ナレーション(平田広明)「コヨミを巡る晴人と笛木の戦い。 そこに乱入したグレムリンは笛木を倒し、 コヨミの体から賢者の石を奪い取った。 すでに自分の身体が消えることを受け入れていたコヨミだったが、 ただ一つの心残り」──
コヨミ「賢者の石をお願い…… 晴人が、最後の希望……」
晴人「コヨミィィ──ッッ!!」
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グレムリン「『賢者の石』、生と死を裏返す究極の魔法石…… 僕は、これで」
グレムリンがコヨミから奪った「賢者の石」を自らの体に埋め込むや、その体は新たな姿へと進化してゆく。
グレムリン「う!? う、うぅ──っ!」
晴人が面影堂に帰りつき、輪島たちも経緯を知る。
輪島「コヨミが、グレムリンに!?」
瞬平「ウソですよね? そんな…… 晴人さん!? ねぇ!」
凜子「いくら救う方法がなかったとしても、こんな最期って……!?」
仁藤「最後に晴人に逢えたことが、せめてもの救いになればな……」
晴人は無言のまま、奥の部屋へ行ってしまう。
凜子「私たちよりも、晴人くんのほうがきっと……」
輪島「一番、一緒にいたんだからな……」
仁藤「こんなとき、何も起こんなきゃいいけどな。『賢者の石』を手に入れたグレムリンが、何か仕出かすかもしれねぇ。俺に魔法が使えりゃ何とかなんだが、今戦える魔法使いは、ぶっちゃけ晴人しか……」
笛木のサバトの儀式を阻むため、仁藤は魔力の源であるファントム・キマイラを解放し、ビーストへの変身能力を失っていたのだった。
移動ドーナツ店「はんぐり~」。店長と店員が、退屈そうにため息をついている。
店長「晴くん、来ないわねぇ……」
店員「そう言えば、凜子ちゃんも瞬平くんも」
客「すいません」
店長「それからあの人…… 何だっけ?」
店員「マヨネーズ?」
店長「そう、マヨネーズ。何かあったのかしら?」
客「すいません……? すいませ──ん!」
店長「あ!? い、いらっしゃいませ!」
客「……キャアアァッ!?」
「賢者の石」を得て進化態となったグレムリンが、人々を相手に暴れ回っている。
グレムリン「ハロー♪」
グレムリンの放った攻撃で、「はんぐり~」の車が爆発炎上する。
店長「あぁ──っ!? お店、私たちのお店!」
グレムリンが四方八方に、無差別な攻撃を放つ。そこへ、仁藤や凛子たちが駆けつける。
凜子「あれは、グレムリン!?」
瞬平「なんかちょっと、感じが違う気が!?」
仁藤「んなこと、どうでもいい!」
仁藤がグレムリンに挑みかかるが、変身できない生身のままでは、到底歯が立たない。
グレムリン「あれ、古の魔法使い? いや、元・古の魔法使いって言ったほうがいいのかな。君がサバトを潰してくれて、助かったよ」
仁藤「別にお前のためにやったわけじゃねぇよ! つぅか誰彼構わず襲いやがって、どういうつもりだ!?」
グレムリン「魔力を集めているのさ。僕の中にある『賢者の石』のためにね。それに僕はワイズマンと違って、わざわざゲートを捜す気はないんだ。死ねば人間、ファントムになればゲート、ってこと」
仁藤「お前…… 何てことを!?」
グレムリン「ジャマしないで。君たちの相手してるほど、ヒマじゃないんだ」
仁藤「おい、待て!」
山本は自宅で、身ごもった妻とともに、惨状を伝えるテレビの報道を見ている。
『原因不明の爆発事故が起こった現場に来ております』『現場ではすでに──』『大変です!』『化け物!?』
妻「化け物って……? ねぇ、あの魔法使いさんが何とかしてくれるよね?」
山本「あ、あぁ……」
譲も、真由も、爆発を目の当たりにしながらも、複雑な顔をしている。
自分たちの魔法は、歪んだ希望を持つ笛木が、一同を利用するために与えた力──
晴人は、面影堂の自室で、コヨミの遺した「プリーズ」の指輪を見つめている。
(コヨミ『賢者の石』をお願い……)
晴人「賢者の石……」
店内では、輪島が瞬平からの電話を受けている。
