魔動王グランゾートの最終回

あらゆるものを滅ぼす邪動族の巨神・暗黒大邪神がついに復活を遂げる。
大地、ガス、ラビの3人は、魔動王(マドーキング)スーパーグランゾート、スーパーウィンザート、スーパーアクアビートで立ち向かう。
そこへ、V-メイとV-イマック*1が飛来する。

大地「ばあちゃん……!?」

メイとイマックが、暗黒大邪神の額へ飛び込む。

ラビ「あぁっ!?」
ガス「イマックさん!?」
大地「ばあちゃん!?」



ただいま
お母さん



暗黒大邪神の内部の空間。
大邪神を操る邪動族の総帥アグラマントに、メイとイマックが対峙する。

アグラマント「ハハハハハ! もはやお前たちの力をもってしても、暗黒大邪神は倒せぬ」
イマック「ラーマス*2。すべての災いは、お前から起こったこと。わしとメイの命に変えて、お前の野望は阻止してみせるぞ!」
アグラマント「フフフ、できるかな?」
イマック「とぉ──ぅ!!」
メイ「えぇ──い!!」

メイたちの放つ魔動力を、アグラマントが難なく跳ね返す。


暗黒大邪神の攻撃を、スーパーアクアビートが危ういところで避ける。

大地「ラビ、大丈夫か!?」
ラビ「ど、どうってことねぇよ! ちくしょう、何とかあいつの…… はっ、母さん!?」


ラビの母サユリは、大邪神に打ち勝つ唯一の武器・ゾーラブレードを解放するため、ルナの神殿を訪れている。
邪動戦士シャマン*3が立ち塞がり、2人の一騎打ちが繰り広げられる。

シャマン「なるほど。その力、アグラマントの娘とあらば頷ける。ならば、これでどうだぁ!」

無数の光の鞭が、サユリを縛り上げる。


ラビ「か、母さん!?」

再び大邪神の攻撃が炸裂する。
ラビは母の危機を直感して茫然としており、スーパーアクアビートは避けようともしない。

大地「ラビ、何やってんだ!? ラビ、止まるな! 動け!」
ラビ「……」
大地「ラビ、どうしたんだよ!?」
ガス「大地くん、来ます!」


大邪神の中では、メイとイマックが結界で、アグラマントを捕らえる。

アグラマント「貴様らの魔動力も衰えたものよ。この程度の結界で、わしを抑えられると思うのか?」

アグラマントが結界を吹き飛ばし、その余波の衝撃がイマックを襲う。

メイ「イマック!?」


シャマン「フッ、もがけばもがくほど、その光の鞭はお前の首を締め上げるぞ」
サユリ「くっ……!」

ラビ「母さぁん!!」

サユリ (はっ…… マリウス*4!?)
シャマン「ではそろそろ、とどめと行くか。お前とてこれ以上、苦しみたくはあるまい。行くぞ!!」

ラビ「母さぁ──ん!!」

サユリの胸のペンダントから凄まじい光が迸り、シャマンを吹き飛ばす。

サユリ「マリウス……?」
シャマン「おのれぇっ!!」

シャマンが邪動力を放ち、サユリも魔動力を放つ。
激突の末、サユリが力負けして吹き飛ばされる。

サユリ「あぁっ!?」
シャマン「覚悟っ!!」

サユリの前にラビの姿が浮かび上がり、大の字になってシャマンに立ち塞がる。

シャマン「はっ……!? おのれぇ、幻がぁっ! でやぁぁっ!!」

ラビの幻影から膨大な光が放たれ、シャマンを吹き飛ばす。

シャマン「うわぁぁ──っっ!?」


スーパーアクアビートの中で、ラビが我に返る。

ラビ「はっ……! 母さん!?」


倒れたシャマンに、サユリが迫る。
シャマンは立ち上がろうとするが、体に力が入らない。
サユリは無言のまま、剣をおさめる。

シャマン「!?…… 憐れみはいらぬ! とどめを刺すがいい!」
サユリ「憐れみではありません。傷ついた者を打ち据えることを、勝利だと思わぬだけです」

サユリは背を向け、立ち去ろうとする。

シャマン「闇の魔法陣に入れば、貴様の命はないぞ」
サユリ「たとえ私の身は滅びようとも、私の意志は私の子、マリウスが継いでくれるでしょう」


スーパーグランゾートらと暗黒大邪神の戦いが続く。

ガス「一発必中シュトゥルムカイザ──!!
ラビ「一閃炸裂ウェーブカイザ──!!

