夜。新聞社・東都タイムズの一室。
窓から強風が吹き込む。
記者の島一平が窓を閉めようとすると、夜空に浮かぶ幽霊船。
一平「おい、ジュン! ジュン、ジュン、見ろよ! 見ろってば!」
同僚の渚ジュンが窓に寄ったときには、幽霊船は消えている。
ジュン「どうしたの?」
一平「あれぇ? おっかしいなぁ…… 空に、変な船が見えたんだよ」
ジュン「空に船が? そんなバカな。いないじゃない」
銭湯帰りの親子連れが、夜道を歩いている。
突如、頭上に幽霊船が出現。さらに船から巨大な手が飛び出す。
「わぁぁ!?」「きゃぁ──っ!」
巨大な手が親子を捕まえ、船へと連れ去り、夜空へ消える。
あとには、地面に奇妙な砂が残されたのみ。
そこへジュンが通りかかる。
ジュン「あら? 何の砂かしら?」
再び幽霊船が出現。巨大な手が飛び出す。
ジュン「きゃぁっ!?」
声「危ないっ!」
夜の闇の中から誰かが飛び出し、とっさにジュンを救う。
事なきを得たものの、ジュンを救った者の姿は、闇に溶け込んではっきり見えない。
ジュン「あ、あなたは誰……? 顔を見せて」
謎の男「いや、それはできない」
ジュン「どうして!?」
謎の男「君を、驚かせたくない」
ひそかにジュンが、自分のカメラに手を忍ばせ、フラッシュを光らせる。
その男の、人間ではない異形の姿が露になる。
ジュン「きゃあっ!?」
謎の男「覚えておいてくれ。俺の名はザビタン」
ザビタンと名乗ったその者が、夜空の彼方へと飛び去って行く。
ジュン「ザビタン……? 敵なのかしら、味方なのかしら」
後日。
新聞記事が一連の事件を「何者の仕業か 連続人間蒸発事件」「昨日も百二十七名が行方不明!?」と報道する。
東都タイムズ。
編集長の秋田源作のもとに、一平の弟の光彦と、その友人たちが詰め寄っている。
光彦「ウソじゃないよ! ホントに見たんだよぉ!」
秋田「さぁさぁ、帰って帰って」
そこへ、一平とジュンが取材から戻って来る。
ジュン「ただいま」
一平「光彦、どうした?」
光彦「あ、兄ちゃん聞いてくれよ」
秋田「あぁ、聞く必要ない。島もジュンも、早くこの子たちを追い返してくれ」
光彦「だって俺たち、ホントに幽霊船を見たんだったら」
一平「幽霊船? お前もか!?」
一平たちが光彦と共に、幽霊船を目撃したという場所に行ってみる。
まさしく空に幽霊船が出現。巨大な手が飛び出し、彼らを捕えようとする。
すかさず、どこかからかザビタンが駆けつける。
ザビタン「逃げろ!」
一平「何だ、こいつは!?」
ジュン「ザビタン!」
巨大な手が一平たちに代わり、ザビタンを捕える。
必死にザビタンがその手に剣を突き立て、拘束から逃れる。
ジュン「ザビタン!」
ザビタン「ザビタンノバ!!」
ザビタンが両肩にランチャーを装着し、空中の幽霊船目がけて狙撃。
幽霊船が飛び去って行く。
ジュン「ザビタン!」
一平「お、おい、ジュン!?」
ジュン「ありがとう、ザビタン!」
一平「あんた…… 誰?」
ザビタン「まだ、安心はできない。一度狙った獲物はかならず物にするのが、アクマ族の掟だ」
一平「アクマ族?」
突如、何人もの異形の兵士たちが飛び出し、ザビタンに襲いかかる。
一平も兵士たちに襲われるが、必死に蹴散らす。
ザビタンが剣を振るい、たちまちの内に兵士たちを一掃する。
一平「俺は、島一平」
ザビタン「ザビタン!」
一平「なかなかやるじゃん」
そこへ、2人の新手が空から降り立つ。
2人「見つけたぞ、ザビタン!」「アクマ族の裏切り者、ザビタン!」
ザビタン「お前たちは何だ!?」
2人「掟によってお主を処刑に来た精鋭討伐隊員、イビル!」「同じく、ガブラ!」
イビルとガブラに対し、ザビタンが剣を抜く。
イビル「ザビタン、最後のチャンスを与えてやろう。脱走と裏切りの罪を認め、もう一度アクマ族への忠誠を誓うか?」
ザビタン「断る!」
ガブラ「なぁ、断るって言うのは死刑やで、ザビタン」