輪島「──瞬平たちも気をつけてな。あんまり、ムチャするんじゃないぞ」
晴人「おっちゃん。何かあったの?」
輪島「ん? うん、その…… グレムリンが街で、無差別に人を襲ってるらしいんだが」
それを聞き、晴人が玄関に向かう。
輪島「おい、大丈夫なのか!?」
晴人「あぁ。『賢者の石』を取り戻して、コヨミを救う」
輪島「え? お前、まさか……?」
晴人「行って来る」
輪島「おい、ちょっと待て! お前、何考えてるんだ!? コヨミを救うって、バカなマネしようってんじゃないだろうな!?」
晴人「……」
輪島「コヨミは、もういないんだ……」
晴人は答えず、店を出る。
輪島「晴人!?」
街では警官隊が出動するが、逆にグレムリンの放ったグールたちの前に蹂躙されている。
瞬平や凜子たちは人々を避難させつつ、グールたちの猛攻を食い止めるが、人間の力では防戦一方。
仁藤も必死にグールと戦うものの、次第に手傷を負い、やがてグールの大群に囲まれてしまう。
瞬平「仁藤さん!? これじゃ、いくら何でも数が多過ぎですよ!」
『チェーン! ナウ!』
一同に襲いかかろうとしたグールを、真由の魔法の鎖が縛り上げる。
凜子「真由ちゃん!?」
真由「私に力をくれたのが誰であっても、私がその力をどう使うかは私が決めること! この指輪が誰かを救うことができるなら、私はやっぱり戦います!」
『ジャイアント・ナウ!』
続いて譲が、腕を巨大化させてグールたちを叩き飛ばす。
譲「攻介兄ちゃん!」
仁藤「お前、なんで!?」
譲「攻介兄ちゃんだけにムリはさせない。今度は、僕が勝手にみんなを守る番だ!」
『バリア!』
なおも襲いかかるグールたちを、山本が魔法の防御壁で弾き返す。
瞬平「山本さん!?」
山本「まだわからない…… 脚が震えて、ホントは逃げ出したい! だけど、俺の後ろにいる家族のために、俺ができることはもしかして……」
凜子「ありがとう…… みんな」
真由「行きましょう」
『ドライバー・オン・ナウ!』『♪シャバドゥビタッチ・ヘンシ~ン!』
真由たち「変身!」「変身!」「変身!」
『チェンジ・ナウ!』
真由たち3人がそれぞれ、仮面ライダーメイジに変身。
真由メイジ「さぁ、終わりの時間よ!」
メイジ3人が反撃に転じ、グールたちを次々に蹴散らす。
『イエス・サンダー!』『イエス・ブリザード!』『イエス・スペシャル!』
さらに必殺の魔法の3連発で、グールたちが一掃される。しかしそこへ、グレムリンが現れる。
グレムリン「ジャマしないでって、言わなかったっけ!?」
瞬平「グレムリン!?」
進化態のグレムリンに、メイジたちの力はまったく通じず、たちまち変身の解けた真由たちが地面に叩きつけられる。
グレムリン「ハハハ、いいこと思いついた! 君たちから魔力を貰うことにするよ」
仁藤「やめろぉ!」
仁藤が果敢にグレムリンを止めようとするが、やはり敵ではなく、あっさり吹き飛ばされる。
瞬平たち「仁藤さん!?」「仁藤くん!?」
グレムリン「ハハハハ! ハハハハ!」
真由「うっ、うぅっ……」
グレムリン「さぁ、僕に魔力を」
次第に真由に迫るグレムリン。その背後に銃弾が炸裂する。攻撃の主は── 晴人。
凜子「晴人くん……!?」
グレムリン「今さら何しに来たの?」
グレムリンが人間態・ソラの姿に戻る。
ソラ「あのお人形さんはもういないのに」
晴人「お前こそ、『賢者の石』で何をするつもりだ? グレムリン」
ソラ「僕をその名前で呼ぶな! 僕は、人間に戻るんだ。『滝川 空』という人間に」
晴人「そのために、ほかの人たちを犠牲にしても?」
ソラ「犠牲になったのは僕のほうだ! あんなお人形さんのために、僕は化け物にされてしまった! 君だって、ムリヤリ魔法使いにされた。いわば同類だ。僕の希望、わかってくれると思うんだけど?」
晴人「あぁ、よくわかるさ。だから俺は…… 俺の希望を叶える! お前から『賢者の石』を取り返し、コヨミを救う」
仁藤「えっ!?」
瞬平「晴人さんの希望って……?」
