剣は岬とクリスマスのデートを約束したものの、岬の目の前で、スコルピオワームとしての正体を現してしまう。
岬「きゃあぁ──っ!?」
加賀美「剣──っ!? よせ、剣!」
加賀美がとっさに、スコルピオから岬を救う。
スコルピオが苦悶と共に、剣の姿となる。
剣「ミサキーヌ…… 俺は一体?」
岬「ま、まさか…… あなた!?」
呆然とする岬の手から、プレゼントの紙袋がドサッと落ちる。
幹部級ワームの1人、カッシスワームこと乃木怜治が現れる。
乃木「まさかお前が、ワームだったとはな」
剣「俺がワーム? 馬鹿な、何を言っている!? 貴様ぁ!」
乃木が放ったエネルギーを浴び、剣がスコルピオの姿となり、そして剣となる。
岬「……」
剣「うわああぁぁ──っっ!?」
剣が悲鳴をあげ、駆け去ってゆく。
剣「嘘だ…… 俺がワームだなんて、俺が……」
幼い頃の記憶。
ワームに殺される剣の姉。
そのワームはスコルピオワーム、自分自身──
剣「俺が姉さんを殺したんだ…… そして、この俺自身を……」
岬「知ってたのね……? 剣くんがワームだって」
加賀美「それは……」
岬「なんで言ってくれなかったのぉ!? なんでぇ!?」
岬が加賀美に平手打ちを見舞い、立ち去る。
神崎邸。
剣「なぜ黙っていた、じいや」
じいや「は?」
剣「とぼけるな! 知ってたんじゃないのか? 俺がワームだってことを!」
じいや「そ、それは……」
剣「……俺はすべてのワームを倒さなければならない! 俺自身もなぁ!」
ビストロ・ラ・サル。
天道「そうか…… 神代剣が。なぜ黙っていた?」
加賀美「仕方ないだろ? 悩んでいたんだよ、俺だって。でも、どうしたらいいのかわからなくて……」
天道「悩む必要などない。奴がワームなら、倒すしかない」
加賀美「ちょっと待てよ。あいつは悪い奴じゃない。わかってるだろ? 同じなんだよ…… 田所さんや、ひよりと」
天道「一緒にするな!! 奴は、剣の姉まで殺害している。ほかの人間も襲っているはずだ」
加賀美「そ、それは……」
(剣『岬は俺が守る』)
岬「剣くん……」
天道邸。
天道と樹花、兄妹2人だけのクリスマス。
樹花「ん──、おいしい! お兄ちゃんのクリスマスケーキ、最っ高!」
天道が樹花に紅、茶を勧める。
天道「そうだろう。はい」
樹花「ありがと」
天道 (樹花、お前にはずっと笑顔でいてほしい…… そしてひより、約束する。俺が世界を変えてやる。お前が笑えるような世界に…… 必ず!)
町はずれ。
天道のもとに、ワームたちが現れる。
天道「変身」
音声『Henshin』
加賀美は海岸で、ワームたちと戦いを繰り広げる。
加賀美「変身!」
音声『Henshin』
ガタックがワームを一掃する。
カッシスワームが現れ、さらに剣も現れる。
ガタック「剣……!?」
岬「剣くん!?」
剣がスコルピオに変身し、カッシスと共にガタックを挟み撃ちにする。
ガタック「よせ、剣! やめてくれ! うわぁっ!」
ガタックが反撃できないまま、海の中へ叩き落される。
乃木「どうやらお前も、一人前のワームになったようだな。これからは俺のそばで、働くがいい」
剣「口の利き方に気をつけろ……! 死にたくなければな」
乃木「どういうつもりだ!? 神代剣」
剣「違う、神代剣は死んだ…… そして俺は最強のワームとして甦った」
乃木「ハン! のぼせ上がるな!」
乃木がカッシスワームに変身するが、スコルピオワームの触手が突き刺さる。
剣「俺のために戦うのはお前たちのほうだ…… 俺は、すべてのワームの頂点に立つ男だ!」
神代邸。
じいや「ぼっちゃま……」
天道が現れる。
じいや「ぼっちゃまのこと、よろしくお願いします。どうか、ぼっちゃまの望みを叶えてやって下さい!」
天道「……」
街中でのガタックの戦い。
ワームが一掃され、変身を解いた加賀美のもとに、剣が現れる。
加賀美「剣……!? 剣、俺は信じてた。お前は確かにワームかもしれない。でも…… お前なら人間として生きられる。今でも俺はそう信じてる」
剣「……」
加賀美「あ、ほら!」
加賀美が、拾っておいた岬からのプレゼントを差し出す。
加賀美「受け取れよ、剣。岬さんからのプレゼントだよ。岬さんだって、お前のことを……」
剣がそれを受け取ると、地面に叩きつけ、足で踏みにじる。
包みから、銀色のブレスレットがはみ出す。
加賀美「剣!? お前!」
剣はさらに、加賀美を殴り飛ばす。
剣「人間として生きるだとぉ……? 馬鹿め、すべての人間は俺が倒す!」
乃木が現れる。
剣の下僕となった彼の手に、加賀美のガタックゼクターが捕われている。
剣「すべてのワームに伝えておけ。もうすぐ、最後の戦いが始まるとな」
天道のもとに、剣が現れる。
剣「加賀美新は俺が預かっている」
ZECT指令車。
岬「田所さん…… ワームって、何ですか?」
田所「……」
岬「人間って、何なんですか?」
田所「俺にもわからない。だが…… その答を見つけるために、俺たちは戦っているのかもしれないな」
剣「加賀美の命と引き換えだ。すべてのゼクターを持って来い。ライダーシステムさえ破壊すれば、我々には敵はない」
天道「子供の頃からずっとお前を見てきた人が言っていた── お前のことをよろしく頼む、望みを叶えてやってくれ、と」
