~次回予告~ 小次郎『決着の時は来た。飛鳥武蔵の黄金剣と俺様小次郎の風林火山』 『どっちがより多くの想いを背負っているかだ!』 『白鳳学園と誠士館、風魔一族と夜叉一族の死闘はここに終わりを迎える』 『次回、風魔の小次郎最終回「あばよ!風の中へ」 見ないと風が吹かないぜ!』
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曇り空の中、絵里奈は外に出て、携帯を見ていた。
看護婦「駄目じゃない、絵里奈ちゃん!こんな寒い日に外に出ちゃ・・・
明日は待ちに待った誕生日でしょ?」
絵里奈「だって、携帯禁止でしょ?医療機器が誤作動したら、大変でしょ」
「小次郎からいつメールが来るか、もう待ってられないんだから・・・」
絵里奈がせき込んだ。
看護師「熱じゃないの?とにかく病室まで戻って!」
絵里奈「小次郎・・・お兄ちゃん・・・今どこ?」
誠士館学園で、小次郎と武蔵が相対していた。
小次郎「姫子を返せ!姫子に何かあったらただじゃおかねえぞ!
あの子がどれだけの重荷を抱えきれないで頑張ってて、
どれだけ世の中のことを考えているかなんか、お前ら知りもしないで!
彼女の心か、体を少しでも傷つけてみろ!この俺が、絶対に許さねえ!!」
「地上に十本の聖剣あり!」 「その力は天を割り、地を揺るがす」 「今、遥かな時を経て、その内二本がこの世で会いまみえた」 「一つを剛刀、風林火山!一つを長刀、黄金剣という!」
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小次郎「行くぞ、飛鳥武蔵!!」
武蔵「行くぞ、風魔の小次郎!!」
小次郎と武蔵が戦う。
聖剣での斬り合いに、蹴りや頭突きを交えた激しい戦いが繰り広げられる。
小次郎「夜叉一族はもう立ち直れないだろ!お前一人で何が出来る!」
武蔵「俺が引き受けた仕事は、白鳳学園を潰すこと。
その前に立ちふさがる小次郎、貴様ら風魔を倒すこと!」
小次郎「だったら姫子を返せ!」
武蔵がサイキックで瞬間移動するも、小次郎もついてきた。
武蔵「馬鹿な!?瞬間移動のこの俺の本体にピタリとついてくるとは・・・
風林火山の前では、この武蔵のサイキックも封じこめられるというのか・・・」
武蔵が、かっての記憶を回想する。
学校で、クラスメートに因縁を付けられたこと。
クラスメート「おい飛鳥、そんな化け物みたいな目で見るんじゃねえよ」
「この化け物!あたしを殺す気か?」
武蔵がサイキックの証である黄金の目でクラスメートを睨む。
クラスメート「化け物!?」
「化け物!」「化け物!」
「バーケモーノ・・・」
武蔵は目を伏せるも、そこに水をかけられた。
夜叉一族に雇われたこと。
夜叉姫「その化け物の様な能力、私は高く買ったのですよ、飛鳥武蔵」
壬生「一般社会にも戻れず、かと言って忍びの世界に属することも無い男。
つまり、剣だけで生きていた男ということではないか。
気に入った。夜叉一族、壬生攻介、誰よりも切れる剣の男と自負している。
いや、剣に言葉は必要無いな、立ち会ってみよう」
武蔵「俺は自分をなるべく高く売りたい。本気でいいか?」
壬生「お前となら、本音で話せる気がするぞ」
そして、絵里奈が病に倒れたこと。
医師「網膜内複合水疾・・・この歳で発病したら、大人になるまで生きてはいられないでしょう・・・」
武蔵(化け物でも何でもいい!絵里奈、お前のためなら、お前を一日でも長く生かせるためなら、お兄ちゃんは魂は愚か命まで悪魔に捧げるぞ!)