2大必殺技の同時攻撃も、大邪神には通用しない。

ラビ「ちくしょう、何をやっても歯が立たねぇぜ」
大地「よぉし、ラビ、ガス。スーパーグランゾートを、思い切り高く放り上げてくれ」
ラビ「どうすんだよ?」
大地「奴の頭を攻撃してみる」
ラビ「よぉし!」
ガス「わかりました!」
大地「行くぞ!」

スーパーウィンザートとスーパーアクアビートが、スーパーグランゾートを頭上高く投げ上げる。
スーパーグランゾートが落下しつつ、大邪神の脳天目掛けて剣を突き立てる。
大邪神の内部にも、その衝撃が走る。

アグラマント「!?」
メイ「今だよ、イマック!!」
イマック「おう!!」

アグラマントの動揺を突き、メイとイマックが再び結界を仕掛ける。

アグラマント「馬鹿め、何度結界を張っても同じだ!」
イマック「そうはいかんぞ!」
メイ「えぇい!!」

アグラマントが再び結界を破ろうとするが、メイとイマックが渾身の力を込める。


スーパーグランゾートは、大邪神に一矢報いたと思いきや、巨大な手で捕われてしまう。

ラビ「大地ぃ!!」
ガス「大地くん!!」
グランゾート「大地、このままでは潰されてしまう! 魔動力だ!」
大地「よ、よぉし。魔動力、サークル…… うわぁっ!!」


アグラマントが必死に、結界を解きにかかる。

メイ「無駄だよ! ラーマス、思い出しとくれ! 私たちが共にこのラビルーナの平和を願っていたあの日のことを! あんたにはまだ、その心があるはずだよ!」
イマック「わしらは共に戦った…… ラビルーナの平和のために! 思い出すのじゃ、ラーマス!」