ザビタン「断る! アクマ族だってダウンワールドに住むようになる前、もとはといえば同じ人間だったではないか。ダウンワールドが住みにくくなったからといって、平和な地上に攻めて来るなんて、そんなアクマ族の手先になるなる気はない!」
イビル「お主もアクマ族の1人なんだぞ? 弱い者は死ぬんだ! 殺すんだ! それが当たり前ではないか?」
ザビタン「それがアクマ族だからイヤなのだ」
ガブラ「生意気~!」
イビル「この場で死にたいと言うのか? ザビタン!」
ガブラ「あの~イビル、やらしてくれぇな。わいはな、こいつを殺して初手柄を立てたいんやから」
イビル「そうか。よし、よかろう。ガブラ、こいつの首を持ち帰るのを待っているぞ」
イビルが姿を消す。
ガブラ「よし。行くぞぉ、ザビタン!」
ザビタン「来い、ガブラ!」
ガブラ「デンブル──!」
ザビタンが剣を振るって応戦する。
ガブラが鎖分銅型武器・デンブルでザビタンを縛り上げるが、逆に投げ飛ばされる。
ガブラ「痛ぁ~い! もう!」
ザビタンが剣でガブラの胴を突き、胴から水があふれだす。
ガブラ「わぁ~、水が出てきたぁ! く、苦しい~!」
ザビタン「そうか、お前のエネルギー源は水なのだな?」
ガブラ「そう、もう早く止めなきゃ」
ガブラが傷口を絆創膏でふさぐが、苦痛はおさまらない。
ガブラ「うぅ~、苦しいぃ~っ!」
ザビタン「ガブラ。体の水がなくなると、動けなくなるのだな?」
ガブラ「もう、早よう殺せ、ザビタン! わいの負けやぁ!」
ザビタンが剣を収める。
ガブラ「え!? な、なんで殺さん? な……」
ザビタン「水を飲んで来い、ガブラ。待ってやろう」
ガブラ「え…… なんでやぁ? なんでや、ザビタン!?」
ザビタン「早く行け、ガブラ! 水はそこにある!」
ガブラがそばの川で、水にありつく。
突如、ザビタンの足元にイビルの銃撃が炸裂する。
ザビタン「イビル!?」
イビル「アクマ族は、アクマ族らしくしないと命取りになる。拙者はお主のように、仏心を起こしたりはしないぞ。死ね!」
ザビタンが宙を舞うが、再びイビルの銃撃が炸裂し、地面へと落下してゆく。
夜、一平の家。
一平、ジュン、光彦が心配そうに見守る中、ザビタンは傷を自分の手で手当てして、横になる。
ザビタン「こうして、朝まで眠れば治る」
一同「……」
ザビタン「気味悪そうな顔をしないでくれ。俺の体は、生まれたときからこういうふうにできているんだ」
一平「ザビタン、誰もそんなふうに思っちゃいないよ」
ザビタン「俺たちアクマ族は、地底で暮しやすくするために、体に機械を埋め込まれ、こんなふうに作り変えられてしまっているんだ。見てくれ」
ザビタンが指をはじくと、部屋に置かれていたギターが、目に見えない力で宙に浮く。
ザビタン「俺は…… こんなアクマ族には生まれたくはなかった」
光彦「ザビタン……」
涙をこぼすザビタンに、ジュンは花瓶から1輪の花を取り、捧げる。
ザビタン「ジュン?」
ジュン「私の気持ちよ。ザビタン……」
ザビタン「……ありがとう」
翌朝。幽霊船が密かに、一平の家を狙っている。
光彦「ザビタンを起こさなくてもいいの?」
ジュン「あんなに良く寝てるじゃない」
寝室で寝ていたザビタンが突如、うなされて飛び起きる。
ザビタン「わぁ、やめろ! ……しまった!」
何かを予感したザビタンが居間へいくと、一平たちの姿はなく、砂が残されているのみ。
ザビタン「うっ、遅かったか!?」
壁をぶち破り、ガブラが現れる。
一平が気づくと、そこはどこかの一室。
ジュンや光彦と共に、閉じ込められている。
一平「おい、ジュン! 光彦! 俺たち、どうなっちゃったんだ?」
ジュン「見て!」
窓の外の眼下には、海が広がっている。
一平「おい! 俺たち、幽霊船の船底にいるんだよ!」
3人を捕えた幽霊船は空を飛び、海の上を渡っていた。
一方でザビタンは、ガブラの奇襲を受ける。