黄金剣の一撃が石柱を貫いた。
武蔵「この世に貫けぬ物は無し、黄金剣!」
小次郎「この世にぶった斬れねぇ物は無し!風林火山!」
風林火山の一撃が石柱を両断した。
小次郎「早きこと風のごとく!」
風林火山の素早い突きを武蔵は間一髪でかわした。
武蔵「ちい!」
小次郎「静かなること林のごとし」
小次郎が姿を消した。
武蔵「どこだ!奴の姿は!?」
「・・・良く見ろ、小次郎は風林火山の後ろにいるはず・・・」
小次郎「侵略すること火のごとし!」
姿を見せた小次郎が、武蔵を激しく攻め立てる。
そこに切り落とされた石柱が転がってきて、
武蔵は横に退いた。
小次郎「動かざること山のごとし・・・」
小次郎はその場から離れず、風林火山の一撃で石柱を砕いた。
小次郎「これが伝説の豪刀、風林火山だ!」
武蔵「一番初めに感じた違和感の正体はこれだったのか。
風魔の小次郎。夜叉一族を滅亡に追い落とし、風林火山を使いこなすまで成長するとは。あの時成長の芽を摘んでおくべきだったか。
だが、聖剣黄金剣、俺の力にシンクロするらしい・・・」
黄金剣と武蔵の瞳が金色に輝き、荒れ狂う大海の幻影を作った。
小次郎「何!?これは幻覚か・・・」
武蔵「小次郎、死に様はどっちを選ぶ。
黄金剣の招いた大海に飲まれるか、それとも、この黄金剣に貫かれるか」
小次郎「くっ!風林火山よ!大いなる風を巻き起こせ!」
小次郎は風林火山を振り、海を真っ二つに割った。
武蔵「馬鹿な・・・海が・・・真っ二つに割れた!」
絵里奈と看護師は病室に戻っていた。
窓の向こうでは、雪が降り始めていた。
看護師「冷えると思ったら、雪。絵里奈ちゃん、明日は積もるといいわね・・・
絵里奈ちゃん?・・・凄い熱!すぐ先生呼んでくるから!」
絵里奈「お兄ちゃん・・・武蔵お兄ちゃん・・・」
夜叉一族を裏切り、粛清された陽炎は、かって武蔵にこう言った。
陽炎「人類は誕生以来、ずっと人の殺し方について考えてきた。
鉾、弓、槍、刀・・・、最終的に人類は一つの結論にたどり着いたのだよ。
地球を530回以上滅亡させるだけの核という武器を持った時にね、
強力すぎる刃どうしは相討ちになる」
そして、武蔵の攻撃が小次郎に当たり始めていた。
小次郎「聖剣としての力は対等のはずだ!」
武蔵「何か勘違いをしてないか?聖剣の力は対等でも、小次郎、お前と俺の忍としての力は対等でない」
小次郎「くっそう!」
武蔵「飛龍覇王剣!」
黄金剣の一撃が小次郎の胸を貫き、小次郎が倒れた。
竜馬達風魔の忍び、そして蘭子と姫子が駆け寄る。
蘭子「小次郎!姫子様は無事助けた!」
姫子「小次郎・・・小次郎!小次郎、小次郎!!」
武蔵の額から血が流れる。
小次郎「・・・OK,俺のメルヘンは無事だったって事ね・・・」
小次郎が立ち上がった。
小次郎「武蔵よ・・・・俺の心臓には毛が生えてるんだ、その毛一本分助かったぜ・・・」
武蔵が額の血を拭う。
実際には、小次郎の反撃が武蔵に当たったために、黄金剣が心臓から逸れたのだ。
姫子「小次郎、止めて・・・お願い、もう止めて!私が主君なら私が命令します!もう止めて!」
小次郎「忍びって何だろう・・・」
「忍びの家に生まれたから、忍びとして生きていくのかって・・・」
「俺、ぶっちゃけ、竜馬の兄ちゃんが嫌いだった。自分の感情を表に出さず、仕事、仕事、仕事・・・何て冷たいだろうって、ずっと思ってた」
「でも、みんなが死んでいって分かったんだ。いちいち感情に囚われてたら、忍びっつう仕事は出来ねえ」
「前にさ・・・蘭子が、姫子ちゃんが北条家の人間で無くても彼女を助けたいって言ってた。
俺、それで納得したんだよ・・・忍びは自分の幸せでなく、他人の幸せのために死ぬ・・・って」
