを、地球の連中に見せてやるんだ」
スタンレー「あなたを置いて行けるわけないでしょう!?」
ジャック「命令だ、スタンレー」

ジャックがスタンレーに銃を向け、強引に命令を強いる。
驚くスタンレーに、ジャックが笑いかける。

ジャック「また逢おう」

ゴーデスの攻撃をまともに食らい、ウルトラマングレートが倒されてしまう。
スタンレーの乗り込んだ着陸船に、次第にゴーデスが近づいてゆく。
ジャックは岩を銃で砕いて脱出し、ゴーデスを銃撃で威嚇する。

ジャック「ヘイ、タコ野郎! 僕が相手になってやる!」
スタンレー「来るな……!」

推進機に火が点き、着陸船が動き出す。
しかしゴーデスが巨大な触手を振るい、着陸船は粉々に破壊され、大爆発──!!

ジャック「スタンレー!!」

それを見たウルトラマングレートが必死に立ち上がり、再びゴーデスに立ち向かう。
反撃に転じたグレートの必殺光線「バーニング・プラズマ」が炸裂!
ゴーデスの巨体が大地に沈む。

動きを止めたゴーデスの身体が不気味な光に包まれ、無数の光の粒子となって空へ昇ってゆく。

ジャックが、グレートの雄姿に目を奪われる。
グレートが向き直り、ジャックと視線が合う。

母船から助けが来る前に、
ジャックの酸素は尽きてしまうだろう。
彼の命運は、目の前の巨大なエイリアンに
握られているのだ。

その時──
ジャックの心に、エイリアンが語りかけてきた。

ジャックとグレートが重なり合い、一つになっていく。


一方、火星の空へ飛び去った光の粒子は、宇宙空間を経由して地球へと降り注いでいた。

やがて地球の各都市で、怪しい光が夜空を覆った。
だが、それが恐るべき
ゴーデスの襲来であることを、
知る者はなかった。


オーストラリア大陸の近くの小島にある、国際的軍事組織・UMA(ユーマ)(Universal Multipurpose Agency)の南太平洋支部基地。

UMA。地球のために戦う、国家を超えた組織である。

その南太平洋支部で──

基地内。エンジニアのジーン・エコー隊員が資料を分析しているところへ、同僚のキム・シャオミン隊員が現れる。

キム「また、火星の事故の調査?」
ジーン「2人の消息を知りたいの」
キム「危険な任務だということはわかっていたんだろう?」
ジーン「情報がまるでないのよ?」
キム「責任を感じることはない。着陸船は4度も任務に成功していた、あんたの設計のせいじゃない。あんたは優秀なエンジニアだ」
ジーン「どうして今度に限って事故が起きたの?」
キム「さぁ? 何かアクシデントが起きたんだろ?」
ジーン「捜索隊は着陸船の残骸しか見つけてないわ。2人はまだ……」
キム「休暇をとったほうがいいよ」
ジーン「ジャックたちの行方がわかれば」
キム「気持ちが高ぶったままじゃ、ろくな仕事はできないって。ジーン、そうだろう?」
ジーン「……いっそ、『あきらめろ』って言って」
キム「言っても、あきらめやしないくせに」


休暇をとったジーンは、街へ出かける。
その様子を彼方から、サングラス姿の青年が見つめている。
突然の地震。地面が大きく揺れ、人々が慌てふためく。
やがて揺れがやみ、人々は落ち着きを取り戻す。