ガブラ「これさえ外せば、怖いものなしやで! 行くで!」
ガブラが、自分の腕力を抑制している鎖をはずし、怪力をふるってザビタンに挑む。
勢い余ってガブラが壁をぶち破り、配電盤にぶつかる。電流がガブラの身体を襲う。
ガブラ「わあぁぁ~っ!?」
すかさずザビタンが配電盤のスイッチを切り、ガブラを救う。
ガブラ「ふぅ、ふぅ…… ねぇ! 待ってぇな、ザビタン! わいな、頭悪いんや。教えて。お前を殺そうとしたわいを、なんで二度も助ける? なんで?」
ザビタン「アクマと同じことをしたくないからだ。俺は1人でも、味方が欲しい」
そのとき、ザビタンの背にイビルが銃を突きつける。
イビル「拙者と一緒に来てもらおうか」
一方で、一平たちを捕えた幽霊船は、氷山の浮かぶ海へと近づいてゆく。
光彦「あっ、氷山だ!」
ジュン「北極かしら?」
光彦「あっ、北極にでっかい穴があいてる!」
幽霊船は、眼下の氷壁に開いた大穴から、地下へと降りてゆく。
一平「地球空洞説は本当だったのか……」
光彦「チキュークードーセツ?」
一平「地球の中はがらんどうになっていて、北極と南極に穴があいてるっていう説だよ」
ジュン「アクマ族は、その地底の国に住んでいるのね」
突如、船が大きく揺れ出す。
ジュン「きゃっ! どうなっちゃってんのかしら!?」
一同が窓の外を覗くと、そこは大穴を抜けた地底世界。
空中に地上同様の太陽が輝いている。
光彦「あっ、地球の中に太陽がある!」
一平「地底太陽だ……!」
船が着陸。
火山地のように、あちこちから上記の吹き出す荒地。
一平たちは、共に捕われた人々と共に、アクマ族によって外の地へ連れ出される。
アクマ「さぁ、休むんじゃない! 急げ! さっさと歩け!」
ジュン「ひどいところね! 昔の人は、ここを地獄って言ったのかしら?」
巨大な建物の中へ連れ込まれる。
大勢の人々がアクマたちに鞭を打たれつつ、人力で動力機を動かしている。
光彦「何をしてるの?」
一平「コンピューターの原動力に人間を使ってるんだよ」
ジュン「ひどいわ!」
アクマ「勝手に喋るな! 行け!」
建物の奥で、異形の幹部メザロードが登場。
一平「わぁっ!? 何だ、お前は! 気持ち悪いな」
アクマ「メザロード様、113回目の人間狩りの成果でございます」
メザロード「フフフ、ご苦労。わしの人間狩り計画はますます順調だわい。愚かな人間どもよ、メザロードのアクマの洗礼を受けるがいい!」
メザロードが人々に怪光線を浴びせる。
人々「わぁ~っ!」
メザロード「そぉれ、倒れた者は皆殺しにして、赤い血のワインの材料にしろ。残った強い人間どもは奴隷にするのだ!」
一平が必死に抵抗するが、たちまちアクマに取り押さえられる。
メザロード「愚か者め。アクマ刑法第13条によって死刑だ!」
アクマ「ヘッヘッヘ…… この薬は鉄の固まりも溶かしてしまうのだ。座れ!」
一平「おい、よせよ! おい!」
アクマが一平を無理やり椅子に座らせ、縛り上げ、薬液を近づけてゆく。
一平「おい、やだよ、こういうの! よせよ!こんな品のないことするなよ! や、やめろぉ! おい、やめろぉ! 死んじゃうよぉ~!」
声「待て!」
鎖で縛り上げたザビタンを連れ、イビルが現れる。
イビル「その3人の前に、このザビタンの処刑を行なう」
光彦「ザビタン!?」
だがザビタンは鎖を引きちぎり、イビルに剣を突きつける。
ザビタン「動くな!」
イビル「ザビタン!? わざと連れて来られたのか!」
ザビタン「気がつくのか遅かったな、イビル。この3人はもらって行く!」
ザビタンが一平を救い出し、アクマたちを蹴散らす。
そこへガブラが、壁をぶち破って現れる。
ガブラ「ザビタン、さぁ、この穴から逃げろ」
ザビタン「ガブラ!?」
ガブラ「なんも、なんにも言うな。わい、お前が好きになったんや。幽霊船ぶんどってあるで。さ、早く逃げんせぃ」
ザビタン「そうか。よぉし!」