「昔から兄ちゃん達に言われていたことが、ようやく分かったんだ・・・俺・・・姫子のためなら、この命使ってもいいと思う・・・!」
姫子「止めて小次郎・・・お願い・・・」
武蔵「相討ち狙いか?」
小次郎「忍びどうしの死闘は相討ちになるって、そう言えば習ったな。
だけど、やってみなきゃ分かんねえぜ、死ぬのは武蔵、お前だけかもよ!」
武蔵「小次郎・・・止めだ!」
そこに、絵里奈が来た。
武蔵「馬鹿な!?」
小次郎「絵里奈!?」
絵里奈の肉体は、病室で危篤状態になっていた。
看護師「絵里奈ちゃん!絵里奈ちゃん!」
小次郎「絵里奈・・・何で!?」
武蔵「お前・・・病院を抜け出して・・・」
小龍が絵里奈の前に駆け寄るも、絵里奈は小龍の体をすり抜けた。
絵里奈「武蔵お兄ちゃん、風の人の小次郎、もう戦わないで」
小次郎「お兄ちゃんって・・・武蔵!お前がこの世で二人きりの大切なお兄ちゃんだって!?」
武蔵「小次郎!?まさか、お前が絵里奈の言っていた俺よりも大事な友達・・・」
絵里奈「3人で会うのは初めてだね。あ―あ、三人で仲良くお話したり、お茶飲んだりしたかったな~」
小次郎「そんな馬鹿な!?」
武蔵「小次郎・・・何故貴様が!何故貴様が絵里奈を!」
絵里奈「もう、ケンカしないでよ。今日は二人にお別れを言いに来たの」
武蔵「お別れ・・・まさか!」
絵里奈「私の体、今夜で駄目みたい」
武蔵「絵里奈!」
絵里奈「小次郎、ゴメンね。メールの返事、大分溜まっていたの。
新しくメールしようとしてたら、倒れちゃって・・・私の体は今、高熱中」
小次郎「絵里奈、死ぬな!」
絵里奈「お兄ちゃん、今までありがとう。一杯お金を稼いでくれて、私に嫌な思いをさせない様、頑張ってくれて・・・これ以上は入院費を稼ぐ必要は無くなるから、もう戦わないでいいと思う。これからは自分の力を自分の為だけに使って下さい」
武蔵「待て江里奈!行っちゃ駄目だ!お前が死んだら・・・俺は何の為に生きていくんだ!?2人で世間の冷たい風に耐えてきたんじゃないか!」
絵里奈「世の中には冷たい風ばかりじゃなくて、暖かい風が吹く事もあるんだよ。
小次郎が教えてくれた、ねっ、小次郎」
小次郎「今すぐお前の元に行ってやる!新しい手品を覚えたんだぜ!
まだ話してないこともいっぱいあるぜ!いくらでもぴょんぴょん飛ぶぜ!?」
絵里奈「私と小次郎は精神年齢が近かったから、いい友達だったよね~
お兄ちゃんとは結婚できないけど、小次郎と結婚したかったな。小次郎、遊んでくれてありがとう」
武蔵「絵里奈!」
武蔵は黄金剣を捨て、絵里奈を抱きしめようとするも、その手がすり抜ける。
絵里奈への誕生日プレゼントとして買った懐中時計が落ちる。
武蔵「お前はまだ10年しか生きてないじゃないか!後10年、生きたいって言ってたじゃないか!絵里奈死ぬな!!お兄ちゃんを一人ぼっちにしないでくれ!!」
絵里奈は武蔵を抱き返してから、笑顔で手を振りながら、消えていった。
懐中時計の針が止まった。
そして、病院で絵里奈が息を引き取った。
看護師「絵里奈ちゃん!絵里奈ちゃん!!」
武蔵「絵里奈―――!!」
小次郎「武蔵は絵里奈の為に傭兵として戦っていたのか・・・夜叉一族に協力して・・・」
武蔵が黄金剣を拾い、小次郎に迫る。
竜馬「よせ武蔵!もう戦いは終わった!我々は姫子様を取り戻した。誠士館は負けたのだ!」
武蔵「絵里奈は死んでいない・・・早くお前らを倒して絵里奈の元に帰らねば・・・
あの病院のスープは暑すぎるんだ。早く冷ましてやらなくちゃ・・・
毎日・・・俺はそうやって生きてきたんだ」
小次郎「よせ武蔵!絵里奈は・・・絵里奈は死んだんだ!」
武蔵「俺は戦いの中でしか生きられない」
クラスメート(化け物!)