ジーンは支部基地のアーサー・グラント隊長へ電話をかける。

ジーン「──違います、アーサー。とても不気味で」
アーサー「不気味な地震? どういう意味だ?」
ジーン「とにかく、すぐ戻ります。休暇はまたの機会に」

今、何かが始まろうとしていた。
この、地面の底で──

先のサングラスの青年が、地面の亀裂をじっと見ている。
亀裂からは、緑色の煙が噴き出している──

青年「ここがお前の選んだ場所か、ゴーデス」


休暇を切り上げたジーンが、支部基地へ帰還する。
キム、副隊長のロイド・ワイルダー、同僚のチャールズ・モーガン隊員。

ロイド「元気そうじゃないか」
ジーン「サンキュー、ロイド」
キム「おかえり、ジーン」
ジーン「ハァイ」
チャールズ「本土で何かいいことあったのかい?」
ジーン「あるわけないでしょ、チャールズ」
チャールズ「どうもカタいなぁ~。僕はフィアンセとウハウハだったぜ! 彼女の写真、もう見せたっけ?」
ジーン「いいえ。素敵な人なんでしょうね」

懐から写真を取り出してキスするチャールズを、ロイドがたしなめる。

ロイド「レディの扱いがなっちゃいないな」
ジーン「言っても無駄よ」
チャールズ「言っとくけどね、彼女はすごい面食いなんだぜ」
ロイド「箱入りだったんだな」

キムがチャールズの写真を覗き見る。

キム「ん? 先週と写真が違うね」
チャールズ「君はね、いつだって情報が古いんだ!」
キム「ちゃんと見せなよ」
チャールズ「そんなに興味あるのかい、この僕に?」

チャールズ、キムにアームロックをかけられる。

チャールズ「あ、痛痛!」
ジーン「チャーリー、そんなに大切なら、金庫にでもしまっておいたら?」
ロイド「銀行を紹介しようか?」

そこへアーサー隊長が現れる。

ロイド「おはようございます、隊長!」
アーサー「ここは軍隊じゃない。ロイド副隊長、習慣を改めたまえ。キム、急所は外してやってくれよ。彼の手が必要なんだ」
キム「前のが美人だ」

キムはチャールズから写真を奪い取っていた。

アーサー「帰還を歓迎するよ、ジーン隊員。我々は本日より非常警戒態勢に入る」

壁面スクリーンに画像が表示される。

アーサー「南西太平洋上に、何かが大量に降り注ぐのが観測された。アメリカ本部では、これを地震の原因と見ている」
チャールズ「隊長、先日の流星雨と同じですね」
キム「特技はナンパだけじゃないのか?」
アーサー「残念だが少し違う。あれは流星雨ではなかった」
キム「あんな小さな物質が、地震の原因ですか?」
アーサー「その理由を突き止めてもらいたい。この基地には世界最高の頭脳が集結しているはずだろう?」
ジーン「つまり、正体不明?」
アーサー「現在判明していることは、我々の地球が危険にさらされているということだ。衛星写真をチェック。キム、地震計のデータを検索してくれ。ロイド、ARMY*1の情報基地とコンタクトしてくれ」
チャールズ「あの、お忘れのようですが……」
アーサー「モーガン隊員、コーヒーを頼む」
チャールズ「僕の腕が必要なんでしょう!?」
アーサー「ついでにこれを、スクリーンに」

一同が画像の分析作業に取りかかる。

ジーン「異常な地殻変動が見られます。例の粒子が降った地域全てにです」
チャールズ「こ…… こいつは細菌だ!」
ジーン「宇宙から来た細菌!?」
アーサー「本部も同じ意見だった。この細菌は、生物に取り憑いて、その宿主をモンスター化してしまう力があるんだ」
チャールズ「成層圏に密集しているものもあるようです。どういうこと?」
アーサー「オーストラリア大陸にはすでに500億個が降り注いでいる」
キム「どうして細菌が地震を起こすんですか?」
アーサー「それは今のところわからんが、都市の地下に正体不明の生物が存在する可能性がある」
キム「だったら、すぐに調査に行きましょう!」
アーサー「その生物と宇宙細菌との因果関係を明らかにしてからだ。敵の正体を探り出し、確実に処分する」
ジーン「彼らを、無条件に殲滅するんですか?」
アーサー「もちろんだ。放っておけば、どんな事態が起こるかわからん」
ジーン「他の生命体をみだりに殺すようなことは……」
チャールズ「遊び半分に入隊したのか?」
ジーン「私はエンジニアです」
アーサー「都市の下にいる影に接近して調査するには、君の腕が必要なんだよ」
チャールズ「そして、ブッ飛ばす!」
ジーン「まったく能天気!」