凜子「まさか、晴人くん…… サバトを?」
『♪シャバドゥビタッチ・ヘンシ~ン!』
晴人「変身!」
『インフィティー・プリーズ!』『♪ヒー・スイ・フー・ド──! ♪ボー・ザバ・ビュー・ドゴ──ン! 』
晴人が一気にウィザード・インフィニティースタイルに変身。ソラも怪人態のグレムリンの姿となる。
グレムリン「僕が『賢者の石』を手に入れたら決着つけるって、約束だったよね」
ウィザード「さぁ、ショータイムだ!」
戦いが始まり、グレムリンは白い魔法使いから奪ったハーメルケインを振るう。
進化したグレムリンの力は、インフィニティースタイルのウィザードすら圧倒する。
ウィザードの攻撃はまったく通じず、ついに強化変身が解け、フレイムスタイルに戻ってしまう。
ウィザード「うぅぅ……!」
グレムリン「今の僕は、誰も倒せない!」
グレムリンが光弾を放つ。
『ディフェンド・プリーズ!』
ウィザードの張った防御壁をたやすく砕き、グレムリンの攻撃が次々に炸裂する。
ウィザード「うわあぁぁ──っ!」
グレムリン「そろそろフィナーレといくかい?」
ウィザード「う、うぅっ……」
グレムリン「似た者同士、仲良くできると思ったんだけど。希望を叶えるのは、僕だ」
ウィザード「……うおぉぉ──っ!」
グレムリンがハーメルケインを振り下ろす。寸前、ウィザードは右拳で剣身を受け止める。
剣撃を止めたのは、ウィザードが嵌めていたコヨミの「プリーズ」の指輪。その指輪も粉々に砕け散る。
グレムリン「う!?」
ウィザード「俺とお前は違う……!」
剣身を素手でしっかりと握りしめるウィザード。
ウィザード「過去に戻ろうとするお前とは違う! 俺はすべてを受け入れて前に進む。コヨミの心を救うまで!!」
凜子「心……」
ウィザード「俺はコヨミに託されたんだ。コヨミを安らかに眠らせてやるために、『賢者の石』は誰にも渡さない!!」
仁藤「晴人はコヨミちゃんが託した心を……」
瞬平「それで、『賢者の石』を……」
凜子「行って、晴人くん! コヨミちゃんのために! あなたの希望のために!!」
ウィザード「うぅおお──っ!」
グレムリンの胴目がけ、ウィザードが渾身のパンチを叩きこむ。
ウィザード「ドラゴン…… 力を貸せ!」
真っ暗な空間の中に、晴人のファントム・ウィザードラゴンの姿が浮かび上がる。
ドラゴン「誰かのためではなく、自分のために力を使うのは初めてだな。好きに使え!!」
ウィザードがドラゴンに飛び乗り、空間の中を突き進む。
晴人「コヨミぃぃ──っっ!!」
目の前には「賢者の石」の光。その中に浮かび上がる。コヨミの姿。
コヨミ「晴人……!」
晴人「コヨミ……」
コヨミが手を伸ばし、晴人が手を伸ばし、2人の手が触れ合う──
ウィザード「うぅおおぉ──っっ!!」
気合いとともに、ウィザードがグレムリンの体内から「賢者の石」を取り出す。
グレムリン「あ…… あぁ……!?」
「賢者の石」を失ったグレムリンが、進化前の姿に戻り、「賢者の石」は新たな指輪「ホープ」へと変化する。
グレムリン「あ……!? 返せ…… それは、僕のもの!」
ウィザード「違う。これは…… 俺の最後の希望だ!」
膨大なエネルギーを纏いつつ、ウィザードが宙を舞う。
ウィザード「フィナーレだ!! だああぁぁ──っっ!!」
フレイム、ウォーター、ハリケーン、ランド、インフィニティーの5つの魔方陣が浮かび上がる。
5つの属性のドラゴンの魔力を身に纏い、渾身の必殺キックが炸裂し──
グレムリン「がああぁぁ──っっ!!」
大爆発──!! 爆炎に包まれたグレムリンが、ソラの姿に戻る。
ソラ「くッ…… 人の希望を奪って…… 君はそれでも、魔法使いなのかい!?」
晴人「人の心をなくしたお前は、人じゃないだろ」
ソラ「……言ってくれるね」
ソラが妖しげな笑みを浮かべたまま、無数の灰と化し、消滅した──
晴人「これで……」
仁藤「やったな、晴人」
凜子「これでコヨミちゃんの心も、きっと……」