武蔵「他の生き方を出来ない、他の生き方を知らない・・・俺は、俺を高く売る」
小次郎「・・・決着をつけてやろうか、武蔵!」
武蔵「風魔一族、滅亡せよ!」
小次郎「付けねえ限り前には進めねえってのか!」
武蔵「飛龍覇王剣!!」
武蔵が覇王剣を放つ。
小次郎(相討ちになるかどうか・・・頼むぜ、風林火山)
「竜巻起こすぜ!風魔烈風!!」
小次郎は風林火山を振り、竜巻を起こした。
竜巻は覇王剣の勢いを僅かながらに弱め、
小次郎はそこを突き、風林火山の一撃で黄金剣を弾き飛ばし、
そのまま、風林火山で武蔵の腹を打ち据えた。
武蔵は倒れ、四つん這いになった。
武蔵「もう・・・俺には何も残ってない・・・俺は心を閉ざす、止めを刺せ」
小次郎が風林火山を振り下ろした。
小次郎はそのまま夜叉姫の居室に行ったが、夜叉姫は既に自害していた。
小次郎が風林火山を振り下ろす。
壁に掛けられた夜叉の面が両断され、落ちていった。
小次郎は竜馬達の元に戻った。
小次郎「終わったな・・・」
竜馬「何故奴の首をとらなかった?」
武蔵は止めを差されず、生きていた。
竜馬「今取っておかなければ、いつか奴の心が蘇った時、風魔にとって再び強大な敵として立ちはばかるかもしれん」
小次郎「その時はまた命を張ってでも、とるさ」
武蔵が顔を上げる。その目から血の涙がこぼれていたが、サイキックの輝きは消えていた。
武蔵「この世に斬れぬ物無し、風林火山・・・サイキックの力も斬ると言うのか、
一般社会に戻れと・・・?」
小次郎が倒れかけ、蘭子と姫子に支えられる。
それから3ヶ月後、白鳳学園の校庭に桜の花が咲いていた。
姫子(あの雪の日から、3か月。誠士館グループといわれた支配体制も今では夢の様に無くなり、誠士館高校は廃校になりました。もうすぐ校舎の解体工事が始まると聞きます。
蘭子さんはこの春、白鳳学園を卒業し、アメリカに旅立つため、英会話学校に通っています。
私はと言えば、卒業後に本格的に総長になるため、学業の合間に学校経営の勉強です。
白鳳学園も入学志願者が増え、少しずつ、日常が戻ってきています)
部屋に蘭子が入ってきた。
姫子「蘭子さん、お久しぶり!」
蘭子「グッモ―ニン!白鳳学園の女子!おっと、これは英語じゃね―な。馬鹿の癖が移ったぜ」
姫子「ふふふ」
(平和が戻って来たのは嬉しいけど、あの雪の日から私の心は戻ってきてないと思うのです・・・)
蘭子「あの窓・・・」
部屋の窓が開け放しになっていた。
姫子「ずうっと開けたままにしてあるんです。いつ、ひょいと入ってくるかもしれないと思って・・・」
蘭子「小次郎が?」
姫子「その名前を言うの止めましょうよ・・・泣いちゃいます」
あの決戦の少し後、小次郎達は風魔の里に戻ることになった。
小次郎「あばよ!夜叉一族の奴らはおいらがケチョンケチョンにしてやったし、
後は風魔の里に戻って、風呂入って寝るだけだぜ!」
姫子は涙を堪えていた。
小次郎「そんな泣きそうな顔するなよ、姫!また困ったことがあったら、いつでも来てやるぜ!最も、また困ったことになるのもウンザリだろうけどな!」
竜馬「俺達はいつでも風魔の里にいる。逃げやしないさ」
蘭子が竜馬の眼帯を取った。
蘭子「これ・・・記念に貰っとくよ」
小次郎「姫子―、後2年経ったら高校卒業だろ。
そしたら総長代理の「代理」が取れて、白鳳学園の本物の総長だろ?
そん時には、総長様の顔を拝みに来てやるぜ!どんな顔をして総長やってのかな?」
姫子「何でそんな顔してるのよ!?何でいなくなるつもりなの!
小次郎の馬鹿・・・風魔の里、案内してくれるって行ったじゃない・・・
風魔の里へなんて一生行かない!」
小次郎も涙を堪えていた。
竜馬「あいつは人の懐にあんなにも飛び込んで、世の中を変えていく。
風魔の小次郎、あいつは新しい形の忍びになるかもしれません」
霧風「それでは」
小龍「我々は」
劉鵬「風魔の里に戻ります」
小次郎達が風と共に姿を消した。
姫子が泣き出すが、小次郎が姫子の後ろに立っていた。
2人が見つめ合ってから、小次郎は姫子の額にキスをした。
そして、小次郎が今度こそ姿を消した。
小次郎達5人は風魔の里へ走っていく。
小次郎(その脚力は1日に数千里を走り!闇夜でも百メートル先の敵を見極め!
その耳は三里先に落ちた針の音も聞き取り!
動けは電光石火!とどまれば樹木のごとく!
後、付け加えるなら、みんなの心に温かい風を届ける。
それが風魔だ!!)
最終更新:2019年03月27日 20:30