格納庫。

ロイド「ジーンはハマー2号へ」
チャールズ「一緒に乗ってやるよ」
ジーン「1人でやるわ」
ロイド「キム、君は?」
キム「サルトップで。がんばりな、ジーン」

ロイドがジーンを慮るように見る。

ジーン「大丈夫です、ロイド」

ロイドが頷く。

チャールズ「せっかくのチャンスを逃したんだぜ、君はね。僕の腕を見ることができるチャンスをね」
ジーン「せいぜいガッカリしないようにするわ」
ロイド「君は私と一緒では不満らしいな?」
チャールズ「とんでもない!」

UMA戦闘機のハマー1号機・2号機、攻撃専用車のサルトップが出撃する。

アーサー「グッド・ラック……」


街では地震と共に工事現場の地面を突き破り、双脳地獣ブローズが出現。
ビルを破壊して暴れ回る。

チャールズ「あららら、自分から出てきたぜ!」
ロイド「君の意見は? チャールズ」
チャールズ「やっつけちまおうぜ!」
アーサー「攻撃は待て。まず分析するんだ」
ロイド「市民が大勢残ってます」
ジーン「怪獣のことを知っていたんですか!?」
アーサー「予測はしてたが、街中に出現してしまうとは……」
ジーン「正体は?」
アーサー「宇宙細菌が、地中で両生類に取り憑いてしまったんだ」
ロイド「もう一度言ってください!」
アーサー「変種のオタマジャクシだ」
チャールズ「オタマジャクシねぇ……」
アーサー「いいか、絶対に吹き飛ばすなよ。一片の肉片も街に残してはならん」
ロイド「お池に帰ってもらうか……」

ブローズの周囲を旋回しながら攻撃のチャンスをうかがうUMAだが、うまくいかない。

ジーン「接近できません」
アーサー「何とかしろ」
ジーン「人が多すぎて……」
アーサー「ためらえば、それだけ犠牲者が増えることになる」
ジーン「低空飛行でいきます」
ロイド「了解。こっちで、奴の注意を引く」
キム「チャールズのダジャレでも聞かせたら? きっと喜ぶよ」

ジーンが微笑む。

ジーン「攻撃に入ります」

ブローズが念力弾を放ち、ジーンのハマー2号機の動きを封じてしまう。

ジーン「脱出できません!」
キム「フルパワーだ、ジーン!」

地上からキムがブローズを銃撃、束縛が解除される。

キム「ごめんよ。この街はあんたにはふさわしくないさ」

しかしハマー2号機はバランスを失い、そのまま墜落してしまう。
街角で、あのサングラスの青年がそれを見つめている。

アーサー「下がれ、キム!」

キムがサルトップを後退させる。


墜落したジーンが目を覚ます。
サングラスの青年がジーンの腕に包帯を巻いている。

ジーン「……ジャック!?」

青年がサングラスを外す。
その素顔は──ジャック。

ジャック「必ず帰るって言ったろ」
ジーン「どうやって……?」
ジャック「……とても説明できない」

なおもブローズが唸り声を上げている。
思わず身構えるジーンを、ジャックが制する。

ジャック「動かないほうがいいよ」
ジーン「あれを放ってはおけないわ」
ジャック「UMAの武器では、とてもあのモンスターを倒すことはできないんだよ」
ジーン「仲間が戦ってるのよ?」
ジャック「人間には歯が立たない相手なんだ」
ジーン「……戦いを放棄することなんて、できやしないわ」
ジャック「日没になれば、奴の力は衰える」
ジーン「そんなに待つことはできません」
ジャック「信じてくれ!」
ジーン「……どうして信じられるの? あなたが急にモンスターの──専門家になったなんてことが、信じられると思う?」
ジャック「僕にはわかるんだよ」
ジーン「攻撃をやめるなんて無理……」
ジャック「君たちは、奴が殺されて当然だと思ってるが……」
ジーン「違います! だけど大勢の市民のためには……」
ジャック「奴はゴーデスに操られてるだけなんだよ!」
ジーン「……怪獣を倒します」

