ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGAの最終回


回想。幼い日のサイキが、両親とともに仲睦まじく過ごしている。

突然の砲撃音。両親の姿が消え、サイキだけが取り残される。
周囲は銃声と硝煙の嵐。サイキが激しく泣き出す。
その泣き声に呼応するように、クイーンベゼルブが、悲しげな声と共に現れる。

いつしかサイキが成人の姿と化し、クイーンに手を差し伸べる。


サイキ「私は…… 君だ!」



宇宙に知恵をもたらすという「命の木」を巡る戦いは、惑星カノンから地球へと舞台を移していた。
ウルトラマンオーブことガイたちのもとに、アスカ(ダイナ)ムサシ(コスモス)に加え、我夢(ガイア)藤宮(アグル)も参戦。
宇宙の平和を謳って人々の自由意思を奪うことを目論むサイキは、宇宙悪魔クイーンベゼルブと合体し、サイクイーンとなった。

ガイ「おぞましい姿だ……」



final episode まほろば ~新世界~



ベゼルブのクグツ毒に操られた怪獣たちが、命の木を襲おうとしている。

我夢「命の木を破壊する気だ!」
藤宮「サイキが果実を狙っていたのは、自分だけはクグツに支配されないためだ」
我夢「けど、クイーンと一体化した今、彼にはもう解毒剤は必要ない。むしろ邪魔なんだ」
声「悲しみや戦いが消えた世界──」

アスカとムサシがやって来る。

アスカ「それは確かに、理想だけどな」
ガイ「アスカさん……」
ムサシ「愛も喜びも、消されてしまっては意味がない」
ガイ「ムサシさんも!」
アスカ「俺たちの光の力で、世界に最高の笑顔を取り戻そうぜ」

一同が力強く、頷き合う。

ガイ「皆さんの力…… お借りします!」

アスカ「ダイナ──!!」
ムサシ「コスモ──ス!!」
我夢「ガイアァ──ッ!!」
藤宮「アグル──ッ!!」
ガイ「オォ──ブ!!」

5人がウルトラマンダイナ、コスモス、ガイア、アグル、そしてウルトラマンオーブに変身する。

ガイアとアグルがサイクイーンに、ガイアとコスモスは他の怪獣たちに挑む。
アマテが変身した巨人・戦神(いくさがみ)はクグツ毒を受けており、苦しむ戦神をオーブが必死に止めようとする。

翔平「解毒剤が必要だ」
結衣「効かなかったじゃない。あの種より強力な解毒剤なんか、どこにあんのよ!?」
翔平「どこにもなかったら、アマテもこの世界も終わるんだ!」

命の木に実る種子は、クグツ毒の解毒剤となる。
しかし、第1話の海底神殿から回収した種でクグツ毒を解毒する試みは、失敗に終わっていた。
翔平が、命の木を見上げる。

翔平「実が成ってるかも……」
結衣「ここからじゃ見えないし、あったとしたって、どうやって採りに行くつもり? もう宇宙船だって無いんだよ!?」

命の木のそばに立っているタワーの頂上が、木の茂みまで届いている。
それに気づいた翔平が、駆け出す。

結衣「しょ、翔平!?」

翔平が無我夢中でタワー目がけて駆け、結衣もそれに続く。


シンラが果敢に刀を振るい、ベゼルブを斬りつける。

シンラ「ジャグラー、頼む!」
ジャグラー「任せろ!」

ジャグラーが魔人態に変身して跳躍し、サイクイーンの脳天に刀を突き立てる。
だが逆に振り落とされ、変身が解けて地面に叩きつけられてしまう。

シンラ「ジャグラー!?」
ジャグラー「はぁ、はぁ…… く、くそぉっ!」


翔平と結衣は、タワーの麓に辿り着く。
タワーの頂上が命の木の茂みに接触していることを確かめ、頂上へと続く階段を駆け昇り始める。
結衣が息を切らし、足がもつれ、階段の途中で転倒する。