メイとイマックが、アグラマントのもとへ。

アグラマント「な、何をする!? お前たち、邪動力と魔動力が触れ合えば、どうなるか知っておろう!」

メイとイマックの手が、アグラマントに触れる。
魔動力と邪動力の凄まじいスパークが飛び散る。

アグラマント「やめろ! V-メイ、イマック、やめろぉ──っ!!」
メイ「ラーマス、昔に…… 昔に戻るんだよ!!」


大邪神の手が緩み、スーパーグランゾートが解放される。

ガス「大地くん、大丈夫ですか?」
大地「あ…… あぁ」
ラビ「みんな気をつけろ! 奴の様子が変だぜ」

アグラマントの制御を失った大邪神が、狂ったように猛攻撃を始める。


サユリ「マリウス……」

ルナの神殿。
ゾーラブレードは、闇の魔法陣の中に封印されている。
サユリが意を決し、魔法陣に飛び込む。


大邪神の猛攻撃の末、スーパーグランゾートらが次々に倒れ、大地たちも気を失ってしまう。

グランゾート「しっかりしろ、大地!」


サユリ「マリウス……!!」

闇の魔法陣の中、サユリが苦痛に顔を歪めつつ、必死の覚悟で這うように進む。
ラーマスの紋章のペンダントを、魔法陣中央にはめ込む。
魔法陣全体が光に包まれる──


メイ「大地…… 大地……」

大地が、意識を取り戻す。
目の前に、メイの姿が浮かび上がっている。

メイ「さぁ立つんだよ、大地。立って、光の呪文を唱えるんだ」
大地「ば、ばあちゃん……!?」

イマック「ガス、立つのじゃ、ガス」

ガスの前には、イマックの姿が浮かび上がっている。

ガス「うぅ…… はっ、イマックさん!?」
イマック「立って、光の呪文を唱えるのじゃ」

サユリ「マリウス……」

ラビの前には、サユリの姿が浮かび上がっている。

ラビ「か、母さん!?」
サユリ「立ちなさい、マリウス。そして光の呪文を唱えるのです」
ラビ「光の呪文を……?」

大地たち「よぉし…… ドーマ・キサ・ラムーン…… ドーマ・キサ・ラムーン…… ドーマ・キサ・ラムーン!」

スーパーグランゾートら3体が眩い光に包まれる。そして光が止んだとき──
そこに立っているのは3体の魔動王ではなく、ラビルーナの伝説の神、太陽王の雄姿であった。

太陽王の中の空間の大地、ガス、ラビ。

大地「こ…… ここは?」
太陽王「今こそ時は来たれり── 大地と風と水の精霊よ、甦って悪しき呪いを断て!」

大邪神が太陽王目掛けて、炎を浴びせかける。

大地「うぅっ……!」
ガス「私が守ってみせます!」
大地「ガス!?」

太陽王「風の精霊は守りを司り──」

ガスが魔動力で、炎を食い止める。

ガス「くっ……!」
ラビ「しっかりしろ、ガス!」
ガス「ラビくん…… はいっ!」

ラビがガスを支え、共に攻撃を食い止める。

太陽王「水の精霊は力の回復を司る──」

大地「よぉぉし!!」

太陽王「そして大地の精霊は── 一撃殲滅の力を司る!!」

ラビ「行くぜ大地ぃ!!」
ガス「最後の一撃を!!」
大地「よぉし…… ゾーラブレード! 一刀──両断──!!

大上段から振り下ろされる必殺剣ゾーラブレードにより、暗黒大邪神が縦一文字に真っ二つとなる。
凄まじい光の奔流と共に、暗黒大邪神の肉体がみるみる消滅してゆく。

暗黒大邪神は完全に、消滅を遂げる。

ラビ「俺たち、勝ったのか……?」
大地「やったんだよ…… 俺たち、やったんだよ!」
ガス「やりましたね!」
大地「これも、ばあちゃんが勇気づけてくれたからだ!」
ガス「私には、イマックさんが見えました」
ラビ「俺には…… はっ、母さん!」


大地たちが、ルナの神殿に駆けつける。

ラビ「はっ、母さん!! 母さん、母さん、母さぁん!!」

サユリは倒れたまま、動かない。
ラビが涙をこぼし、サユリにすがりつく。

ラビ「せっかく…… せっかく逢えたっていうのに…… どうして、どうしてだよぉぉ──っ!! 母さぁーん!!」


メイとイマックが見守る中、アグラマントは元のV-ラーマスの姿に戻っている。

ラーマス「サユリ…… サユリ?」
メイ「ラーマス、すべて終わったよ」
ラーマス「わしにはまだ、やらねばならぬことがある…… メイ、わしの命の火がある内に頼む。サユリを……」
メイ「ラーマス、まさか…… あんたの命を!?」
ラーマス「2人の力ならできるはず…… 頼む。これがサユリとマリウスにしてやれる、唯一つのことなのだ……」
メイ「ラーマス……」

メイが悲しげに微笑み、イマックと頷き合い、互いに手をラーマスにかざす。

メイ「ラーマス……」

ラーマスの体が光に包まれ、消える。
メイの目に、涙がにじむ。


ラビ「え……!?」

サユリの目がうっすらと開く。

ラビ「か、母さん……!?」
サユリ「マリウス……!」
ラビ「母さぁ──ん!! 母さん……!」
サユリ「マリウス……」

目に涙をあふれさせ、母子が抱き合う。

しかし、そこへ邪動王ワイバーストが出現する。
エヌマ*5を抱いたシャマンが現れる。

大地「シャマン!」
ラビ「あいつとの勝負が、まだ残ってたっけなぁ!」
シャマン「私には、もう戦う意志はない。素直に負けを認めよう」
大地たち「えっ……?」
シャマン「我々がいかに邪動力をもってしても、お前たちを撃ち倒すことはできない。私はそれがなぜだか、わかったような気がする。我々は故郷に帰ることにした。もう2度とラビルーナに来ることはあるまい……」
ラビ「故郷って?」
シャマン「お前たちが行くことのできない遠い世界だ。さぁ帰ろう、エヌマ。すべては終わったのだ」
エヌマ「シャマン……」
シャマン「さらばだ…… 光の戦士たちよ!」

ワイバーストがどこへともなく、飛び去ってゆく。

大地 (さよなら、シャマン……)


