ウルトラマンメビウス外伝 ヒカリサーガの第1話


俺の名は、ウルトラマンヒカリ。
1人の人間によって、そう名付けられた。

俺が何者なのか、それを知ってもらうにはまず
惑星アーブで起きた、あの悲劇について
語らねばなるまい。




ウルトラマンメビウス外伝
ヒカリサーガ

SAGA 1
アーブの悲劇




惑星アーブは、何万年もの間、
争いもなく反映し続けている、
まさに奇跡の星だという。

俺は、そんなアーブの謎を解明するため、
輝く大地に降り立った。

惑星アーブの大地にヒカリが降り立つ。
美しく輝く大地に、クリスタル状の結晶体がいくつも突き立っている。

結晶体からほとばしった無数の輝きが、空中に人型を形作る。
アーブの民である。

ヒカリ「何者だ?」
アーブ「我々はアーブ。古来よりこの星に生きる者── 進化の過程で多くの同胞たちと融合し、この姿となりました」
ヒカリ「もしや、この澄みきった大地は……」
アーブ「そう。この大地は皆、我々の一部──」
ヒカリ「しかし、あなたはなぜ、私に語りかけたのです? もし私が、侵略者であったら?」
アーブ「あなたの中に、我々と同じ、澄んだ心を感じたからです」
ヒカリ「澄んだ……心?」
アーブ「光の国── 我々も伝説に聞いています。宇宙の平和を守る、宇宙警備隊の存在を」
ヒカリ「宇宙警備隊……」
アーブ「あなたも、その一員では?」
ヒカリ「いえ、私は科学者です。だから、彼らのような力は持ち合せていないのです」
アーブ「戦士であろうと科学者であろうと、あなたの済んだ心に変わりはありません── そう、あなたはあなたのままで良いのです」

やがて陽が沈む。
ヒカリが、夜空に輝く星々に、想いを馳せる。

アーブ「故郷が、恋しくなったのですか?」
ヒカリ「いえ、考えていたのです。宇宙にどれほど多くの星が輝こうと、アーブの輝きには敵いません。私はこの星で、あなたと共に生きます!」
アーブ「ありがとう── でも、それはなりません」
ヒカリ「なぜです?」
アーブ「『ツルギの予言』が真実ならば、この平和も長くは続かないからです」
ヒカリ「ツルギ?」
アーブ「ツルギは惑星アーブの大地に宿る者── ツルギの予言によると、この星に、宇宙の平和を脅かす巨大な影が近づきつつあります。いずれアーブは、滅び去る運命にあるのです」
ヒカリ「私に、戦う力があれば……!」
アーブ「その心だけで十分です。さぁ、災いが訪れる前に、あなたはこの星を去るのです」
ヒカリ「しかし!?」
アーブ「案ずることはありません。我々には、一つの希望が残されています」
ヒカリ「希望?」
アーブ「『天空より舞い降りし勇者、光の鎧を纏い、アーブの大地と一つにならん』── ツルギの予言の一節です。我々は、信じて待ち続けます。勇者が現れることを──」
ヒカリ「ならば、私がその勇者になってみせます!」

ヒカリは惑星アーブを飛び立つ。

宇宙を駆けた末、無人の惑星トワールへと辿り着く。
荒涼とした大地の果てに、ローブ姿の老人が佇んでいる。

老人「誰じゃ?」
ヒカリ「あるお方を捜しています。不可能を可能とする、伝説の超人がいると聞きました。私はその方に力を授けてもらうため、この地へ来たのです」
老人「居場所ならわかる。しかし、お会いになるかのう?」
ヒカリ「私には時間がないのです! お願いです、教えてください!」
老人「見よ」

空を雲が埋め尽くし、雨が降り出し、風が吹き荒れ、激しい嵐となる。

老人「まるで、お前さんの荒んだ心を現しているようじゃ」
ヒカリ「私は…… 決して力に溺れたりしません! その力は必ずや、罪なき命を守るために使います!」
老人「では、お前さん、この嵐を鎮めることができるかな?」

空を仰ぎ、思念を集中しつつ、空目がけて光線を放つ。
雨がやみ、雲が晴れて陽の光が差し込む。

ヒカリ「よし! ……むっ?」

あの老人の姿が姿を消しており、かわって、ウルトラ一族の長老・ウルトラマンキングが現れる。

キング「見事だ」
ヒカリ「あなたは?」
キング「私にはたくさんの呼び名があってな。幾多の星々で皆、呼び名が違う。たとえば── 『ウルトラマンキング』、人間たちは私をそう呼ぶ」
ヒカリ「ニンゲン?」
キング「地球という星に住む者たちだ。お前もいつか彼らと出逢い、『ウルトラマン』と呼ばれる日が来るかもしれぬな」

キングが手をかざすと、ヒカリの右腕に神秘のアイテム・ナイトブレスが装着される。

ヒカリ「これは?」
キング「それは必ずや、お前の力となるだろう。だが気を付けろ。きれいな水ほど濁りやすい。この空のように澄みきった心を、決して忘れてはならぬぞ。さぁ、行くのだ!」
ヒカリ「ありがとうございます、ウルトラマンキング!」

ヒカリが惑星トワールを飛び立ち、再び惑星アーブを目指す。

宇宙から見える光景。
美しかったアーブの姿が、次第に闇色へ染まってゆく。

ヒカリ「むっ、まさか!?」

ヒカリが大地に降り立つ。
巨大な怪獣が暴挙を振るい、美しかった大地は焦土と化している。
アーブたちは怪獣へ電撃で反撃するが、怪獣はそれをものともせず、アーブを捕食してゆく。

ヒカリ「むぅっ…… うぅおおぉぉ──っ!!」

ヒカリが激昂して攻撃に出ようとするが、キングの声が届く。

キング「力を使ってはならぬ!」
ヒカリ「なぜです!? 今、奴を逃せば……」
キング「今、お前の心は怒りと復讐心に支配されている。それは正しい力ではない。その力は、お前の心を滅ぼす!」

ヒカリがキングの制止もきかず、怪獣に戦いを挑む。
怒りに任せたヒカリの攻撃は、怪獣にまったく歯が立たない。
怪獣が悠々と姿を消す。

あとには、美しかった大地の姿は微塵もなく、焦土と化した大地が広がっているばかり。
ヒカリが悔しさのあまり、拳を大地に叩きつける。

俺は…… 何も守れなかった。
そのとき、俺は聞いた。
滅び去った者たちの、無念の声を、怨念の叫びを!

大地から怨念のエネルギーが立ち昇り、ヒカリの体へ注ぎ込まれてゆく。
ヒカリの体が鎧に包まれ、初めて地球に現れたときの姿、ハンターナイト・ツルギと化す。

そして理解した。
今すべきことは、嘆き悲しむことではない。
この鎧を纏い、復讐を果たすこと!
それが、俺に課せられた使命であると。

こうして俺は、心を捨てた──

わずかな手掛かりを頼りに、数々の惑星を巡った。
そして知った。

奴の名は『ボガール』。
すべての命を食らい尽くす者。
ボガールの牙にかかれば、
多くの惑星が滅び去ったのだ。

奴の次なる餌場は、地球──

ハンターナイト・ツルギが宇宙を駆け、地球を目指す。



あのとき、俺は何もわかっていなかったのだ。
キングの言った
『ウルトラマン』という言葉の意味も──



(続く)

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最終更新:2015年11月03日 05:38