剣「……俺の望みはただ一つ」
ZECT本部。
三島「エリアZでの攻防戦以来、ワームは相変らず無作為な攻撃を続けています。まるで動きが読めない分タチが悪い」
ZECT指令車。
岬「田所さん、ワームの動きに変化が! みんな同じ場所に向かっています!」
ビルの地下施設。
加賀美が剣と乃木に捕われている。
そばのプレス機の上に、ガタックゼクターが置かれている。
天道が現れる。
加賀美「天道、よせ! 来るなぁ!」
天道が臆することなく進み出て、手にしたアタッシュケースを放る。
剣が中身を確かめると、カブト、ドレイク、ザビーの各ゼクターがある。
加賀美「天道……」
剣「ライダーの最期だ」
剣が全ゼクターをプレス機に置く。
プレス機が作動し、ゼクターを押し潰してゆく──
剣「約束だ、自由にしてやれ」
乃木が加賀美を解放し、天道のもとへ突き飛ばす。
加賀美「天道……」
剣「終わりだ…… 今日から我々ワームの時代が始まる」
壁面をぶち破り、無数のワームが現れる。
岬の声「やめなさい! この建物はZECTにより包囲されている!」
岬が現れ、剣たちに銃口を向ける。
地上では、すでにゼクトルーパー部隊がビルの周囲を取り囲んでいる。
剣「それがどうした? お前たちに勝機はない…… やれ」
プレス機を砕いて、カブトゼクターとガタックゼクターが飛び出し、天道たちの手に収まる。
天道・加賀美「変身!」「変身!」
音声『Henshin』『Henshin』
剣「変身!」
音声『Henshin』
ワームたちが群がり、乱戦となる。
カブトは、サソードと一騎打ちを演じる。
外を歩いている矢車想と影山瞬のもとにも、ワームたちが群がる。
矢車「もう一度求めてみるか…… 光を」
影山「うん…… 行こう、兄貴」
矢車・影山「変身!」「変身!」
音声『Henshin』『Henshin』
音声『Change Kick Hopper』『Change Punch Hopper』
矢車がキックホッパー、影山がパンチホッパーに変身して、ワームたちを迎え撃つ。
音声『One』『Two』『Three』
ガタック「ライダーキック!」
音声『Rider Kick』
パンチホッパー「兄貴……!」
音声『Rider Jump』
キックホッパー「ライダーキック!」
パンチホッパー「ライダーパンチ!」
音声『Rider Kick』『Rider Punch』
ガタックのライダーキック、ホッパーたちの同時攻撃がワームを撃破する。
最強のカッシスワームも、最期を遂げる。
音声『Rider Kick』
カブトのライダーキックが、サソードに炸裂する。
深手を負ったサソードの変身が解除され、剣が倒れ伏す。
剣がなおも歯を食いしばり、立ち上がる。
手首には、岬から贈られたブレスレットが光る。
岬「あれは……!」
剣はなおもスコルピオワームとなり、カブトに襲い掛かる。
岬「もしかして、剣くん…… 天道くん、やめて! 駄目ぇ!」
岬が、戦いの場へ急ぐ。
剣 (ミサキーヌ、許してくれ…… 一度でいい、最後に君とデートしたかった…… 俺、計画してたんだ)
剣の脳裏に浮かぶ光景。
満面笑顔の剣と岬が、幸せなクリスマスの時間を過ごす光景──
剣 (まず、君とお茶を飲んで…… それから遊園地に行って…… そして、最高のクリスマスを……)
カブト「ハイパーキャストオフ」
音声『Hyper Cast Off』『Change Hyper Beetle』
カブトがハイパーフォームとなり、パーフェクトゼクターが飛来する。
岬「駄目ぇ! やめてぇ!」
音声『Kabuto Power』『Thebee Power』『Drake Power』『Sasword Power』
音声『All Zecter Combaine』
岬「駄目ぇ! 天道くん!」
スコルピオがカブト目がけて突進する。
カブトがパーフェクトゼクターを振るい、スコルピオに剣身を叩きつける。
だが、引金を引くカブトの指が動かない。
剣「どうした天道! 思い出せ、俺との約束を……」
カブト「……」
岬「やめてぇ──っ!」
音声『Maxum Hyper Typhoon』
剣身からほとばしる光が、スコルピオを飲み込んでいく。
岬「剣くぅ──ん!!」
変身を解いた矢車と影山が、大の字になって倒れている。
影山「兄貴…… 生きてるか?」
矢車「さぁな……」
変身を解いた天道に、岬が詰め寄る。
岬「どうして……? どうしてなのよぉ!? やめてって言ったのに…… 剣くんはね、剣くんのままだったのに……」
天道「わかっている。だが…… あぁすることが、俺と剣との約束だった」
岬「約束……?」
天道「奴はいつも言っていた。『すべてのワームを倒す』と…… 自分の力で、奴はその夢を叶えたんだ」
岬「……剣くん」
神崎邸。
広間の椅子にぐったりと掛けている剣のもとへ、じいやが駆けつける。
じいや「ぼっちゃま!?」
剣「ねぇ、じいや……」
じいや「なんで、ございましょう?」
剣「眠ってもいいかな……」
じいや「えぇ、えぇ、何も心配することはございません。じいがずぅっと、そばにいますから」
じいやが笑顔で、剣の手を握る。
剣「ありがとう、じいや……」
剣が静かに目を閉じる──。
最終更新:2016年07月20日 19:21