ガブラが人々の捕われた牢屋を砕き、一平やザビタンたち共に建物の外へ逃げ出す。
イビル「そうはさせん!」
イビルが立ち塞がり、ザビタンとの一騎打ち。
鍔迫り合いの末、イビルはバランスを失って崖下に転がる。
イビル「うわぁぁ──っ!」
イビルが崖下に落ちて、落石の下敷きとなる。
イビル「うぅっ……」
ザビタン「おい、しっかりするんだ!」
ザビタンが落石をどかし、イビルを助け出す。
イビル「ザビタン…… なぜ拙者を助けたのだ?」
ザビタン「お前はまだ、誰も殺していない。むっ、一平たちを!」
一平たちに群がるアクマたちを、ザビタンが剣で蹴散らす。
だが、さらにメザロードが現れる。
メザロード「それまでだ、ザビタン!」
ザビタン「何!?」
メザロード「ザビタン、これでもわしに歯向かえるか!?」
メザロードが、小さな紋章を突きつける。
ザビタン「うわぁっ!? あぁぁっ!?」
ザビタンの頭に亀裂が生じ、頭を抱えて苦しみだす。
メザロード「フハハハ! 苦しめ! 苦しめ、ザビタン! このアクマの紋章の前で、お前が正しいことを考えたとき、お前の頭に組み込まれたアクマ回路が働くのだ。アクマに還れ、ザビタン! そうすれば、その苦しみは消えるのだ」
ザビタン「うぅっ、うぅっ……!」
ザビタンが苦痛に耐えつつ、剣を投げつけて紋章を砕く。
メザロード「くそぉ!」
ザビタンが苦痛から解放されて反撃に転じるが、そこへイビルの銃撃が炸裂する。
一平たちもすでに、すっかりアクマたちに囲まれている。
ザビタン「イビル!?」
メザロード「いいぞ、イビル! ザビタンを撃て! 撃ち殺せ!」
イビル「いや。その前に、人間どもを皆殺しにする」
ザビタンはとっさに、一平たちの盾となる。
ザビタン「よせ! この人たちには手を出すな! お前の任務は、俺を殺すことだけのはずだぞ!」
イビル「お主は撃たれてもいいのか?」
ザビタン「構わん! 俺は弱い者を殺すアクマではない!」
睨み合いの末、イビルは一平たちではなく、アクマたちに銃撃を見舞う。
ザビタン「イビル!?」
イビル「お主のような奴は初めて見た! 拙者はお主の心意気に惚れたぞ!」
メザロード「くそぉ、裏切り者ぉ!」
イビル「ザビタン、メザロードはお主に任せたぞ!」
ザビタン「よぉし、行くぞ!」
イビルがさらにアクマたちを剣で斬り払い、ザビタンはメザロードに立ち向かう。
ガブラ「ちょっと待ちぃ、水飲ませてぇな。おい、待てぇってな」
ガブラも水たまりで水を補給しつつ、アクマたちを蹴散らす。
ガブラ「ちょっと待って。ガブ、ガブ……」
一平「ガブラ、後ろだ!」
さらにに水を飲むガブラを、アクマが背後から襲おうとするが、とっさにイビルがかばう。
ガブラ「おおきに。これ外すと怖いんやで! もう~やったるでぇ!」
ガブラが再び腕のスプリングを外し、怪力を振るってアクマたちを叩きのめす。
アクマたちを一掃したザビタン、イビル、ガブラの3人が、メザロードを追いつめる。
メザロード「一昨日来い!」
ザビタン「ザビタンノヴァ!」
メザロードがザビタンノヴァを浴びて、煙を吹きつつ消え去ってゆく。
一平たちの救出に成功したザビタンたちが、一同と共に幽霊船に乗り込む。
イビル「進路1005、取り舵一杯!」
ザビタン「幽霊船からザイダベック号へチェンジ!」
古めかしい外観の幽霊船がたちまち、巨大母艦・ザイダベック号へと変形し、宙を舞う。
ジュン「わぁ~、凄いわ!」
ザビタンたち3人が剣を重ね、これからの戦いを誓う合う。
ザビタン「ザラード!」
イビル「イラード!」
ガブラ「ガラード!」
3人「唸れ、ジャンケル!! 我ら、アクマイザー3!!」
地底に住む悪魔族の野望を撃ち砕くため、 正義の三銃士アクマイザー3は今 立ち上がった! 進め、アクマイザー3!!
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最終更新:2014年01月06日 04:27