瞬平「まさかコヨミちゃんの想いが、晴人さんの新しい力になるなんて……」
晴人「この指輪はもう使わない」
瞬平「えっ?」
晴人「これは、誰も知らないどこか遠いところに…… このまま静かに眠りたいっていうのが、コヨミの希望だから……」
涙の混ざった声の晴人。
晴人「それがコヨミの心を、救うことだと思う……」
後日の面影堂。
輪島たち「キマイラを捕まえに行くぅ!?」
仁藤「あぁ。やっぱり知りたいんだ。あいつのことをもっと。だから捜し出す!」
瞬平「魔法も使えないのに、危なくないですか?」
仁藤「平気だよ。譲もついて来るからな」
凜子「譲くんって、まだ中学生でしょ?」
仁藤「みなまで言うな! 探検は土日限定だ」
輪島「あぁ、なるほどなぁ」
仁藤「で、凜子ちゃんはこれからどうすんの?」
凜子「ファントムがすべて消えたかどうかわからないし、国安0課としてはきっちり調べていかないと」
輪島「お前は、どうするんだ?」
瞬平「フフン。僕は輪島さんの弟子になって、指輪を作るんですよ!」
輪島「はは、そうか。頑張れよ。……ん!? 聞いてないよ、そんなこと」
瞬平「いつか帰って来る晴人さんのために。お願いします、弟子にしてください!」
輪島「え? ……ははっ、何だお前、しょうがないなぁ、もう。わかったわかった」
瞬平「やったぁ、やったぁ!」
凜子「ここが一番心配かもねぇ~」
瞬平「何言ってるんですか? 僕が一番しっかりしてるじゃないですか!」
輪島「わかったわかった、いいからいいから、もうこっち来い。仕事がいっぱいあるんだ!」
ドーナツ店「はんぐり~。」の店長たちは、店がなくとも公園のテーブルで店を広げている。そして晴人が訪れる。
店長「あらぁ、晴くん!」
晴人「なんだ、がんばってんじゃん」
店長「お店を再建するのが私たちの希望。だからほら、新作の『希望ドーナツ』!」
晴人「プレーンシュガー」
店長「ガクッ。そうよね、そうよね……」
店員「どこかに行くんですか?」
晴人のバイク・マシンウィンガーには、旅荷物が積まれている。
晴人「……ちょっとね。あ! それから、これも貰っておくよ」
新作ドーナツを指す晴人。
店長「ウッソ──っ!」
店員「感動です! 涙がぁ!」
店長「本当に食べてくれるの!?」
晴人「これはコヨミの分」
店長「ガクッ!」
ドーナツの袋を手に、晴人が店を発つ。
店長「ありがとうございました──!」
とある道端で仁藤が野営し、バーベキューを焼いている。
仁藤「できたぞ──!」
仁藤と譲がマヨネーズを手にし、マヨネーズをたっぷりかけたバーベキューを頬張る。
仁藤「マヨー使いだな!」
警視庁国家安全局0課。
木崎「操真晴人の代り?」
凜子の隣に、真由が並ぶ。
木崎「そうか、頼む」
凜子「はい」
真由「はい」
署長「はい」
いつの間にか一同に加わっていた署長。木崎が飲んでいたお茶を盛大に吹き出す。
署長「私も国安0課に入れてください!」
凜子「署長!? なんでいるんですか!?」
木崎「大門凜子、連れて帰れ!」
山本は、妻と、めでたく誕生した子供とともに記念写真を撮っている。
山本「よしよし、かわいいねぇ!」
面影堂では、瞬平が魔法石を相手に、指輪作りに奮闘している。
瞬平「晴人さん、ものすごい魔法の指輪を作りますからね…… 痛! 痛痛痛痛!」
無人の晴人の部屋を見つめる輪島。
輪島「ここはこのままにしておかないとな…… 晴人」
どこかの道端で、晴人がドーナツを頬張っている。
晴人「行くか……」
マシンウィンガーに跨る晴人。ハンドルを握る右手には「ホープ」の指輪が光っている。
どこまでも続く道を、晴人が1人、走り去ってく。
そして、物語はファイナルステージおよび劇場版『仮面ライダー×仮面ライダー 鎧武&ウィザード 天下分け目の戦国MOVIE大合戦』で描かれる「約束の場所」へと続いていく…。
次回はウィザード時点での現行平成仮面ライダーが勢揃いする特別エピソードです。
最終更新:2022年08月29日 04:35