翔平「結衣! 大丈夫か!?」
結衣「はぁ、はぁ…… わ、私のことはいいから……」
翔平「いいわけない!」

ようやく2人が、頂上に辿り着く。茂みの中に、いくつもの実が成っている。

翔平「あった……! あった!」

翔平が、茂みから実の一つをもぎ取る。実の皮を剥ぎ、中から現れた種子を見て、ガックリと膝をつく。

結衣「何してんの!?」
翔平「光ってない……」
結衣「えっ?」
翔平「光ってなきゃ、駄目なんだ…… 輝く種じゃなきゃ、海底の種と同じ結果になる!」

悲嘆にくれる翔平に、結衣が真剣な顔で訴える。

結衣「今さら、そんな顔しないでくれる! 星の向こうのお姫様と、直接心が繋がるなんて奇蹟を起こしといて、今さら絶望しないでよ!」
翔平「……」
結衣「女王様のために、ここまで駆け上がって来たんでしょうが! 女王様だって、あんたのために7万光年も飛び越えて来たんだよ!? なのに、種が光ってるの光ってないのって、んなもん、あんたが自分で光らせなさいよ!!」
翔平「……!?」
結衣「翔平は、進化したんだよね!? だったら、進化した人間のもの凄さを教えてよ!!」
翔平「結衣……!」

結衣の眼差しに心を打たれた翔平が、種子を抱き、思念を集中する。

結衣「女王様のことだけ考えて。『絶対に助けるんだ』って! 強く、強くそう想って……」


パーテル「いよいよだよ。クグツが全宇宙に散らばるよ!」
リッカ「世界が変わっちゃう……!?」


翔平が種子を抱きしめ、必死に思念を込める。唯も翔平と共に手を添え、目を閉じる。

(アマテ『翔平──!!』)
(翔平『アマテ──!!』)

翔平の胸の中で、種子がまばゆく光り出す。

結衣「はっ…… やった!」
翔平「あぁっ…… 光った…… 光ったぁぁ──っっ!!」

頭上の茂みの中にいくつも実った実も、次々に光り始める。


ウルトラマンたちの戦いの余波で、四方に火の手が上がる。
余波が翔平と結衣のいるタワーにもおよび、翔平たちが外へ投げ出され、眼下へと落ちてゆく。

結衣「いやぁ──っ!!」

オーブが宙を舞い、翔平たちを受け止める。

翔平「これを戦神に。アマテを救ってくれ!」

翔平の放り投げた種子を、オーブが受け止め、戦神目がけて投げつける。
苦しみ喘いでいた戦神が、額に種子を受けるや、次第に鎮まってゆく。

結衣「見て!」
翔平「効いてる。効果があるんだ! アマテを救える!」

パーテル「あぁっ、戦神が解毒されちゃうよ! マ~イフレンド!」
シンラ「アマテ様!」
リッカ「2人が、あの地球人の想いが!」

命の木からあふれる実の光を、オーブが受け止め、コスモスがそれを戦神や怪獣たちへ放つ。
怪獣たちがクグツ毒から解放され、空へ還ってゆく。

それを見たサイクイーンが、自らも空高く舞い上がる。

シンラ「何をする気だ!?」
パーテル「戦神と一つになるんだよ。そうしたら、クグツを放出できる!」

アグル、ガイア、ガイア、コスモス、オーブが同時に必殺光線の構えをとる。
アグルストリーム、クァンタムストリーム、ソルジェント光線、ムーンライトスマッシュ。そしてオリジウム光線。
5大必殺光線がサイクイーンに炸裂──!

サイキ「うぅっ! うぅぅっ!」

サイクイーンの体内で、サイキが苦悶の声を張り上げる。
それに気づいたオーブが、光線の奔流が満ちるサイクイーンの中へと飛び込む。
その直後、サイクイーンが大爆発──!!