暗黒大邪神が滅び、ついに聖地ルナが復活を遂げる。
暗雲に閉ざされていた空が、青く染まってゆく。

メイ「大地! ガス! ラビ!」
大地「ばあちゃぁん! やったよ、俺たち」
メイ「よくやったねぇ! ほら、ごらん。これが聖地ルナだよ」

平和が戻ったことを象徴するかのように、地上には緑の地がどこまでも広がっている。


そして、神殿での別れのときが来る。

大地「じゃあ、ばあちゃん、元気でね」
メイ「あぁ。色々ありがとよ、大地」
大地「ラビ、じゃなかった…… マリウス」
ラビ「ラビでいいよ」
大地「ラビ、いい魔法使いになれよ」
ラビ「あぁ。何かかったりぃけど、しょうがねぇやな。お前らも、元気でやれよ!」
ガス「ラビくんもお元気で!」
大地「ばあちゃん、俺、地球に帰っても魔動力が使えるかな? 結局、魔動力って何だかわからなかったみたいだし……」
メイ「いいかい、大地。あんたのお母さんを想う心や、ガスが自然の草木を愛する心、ラビの何事にもくじけない不屈の精神。それらがすべて魔動力なのさ。魔動力はみんなが持ってるもんなんだよ。それを忘れてるだけさ。あんたがその心を忘れない限り、魔動力は常に、共にあるよ」
大地「……うん!」

大地がグランゾートの神像を見上げる。

大地 (さようなら…… グランゾート!)
グランゾート (さらばだ、大地── お前と共に戦った日々を、私は忘れない── これからも、勇気を持って突き進むのだ! すべては、お前の魔動力の導くままに──)
大地「うん!」

メイ「さぁ、そろそろ時間だよ。レーヴェの道へお入り」

大地「さようならぁ──!」
ガス「みなさん、ご機嫌よう──!」
ラビ「あばよ──! 大地、ガス──!」

レーヴェの道を通り、大地とガスが空へと昇ってゆく。

大地 (さよなら…… ラビルーナ!)


お母さん、ぼくの冒険の旅は終わりました。

結局、月の空気も重力もそのままでした。
きっと、ラビルーナに平和が戻ったからでしょう。

月の中に住む耳長族の人たち、
遠い故郷へ帰ったシャマンとエヌマ。
この2ヶ月のできごとは、一生忘れません……


地球行きのスペースシャトルの中に、大地が乗っている。

「メシはまだかぁ! わしゃぁ腹ペコじゃぞぉい!」

ほかの客の声。
なぜか、邪動族に協力していた科学者、Dr.バイブルの声のように聞こえる。

大地「それにしてもガスの奴、最後まで見送ってくれたっていいのに、さよならも言わないんだから……」

シャトル出発間際のことを回想する大地。
ガスは「それでは私、先を急ぎますので」とだけ言い残し、とっとと帰ってしまったのであった。

客室乗務員が機内食を運んでくる。

乗務員「お食事です。ごゆっくりどうぞ」
大地「どわぁ!?」

食事の皿の中に、大地の天敵であるニンジンがある。
大地が固まるが、意を決してニンジンに口に放り込み、噛みしめ、飲み込んで大きく息をつく。

お母さん…… ニンジンはちょっぴり、
ラビルーナの味がしました。

大地「ばあちゃんが見てたら、何ていうかな……?」

メイやラビの声が思い浮かぶ。

(メイ『ほうら、食べられるじゃないか』)
(ラビ『どうだ? 食ってみると結構うまいもんだろ?』)

ラビルーナの仲間たちを想い、大地の目が潤む……

「ボクもニンジン欲しいグリィ!」

大地が声に驚く。
いつの間にか隣の座席で、グリグリがニンジンを齧っている。

大地「わぁっ! グリグリ!?」
グリグリ「ニンジンおいしいグリ」

「わぁっ!!」

一斉に前後の座席から顔を出すガス、ラビ、V-メイ。

大地「わぁぁっ!? ガス、ラビ? ばあちゃんまで、一体どうしたの?」
メイ「ちょっと地球見物に行こうと思ってねぇ」
ラビ「月の福引で当たったんだよ」
大地「えぇ!?」
グリグリ「ボク、そのニンジン欲しいグリよ!」
ガス「では私は、お肉を頂きます」
ラビ「あぁ!? 肉は俺が目ぇつけてたんだぞぉ!」
ガス「では公平に、アミダクジということで」
ラビ「アミダクジのどこが公平なんだよぉ!?」
メイ「うるさいねぇ! こんなとこまで来てケンカはおよし!」



お母さん…… 僕の冒険の旅は
まだまだ終わらないみたいです!



(終)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2016年05月03日 04:36

*1 メイと同じくラビルーナ3代魔法使いの1人。中盤で大地たちに協力し、最終決戦で一同に合流した。

*2 アグラマントの正体。ラビルーナ3代魔法使いの1人で、メイやイマックの同胞。ラビの祖父、サユリの父。

*3 アグラマント配下の戦士。

*4 ラビの本名。

*5 シャマンと同じ邪動族の女戦士。