ジーンは傷の痛みで、そのまま気を失ってしまう。
ジャックはジーンを寝かすと、胸からペンダント「デルタ・プラズマー」を取り出す。
ジャックが静かに精神を集中すると、次第にその姿にウルトラマングレートのシルエットが重なってゆく──。


爆発を思わせる激しいエネルギーの奔流と共にウルトラマングレートが巨大化。
ブローズを背後から抑え込む。

ロイド「もう1匹、現れました」
チャールズ「ヒューマノイド・タイプだな」
ロイド「美しい姿をしてる……」
アーサー「どちらも仕留めるんだ!」

グレートとブローズの戦いの最中、ハマー1号機がグレートを攻撃。
グレートは気にも留めない。

チャールズ「すげぇ装甲だ」
ロイド「感心するな!」
アーサー「こりゃ、サイボーグか!?」
キム「我々を助けようとしているんじゃ……」
アーサー「あんな巨大なものが味方だと?」
キム「しかし、怪獣と戦っています!」
アーサー「見せかけだ……」

ブローズは頭の触手をグレートの首に巻き付け、締め上げる。
ブローズに投げ飛ばされたグレートが高層ビルに激突。
その衝撃で、ガラス窓が一気に砕け散る。

キム「生体の組織は、人間によく似ています」
アーサー「なら、倒せるということだな? ハマーを用意しろ! いいか? あれはシンドーたちが火星で発見したエイリアンだ」
ロイド「そんな通信があったんですか!? まるっきり初耳ですよ」
アーサー「私にも何もわかっていない」
ロイド「何者なんです?」
アーサー「シンドーはこう呼んでいた…… 『ウルトラマン』と」

ウルトラマングレートとブローズの戦いが続く。ブローズが触手でグレートを締め上げ、毒ガスを噴きかける。
グレートの胸のカラータイマーが点滅し、危機を報せる。

キム「危険信号を鳴らしてます!」
アーサー「彼が倒されたらすぐに攻撃に入れ」

大気汚染が激しい地球上では、
ウルトラマングレートはその巨体を、
3分間しか保つことができないのだ。

立て、我らのヒーロー!!


ジーンが意識を取り戻し、キムのもとへ駆けつける。

ジーン「援護してあげて!」
キム「もう手遅れさ……」

ウルトラマングレートは渾身の力で触手を振りほどく。
バーニング・プラズマが炸裂──!!


ブローズは炎に包まれて消滅。
地球上での初勝利を収めたグレートが、空へ飛び立つ。

アーサー「奴を追え、ロイド!」
ロイド「しかし、ジーンの捜索が……」
アーサー「奴を倒すんだ!」
ロイド「……聞こえません、電波状態が悪くて」

とぼけたロイドが、チャールズと笑い合う。


ジーンはブローズが倒されたのを見届けるや、歩き出す。

キム「ジーン!?」
ジーン「彼を捜すわ」
キム「誰のこと?」
ジーン「彼は確かにいたわ、そして……」
キム「腕の手当てを!」
ジーン「ジャック・シンドーよ! 私を助けてくれたのは彼なのよ!」


夕陽の沈む街を、ジャックがバイクで疾走する──。


ジャック・シンドーは、火星からただ1人、
無事に生還した。

だが…… 彼は誰にも自分の秘密を
打ち明けることはできない。

彼こそが…… 神秘のヒーロー、
ウルトラマングレートであることを──


アーサー「『神は救世主を遣わせり』、か」


(続く)

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最終更新:2019年09月08日 20:24

*1 オーストラリア軍。