破片の一つが、シンラとリッカのもとにも飛んでくる。
あわやというとき、パーテルがとっさに自身を盾とする。


爆発の中から飛び立ったオーブが地上に降り立ち、変身を解く。
瓦礫の中、変身を解いたガイが息を切らす。
隣には、気を失ったサイキが横たわっている。


パーテル「バイバイ…… マ~イフレンド……」

破片の直撃を受けたパーテルが、煙を吹いて動かなくなる。


戦神も変身を解く。

シンラ「アマテ様!」


サイキ「はぁっ! はぁ、はぁ……」

サイキが意識を取戻し、隣にガイが大の字で息を切らしているのに気づく。

ガイ「はぁ…… はぁ……」
サイキ「……なぜ、私を助けた?」
ガイ「誰1人、犠牲にしたくないんだ…… 俺は……」
サイキ「救う価値があるのか? 犠牲ばかり強いる、この宇宙に」
ガイ「知恵を与える命の木は、それを護る戦神と、その知恵を消し去る毒を持ったベゼルブを生み出したんだよな」
サイキ「そうだ。クグツは、暴走した知恵が宇宙を乱したとき、それを消し去るための、安全装置だったんだ」
ガイ「なら、なんで命の木は、そのクグツを解毒する果実を実らせる!?」
サイキ「……?」
ガイ「あの果実こそが、知恵ある世界を護る、最後の安全装置だったんじゃないのか!?」
サイキ「!?」

翔平「ガイさぁん!」

翔平と結衣が駆けて来る。
アマテ、シンラ、リッカもやって来る。

翔平「アマテ!」

翔平とアマテが互いの安堵を喜び、抱き合う。
ガイがサイキを助け起こす。
アスカ、ムサシ、我夢、藤宮もやって来る。

ガイ「だから、命の木に果実が輝く限り、この宇宙は救う価値があるんだ。違うか? ドクター・サイキ」
サイキ「……」

リッカの手に、パーテルが抱かれている。

サイキ「パーテル!?」
リッカ「この子が、私たちを助けてくれたの」
サイキ「パーテル……」

動かなくなったパーテルを、サイキが抱きしめて泣き崩れる。
アマテが優しく、サイキの肩に触れる。

アマテ「この宇宙で、争いのない世界を望むことは、確かに難しい。不可能のように思える。けれど、あきらめずに想い続ければ、いつかきっと──」

サイキが、泣き笑いのような顔を返す。

アマテ「翔平と結衣さんのおかげで、命の木も輝き始めました。知恵ある限り、愛ある世界は終わらないのです。それを2人が証明してくれました」

翔平と結衣が、照れ笑いするように見つめ合う。
ガイが翔平と結衣の手を取り、穏やかに頷き合う。
アマテも笑顔で、一同の手に自分の手を重ねる。

その様子を彼方で、ジャグラーが複雑な面持ちで見つめている。
視線に気づいたガイが彼方を見ると、ジャグラーはすでに消えている。


日が暮れてゆく。
夕陽に照らされた命の木を、ガイ、アスカ、ムサシ、我夢、藤宮が見つめている。

我夢「君の冒険は、これから始まるんだ」
ガイ「次はどの宇宙に行くのかな…… 一体、宇宙っていくつあるんですか?」
ムサシ「可能性の分だけ。そして宇宙の数だけ、冒険と素晴しい出逢いが君を待っている」
アスカ「初陣にしては、いい動きだったぜ。ルーキー」
ガイ「いや…… 先輩たちに頼りっきりで、お恥ずかしいです」
藤宮「恥じる必要なんか、一つもない」
我夢「逆だよ。助け合える仲間がいることは、僕らの誇りだし」
アスカ「じゃあ、行くか」
ムサシ「一つの星に、干渉しすぎちゃいけない」
我夢「だから…… さよなら」
藤宮「またいつか、どこかで」
アスカ「行こう。それぞれの、明日へ」

アスカ、ムサシ、我夢、藤宮が、ダイナ、コスモス、ガイア、アグルに変身。
空の彼方へと飛び去る。


惑星O-50(オーフィフティ) 戦士の頂。
ガイがオーブカリバーをじっと見つめる。

声「やっぱりここに戻って来たんだな、ガイ」

声に気づいたガイが顔を上げると、ジャグラーが笑顔を携えている。
ガイが笑顔を返そうとするが、ジャグラーの姿は虚空に消える。

幻だったことに気づき、ガイの顔が曇る。

突如、オーブカリバーが光り始め、その光が空中に文字を描き出す。

ガイ「次のミッション……!」

その光が環となり、ガイの胸に同化する。

ガイ「う!? うぅ、うぅおおぉ──っっ!!」

ガイがウルトラマンオーブに変身。
さらに最初期形態であるオリジン・ザ・ファーストの姿から、テレビ版に登場したオーブオリジンへと変わってゆく。

新たな姿を得たウルトラマンオーブが、次のミッションに向かって飛び立つ──!



THE END
OF
THE ORIGIN SAGA


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最終更新:2017年11月18日 09:55